灼き焦がす日輪の炎刀   作:軋島枷臣

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弟子

「はぁ、はぁ、クソッ!」

 

必死に両の足を動かし、常人には決して出せない速度で()く駆ける。

 

(何なんだあのガキは!あのちっぽけな体で何をした!?)

 

俺は先程まで十数体の同類と一緒に、近くにある大きな館を襲おうとしていた。全員それなりに知性というモノをある程度持ち合わせている、人を喰らった鬼だった。そしてまさに今から山から下りんとし、先頭のヤツが雄叫びを挙げたとき―――

 

 

―――煌々と照り付ける真紅の炎が目に飛び込んできた

 

 

もう次の瞬間には、そこにいた半分のヤツらの頭が宙に舞っていた。そのまた次の瞬間、ほぼ本能と言っていい速度で逃げるという選択を俺が取った時、そのまた半分の鬼どもの首が()き切られていた。

 

(俺は鬼狩りを三人も喰った!だから分かる!あれ(・・)は次元が違う!)

 

石に(つまず)き、草に足を取られそうになりながら命辛々(からがら)に逃げる、逃げる、逃げる。

 

「逃げ切ったか...?」

 

そう呟き、首を後ろに回してみる。

 

―――俺が最後に目にしたのは、燃え盛る刀の切っ先だった。

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

「ふぅ...」

 

チン、と刀が納刀される音が響く。先程まで騒がしかったこの山も、騒音の元凶が灰と化した今では深々とした静けさに包まれている。

 

「帰るか」

 

長期任務の帰りに鬼を見つけその足で鬼を切ったので、早く休みたい。腰に差した刀を抑え、勢いよく走りだす。

 

「屋敷ハソッチデハナイゾ」

 

「...案内頼んだ」

 

別に方向音痴じゃねぇし。慣れないところで道わかんないだけだし。

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

「あ!縁優(よりまさ)兄さんが帰ってきた!」

 

「おーただいま。杏寿郎は何してた?」

 

「父上と稽古していました!」

 

「偉いなぁ杏寿郎は」

 

そう言って頭を撫でてやると嬉しそうに頭を突き出してくる。四歳下ということも相まって本当の弟みたいだ。

 

「帰ったか」

 

「槇寿郎さん」

 

我が愛弟を愛でていると、目の前で呆れたように労いの言葉をかけてくる現炎柱。

 

「ちょうど兄さんのことを話してたところだったんです!」

 

「そうだったのか?」

 

「兄さんは刀を一回握っただけで鬼を狩れるほど完璧に振るうことができたと!」

 

「それで調子乗ってるから鼻っ柱へし折ってやろうってな」

 

「帰宅早々酷くないですか?」

 

俺のお師匠様は少々厳しいのだ。まあそれは一年前救われた時から分かってたことだが。

 

「父上と兄さんの模擬戦、見てみたいです!」

 

「おいおい...俺は任務から帰ってきたばっかだぞ」

 

「お?逃げるのか?ん?」

 

「やってやろうじゃないですか」

 

その顔、思わず手が出そうになっちゃいましたよ。そう思いながらお互いに距離を取る。

 

「杏寿郎ー!合図頼むー!」

 

「分かりました!」

 

杏寿郎の木刀を受け取り、体の真正面で構える。頭の中から雑念を消し、力みを消し、思考を研ぎ澄ませていく。

 

「始め!」

 

そうして一直線に槇寿郎さんへと斬りかかった俺は―――

 

 

―――数分後、地面に這いつくばっていた

 

「はっはっはっはっ!まだ俺に勝とうなんて十年早いわ!」

 

「くそー!」

 

「兄さん惜しかったです!」

 

やはり現役の柱。(よわい)十一のガキじゃまだまだ届かない。

 

「槇寿郎さん」

 

「どうした?」

 

むくりと立ち上がり、真剣な声色で問いかける。

 

「炎の呼吸を使う時に、違和感があるんです」

 

「ほう、違和感だと?」

 

「はい。なんか違うというか、体がしっくり来ていないというか、そんな違和感を感じるんです」

 

「ふむ...一人として同じ人間は存在しない様に、全く同じ剣筋の者は存在しない。自分風に呼吸を変えて、新しい流派を生み出すこともザラにある。小さな箇所に少し変化を加えてみたらどうだ?」

 

「なるほど。ありがとうございます」

 

「兄さん!次は俺と稽古してください!」

 

「俺任務から帰ってきたばっかだからちょっと休ませて...」

 

こうして俺の何気ない一日は過ぎていく。




〜戦国コソコソ噂話〜
縁優の先祖は生まれようとしているときに母を殺された
しかしその家族に懐いていた山の動物は、裂かれた腹から見えていた赤子を山の麓に送った
そこで人々に拾われ、別の街に孤児に出された
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