チャンピオンのハルウララが勝負をしかけてきた!!   作:菊池 徳野

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1D71=22 エルコンドルパサー(ウマネスト)

今回はエルでしたが新しくお迎えした子が選ばれた場合ストーリー読むのに育成しないといけないことに気づきました。やべぇ。


世界が震える瞬間を見たことはあるか

「なぁエル、君に頼みたいことがあるんだが」

「ケ?」

 

トレーナー室。

そこは学園より担当ウマ娘が決まったトレーナーに支給される個室である。大小様々存在するが、チームが大きければ大きな個室を。個人担当だと小さな個室を支給される。

中央トレセン学園では理事長の方針もあり、申請があれば特別に部屋を割り当てて貰うことができる制度が存在する。例えばタキオンのトレーナーは彼女のラボである理科室をトレーナー室に指定しているし、カワカミプリンセスのトレーナーは鉄扉の部屋を指定している。そのどちらも希望理由が『担当が他の子に迷惑をかけない為』なのは泣かせる話である。

 

さてそんなトレーナー室であるが、大凡のトレーナーは大学のゼミ室程度の大きさの個室を使用していることが多い。書き物机にソファ、応接用のティーテーブルと書棚、小さめの冷蔵庫がデフォルトで付いており、他にホワイトボードや下に座るための畳、サンドバッグなどを持ち込むことでトレーナー各自で個性を出している。

 

そしてそれはエルコンドルパサーのトレーナーも同じで、担当に触発されて買ってしまったプロレスマスクが棚に飾ってあるのを筆頭にブランケットや枕にもなるクッションがソファの上に置いてあったり、冷蔵庫には程々に辛いが目に入ったら失明しかねない程度のデスソースが常備されていたりと見る人が見れば「あぁ、ここはエルコンドルパサーのトレーナーの部屋なんだな」とすぐ気がつくような作りになっている。

ちなみにウォッカのトレーナーはバーカウンターを、デジタルのトレーナーは液タブ他画材を設置している。

 

閑話休題。

 

もはや第2の私室と言っても差し支えない程過ごし慣れたトレーナー室で放課後に茶をシバいていたエルコンドルパサーは書き物机に向かって書類を仕上げていた筈のトレーナーから急に出てきた言葉に目を点にしていた。

 

「まぁ無理にとは言わないが話だけでも聞いて欲しくてね」

 

エルコンドルパサーにとって頼れる大人の象徴であるトレーナーからそんな風に言われて、NOと言えるほど2人の絆は浅いものでは無い。

レースにおいては言うまでもなく、私生活においても全幅の信頼を寄せている人が頼ってきたのだ。ドンと来い、超常現象!である。

 

「構いませんけど、珍しいですね。トレーナーさんがお願いなんて」

 

いくらトレーナーさん相手とはいえ安請け合いはするものではないですよ、エル。と心の中のグラスが喋っているような気がしたが、考えるより先に口が動いたので仕方がない。トレーナーを前にしたエルコンドルパサーはそういうウマ娘だった。

 

「実は今他のトレーナー達とシミュレーターでプログラムを作っててね。テスターをお願いしたいんだ」

「テスター、デスか?」

 

はて、とエルコンドルパサーは首を捻る。そういうお試しは会長のルドルフがやるようになっているのではなかっただろうかと、以前滅茶苦茶頑張ったシミュレーターでの騒動の時のことを思い出す。

…なんか思い出してもキングが嫌な奴になっていた記憶しかない。あとゴルシ。

 

「今回作ったのは実はゲームでね。エルはウマネストでシミュレーターにも慣れているだろうし、ゲームの感想を聞くのにルドルフを頼るのもなんというか…向いてないかなぁと」

「なるほど」

 

確かにゲームの感想を聞くのにシンボリルドルフは適切な人選とは言えないだろう。何でも卒なくこなすだろうイメージはあるが、ゲームをやる姿を想像するのは少し難しい。何ならトウカイテイオーの方が向いているまであるだろう。

 

「そういう事なら任せてください!」

「そう言って貰えて安心したよ。最近はトレーニングに熱を入れていたから息抜きだと思って存分に遊んでくれ」

「早速今から行きますか?エルはいつでも準備万端デス!」

 

安請け合いしてしまったかと心の中のグラスに申し訳なく思っていたが、聞いてみれば問題などなかった。納得と危機管理さえ出来てしまえば、後は全力で取り組むのみである。即断即決即行動!誰よりも速く高く自由に!

