細かな独自設定はまた次回以降で触れますが、多分触れられないだろうなという点を上げておきます。
・五条伸也=五条家の呪術師。術式なし。五条悟以外が出てこないのも変なので補助監督として。
・真希が特級呪術師=本当の特級であるパンダのカモフラージュ
・呪術師の等級国際基準=原作にあった呪霊を祓うのに必要な戦力の区分がそのまま横にスライドした形
例 特級=クラスター爆撃以上(単体で大隊並の戦力)
・上記の区分に移行した理由は、楽巖寺理事長が日本を外国からの干渉を防ぐために、ニセ情報を流したから
・西宮が公安に就職したのは呪術テロ対策
【オリ主について】
繁縷輝沙
・釘崎の直弟子
・後見人は歌姫
・名前は野草組(野薔薇、伏黒、虎杖)に倣ってハコベラ
・下の輝沙はテッサ=鉄鎖の音替え(次回以降登場予定の術式のイメージから)
・かわいい系にしたいと思っています
オリ主は初めてなのですが、原作キャラと絡ませつつメアリースー現象は避けるように気を配る予定です。
温かい気持ちで見守って頂けると幸いです。
中学3年、今年4月で高校1年生。
新幹線と在来線を乗り継ぎ東京から盛岡まで。
繁縷輝沙はコンビニで張り込み用のアンパンと、カフェオレ、ついでにおやつのチョコ餅を買う。
お下げの髪は術式に覚醒した時から、染めてないのに青と銀のマーブル色になっている。
「まだ12時半……釘崎さんとの合流は3時ぐらいになりそうですね……」
今年から袖を通す予定の黒の高専制服。黒いニット帽に、黒いサングラス、黒いマスク。
(これで箭島勝に顔バレする心配は無いですね…よしっです!)
輝沙はぐっと拳を握り、盛岡のバスに乗るとスマートフォンで箭島勝の情報を読みながら、イヤホンを耳に入れる。
「どうでしょうか? 帳は下ろせそうですか」
小声で輝沙は呟く。呪力を利用した暗号回線で補助監督の五条伸也と密談する。
『無理だ。例の米国との会談に合わせそちらに人員を回しすぎた』
間の悪さ。確かにそれもある。
輝沙は、ニュースサイトを開く。
この時間の報道は、いよいよ明日に迫った日米安全保障条約の改正に焦点を当てられていた。
(呪霊問題を焦点にした、完全に対等な同盟関係の構築)
死滅回遊による未曾有の惨劇から、ひとつづつ駒を動かし、楽巖寺理事長がようやく指をかける事ができた最善の一手がそれだった。
長年に渡った米国との不平等な条約を改正には、畜産物の輸入緩和を含めた外交戦略も盛り込まれており、千年の呪いに疲弊した日本に光明をもたらす物になる。
旧上層部によるテロや、外国籍の呪術師・呪詛師による妨害工作を鑑みて、この1年、日本呪術界は総力を上げ今回の改正に向けたバックアップ体制を整えてきた。
その盤面を、数日でひっくり返してしまう事態が起こった。
それが呪霊操術。文字通り全ての盤面が茶番にされかねない。
最低でも“特級”が当たるべき事態だが、現在日本国が認定する4人の戦力は、条約改正に向け各地に分散させざるを得なかった。
特級術師、乙骨優太は米国大統領の護衛として、今はまだ太平洋の上空。
次ぐ戦力、特級術師、秤金次は会場警備の為、東京からは動かせない。
3人目の特級術師、禪院真希は理事長の護衛。これも動かせない。
残る特級術師のうち、国内で動ける最後の人材が釘崎野薔薇というわけだ。
(入学前の私が任務に出されるのも仕方ない……)
『ただ向こうもプロだ。楽観視は出来ないが箭島勝を誘拐するとしても悪目立ちは避けるだろう。外交上の荒事は好むとは思えない』
「釘崎さんに連絡は……危ないですね。こっちで対処します」
髪をくしゅと手に巻いて、輝沙は考える。
(殺しを視野に入れる……呪術に関わる以上、いつかはそうなるのは分かってたけど……キツイです。やっぱり……)
伸也との暗号通信を切った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
春休み。
ひとり暮らしの勝のアパートは、悪友にとってはかっこうの遊び場だ。
昼食を終えた勝のスマホに、昼から遊ぶ予定を立てていた浜中俊也からのメッセージが届いた。
【不審者】
浜中の文は端的に続く写真を表していた。
勝と同じ年頃。肩に竹刀袋を下げ、この周辺の学生服ではない全身黒ずくめの女。
【なんか狙われてんぞ勝(・・;】
