原作では無い可能性もある一億呪霊戦。
協力者、夏油一派、高専側、呪術師全員で決戦に挑みます。
■11月11日
九十九と天元。因果によって結ばれた二人はバーのクラブに座っていた。
バーテンダーの格好をした天元は、カクテルを作り九十九に差し出した。
「つまんねぇ特技だ」
「気に召さないようだな。残念ながら」
「星漿体……お前の血を引く者に出現する特異体質らしいな」
「その通りだ。呪術的な要素として血縁関係は欠かせない」
九十九は語気に怒りをにじませる。
「不死者の遊びのつもりか?」
「……否定はしない。私は、私の孤独に寄り添ってくれる家族が欲しかった」
我慢の限界に達し、九十九は天元の襟首を掴んだ。
「子を呪い殺すために産んだのか? ふざけてんじゃねぇぞクソババア」
「今となってはキミたちには申し訳なく思う」
「天使とやらに殺してもらえよ。孤独を憂う暇があったんだったらッ」
「それは千年前に試した。消されている間、私は生と死の間に立つが…死にはしない。天逆鉾も同様だ」
九十九は舌打ちして、天元を放した。
「話を戻そう。私と日本人の同化、羂索がそれを行った場合、私の生得術式を誕生する呪霊は引き継ぐだろう」
「不死。つまり現れた一億呪霊とやらは殺せない訳だ。お前のせいで」
「不変の存在であるからこそ、羂索は興味を示したのだ。だからこそ私との同化を止めて欲しい」
九十九たちの話を、脹相は所在無さげに聞いていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
■11月18日 呪術高専東京校
修行を終えた乙骨たちは、日下部に呼び出された。
「全員揃ったな……話は簡単だ。一億呪霊、どうやって対処するか……真希」
日下部は真希に話を振る。
「大熊猫、パンダの時はどうだった? 核の動き」
「そうだな。呪力に流されてる。そんな感じだな」
「推測だがあの時のパンダと同じ様に巨大な呪力の塊が現れると思う。核となる天元様を中心にな」
脹相が手を挙げる。
「それについてだが、九十九と天元の会話を思い出した。一億呪霊は“不死の術式を引き継ぐ”。2人はそう見込んでいたようだ」
「不死を引き継ぐ……だと……」
日下部は汗を噴き出した。
「じゃあ、倒せねぇってことか……」
「……封印するっていうのはどうですか?」
乙骨は言う。
「無理だ。呪力が巨大すぎる。それに例え封印できたとしても、それでは囚われた魂と呪力は戻らない。非術士の肉体は、魂の抜け殻として朽ちていくだけだ。助けられない」
虎杖は手を挙げた。
「その不死は“術式”なんだよな」
「ああ、そうだよ……それがどうした?」
虎杖は口ごもってから、
「なら……1人だけ、なんとかできる人が居るかも……」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
■12月14日 岩手結界外郭。
五条を見送った高専生を待っていたのは、かつての夏油一派。
「来てくれた様だな。感謝する」
夏油一派の残党……菅田真奈美と祢木利久に日下部は握手を求める。が、2人はそれを無視し、乙骨に向かって行った。
「夏油様の体を取り戻してくれた事には感謝している」
利久は言った。
「けれど、忘れない事ね。私達はあくまでも彼の意思を継ぐ。非術士は皆殺しにする」
真奈美は言った。
「その時は僕が止めます。安心してください」
肩の力を抜いて、真奈美は呆れ顔をする。
「この“やり方”は夏油様の意思に反する。今日は協力してあげるわ……あっちはもう意気投合してるみたいだけど」
ミゲル、ラルゥと談笑する東堂、脹相を親指で差し示した。
「どうやら話はついたようじゃな」
楽巌寺と歌姫が合流する。
「五条の方はどうなった?」
「さぁ。私達の役割は終わったから。後はこっち」
日下部に答えて、歌姫は言った。
「日下部。ここの仕切りははお前に任せたハズじゃ」
「…わ、解りました。理事長……全員集合!」
高専生、教員、そして夏油一派。
「もう何時、一億呪霊が現れるか判らねぇ。だが、ここに居る奴は、まぁ、色々とあったが、今は同じ呪いを祓う呪術師だ」
