原作ではほとんど活躍の無かった天使と華の活躍を増やす。
万も出し方が悪かっただけで、きちんと描けば良キャラになりえたと筆者は思いますので、そちらにも挑戦。
相対的に今作では受肉体となった三輪ちゃん(推しの方には申し訳ないですが)の存在感も増す……ハズ。
・ヤコブ問題の解消
・万の処理、調理法の変更
痛みを感じる体もなく、羂索の頭部は草むらに落ちた。
(見えてきたのにね……残念だ。が)
「最後に相手をしたのが、彼で良かったよ。それと天元にはもう縛りを結んであるから、後は時間が来れば同化は始まる」
刀を構えた乙骨に視線を向けて、羂索は言った。
「せいぜい楽しむといいよ。それから……悠仁にーー」
遺言を遺す暇を与えず、乙骨は羂索の本体である脳を真っ二つに断ち切ると、こぼれ出た脳漿を宇守羅彈で空間ごとすり潰した。
「5点追加だ!」
コガネが告げ、消える。
「終わった……やっと……」
千年もの間、闇に潜み、暗躍し、呪いを振りまいてきた悪意は遂に死んだ。
その安堵よりも、やるせない疲労に乙骨は深く息を吐いた。
(こんなものの為に、何人、何万人、いや何億人の人間が振り回されてきたんだ……)
生み出される犠牲はまだまだ増える。
死滅回遊が終わっても、羂索が遺した呪いはいつか何処かで何度でも巡る。
何度でも、何時までも終わらない呪いの連鎖……。
(けど、今は……)
眠るように…死に装束で息絶えた穏やかな姿に、不謹慎だが乙骨はふっと笑ってしまった。
「羂索の気を引いてくれてありがとうございます……えっと、誰かは……後で調べて、必ずご家族の元に連れて帰ります」
一人で呪いと戦った英雄の名を、乙骨は知らなかった。
そしてもう一人。
潰れた特徴的な上着は、間違いなく石流龍の物だった。
「石流さんも、羂索と戦ってくれて、ありがとうございます」
そこで乙骨の涙腺は決壊した。
涙が溢れて止まらなかった。
「本当に…ほんとうに、ありがとうございますっ……」
どれだけ泣いていたのか分からない。だが涙をどうにか止めた後、乙骨は岩手の空を見上げた。
太陽の側に輝くのは、木乃伊のようにしなびた肉塊。
不死の呪術師、天元の成れの果は、それを護る結界と共に空にあった。
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「うぉ! な、なんじゃこりぁ!?」
目覚めたパンダは、さらに小さくなった自分に戸惑いながら言った。
「やっと起きたか」
「ま、真希ぃ?! なんでぇ! ここいんだ!」
「良かったな。どうやら死滅回遊的には死亡扱いみたいだぜ。パンダは」
秤は言って、コガネを消す。
秤の点数は25点。20点は、襲ってきた術師を返り討ちにした得点。そして追加された5点は、大熊猫に放った蛭卜槍による攻撃と、その後の真希のトドメを合わせ、秤がパンダを殺した扱いになったことによるものだ。
「肉体的な死亡が、死滅回遊における死って事だろう。名前が変わってねぇ受肉泳者の事を考えたら、まあ妥当な話だ」
日下部は言いながら一服する。
「何くっちゃべってんだ? お前等」
戻ってきた鹿紫雲に殺気立った、真希と日下部を秤が制した。
「安心しろ。仲間って理由じゃねぇが、ダチだ」
「ちげえよ」
鹿紫雲は、呆気にとられた日下部の煙草を一本取ると、呪力で火をともした。
「ふぅ……不味ぃな」
「なら返せよ」
「あ?」
凄んだ鹿紫雲の圧に、日下部は縮こまった。
実力の差は猿でも理解できる。
「鹿紫雲一だな」
「天与呪縛か……俺の時代にも居たが、完全に呪力ねぇのは初めてだな」
「試してみるか?」
「ま、もう一戦位はしてもいいが……今日は終いだ。羂索のクソが死んだみてぇだしな」
「! まじか……! おい秤っ!」
日下部の言葉に、改めて秤はコガネを呼び出した。
現在ポイント1位は鹿紫雲の36点。
2位の伏黒津美紀32点。
3位は秤の25点。
圧倒的な1位であったはずの羂索、夏油傑の名前は泳者一覧から消えていた。
「残りの奴らは後16人。宿儺もその中に居るだろうが、直に決まるだろ? 今から行くだけ時間の無駄だ」
所在無さげに、鹿紫雲は煙を吐いた。
「待てよ……ってことはだ……鹿紫雲一、秤金次、乙骨憂太、それに伏黒恵と、虎杖悠仁…加茂憲紀……そして、三輪霞」
日下部は身体の力が抜けていくのを感じた。
死滅回遊に参加した生徒全員の離脱は、もはや物理的に不可能だ。
鹿紫雲が大人しく点を渡すわけがなく、更に五条解放の為には天使という術者も必要になる。
最低でも必ず誰か一人。加えて、さらに生徒の中から犠牲は確実に出ててしまう。そこから先を考えれば、酷な選択だが、切り捨てる最初の一人、それは両面宿儺“虎杖悠仁”以外に有り得ない。
