ナツム「ただいま~」
事務所に帰ってくると、電気がついていなかった。
が、人の気配は何となく感じていた。
ナツム「…」スチャ
警戒しながら銃を電気のスイッチがある方向へと向ける。
バァンッ!
このキヴォトスでは爆発なんて日常茶飯事。
なので建物の強度はかなり頑丈だ。
こういう風に銃で撃っても壊れたりは…しないはず。
ともあれ電気をつけることができたので部屋中を見渡す。
ナツム「…いないな。」
人の気配は感じるのにどこにもいそうな感じがしない。
???「やっぱりナツムはそうするよね。」
ナツム「!?」
背後から声が聞こえ、背中を押される。
その声が身近の人だと分かるまでそう時間はかからなかった。
ナツム「カヨコ…さん…?」
カヨコ「そうだよ。」
床に手をついた状態で俺はカヨコさんの方を向く。
その眼には、光が宿っていないように見えた。
ナツム「はは…めずらしいですね、あなたがイタズラをするなんて…」
カヨコ「イタズラなんかじゃないよ。」
ナツム「ゑ?」
その時、俺は後悔した。
何で天井に張り付いているムツキに気が付かなかったかを。
ムツキ「つーかまえた♡」
ナツム「ひでぶっ!!」
ムツキが俺の腹に着地した衝撃で、俺はついさっき飲んだ水を吐き出しそうになったが、何とか耐えた。
ナツム「なんだ…二段構えのドッキリか…」
カヨコ「だからドッキリでもないって。」
ムツキ「そーそー、ナツムだって心当たりがあるでしょ?」
ナツム「心当たり?なんのだ?」
そういわれて今日あったことを必死に思い返すが、見当もつかない。
カヨコ「はぁ…ほんっとうにどうしようもない。」
そう言って、カヨコさんは俺の近くまで歩いてくる。
俺の第六感が逃げろと危険信号を発しているが、ムツキが馬乗りになっているせいで動こうにも動けない。
何ならムツキが覆いかぶさるようにして俺の両手を掴んでいるので抵抗しても力不足が否めない。
ムツキ「必死に抵抗しててかわいいー♡」
カヨコ「今ナツムがつけているマスク…ナツムはさ、今日外で外した?」
ナツム「え?」
カヨコ「外したの?外してないの?どっち?」
ナツム「えっと…」
カヨコ「早く答えて。」ハイライトオフ
ナツム「外しました。」(即答)
カヨコさんが俺の顔の前まで近づいて質問をしてくるから、恐怖で脊髄反射の返答をしてしまう。
カヨコ「そう…それで、なにか言うことはない?」
ナツム「…申し訳ありませんでした。」
いつの間にかムツキが俺から降りていたので、すぐさま俺は土下座のポーズをする。
俺の体中からは冷や汗が止まらず、滝のようにどばどばと汗が流れていた。
カヨコ「…ふふっ」
ナツム「?」
ムツキ「あははははw」パシャ
何でカヨコさんが笑っているのかは俺には分からない。
ていうかムツキ、お前いま写真とっただろ。許さんぞ。
〇してやるぞ陸八魔アル。
アル「!!??」
なんか扉の向こうから紅茶(?)が流れ出ているけどそんなのは気にも留めず、カヨコさんが続ける。
カヨコ「まさかナツムが引っかかると思わなくて(笑)」
ムツキ「面白い写真いっぱい撮れたよーw」
ナツム「は?」
もうどんな状況か分からず、頭の中が?で埋め尽くされる。
宇宙猫さながらの顔になっていることだろう。
カヨコ「ごめんね、こんなことに付き合わせて。」
ナツム「…まぁ、新鮮な感じでしたよ。」
カヨコさんが差し出してくれた手を取り、立ち上がる。
先ほどムツキにのしかかられた痺れがまだ少し残っているのか、足が少し震える。
カヨコ「ほら、ソファに座ってて。」
そんな俺を案じてくれたのか、ソファまで肩を貸してくれる。
