灼き焦がす日輪の炎刀   作:軋島枷臣

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プロローグ

「ガアァァァァァ!」

 

「はぁ...はぁ...!」

 

少年が弟を抱えて山の中を走る。その後ろからは額から角のようなものが生えた異形のものが追いかけている。その異形...ここでは(おに)と呼称しよう。鬼は極度に腹を()かせているのか理性を無くし、大きな岩やツタに躓きながら獲物を追いかける。

 

「うわぁっ!」

 

しかし足元が悪いのは少年も同じ。湿った苔で足を滑らせ、転んでしまう。

 

「逃げないと...はっ!」

 

再度走り出そうと立ち上がり目の前を見ると、屹立(きつりつ)した崖に行く手を阻まれる。暗い山の中、月光も木々に(はば)まれ前方が見えないまま走った結果だった。

 

「グルルゥ...」

 

「ひっ!」

 

後ろを振り返ると、あと数歩のところまで鬼が迫っていた。

 

「ガァッ!」

 

「っ!」

 

そして鬼は大きく踏み込み、飛び掛かってくる。せめて腕の中にいる弟だけでも、と腕に力を()め目をぎゅっと(つむ)ったとき―――

 

 

 

(ほむら)の呼吸 参ノ型 燚燚(いついつ)

 

 

 

―――眼前に真紅の炎が燃え上がった。

 

「...えっ?」

 

異変を感じた少年が目を開けた時には、鬼は灰となり消滅していくところだった。

 

「大丈夫か?」

 

どことなく先程の炎を彷彿とさせる髪色をした青年が、そう問いかける。

 

「は、はい...あの、ありがとうございます!」

 

「これが仕事だからな。どうってことない」

 

ケガがないことを確認した青年が納刀しながら頬を緩ませる。

 

「お名前を聞いても、よろしいでしょうか」

 

「俺の名前?」

 

立ち上がった少年が、見上げながらそう口にする。

 

 

暉暈縁優(てりくまよりまさ)

 

 

これは、鬼を狩る一人の男の物語である―――

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

「ん?」

 

日当たりの良い縁側で目を覚ます。

 

「...都合の良い夢だ」

 

腕を上に大きく伸ばすと、背骨がパキパキと音を立てる。

 

「ふわぁ~あ」

 

欠伸(あくび)をしながらゆっくりと立ち上がり、(そば)に置いてあった刀をとる。

 

「あら、もうご出立ですか」

 

「はい。よく眠れましたので。おにぎりとお茶、ありがとうございました」

 

「いえいえ。どうか、ご武運を」

 

切り火をしてもらい、藤の花の家紋の家を出る。しばらく歩くと、鎹鴉(かすがいがらす)が肩にとまる。

 

迦具土(かぐつち)、どうした?」

 

「胡蝶カナエカラ手紙ダ。ナニヤラ急ギノ用ラシイゾ」

 

封を切り要件を確認すると、そこには柱合会議への参席要請だった。

 

(まったく、俺は柱じゃないって言ってるんだが)

 

手紙を閉じて懐に入れながら、そう独り言ちる。

 

「行くか」

 

一言気合を入れて走り出す。青く澄み渡る空に鴉が一羽、高く舞い上がった。

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