if呪術 ネット意見取り入れ小説バージョン   作:パワーボム

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少し間隔が開いてしまいました。

少しリアルが繁忙期なのでアップが遅れると思いますが、エタる予定は無いです。


【オリ主注意】釘崎After⑨呪術師

『非術師が呪術師と戦う際、最も警戒するべきは式神を使う術式よ』

 

『なぜそう言い切れる? 私達には、クギサキの方が余程理不尽に思えるけど……』

 

ティアが聞き返すと、釘崎は気だるそうにライフル弾を手で遊ぶ。

 

『式神は呪霊と同じように非術師には見えない。見えないものには対策のとりようがないでしょう?』

 

『確かに。ならMrs.は、俺達に何を望んでいるんですか』

 

ミックは車を運転しながら尋ねる。

 

『式神使いだろうと他の術式だろうと、ある程度の距離を保てば非術師でも十分に呪術師を殺すことは出来るわよ。あくまでもその選択肢の中で“最も注意するべき術式”は式神だって言ってるだけで』

 

自身の呪力を込めたライフル弾を釘崎は、ミックに投げ渡す。

 

『策なんて考えなくていい。私が釘崎組に戦えっつう相手は精々3級〜準2級までの範囲で考えてるから』

 

『……その等級の範囲なら、どう立ち回るのが効果的なんだ?』

 

ハリソンが言う。

 

『近づかせない。近づかない。その1点が全てよ』

 

『なんだそりゃ』

 

アレックスは肩をすくめた。

 

『あんたらの何時も通りのやり方でいい。それが一番効果的。ただ自分自身の中で呪術師を怪物だと捉えないこと、精神的な呪縛さえなければ“あなた達”は十分に戦える。呪詛師なんて弱い者イジメしかしてこなかったゴミばっかりだから、まさかプロが乗ってるなんて考え最初からないわよ』

 

2発目の弾丸を、釘崎はアレックスに投げた。

 

『それと、ひとつ……これは私が個人的に聞きたいことだけど、答えてくれる?』

 

『急に下から来るな、怖えだろうが』

 

釘崎の反応に、アレックスは顔色を変える。

 

『前の仕事、あんた等がフランス経由で参加した場所ね。そこで仕掛けた側と、仕掛けられた側……双方を知ってる中立の傭兵として、武力ナシの話し合いで、手を繋げることがあると思う?』

 

『ウクライナでのことなら有り得ないわ。もうそういう戦場じゃなくなってるから。クリミアからそうでしょう?』

 

ミックは応えた。

 

『……そうだよな。普通に考えたら、自分の国に人殺しに来たやつなんて呪うよな』

 

釘崎は次のライフル弾を弄りながら、呟いた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

カーチェイスが動き出す。

 

呪術師を殺す場合、呪いで殺さなければ死後呪霊となる恐れがある。

 

それを念頭に置いた上で、3人の傭兵は銃を構える。

 

「いい、クギサキの話が本当なら相手は弱い者イジメ限定の素人。なら何が一番効果的?」

 

釘崎の居なくなった助手席に移ったミックが尋ねると、ハリソンとアレックスは、身体を後部座席に隠す。

 

「ハードラックだな」

 

「同じく」

 

「なら、それでいこう」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

前を行くジープが速度を上げる。

 

「はーあ、マジ疲れんだけどぉ」

 

江藤麻耶はぼやく。

 

呪詛師団体Q、大蛇と同様、麻耶にとってはどうでもいい存在だった。

ただQの活動を裏で支援していた旧保守派が実父で、その繋がりのせいで、死滅回遊後、日本から出ていく羽目になった。

 

(バカ親父がのめり込んだ糞煮込み。そんなのどーでもいい)

 

その父親も、大蛇が半殺しにしてからは何処かに消えた。

 

(野垂れ死んでよ〜がアタシにはかんけーないし)

 

それよりも、呪霊操術を売り飛ばした後が大事だ。

宝石も、エステも、何もかもし放題。

 

「さっさと終わらせよーっと……今日の一曲は何にしょっかなー」

 

遠吠呪砲。

自らの呪力を声に乗せる摩耶の術式は、ある程度の物体であれば固有振動を合わせ破壊することも、そのまま呪力を放つことも出来る。

 

「きーめた♪ きゃりーのーー」

 

歌を歌おうとした瞬間、カランという音と共に、缶のようなモノが前を行くジープから投げられた。

 

(あ?)

 

意識が向いた刹那にスタン・グレネードの閃光と音が、摩耶の視覚と聴覚を壊す。

 

(なに? なに? なにーー)

 

パニックに陥った車のタイヤが、銃声と共に破裂し、操縦を失った車が、側溝に落ちて木にぶつかる。

 

エアバッグが開き、顔面を座席と挟み撃ちにされる。

 

「ーーーー」

 

自分の声が聞こえない。呪力で衝撃は防いだハズだ。

 

(クソ! クソ! 糞っ! 大蛇は何やってる! 私がなんでこんな目に合ってる!)