ナツム「なんか…すみません。マスクをとらないって約束したというのに。」
カヨコ「いいよ。仕方がない状態だったんでしょ?」
カヨコ「予備はまだあるからとってくるね。」
―――――――――――――――――――――――――――
カヨコ「…」
タンスに入ってあるマスクの予備を一つ取り出し、それに“とある”ものをつける。
それをナツムに手渡す。
カヨコ「お待たせ。銀行強盗ですでにそのマスクはバレてしまっているだろうから形が違うものを選んだよ。」
ナツム「ありがとうございます。…ていうか知っていたんですね、俺が銀行襲ったの。」
カヨコ「偶然…ね?」
ナツム「あの場に居合わせていたんですか…」
少し落ち込んだように見えた彼もまた、素敵だ。
カヨコ「大丈夫だよ。私たちは気にしないから。」
ナツム「俺のポリシーが許さんのですよ。」
カヨコ「ふふ、変なの。」
彼がマスクを懐に入れるのを見届けると、私はムツキと一緒に部屋を出る。
カヨコ「私はちょっとムツキに話したいことがあるから。」
ムツキ「じゃあね~ナツム。すぐに戻ってくるから♪」
ナツム「できればゆっくり帰ってきてくれないかな?」
ムツキ「あはは~、それはカヨコちゃんによるかな~」
バタンッ
アル(…意外と平和に終わったわね。)
カヨコ「…ねぇ。」
ムツキ「な~に~?」
カヨコ「あれ以上あの子に手を出さないで。」ハイライトオフ
ムツキ「う~ん、それはムリだよ~。」
カヨコ「そう…ならここで…」
ムツキ「やめておいた方がいいと思うよ。カヨコちゃんだってナツムの悲しむ顔を見たくないでしょ?」
カヨコ「…」
ムツキ「ナツムは誰かが傷つくことがいやだからね~。それになおさら私たち便利屋68のメンバーはね。」
カヨコ「…今は勘弁してあげるわ。」
ムツキ「ありがとうね~」
出来ればナツムの周りからは邪魔になりそうな子を先に消しておきたかったけど、ナツムのことを考えると…あの子の悲しむ顔は見たくないわ。
でも私にはこれがあるから…
いつでも見ているからね、ナツム♡
ムツキ「…あはははは。」ニッ
―――――――――――――――――――――――――――
ナツム「おっ、帰ってきた。」
2人が出て行ってからは俺はソファでくつろいでいたが、しばらくすると帰ってきた。
ナツム「なんの話してた?」
ムツキ「え~wそれ聞いちゃうの?デリカシーないよw」
ナツム「…そうかい。」
相も変わらずこいつのクソガキっぷりには少し腹が立つ。
まあいいさ。どうせこの鬱憤もすぐに気にならなくなる。
アル「…そうだわ!久しぶりにみんなでご飯にいきましょ!」
なんだこいつ藪から棒に。
全員でご飯に行くのは久しぶりかもしれないが、今この事務所に金があると思っているのか?
ナツム「行くにしたって金ないだろ。」
ハルカ「な、なら私が皆さんでお食事に行けるようにたくさんバイトをしますから…」
ムツキ「おっと~ハルカちゃん。自分の身は大切にしようね。」
というわけで食事はまたの機会に…
アル「お金ならあるわ!」
そういってアルは一枚の一万円札を突き上げる。
アル「今月の家賃の支払いの時に一万円だけ余ったのよ。」
あ~…
引き出す金額一万円分ミスってたか。
…まぁいいか。みんなで久しぶりの食事も。
カヨコ「で、どこに行くの?」
ムツキ「この前いった紫関ラーメンとかどう~?」
ナツム「紫関ラーメン?」
アル「そういえばこの前はナツムだけいなかったわね。」
そういや俺を除いて全員でラーメン行ったとか聞いてないような聞いた気がするけど。
また行きたいっていうくらいならうまいんだろう。
ナツム「じゃあそこに行くか。」