日下部は集まった全員の顔を見渡した。
「やるぞ、ここで決着をつける! 帰ったら宴会だ! 敵も味方も関係ねぇ! ともかくや、やるぞー!」
「絞まらねぇすね…最後は」
井野は言った。
「だが“勝って兜の緒を締めよ”だ。締めるのは勝った後でいいだろう」
東堂はクールに言う。
「後は天に任せるだけだ。当にな……全員、準備に取りかかれ」
「はい!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
空に浮かぶ天元の前に、ひとり座り考える。
この者が生きていた千年という時間を。
そして、その時が来た。
恐らくは非術士にも視認できるであろう呪力の奔流が岩手の空を黒く染める。
「今日の天気予報は、晴れだったんだぞ」
ひとり心地につぶやいて、立ち上がる。
「領域展開」
天元と呪力が合流する刹那、それを遮るように結界が包みこんだ。
『2018年12月13日未明』
誅伏賜死。
日車の心象風景が、天元を席に着かせ、ジャッジマンの声のみがそこに響く。
『天元は羂索と共同し、日本国領土にて《私的に外国による内乱を誘発させた》疑いがある』
(不味いな)
日車は動揺を見せないために口を抑えた。
千年…其れだけの時間を生きていれば何らかの重罪を犯しているとは予想できていた。
しかしジャッジマンが選択した罪状は『外患誘致罪』。
日本国の法の制定以来、1度も適応されたことの無い罪であり……判例が存在しない。
(与えられた証拠も、天元と羂索の会話のみ)
何よりも判例が無い以上“知らない”と言われれば罪に問うことは事実上不可能。
そして同化が始まれば、天元の意思は喪失し、二度と罪に問う事は出来なくなるだろう。
「……面白い術式だ」
天元は誅伏賜死を見渡しながら呟いた。
「羂索と結んだ“縛り”により私は他者との会話を禁じられて居たが…キミの術式は私に答弁の機会を与えてくれている様だな」
天元は腕を組む。
「年寄の戯言と思って聞いてもらいたい。千年前、この世は理不尽な死で満ちていた。戦、病、飢餓、支配……それらがもたらす不条理な死から人々を救いたいと私は願い祈った」
天元の姿が変わっていく。千年前、まだ人であった頃の姿に。
「死を滅する為の回遊……それが死滅回遊という儀式であり、私と同化することで、せめて訪れる死の苦しみから、人々を救いたかった。だが、本当は生に飽いて居た。私の苦しみを共有する誰かを求めていただけなのだ」
日車は何も言わない。
「フッ。何よりも今より千年も前の話……今を生きるキミたちにとって私の願いは、最早呪いでしか無い。今こそキミたちに返そうと思う」
天元は真っ直ぐに、日車を見つめた。
「死滅回遊は私が計画し、外国軍も私が誘致した。その罪の一切を認める」
「罪状を……否定するつもりは無いのだな」
最後の確認を日車はした。
「ああ。後はキミたちに任せる」
確認を取った日車は、ガベルを打ち鳴らした。
ジャッジマンが目を開く。
裁く罪の重さにより、剥奪の期間と処刑人の剣は日車に託される。
この罪が確定された場合、下される刑罰は1つ。
故に、剥奪は永続であり、処刑人の剣も必ず日車の手に託される。
ジャッジマンは主文たる有罪と没収を後回しにし、先ずは刑罰を言い放つ。
外患誘致罪……その刑罰は日本国の法における最高刑即ちーー。
『死刑(デスペナルティ)』
『有罪(ギルティ)』
『没収(コンフィスケイション)』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
領域が終わり、処刑人の剣を握った日車と、小さな呪具が入れ替わる。
「どうやら取れた様だな」
東堂は日車の剣を見て言った。
「ああ。最高刑での判決だ。没収も永続する」
「千年の呪い……ここで祓うぞ!」
その言葉を受け、日下部は鼓舞する。
産まれ落ちた呪いの塊を前にして呪術師たちは覚悟を決める。
呪いを祓う。それが呪術師の使命。
燦然とした呪力を纏う者たちは、祓うべき闇に向き合った。
これで外国軍参戦の意味も生まれたかな、と思います。