宿儺戦はブラッシュアップする感じになると思います。
パパ黒衣装の意味を与えます。
裏梅との戦いを終えた真希と秤は、禪院家の庭石に座った。
「で、どうする。乙骨と合流するか?」
「そいつは無理だな。いつ一億呪霊が現れんのかも分かんねぇし……憂憂は保険だ。もうこっちこれねぇだろ」
秤は小石を拾って投げた。
「オレたちゃ店仕舞だ」
大の字で寝た秤に、真希はふと湧いた疑問を口にした。
「綺羅羅のヤツ。悟を見送る時、居なかったよな?」
「ん? あぁ…あいつは五条さんの使いだからな」
「使い? 何をだ? 悟の本気に割って入れる奴なんて居ねぇだろ」
「五条さんは全部使って宿儺を祓うつもりなんだよ。本気のガチで全部で……スゲェよ、あの人は」
「答えになってねぇだろ」
「最強の呪術師の戦いだぜ? 割って入れるの奴なんていねーよ」
「だからそう言ってんだろうが」
答えるつもりのない秤に、真希はため息をついた。
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宿儺と鹿紫雲の戦いを、ビルの屋上に立つ五条の六眼が見つめる。
勝敗は間もなく……鹿紫雲は負ける。
(けど。ナイスファイトだったよ。鹿紫雲)
史上最強の呪術師。それと真正面から戦う。
五条も男の子だ。気持ちは理解できる。だが呪いを祓う者として、五条はここに立っている。
稲光が空に突き抜けていく。
「伊地知任せたよ」
五条は言った。
「ハイ」
最強の呪術師の頼みに伊地知は応えた。
歌姫の術式、単独禁区。効果範囲内の呪術師の出力を上げるその舞と、楽巌寺による琵琶の演奏…五条は呪力を極限まで高め、伊地知の結界で秘匿する。
呪術師として宿儺を祓う。
その為には“どんな手でも使う”。
「九網、偏光、烏と声明。表裏の狭間……」
歌姫と同様に一切の手順を省略せず五条は己の呪力を極限まで高める。
「伊地知、歌姫、楽巌寺理事長……」
五条は振り向かずに言った。
背中を任せる。文字通り五条悟は初めて誰かに背中を任せ、ここから先は全力での闘いになる。
(ここが最後の会話になるかもしれないからね)
五条は悪童の様に笑って。
ありがとう
小さく、だが確かにそう言った。
歌姫はその言葉に微笑んだ。伊地知も、楽巌寺もーー。
赫、蒼、2つの呪力が衝突する。
「虚式・茈ーー」
空間を消し飛ばす仮想の出力が宿儺に向かって放たれた。
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鹿紫雲との対決。その直後の奇襲。
伊地知によって秘匿された五条の呪力。出力200%の茈。五条の初手を読み違えた宿儺は左腕を黒く焦がす。
「糞餓鬼が……」
五条は蒼によるワープを行い、宿儺の損傷を把握する。
(悪いが鹿紫雲とは違うんでねッ)
「こっちはチャレンジャーでもなんでもねェ! 祓って殺るよ両面宿儺ッ!!」
腕が無ければ掌印は結べない。
「領域展開、無量空所」
五条の領域が宿儺を包まんと広がる。
「シン・影流…簡易領域」
しかし宿儺はそれよりも素早く、簡易領域を展開し、五条の初手を捌いてみせる。
損傷した腕の反転を五条は見逃さない。
(これが一番丸く収まったんだけどね)
五条と宿儺の瞳が合う。
五条は素早く領域を崩し、宿儺はそれに対応し解を放つ。
「領域展延」
六眼の纏う呪力の鎧は王の刃を跳ね返す。互いの距離を推し量る両者の衝突は、新宿の高層ビルを両断する。
極限へと至った者同士の対決。
「派手なことするじゃない!」
「貴様もな。随分と回りくどいことをする」
宿儺が腕を再生し、領域展延を発動させる。
拳を受け止めた五条を、宿儺の展延が上回る。
(なるほどね。展延は宿儺のほうが上か)
五条の肉体に術式が戻り、宿儺との間に無限の距離を発生させる。
瞬間、宿儺の展延は激しく震えながら、大気に響いた。
「けど術式じゃあ僕のほうが上みたいだなぁ! 宿儺様ッーー」
五条は宿儺との間に赫を発生させ…宿儺が展延を解く瞬間を六眼で見抜いた五条は、展延を再度発動させ宿儺を蹴り飛ばした。
ビルを貫き、地面へと叩きつけられた宿儺を五条は高架道から見下ろした。
