灼き焦がす日輪の炎刀   作:軋島枷臣

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出発点

灰に帰す化け物を、ただ茫然と視界に収めていた。

 

「お前が戦ったのか」

 

特徴的な髪色の人が、俺に声を掛けてくる。

 

「その、出刃包丁で」

 

「...気づいたら体が動いてた」

 

「そうか」

 

そう言うとその人は俺の背中に手を回し、ぽんぽんと叩いてくれた。

 

「すまなかった。私がもう少し早く来ていれば」

 

「...ひぐっ」

 

もう、限界だった。

 

「かっ、帰ってきたら」

 

「あぁ」

 

「化け、化けものがいてっ」

 

「あぁ」

 

「お父さんも、お母さんも、お、お兄ちゃんもっ、食べられてっ」

 

「あぁ」

 

「そいつがとびかかってきたからっ」

 

「あぁ」

 

「斬ったけど死ななくてっ」

 

「あぁ」

 

「こ、怖くてっ、悔しくてっ」

 

「あぁ、もう大丈夫だ。その化け物は私が切った」

 

「うっ、ひっぐ、えぐっ」

 

その人は俺が泣いている間、羽織りが涙や鼻水で汚れるのも無視して、俺の背中を撫で続けてくれた。その人の手は大きくて、ごつごつしてて、不思議と温かかった。

 

「おじさん。あの化け物はまだいるの?」

 

「お、おじ...あぁ、おじさんはその化け物を倒す仕事をしてるんだ」

 

「俺も、俺にも、できますか」

 

しばらく泣いた後、赤い目を擦っておじさんに尋ねる。

 

「この子には才能が...いやしかし...どうしたものか...」

 

ぶつぶつとおじさんが何かつぶやいた後、ゆっくりと口を開いた。

 

「この仕事は危ない」

 

「うん」

 

「昨日一緒にご飯を食べた友達が、次の日に死んでいるってことも沢山ある」

 

「うん」

 

「訓練だって厳しい」

 

「うん」

 

「それでもやりたいか。日向に生きる人たちのために、己が身を闇に投じる覚悟があるか」

 

最後、ひときわ厳しく投げかけられた言葉に少し震えながら、俺は答える。

 

「お願いします」

 

その後、炎柱は当時のことをこう語る。

 

 

 

―――その瞬間、彼の目に覚悟の炎が灯った、と

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇

 

 

「ただいま帰りました」

 

「おぉ!帰ったか!」

 

「お帰りなさい」

 

玄関の扉を開けると、槇寿郎さんと瑠火さんが出迎えてくれた。状況を見るに、どうやら待ってくれていたらしい。

 

「まあ最終選別なぞまだ序の口だ!あまり調子に乗るんじゃないぞ!」

 

「こう言ってますけどさっきまで心配そうにウロウロしていたんですよ」

 

「おい瑠火!」

 

「ははっ。ありがとうごさいます、槇寿郎さん」

 

「お、おう...」

 

お礼を言うと、まんざらでもなかったのか急に静かになる俺の師匠。

 

「さあ、今日は合格祝いの御馳走です。もちろん、豚汁もありますよ」

 

「わぁ!ありがとうございます!」

 

「最終選別はどうだった」

 

「なんか手がいっぱいある鬼がいましてね...」

 

ほんと、この人たちと出会えてよかった。




〜戦国コソコソ噂話〜
縁優の先祖は生まれる直前に母親を鬼に殺されている
父親はその光景に絶望し、後に鬼狩りとなった
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