if呪術 ネット意見取り入れ小説バージョン   作:パワーボム

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乙骨After2話。

乙骨の本格参戦+今後の呪術高専を背負って立つ若者との交流回です。


【乙骨After】継ぐ者たち①

夏の砂浜を照りつく太陽が眩しく輝く。

 

乙骨憂太と対峙した3人の呪術師のうち、まず2人が動き出す。

 

「蜘蛛糸(ちちゅし)術、投(エン)!」

 

呪術高専3年。1級術師、平原翔香。

2年の時より伸びた身長は170。女子にしては大柄な体格。ゆるふわツインテールの茶髪が靡き、手の平から高速で撃ち出された蜘蛛の糸が乙骨の腕に引っ付く。

 

(なるほど。強度は以前より上がっているけど)

 

ぐっと糸を握り、乙骨は力任せに振りかぶる。

しかし辿る糸は素早く切れ、反動で乙骨を中心にぐるりと回る。

 

 

(このまま糸が絡まれば、相手の身動きを封じれる。去年の課題は克服できたみたいだね)

 

乙骨は握った刀の刃筋を立て、蜘蛛の糸を切断する。

 

「佐山っち!」

 

「おう!」

 

体勢の乱れを逃さずに2人目。

同じく3年。1級術師、佐山平造。角刈りの少年が持つのは結界術をより強固な物として使用できる生得術式、境界呪術の持ち主は拳を結界で覆い、乙骨に殴り込む。

 

(体術を鍛えたようだけど、それだけじゃ武器としては不完全だよ)

 

乙骨は刀を捨て、佐山の拳を受けて流す。

 

当時の東堂葵に匹敵するほど鍛えた筋肉。しかしまだ高校生。

二、三の応酬の後、経験値の差は顔を出す。

ガードが甘くなった佐山の腹に向けて、今度は乙骨が拳を叩き込む。

 

(結界術の運用は守り一辺倒になってしまい攻め手を欠く)

 

「うっ……ぐっ、シン・影流ーー」

 

辛うじて間に合った手のひらで、乙骨の腕を佐山は掴む。

瞬間、乙骨は自らの腕肉に呪力の起こりを感じた。

 

(そうやって補うんだ。やるね)

 

シン・影流。簡易領域の必殺技。

他者の体内で簡易領域を生み出し、一撃必殺の奥義とする。開祖から失伝したそれを、佐山は再び再現する。

 

「領域展延」

 

それを防ぐ為、乙骨は呪術戦の極意の1つを切る。

 

「ずりぃ!」

 

「なら2対1っ! どいて佐山っち!」

 

翔香は四肢に蜘蛛の糸を絡め、2人の間に割って入る。

 

(糸を骨針にした簡易領域。これもよく考えられている)

 

簡易領域と展延では、性質上展延に分がある。

術式を中和するという性質、そして基礎的なバフの幅も。

 

(糸に簡易領域を纏わせることで、術式の中和を遅らせつつ呪力強化のバフを受ける……ただし難点は)

 

「はぁ…うりぁ!!」

 

少女が額に汗を滲ませたのは、夏の為だけではない。

術式と簡易領域の維持を同時に行うことによる呪力消費は、翔香のスタミナをまたたく間に奪っていく。

 

乙骨は佐山が援護し難い様に、翔香を盾にしながら立ち回る。

 

(短時間とはいえ展延に匹敵する効果を発揮できるなら、差し引きはプラス)

 

「けど、そこから先が難問だよ」

 

乙骨は展延を止め、拡げた簡易領域に翔香と佐山を入れる。

呪力量に圧倒的な差がある以上、展延による術式の中和よりも簡易領域による自己強化の方が有利に働く。

 

加えて、佐山の結界術は、同じく結界同士の競り合いに関しては有利を取れる……が既に結界に入れられた状態。有利を取られた状態であれば、先ほど見せた一撃必殺の発簡易領域を発生させるのは至難の技となる。

 

「ここ一番だッ! 芳崎ッ!」

 

「!」

 

これまで距離を取っていた最後の生徒……芳崎日和が掌印を結ぶ。

 

「領域展開」

 

持水合掌を構えた少年の足元から、心象風景である草原が広がってくる。

 

京都校3年の1級術士。

後に束ねた髪が逆立ち、目鼻立ちの凛とした雰囲気をより際立たせる。

 

「葬蟲蠱毒(そうちゅうこどく)」

 

術式自体が領域とセットになったその能力は、領域内に捉えた虫を使役する。

 

人体に対し直接的な攻撃能力を有して居らず、術式の特性を似る呪霊操術や、黒鳥操術に比べ、脳の構造自体が単純な虫では、自死による呪力制限の解除も文字通り“蚊”ほどの価値も持たない。

 

(非力かつ無害。それ故に)

 

真価は別の部分に有るにせよ、領域としての展開の速さ、綱引きの強さは座殺博徒に匹敵する。

 

その領域を日和は後出しする事で、乙骨の広げた簡易領域の範囲を即座に覆う。

 

必中する対象は虫。人に対して行う必中効果よりも情報量が少ない分、術式効果を及ぼすのと同時、領域展開である葬蟲蠱毒は、簡易領域等の結界術を“一時的に解除”する。

 

ひとりであれば、術式の焼き切れた瞬間に再度簡易領域を貼り直せば終わり。だがーー。

 

スタミナの切れた翔香が、膝を折る。

残る佐山は、呪力を纏った拳を乙骨に振りかぶる。

 

「残念。こっちも同等の条件だよ」

 

伸び切った腕を躱し、乙骨はその首筋に当身をする。

くらりと、倒れた佐山の体躯に隠れて、刃が草原から突出した。

 

「あ……」

 

不意を突かれ、ひとふさ、乙骨の髪が切られる。

 

翔香の手に一本の細い糸が草むらを縫って掛かっていた。

 

「やってくれたね。合格だよ3人とも」

 

乙骨が手を叩くと、領域を解いた日和はへにゃへにゃと砂浜にしゃがみ込んだ。

 

「まじ上手くいくと思わんかったと! こんなん命いくつあってもたりんばい」

 

「いいっしょ足りたんだから。つか、乙骨さんに術式使わせてねーっての。恥じたほうがいいんじゃないの。あーっ!次は絶対使わせるっ!!」

 

「翔香の言い分は置いておいても、折角特別講師として、特級術師に相対したんッスから。俺らもっと学ぶ部分も多いはずッス」

 

『なら3人は今回の模擬戦の課題。それぞれシュミレーションをまとめて提出するように』

 

ノイズ混じりの声に、生徒たちは姿勢を正す。

 

『今日は都合をとってもらって悪かったよ。憂太』

 

「狗巻くっ……狗巻先生からの相談なら。快く受けさせてもらいますよ」

 

乙骨は旧友と握手すると、笑顔で答えた。

 

 

 




次回は京都校との交流戦の変化、呪術高専が抱える問題点をベースにした話になる予定です。

テロリスト共はそこに絡んでくる形になるかな?

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