今後の呪術界の為に必要な人材は、御三家の憲紀と、特級術師の乙骨。
遺言の意味は失われたが、次いで伏黒。実力的に考えれば、次は秤金次。
三輪は……実質的には切り捨てるより他なかった。
最悪に近い状態だが……気になる点は2つ。
「っ伏黒のやつ……姉に点を渡したのか? クソ、それに三輪も何して、んだ……」
日下部は言葉に詰まった。
三輪霞……3点。
術者を相手取っていたなら有り得ない数字だ。
「結界出入りの原則を追加したのは三輪だ」
秤は言った。
「どういう意味だーー」
「分かってんだろ? 聞き返すなよ。三輪は受肉泳者だ。しかも羂索に協力しているな」
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東京第一結界。
「終わったみたいだな…!」
「はいっ! と、いうか高羽さんは?」
華は辺を見渡しながら、高羽を探した。
「……兎に角考えてても仕方ねぇ。あの変な術式なら、きっと無事だ」
「そうです…よね。きっと……」
震える華に、虎杖は目線を合わせた。
「伏黒を助けに行こう。何があったか知らねぇけど……姉ちゃんなら、家族なら話し合えば、解決できる。時間はかかるかも知れねぇけど」
「はい! 恵は私の運命の人っ!ですからっ!」
「それさ。やっぱり伏黒がーー」
《避けろ! 華っ!》
華の手のひらに口を作り、天使が忠告すると同時に、銀色の液体がまるで矢の様にコンクリートを穿った。
「誰かと思えば天使と……す、すっ、すっく…すくっ!」
(あれ、確か京都の…女の子だよな)
羽根を生やし空を飛ぶ三輪…もとい万の姿に、虎杖は躊躇いを見せた。
《彼女が知り合いなら諦めろ。あれは万、千年前の受肉者だ》
天使の声に虎杖は顔を曇らせる。
(東堂……ごめん)
万が身に纏う呪力だけなら真人を上回っている。それどころか、あの火山頭よりもーー。
《……先に行け。虎杖悠仁》
「でも!」
《私は彼女の戦い方は知っている。安心しろ》
「分かったーー」
虎杖は、天使を信じて、伏黒の後を追う。
「っ……作戦会議は済んだ?」
咳払いをして、万は言った。
《これで良かったのか? 華》
「はい。運命の人を助けられるのは、虎杖さんです。ここは私が……」
羽を広げ、華は空に飛ぶ。
「天元の使い。だから天使。下らない信仰心は健在のようね」
《私の信仰は他者に向けた物ではない。貴様こそ堕天を探して居るのだろう?》
「あぁ。そういうスタンス変わらないのね。ふっ、それはもういいわ。貴女を殺してから宿儺にはゆっくりと愛を……私のハートを届けるからッ!」
万は構築した液体金属を刃のように振り回す。
ビルが容易く両断れるその威力。
《華っ! 止まるなっ》
「は、はいっ!」
華を回避に専念させながら、天使は万との戦い方を思考する。
構築術式、それは天使にとって相性の悪い術式であった。術式は消滅させることができるが、すでに構築された“物体”を消滅させることは出来ない。
(これ以上手札が増えれば、華では決して万には勝てない。僅かでも生存率を上げるためには……)
《華! 私が呪詞を唱える! 万に邪去侮の梯子を!》
「わかりました!」
華は反転し、ラッパを構える。
《光よ、全てを浄化し給う光よ、罪・咎・憂いを消し去り、彼の者を導きたまえーー》
「宿儺の真似事かしら!」
万にとっては想定内の動きだ。浅知恵と言ってもいいだろう。
(私の選択肢を減らすつもりね)
天使の術式は、まず結界から消滅させ、次に術式、そして呪物という段階を踏む必要がある。
後の2つは同時に処理されるものではあるが、結界は先出ししていれば、領域同様にせめぎ合いが起こり、消滅は緩やかになる。
(その分、構築速度は遅くなるけど……未熟な器を生かした己の信仰とやらを呪うがいい!)
「邪去侮の梯子っ!」
上を取った華のラッパから放たれた光が、空を飛ぶ万の頭上から降り注ぐ。
「残念! 彌虚葛籠」
掌印を結び、万が極意を発動させようとした瞬間ーー。
『突如、万の脳内に溢れ出した存在しない縛りーー』
『どうも。役立たず三輪です。私が簡易領域を発動させるためには両足を地面につける必要があります』
『簡易領域を発動させるためには両足を地面につける必要があります』
“両足を地面につける必要があります”
「ぎゃああああぁあぁあァァアぁ!!!!!!! あッ熱ゥウウウゥウ!!!!」
万は体内の呪物を焼かれる激痛を叫びながら落下する。
《なぜこれほど効いている……》
想定以上の効力に、思わず天使は呟いた。
万自体は宿儺の内面に迫れるので悪くなかったと思います。
いかんせん津美紀にしたのが評価に繋がったのかなと思います。