if呪術 ネット意見取り入れ小説バージョン   作:パワーボム

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前回の続きです。
宮濔羅(クビラ)の能力は原作の津美紀(万)から発想したものです。



伏黒VS津美紀〜式神調伏

魔虚羅を金剛力士像と喩えるならば、宮濔羅は女性の似姿を取っていた。

黒髪は長く白い体躯と羽衣を纏う。見るものによっては慈悲深い聖女に、またはその対称となる不気味な魔物のように映るだろう。

 

「断て」

 

津美紀が言う。

宮濔羅の頭上の法輪が廻る。咄嗟に伏黒はしゃがみ込む。

 

音。光。大気。目に見えぬ何らかの力が生じる。

呪い。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーカンッーーーー→

 

乾いた音に遅れ、四方のビル街が崩れ落ちる。

 

(なんだこれはーー)

 

呪力による斬撃を連想した伏黒だが、即座にそれを否定する。

残穢を感じることの無い呪術はあり得ない。どれほど呪術の深淵を覗いた者で有ろうとも、ぬかるみを踏めば足跡が残る様に、呪力の起こりは必ず有る。

 

五条悟の六眼の様な目が無くとも、まして津美紀はこれまでの式神を顕現させる度に、伏黒にも感じ取れる残穢を生み出していた。

 

「焼け」

 

次なる言葉に伏黒は即座に鵺を呼び出した。

法輪の回転と共に燃焼する物など存在しないビルの屋上に一瞬にして火の手が上がる。

 

広がる呪力の残穢。

刹那、気を取られた伏黒を鵺ごと宮濔羅が蹴り飛ばした。

 

凄まじい脚力に全身が砕け散りそうになりながら、アスファルトの上に叩きつけられる。

 

鵺をクッションにしていなければ、今の一撃で終わっていただろう。

折れた脚を引きずるように、伏黒は何とか身構えた。

肋骨が肺に刺さり息が苦しい。空気に窒息し、溺れ、藻掻くように血を吐いた。

 

「無様ね。恵」

 

見下す様に言い放つと、津美紀は宮濔羅と共に降りてきた。

ビルの瓦礫には隠れ潜んでいたであろう泳者の死体がその臓腑と血肉を散らばらせていた。

 

「潰せ」

 

宮濔羅が腕を上げ、法輪が動く。その瞬間、呪力が起こる。

伏黒は頭上に生じた力場から逃れるように、玉犬・混に自身を運ばせた。

 

「ぐはァ…はぁ、くっーー」

 

出血の混濁。全身の痛みの中で、少しずつこの式神の能力が見えてくる。

 

「……満っ、象!」

 

玉犬を消し、象の式神の放水が宮濔羅に迫る。

 

「防げ」

津美紀の言葉に能面の式神は法輪を廻し、満象の水は速やかに凍結され霧散する。そこに残穢は無い。

 

(この式神は法輪を廻す事で汎ゆる事象を再現または具現化させる)

 

それが伏黒の分析だった。

 

(再現に呪力は生じないが、具現化には呪力が生じる)

 

最初の切断の際に津美紀が選んだ言葉は“断て”。

それは言葉に呪力を込め、対象に任意の行動を取らせる狗巻の呪言に近い性質なのだろう。

座れと発する事に呪力は宿るが、座らせる行動自体に呪力は宿らない。

津美紀がもし“切れ”と言葉を発していたのなら、恐らく宮濔羅は呪力を生じさせながらそれを実行しただろう。

満象の攻撃も“防げ”では無く“守れ”で在れば結界の様な方法を選択し、防御による呪力を発生させていただろう。

 

(……そうした意味では構築術式も近いのか)

 

術師のイメージにより、汎ゆる手を生みだす式神。

魔虚羅を後出しジャンケンとするのなら、先手を取る究極の先出しジャンケンとでも形容できるのかも知れない。

 

だが“死ね”といった呪禁に出来た事が実行できないのは、あくまでもこの式神を通じて事象の確定が成さる為だろうと伏黒は考えた。

 

それはプラスにもマイナスにも振れる危うい天秤だ。

 

津美紀は術者として未熟故に、恐らく選択する言葉によって生まれる差違にまだ気がついていない。

 

津美紀がこの式神の能力を完全に引き出して居ないことは、伏黒にとってプラスとなる。

が、津美紀が思い付きで発した言葉が、伏黒自身にとって致命傷となり得るものか。果たしてその線引を引くには、呪力の起こりとは余りにもか細く拙い命綱でしか無い。

 

気付きが与えるものは必ずしも正解とは限らない。手札を切り間違えれば、待つのは確実な死であることを伏黒は理解した。

 

津美紀の言葉の意味を瞬時に理解し最適解が打てなければ、容易く切れる表裏の繋がりは、今の伏黒にとってはマイナスでもあった。

 

(話し合えば変わったのか。気がついていれば……気が付かないフリをしなければ……オレがーー)

 

式神を通じて投げかけられるもの。

(だが…それでも津美紀が投げかけてくれた言葉の全てが嘘だったとしても……救われた)

 

不平等に呪い。呪われるしか無い現実に向き合うために。

伏黒は両手を合わせた。

 

「穿て」

 

(これは賭けだ)

 

宮濔羅の法輪が廻る。宮濔羅の呪力が迸る。矢の様な光の線。

 

十種影法術の式神の調伏は独りで行う必要がある。仮に他者と協力し、式神を破壊したとしても、呼び出すことは叶わない。

孤独に影と向き合う必要があるこの儀式に唯一の例外として術者に与えられる“特権”がある。

 

「円鹿ッ!」

 

調伏の為に呼び出した鹿の式神が伏黒の前で砕け散る。

 

影を従えるために“十種影法術の式神”は全ての調伏に利用できる。

 

「来いっーー円鹿っ!」

 

伏黒の影から現れた式神が、円を発生させる。

反転術式による回復が、術者の傷を癒やす。

 

「オレは…もう投げ出さない。お前の全てを受け止める」

 

「そう。じゃあ死んで」

 

自身を呪う津美紀の言葉から、伏黒は目を逸らさなかった。

 

 

 

 





前作のあらすじバージョンでも書きましたが
十二神将がマコラの元ネタなので、他の異界神将も出たら格好いいかなと思いました。
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