チャンピオンのハルウララが勝負をしかけてきた!! 作:菊池 徳野
多分あの世界はサトノ(SE○A)が機械関連のシェアを握ってそうなのでこれはサトノのちから。きっとそう。
サトノのちからってすげー。
「…それで、私的に学園の機材を利用したことに対する釈明はあるか?」
中央トレセン学園理事長室。そこには普段小柄ながらも威厳ある態度で職員たちから信頼と畏敬の念を集めた理事長がいる。書類仕事や対外交渉など彼女の仕事は多岐に渡るが、今日の仕事は一際珍しいトレーナーへの叱責である。
「あれはあくまでウマ娘達の娯楽とシミュレーションパターンの追加であり、我々は付与された権利を行使したまでであると主張します」
「少し熱中して弄り倒した部分はありますが職務にも彼女らの成績にも悪影響は与えておりません」
「何より完成して間もないため生徒らに使わせていると言っても一部のみですし、時間制限もあります」
否、複数のトレーナーへの叱責である。その数なんと8名。チーム主任から個人トレーナー、補助トレーナーまで様々であるが、呼び出された割にその表情は揃いも揃ってふてぶてしい。
「承知!当然だろう。もしも我が校の生徒に悪影響を与えていたのならば呼び出しではなく査問会を開いていた」
そう。こんな大人数を呼びつけた割に糾弾するでもなく目の前にいる彼らをそのままにさせているのは、ここに集められたトレーナー連中はやる事はやっており、罪状らしい罪状が存在しないからなのだ。たづな曰く彼らは担当ウマ娘達からの評判も上々であったり、半引退状態のサポーターとして動く実力者であったりと割と覚えの目出度い輩しかいないのである。
さらには生徒達たちの間では理事長が問題視している彼らの行いを、新しい催し物の準備だろうと楽しみにしている節もある為真正面から怒れ無くなってしまっているというのもやりづらい。
「狡知!実に厄介!君達は職場をなんだと思っているのか!」
「お言葉を返すようですが理事長、イベント大好きな貴女が言っても説得力ないです」
「横暴です」
「自己分析甘いですよ」
「牛乳飲まないからイライラするんス」
そして何よりタチが悪いのが、こいつら全く悪びれていないのである。何ならこちらを子供扱いまでしてくる始末。本当にこれが生徒から尊敬の念を集めてやまないトレーナーの姿なのか目眩がしてきそう。
「うわーん、たづなぁ!」
「トレーナーさん。ここはあなた達の釈明の場であっておしゃべりする所ではないですよ」
「「「ごめんなさい」」」
「不愉快!!」
こいつら、たづなをヒエラルキーのてっぺんに置いている事を隠しもしない。
「しかし理事長。この計画については私の方から出した書類に判をいただいていますし、書いてある内容以上の事はしていませんよ?」
「承知!『新たなシステムを職員全員が容易に理解出来る様に有志による教育プログラムの制作を行う』という内容であったと記憶している」
「はい。『更には別途ウマ娘達へ提供する新たなトレーニング、娯楽、教育としてのシステムの運用方法の検討とプログラム作成』と」
壮年のトレーナーの言葉に荒んだ内心を落ち着かせて理事長として大人の対応をする。勿論理事長として事情は理解しているし、提出された書類には一度は必ず目を通している。
許可を与えた記憶だってあるし、何ならあのヴァーチャル機械を高齢のトレーナーや機械音痴の職員は上手く使いこなせていない事が分かっていた為、むしろ喜んで判を押したことだって覚えている。
だが大義名分があるからといって何をしていい訳では無い。
「欺瞞!だからと言って半年掛けてゲームを丸々1本作り上げるなど許される訳があるかぁ!」
「力作です」
「サトノのちからってすげー」
「この世界のVの技術の発展は目覚しいス」
「後進育成は自由時間が多いもので」
しかも理事長が私費で買った筐体に追加で積んだメモリの容量の8割以上を使っているのだ。素人仕事の癖に大作すぎるだろう。
「それで理事長。呼び出された以上、私達も理解しています。得体の知れない物に心血を注ぐ我々が職務怠慢であると言いたいのでしょう?」
「…そうだ」
「こればかりは言葉を重ねた所で水掛け論になります。百聞は一見にしかず。たづなさんに今日の理事長の予定は空けていただきました。一度実物を見ていただけませんか」
それは質問の形をした主張だった。無理やりにでも連れていくという意志と言い換えても良いだろう。
まさかたづなに根回しをされていたとは思ってもみなかったが、ここで頭ごなしに否定をするのは主義に反するというものである。
それに生徒達が楽しみにしているという点も気になる。
「承知!こちらとしても得体の知れないという理由で否定はしたくない。私は優秀な君たちの行いが学園の為、ひいては生徒たちのためになる行いだと信じたい」
「ありがとうございます」
「さすが理事長!」
「やっぱりうちのボスは最高やで」
ふざけた発言はしていたが、やはり緊張はあったらしく部屋の空気が弛緩していく。ワイワイと賑やかになるトレーナー達の姿に少しだけ意地の悪い言葉が漏れる。
「傾聴!当然不要と判断した場合減給や行動制限は免れない事を忘れないよう」
「安心してください。冗談じゃなく力作なんですから」
「操作方法含めた教育用のプログラムの方もちゃんと出来てますよ。ちょっと説明が固くなってるんで分かりにくかったら教えてください」
「ゴールドシップにテスターやらせろって言われても断ってきたんで理事長が初めてのプレイヤーッス」
「ぜひプレイして楽しんでください。理事長も気に入ってくれると思います」
「あくまで最終試作やから変更も受け付けるで」
と口々にトレーナー達から好意の言葉を向けられて、自分の悪感情が萎んで行くのを実感した理事長は、あれよあれよという間にトレーナー達に筐体に放り込まれてしまい、
「「「それじゃあ夢と冒険とポケットモンスターの世界にいってらっしゃーい!」」」
出てきたのは約二時間後、健康を考慮して設定した退出時間ギリギリであった。
「疑問!ぴかちゅうが進化しないのだが!?」
当然計画は改めて許可され、娯楽のひとつとしてポケットモンスターがトレセン学園に正式に採用されることとなった。
以上前日譚、終わり!
そんな訳でポケモン×ウマ娘という何番煎じか分からない作品です。ジム戦毎に所有ウマ娘を8人ランダムで選んで書けたらいいかなぁと思っています。