次回からバトルに入れそうです。
作戦会議を終えた乙骨は、真希とパンダと共に狗巻のあとに続く。
カツカツと足音が庁舎に響く。
『憂太にはこのまま成田経由でソウルへ向かってほしい』
「それは危険じゃないの?相手を考えたら、民間人を巻き込んでテロを起こす可能性は否定できない」
「同感だな。寧ろ、渋谷事変の時のバカ目隠しと同じ。憂太の足手まといを増やすにはそれが一番効果的だ」
真希も乙骨に賛成する。
『それに関しては手を打ってある』
「やあ。話はまとまったようだね」
外に出た4人を待っていたように、黒塗りの高級車にもたれた冥冥が手を上げる。
「冥さん? なんでここに」
「話は聞いたよ。中々に面白いことになっているようだね」
「こんなこと……別に面白くありませんよ」
冥冥の言葉に乙骨は眉をしかめる。
一般人の犠牲者を大勢出した今回のテロを面白いと感じる感性は、少なくとも乙骨は持ち合わせていない。
「まあ。言いたいことは分かるよ。私が手を貸すのは、今回のテロが一億呪霊同様、貨幣の価値を無意味な物にする可能性があるからだ。ビジネスはそれを受け入れる社会にのみ存在するからね」
冥冥が電線に止めていた烏を飛ばす。
パンと手を叩く音と共に、入れ替わった東堂が現れる。
「キャッシュで100万ドル。公安経由で既に口座に振り込ませて貰った」
「フフ……確認した。さて今から大事な話をキミ達にはさせてもらう」
「大事な話ね。守銭奴の」
真希はやれやれと息をつく。
「今回のテロリスト……十二人の共同体の目的は不明だが、ひとつ確定していることがある」
「それは! 奴らが“特級術師”に向けて宣戦布告をしている。という事実! 即ち、連中は“目的なきテロが目的”ではなくーー」
「“テロの後何かを訴えること”を目的としたテロリストだということだ」
冥冥と東堂は互いに言葉を連ね合う。
「だからこそのアドバンテージ……利用しない手は無い」
冥冥が手を叩くと車のドアが開き、ノートパソコンを持った憂憂が現れる。
そのまま憂憂はパカッとモニターを開ける。
「街……アメリカか?」
「それに…これ、まさかーー」
ワシントン、ダブリン、ソウル。
テロの標的と想定されている3つの都市の映像がそこには映し出されていた。
「ご推察の通り。姉さまの烏からの中継です。既に観戦チケットの手配も進めています」
「観戦ーーッ」
乙骨は頭に血が上るのを感じた。
「見世物にするつもりですかッ! このテロをッ」
乙骨は思わず冥冥に掴みかかる。
「そうだよ。それが最善だからね」
「最善って……」
『十二時間。それだけの時間で、これら三都市の全ての人間を退避させることは不可能だ。憂太』
「狗巻くん……でも! 一般の、普通に暮らしている人は犠牲にいいの! それじゃあ……あ」
(そうか…そういうことか)
「気がついたようだね。それより手をどけてもらえるかな?」
冥冥に言われ、乙骨は頭を下げる。
「すみません。冥冥さん」
「テロリスト共との戦闘……バカ目隠しと宿儺の時のようにはできねぇ。ならフィールドはコッチが決めちまうって訳か」
「その通りだ。既に各国に通達。一部地区の避難を開始させている。ただしーー!!!」
東堂はスーツを筋肉の隆起で破る。
「お前たちは、チャンピオンッ! 敗北はその簒奪を意味するッ! 呪術テロの成功は、そのまま日本の国際的な立場を危うくするだろうッ!」
「はーっ! 大変なもん背負っちまうなぁ! お二人さん」
真希の手に捕まったまま、パンダはクワッと目を開く。
「お前なぁ、他人事じゃねぇだろ」
呆れたように真希はため息を付く。
「これが打った手で良いんですね。時間は奴らが決めた、だから場所はこちらが決める……」
「乗ってくるかは正直わからん! しかし、乗らなければテロは正当性を失うことは間違い無い。そうなれば、事は日本だけの責任ではなくなる」
「火蓋はヨハネスブルグですでに切られた。十中六、七かな? 私の所見を述べるとすればだけどね」
「分かりました。兎に角、僕たちが負けなければいい……ということですね」
「そうだ。それが一番話が早い」
東堂の言葉に納得して、乙骨は手に力を込める。
「ーーもう! 消えたと思ったら……そのスーツ経費で落とせないよう、所長に報告しておくから」
「え?」
ポカンとした東堂を他所に、箒で降りてきた西宮は真希に名刺を渡す。
「……マリー・マクシミリアン? 誰だ」
「私の従姉妹。FBI所属の呪術師。呪霊担当だから、声かけておいた。向こうでの捜査と…テロリストとの戦闘のサポートをしてくれると思うから」
「ああ。あんがとな」
「無理はしないでね。パンダも」
「おう! 真希のお守りは任せろ!」
「おい……」
ぐっとパンダを真希は押さえる。
「さてと……話は以上だ。それから憂憂は敵にも似た能力を持つ者が居るという話だから、日本から動かすつもりはない。私の保険だからね」
冥冥は憂憂の頭を撫でる。
「姉さま……はいっ!」
『じゃあ、憂太は僕が空港まで連れて行くから。真希のことは任せました』
「うん。まあ……うん」
西宮は意味深に間を空けてから頷いた。
「つう話だ。おい憂太」
真希は拳を突き出した。それに乙骨も答える。
「負けないよ。絶対にーー」
拳を交わし合い、二人はそれぞれの道に別れていった。
次回は比較的早めにアップしたいのです……申し訳ない!