友人の送ってきた写真は、勝のアパートの前、コンビニのイートインで撮影された物だった。
明らかに怪しい格好のその少女の視線は、勝のアパートを見上げている。
「こいつ……俺ん家、見てんのかっ」
勝はベランダに忍び足で出て、そっとコンビニを見下ろす。
反射した窓ガラスの向こうには、送られた写真と同じ少女が写っていた。
【ヤベェ】
【この女】
続けざまに2点のメッセージ。
そして遅れるように次のメッセージが勝のスマホに入る。
【チョコのカップの粉も舐めるタイプだ】
そのメッセージの後には大口を開けて、チョコ餅を食べた後のココアパウダーを舐める少女の写真が添付されていた。
「まじかよ…チョコのカップの粉も舐めるタイプかよ……」
そんな相手に狙われる心当たりは勝には無い。
《すまん》
《何か聞いてもらえね?》
勝はメッセージを送る。
【了解】
【声かけてみる】
「なんなんだよ。ったく……」
玄関の呼び鈴が鳴る。思わず勝はビクッとしてしまったが、すぐに気がついた。
「あー、ふみっちか」
もうひとり。今日遊ぶ約束をしていた北中サッカー部のフォアード、林文博を思い出して、勝は玄関に向かう。
「……あ。いっしょじゃ無いのか?」
カギを開けた瞬間。
ドアが開かれる。
……そこに立っていたのは、Tシャツ姿の外国人。
「悪いネ。勝クン。私は君のお父さんのトモダチ。リチャードだ」
筋骨隆々の白人男性の指が、ドアに食込む。
彫りの深い顔に、灰の瞳。彫刻のような高い鼻。
「ぇえ……」
言葉を無くし、勝は啞然としてソレを見る。
リチャードと名乗った男の手のひらには、モヤの様な力場が確かに視えた。
「ごめんなさいだけど。君には私に付いてきて貰うよ」
ニンマリと歯を剥いて、リチャードは勝の手を掴んだ。
振りほどけない万力の握力が、程々に鍛えられた少年の腕を掴む。
ピロン。と着信音が鳴る。
【ニュース!!!!】
【さっきの子】
【ガチ呪術師だって】
パリンと窓ガラスが割れる。
トトト。と小刻みの良い音がした後に、勝の前に銀色の髪が靡いた。
その少女の横顔は、自分とさほど変わらない年の……しかしあどけなさは残っていても凛としていた。
「シン・影流、簡易領域ーー」
竹刀袋から日本刀を取り出た少女の足元から、円状の力場が起こる。
「オット!」
リチャードは身を返し、刀を避けると、少女から距離を取る。
「私はジェームズ・ボンドと同じ国の人間だ。安心しなさい」
「そんな人は知りません」
「ソレは本当ですか?」
リチャードはおどけて応えて呪力を纏う。
「日本のサムライ・ガール呪術師……国際基準でいい。君の等級は何級かな?」
「私は二級呪術です」
「……残念だ。私は一級呪術師だ」
リチャードの拳が間合いに入った瞬間、輝沙の刀がそれを迎撃する。
「等級で強さは測れませんっ!」
「ソカモナーー」
猛獣の笑みでリチャードは言った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
新田から連絡を受けた釘崎は舌打ちする。
国道を下りて県道に。
「ッーーしくじった!!」
釘崎はアクセルを全開にする。
森の中にモーターの音が静かに木霊する。
直接的な誘拐に出るとは流石に予想外だ。
(テッサだけなら心配ないと思うけど……箭島勝はーー)
釘崎は急いで電話をかける。
その電話は公安所属、西宮桃に繋がる。
「状況は把握してる。要件は手短にお願い」
「ゴメンっ! 桃先輩、すぐ頼みたいことがーー」
フロントガラスが割れる。
自分の脳天に向かって来たライフル弾を、簪の釘が貫いた。
「あぁ゙?!」
二発目の弾丸にタイヤを撃ち抜かれ、バランスを崩した車のハンドルを切りながら、ドアを開けると車外に飛び出した。
ボンっ。と木にぶつかって車は止まる。
「何処の国の馬鹿なのかは知らねぇがーー」
釘崎の左目は、視力を失ったまま、戻ってはいない。が、血の赤に染まったその瞳には、魂の輪郭が視える様になっている。
(全部で4人。待ち伏せの非術師……)
呪霊操術の確保には呪術師を、そしてこちらの足止めには武装した非術師を。
そう考えるのが妥当だろう。
「カタギが首突っ込んで良いヤマじゃねぇんだよ。呪われる覚悟は出来てんだろうな……」
呪力を漲らせた金槌を釘崎は構えた。