if呪術 ネット意見取り入れ小説バージョン   作:パワーボム

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虎杖の倫理観を疑われる結果となった一連の流れです。

伏黒の魂が死ぬことはそのまま。

但し『誰も傷つけない』の縛りの誰もに含まれていなかった者は宿儺自身に変更。
また虎杖を傷つけたので、縛りを破った罰も後ほど下るように致します。


悲しい姉弟対決決着〜宿儺受肉

宮濔羅を破壊した虎杖は、すぐさま焦げた体の憲紀を横に寝かせた。

 

「…私は、いい……早く。伏黒…恵を……」

 

「でも、この傷じゃあ…!」

 

「あん、しん…しろ……。赤血操術で…応急処置はできる……。1時間、以内に……家入さんを…呼んでくれ」

 

「……そこは時間制限あるんだ」

 

「ふ。当たり前だ…重度の火傷だぞ。だが…まあ、まだ、家族と…お母様と……話しをしていないからな……死ね無い」

 

「ありがとう。先輩。行ってくるーー」

 

飛び出した虎杖の背中を、憲紀は見送った。

 

(そうだ。まだ、死ねない。だが……流石に)

 

「きつい…な……」

 

意識だけは失わないように憲紀は呟いた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

伏黒が膝をつくのと同時に、津美紀も膝を折った。

 

領域を塗り替えられた津美紀には、もう伏黒と戦うための呪力は残されてなどいない。

 

「津美紀……」

 

「……はぁ〜あ。負けちゃった」

 

津美紀は壊れた笑みを崩さず、ふらふらと立ち上がる。

 

「終わりにしよう…もう、ここで……」

 

伏黒も同じように立ち上がると、津美紀に言った。

 

「どうやって…終わるの。私の為に死んでくれるとでも?」

 

「お前が望むなら…それでもいい」

 

伏黒は義姉の目をまっすぐに見ていった。

 

「ふふ。そこまで言うなら……もういいわ」

 

津美紀は一歩ずつ、後に後ずさる。

 

「死ぬのは私。恵はこれからもずーっと生きていればいい。呪われ続ければいい」

 

「どうして…どうして俺を……俺はどうしたらいいっ! 答えろよ! 津美紀ッ!」

 

「それが気持ち悪いのよ!」

 

津美紀は笑みを崩して言った。

 

「何が津美紀よ! 私に弟なんて居ない! 私に家族なんて居ない! 私に居場所なんて無い! 恵が奪ったのよ! 私の世界を! 居場所を!」

 

憎しみの瞳が伏黒を見る。

 

「私は独りがいい! 誰も側に必要ない! お前が来るまでは幸せだった! 私の世界は…あの部屋だけで良かったのよ!」

 

たまり続けた呪詛を、津美紀は吐き続ける。

 

「なんで入るの! なんで喋るの! 何がおかえりなさい?何がただいまよ! なんでお前が居て、何時も何時も何時も津美紀、津美紀、津美紀ッ! 気色悪いのよ! “伏黒”は私! 大嫌いなお母さんが棄てて……私だけの…世界なのに……何で…私だけじゃないのよ!」

 

駄々をこねる子供の様に、津美紀は喚き散らす。

 

(オレを棄てた父親を…憎んでいた。性別も知らずに恵と名付けて、今ものうのうと生き続けているその男を……)

 

ならば何故、津美紀がそうでないと思ったのだろう。

 

伏黒恵の存在そのものが、津美紀から母を奪い。孤独を奪った。

あの部屋だけが津美紀の世界だった。あれだけがただ1つ、津美紀に残された現実だった。

 

(オレは願ってばかりだった。津美紀に。そうでないハズだと。だが違った)

 

当たり前の因果応報。そう在りしと願う事は、自分自身にさえ出来ていなかったにも関わらず、伏黒は津美紀に押し付けていた。

 

(津美紀を助けたかったのは……救いたかったのは……オレだけだ。津美紀は望んでいなかった。初めから救われることなど)

 

だとすれば。もはや出来ることは1つだけだった。

 

「伏黒津美紀…これは“縛り”だ」

 

伏黒恵は言った。

風が冷たく吹く。

 

「オレはもうお前を思い出さない。お前に近づかない。お前の前から消える。名前も捨てる……オレを、忘れていい。呪い続けてもいい! だから……だから…その世界でいいから……何処かで、生きて居てくれ……頼むよ、姉さん……」

 

「嫌よ」

 

津美紀は、最後の一歩を踏み外した。

中空に投げ出された身体に、届くすべを伏黒は持たない。

 

影は遠く伸びながら、薄く。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

津美紀は目を閉じて、落ちていく。

 

ずっと納得できなかった。

 