「悪いけど忖度無しだから。手加減とか期待して恵の顔のままならやめとけよ」
「五条悟…貴様は魚だ。他の魚より少々鱗が固いだけのな……」
宿儺は五条に腕を向ける。
「その鱗もすぐに剥ぎ取ってやる」
「恐いねぇ! 宿儺様はッーー」
展延のまま五条は宿儺に殴りかかる。
この時点で宿儺は確信する。
(魔虚羅を知る五条悟はオレに適応させぬ為。オレが術式を使えば展延をし、展延を纏えば術式で対抗する)
総合的な能力では宿儺が勝り、素質と才能は五条が勝る。
(宿儺の展延は僕の予想以上)
(五条悟の術式はオレの予想以上か)
互いの実力と、武器を把握した二人の頂点は、同じ解答を導き出す。
「厄介なものだな何時の時代も呪術師はッ」
五条を解を交えた打撃で迎撃し、宿儺は掌印を結ぶ。
(戦いを長引かせ、オレの呪力切れを狙う算段ならばーー)
五条も、既に掌印を結び。
(何時押し切られてもおかしくない。じゃあしょうが無いねーー)
「「領域展開」」
2つの領域が激突した。
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虎杖は冥冥の烏による中継を見つめていた。
(先生が負けるか、了解を出すまで…オレは戦えない)
虎杖は拳を握りしめる。
呪いの王。両面宿儺と相対する以上、最悪を覚悟しなければならない。
それでも虎杖は顔を上げて、前を見据えていた。
(先生は勝つ。絶対にーー)
領域の激突はモニターには映らない。それでも空間の歪みは、物理的な現象を通じて、虎杖に伝わってくる。
五条の領域、無量空所。その外殻を宿儺の閉じない領域が破壊した。
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「え? 宿儺の領域って閉じないの?」
五条の開いた作戦会議。虎杖と張相の言葉に五条は驚いた。
「あぁ。羂索がそうだった」
「オレは自分で領域使ってみて、初めて分かった」
「……なるほどね。オッケー。ソレがわかってたら対策は何とか考えるよ」
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呪術戦の奥義。領域展開。
互いの領域の精度が拮抗した場合、お互いを中和し合い必中効果を結界内から消失する。
宿儺の領域は閉じない。
それは五条の領域を外から切り裂き、崩壊させ、斬撃の雨となって降り注ぐ。
迎撃するのは、展延によって強化された落花の情。宿儺の斬撃を受け止め、五条は血塗れに成りながら反転を発動させ続ける。
(想定通り……捌無しの領域は耐えられる)
五条の六眼が光を増し、羽織から取り出した勾玉を密かに握る。
「悠二に奪われたのは計算違いだったもんなぁ!」
領域の範囲を絞り、宿儺は刃の数をカサ増している。だが裏を返せば、呪いの王が自らの縛り……“逃げ道”を近づけてくれているとも言い換えられる。
「チッ」
宿儺は駆け出した五条を追い掛ける。
五条の羽織が破れ、その上着はかつて自らを壊った禪院の鬼神に酷似する。
戦い方も含めてーー。
「ハッ! 釣れてやんの」
宿儺が接近すると共に、五条は脚を止め、シン・影流の開祖が生み出した呪具〈珠葛籠〉を足元で割る。
勾玉の様なこの呪具は、シン・影流の門外不出の縛りと共に、呪いの王から与えられた恐れから開祖が作り出した物だった。
破壊する事で一瞬だけ簡易領域を発生させる。ただそれだけの弱者の煙玉は、作るのに数十年の時を必要とし、実用性にも掛ける。
その場しのぎの簡易簡易領域。しかしどの様な状態であれ、領域の必中を瞬間的に打ち消せる。
それが喩え王の領域で有ろうとも、露を払うには刹那を要する。
現代最強の呪術師にとってはソレで十分。
術式内の出力の底上げの恩恵を剥がされた宿儺の身体に、展延で強化された五条の拳が突き刺さる。
「播磨の阿呆(蘆屋貞綱)がーー」
「誰だよソレ」
窮鼠猫噛。
吹き飛んだ宿儺とその領域は、五条悟を結界の範囲内から取りこぼした。
今作の五条は完全パパ黒スタイルで行きます。
頂上決戦ではなく呪いを祓いに来たので、卑怯も糞もありません。不意打ちもかますし、狡もします。