 

腸が煮えくり返る。呪力が強まると同時に、視界から少しづつモヤが晴れてーー。

 

「は?」

 

止まったジープを盾にするように、4つの銃口が弾丸を放った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「狙いはタンクよ!」

 

パン。パン。パン。

 

嘘のように乾いた銃声の一発が、車のガソリンを爆発させた。

 

「…おいおい。まじかよ……」

 

「ごロズ! ォマェラ! 呪い殺してやるーー」

 

這い出した女に、アレックスは銃口を向ける。

常人であれば車の爆発に巻き込まれれば車体同様バラバラになる。

原型を留めている時点で、非術師と呪術師の身体能力の差を実感するには十分だった。

 

しかし傭兵としての動作はスムーズに……4人は釘崎から渡されたライフル弾を装填する。

 

「呪いを祓えるのは、呪いだけ。悪く思わないでね」

 

再び、乾いた銃声が鳴った。

頭を撃ち抜かれた呪詛師は、悲鳴を上げることもなく息の根を止めた。

 

「……こっちも終わったみたいね」

 

「! く、クギサキ…!」

 

後ろから声をかけられて、ミックは驚き振り向いた。

 

「呪術師のオリンピック参加は禁止したほうが良さそうだな」

 

ハリソンは冷や汗を流しながら言った。

 

「こっから先は私一人で動く。あんた等は全員退避。できる限り離れなさい」

 

「……そうさせてもらうわ」

 

「ん。プロは聞き分けが良くて助かるわ」

 

釘崎はジープに乗り込んで、すぐに窓を下ろした。

 

「最悪巻き込む。その時は呪わないで頂戴ね。じゃ!」

 

手を振って釘崎は車のアクセルを踏み込んだ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

吐き気と、目眩と、そして痺れ。倦怠感。

 

輝沙は自らが棄てた両手足を薄い鉄で覆い立ち上がる。

 

「はぁ、げほっ、んっ……」

 

すぐに倒れ、嘔吐する。

 

「鉄を操る術式か」

 

ボルフは輝沙を見下ろした。

 

「針鼠っ」

 

苦し紛れの鉄槍を、ボルフは呪力で受け止める。

それは御三家秘伝、落花の情と同じ動きだ。

 

「手足を切り落とし……反転術式を使ったとしても、その被曝では恐らく助からない」

 

実力の差を見せた上で、ボルフは目線を輝沙に合わせる。

 

「これは“縛り”だ。これ以上何もしないのであれば、即死を約束しよう」

 

「……シン・影流、簡易ーー」

 

輝沙が簡易領域を張るよりも素早く、ボルフは簡易領域を展開させた。

 

「なぜ、そこまでする必要がある」

 

ボルフは輝沙の鼻血を自分の服で拭った。

 

「呪霊操術が今の日本呪術界に於いて重要な事は理解する。が、キミが苦しむ理由として十分な存在なのか?」

 

「あなたこそ…なんで……こんな、事を聞くんですか」

 

「呪霊操術を持ち帰えば、自国に対して“どれほど不利な条件であろうと即時停戦をする”。私がここに来たのは、あの男との縛りを果たすためだ。喩え、どれほど愚かだとしても、私の故郷を救うには他に方法が無かった」

 

輝沙はボルフの眼を見た。

そこにあるのは、確固たる決意。それは輝沙の知る呪術師たちと同じ瞳だった。

 

「呪霊操術を戦争に利用しない事も神に誓う」

 

(ああ…そうか。この人は……間違いなく呪いを祓う呪術師だ)

 

輝沙は思った。

 

「わたしが…わたしが……苦しむのは、自分のためです」

 

だから輝沙は偽らなかった。

 

「呪霊操術を持つ…箭島勝には……秘匿死刑が下された…でも、あの人は、普通の人だから……」

 

輝沙は血を吐いた。

 

「殺す…覚悟もしています……他の国の……呪術師に殺させる覚悟もしています……でも、わたしは、わたしの苦しみを選んだ。まだ、繋がっているのなら……知らなくても、箭島勝には、普通に生きて欲しい……話を……したから……貴方と同じ、わたしも呪術師だから」

 

呪いを祓う。生かされた命をどう使うのか、庵歌姫も、釘崎野薔薇も、わたしがどう生きるのか決して強制しなかった。

 

「精製鐵術っ!!」

 

輝沙は僅かに動く様になった右手に鉄の刀を握り締めた。

 

「そうか……Чернобог(チェルノボーグ)」

 

ボルフが呟き、黒いマントが現れる。

 

『 желаю вам спокойной ночи』

 

マントから聞こえる囁き声をーー輝沙の制服を釘が貫き、少女の身体を射線上から退かせた。

 

「呪術師か」

 

ボルフは振り向いて釘を手で打ち払う。

 

その人の姿に、輝沙は涙を浮かべた。

 

「よく頑張ったわね。テッサ」

 

「はい! 釘崎さんっ!」

 

「後は私に任せなさい」

 

釘崎の双眸が、ボルフの双眸と向き合う。

 

互いの力量を瞬時に理解した呪術師の呪力がジリジリと火花を散らした。

 

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