(なんで私を母は棄て、なんで恵が私のそばにいるのか……)

 

けれど今なら分かる。

私は呪った。この世界を。呪いで満ちていて欲しいと願い、そしてーー。

 

目を開き、崩れた街を見る。

大勢の人間が死に、大勢の呪いと怨嗟が死滅回遊によって齎された。

消えない傷を世界に刻みつけた。

 

「ふふっ……あはははっ」

 

だから呪われた。私は私の世界を失った。

 

(やっぱり神様は居たよ? だって…ちゃんと罰が下ったんだから)

 

傾いた影が津美紀に翳る。

その端に見えたのは、恵ではない。そう…あれは……。

 

虎杖悠仁。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

大勢の人間が、オレのせいで死んだ。

 

”オマエは強いから人を助けろ”

 

(なんでオレがって思ったよーー)

 

“手の届く範囲でいい、救える奴は救っとけ”

 

(なんでオレがって思ってたーー)

 

“迷っても感謝されなくても とにかく助けてやれ”

 

(けと今なら分かる)

 

虎杖は壁を蹴り、落下する津美紀に目掛けて真っ直ぐに走る。

 

理由なんて後づけの遺言だ。

本当にそうなのかなんて、死んでみないとわかる訳が無い。

だが、1つだけ。そう1つだけ確かなことは分かる。

 

(理由なんて必要ない。ただ家族の最期が、誰かを呪うのなら、それが正しい死であるはずがないーー!!)

 

虎杖にとって命を懸ける理由は、それで十分だった。

 

聞いておけば良かったと虎杖は後悔した。

 

自分の両親の事を。何処の誰か分からなくても、今なら感謝できるから。

 

人より強く生んでくれたことを、誰かよりももっと大きく手を伸ばせることを。

 

中空へと飛び出した手を虎杖は伸ばす。

 

(間に合う。助けられる。だから…ありがーー)

 

《契闊》

 

嘲笑うような声が虎杖の頭の中で響いた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

(何が起きた?)

 

伏黒の脳は理解を拒む。

赤い花がアスファルトに咲いている。

 

「ぁ…あぁ……」

 

花。そう、花だ。だから、何も起きていない。何一つ。

 

「ケヒッ、他者を理由にする者は脆いな」

 

背後の声に、伏黒は振り向いた。

呪いの王。両面宿儺がそこには立っていた。

 

「あ……」

 

咄嗟に伏黒は両手を突き出そうとして、その手が凍りつく。

 

「かゆいところに手が届くな、裏梅」

 

「有り難き幸せ」

 

白髪の美少女は宿儺に傅いて、静かに言った。

 

「さて…ここからは少々賭けになるがーー」

 

宿儺は自身の左手の小指を握る。

その指が黒く染まると同時に、宿儺はゆっくりと引き千切る。

 

「ケヒッ……愚かな小僧だ。呆れるほどになぁ」

 

他者間での縛りを破れば罰を受ける。それがどのように作用し、降りかかるのかソレは“破ってみる”まで解らない。

 

しかし宿儺にとって重要なのは、結果として“自死の縛り”では無かったと云う事実であった。

 

「誰も傷つけぬ。もしくはその縛りに“俺”を入れて居なかったのか。まあ、何方でも構わぬが」

 

宿儺は傷ついた指を反転で治すと、引き千切った呪物を裏梅に投げた。

 

「呑ませろ」

 

「はい。宿儺様」

 

「はっ、止めーー」

 

身動きの取れない伏黒に、裏梅は指を飲ませる。

 

(初めて魅せたあの呪力)

 

少年院で伏黒が迸らせた呪力を、宿儺は思い出す。

 

変幻自在。汎ゆるモノへと変質可能な呪力。

そして渋谷で魅せた式神、魔虚羅の能力。汎ゆる事象への適応。それを可能にする者へ向けた宿儺の予感は、確信へと変化していた。

 

(伏黒恵は俺の器足り得るーー)

 

その上で待った。他者を理由にする愚かな呪術師の末路を。

数多見た愚か者の末期の断末魔を宿儺は知っている。

心折れ、魂が弱るその瞬間を。

 

1分。

 

虎杖が意識を取り戻す。

『宿儺が契闊と唱えたら1分間身体を明け渡す事。そしてその縛りを忘れる事』

 

虎杖が結んだ縛りを思い出した時、宿儺は伏黒の顔で嗤う。

 

「言ったハズだ。面白いものが見られるとーー」

 

伏黒恵に受肉した呪いの王の拳が虎杖の意識を刈り取った。

 

 

 

 

 





虎杖を傷つけたのではなく、宿儺自身の自傷でよかったのでは……とあのシーンは思っていました。
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