 

「明日は休息だから明日にでもと思ったけど、エルがいいなら今からお願いしようかな。僕の方から言えるゲームの内容は道すがら話すとしよう」

 

やはり尊敬する人に頼りにされるというのは対等な扱いをされたようで気分も良い物である。心の中のマンボもそうだそうだと頷いている。

 

 

<エルコンドルパサーの調子が上がった>

 

 

「ゲーム自体はオープンワールドのゲームでトレーニングやリフレッシュも兼ねて徒歩移動がメインになる。とはいえ生き物とのふれあいがメインコンテンツだから場合によっては背中に乗って空も飛べたりする」

「ええ!?空も飛べるんデスか!」

 

俄然楽しみになってきたと心躍らせながらトレーナーと2人、まだ生徒が残っている校舎を歩いていく。いつもならこういう移動の時はエルコンドルパサーが率先して話題を振り、それにトレーナーが反応を返す事が多いが、今日のトレーナーは絶好調なのか言葉が途切れることが無い。

 

「あぁ。他にもゲームを進めていくと海の上を進んだりもしていくからできそうだなと思ったことは色々やってみるといい」

「なんか想像よりも凄いゲームかも知れませんね」

「特にエルには楽しんでもらえると思うよ。心が踊る冒険を期待してて欲しい」

 

そう言うトレーナーの顔はどこか満足げで、そのゲームにかけた本気度が窺える。元々喜んだり遊んだりする時は同じ目線で一緒になって付き合ってくれる人とは知っていたが、普段は落ち着いた人な為、こんないつになく子供っぽい姿を見てエルコンドルパサーは何だか得したような気分になる。

その時、ふと閃いた!このアイディアは(ry

 

「あれ?スペちゃんのトレーナーさん?」

「沖野トレーナーお疲れ様です」

「おう、お疲れ」

 

それはそうとなんだかフジキセキみたいな言い回しだなぁと余所事を考えていたので気づくのが遅れたが、シミュレーターの傍で作業をしているスペシャルウィークのトレーナーを見かけて、つい声をかけてしまった。

いつもの服だが見慣れぬ機材を着けているので気になってしまう。

 

「沖野トレーナーにゲームの話をしたら協力すると言ってくれてね。制作側で少してつだってもらってるんだ。今はモーションを記録させてもらってるところ」

「俺は立ったり座ったりするだけであんまり大変じゃないけどな。ま、どうせ手が空いてる時は暇だからなちょうどいいんだ」

「スペちゃん達はこのゲームのこと知ってるんデスか?」

 

この伸びてるコードはモーションキャプチャ用の装備なのかと納得しながら、新たに湧いてきた疑問をぶつける。何となくこういう楽しそうな雰囲気を察してゴールドシップ辺りが寄ってきそうなものだが。

 

「いや、知らん…と思う。ここに来てる事は言ってあるが何してるかは伝えてないな」

「情報管理は完璧にしてあるからたぶん何やってるかは生徒は知らないと思うよ」

「樫木のじいさんが目を光らせてるからな。流石のゴルシも正確な情報は掴めてないだろ」

 

そう言ってちらりと動いた視線の先を見遣ると現場の指揮を取る、50代くらいで灰がかった髪色の男性の姿が見えた。確かマチカネフクキタルのトレーナーだった筈だが、もしかして彼が中心となって動いていることなのだろうか。

 

「生涯現役とはよく言ったものだけど、本当に頭が下がるよ」

「宇津木だって色々やってんだろぉ?グラフィックとかかなり頑張ってるって聞いたぞ?」

「昔取った杵柄ってやつですよ。それにサトノのバックアップを貰えてるので、大体はサトノのちからです、っと。僕はエルをシミュレーターまで連れていくのでこれで」

 

おう。という沖野トレーナーの返事と振られた手を合図にエルコンドルパサーは蚊帳の外から引き戻された。流石のエルコンドルパサーといっても大人の男性の会話に混ざろうするほどお転婆ではない。シミュレーターで作業して回っている大人たちの姿に目移りしていたとも言う。

 

気分は親戚の集まりを部屋の隅から見ている子供だろうか。思春期真っ只中の彼女には少々荷が重かったということにしておこう。

 

「さ、シミュレーターの使い方は知ってるよね?今回はフルダイブタイプだから健康を考慮して2時間で強制的にログアウトするようになってる。まぁ一先ず1時間程度遊んでもらって、良ければ時間いっぱいまでお願いしたい。」

「はい!分かりました」

「途中で気分が悪くなったら教えて欲しい。最初に少し説明と大掛かりなムービーがあるから驚かない様に注意していてくれ」

 

そうした細々とした注意や説明を聴いて相槌を打つ。少し生返事になってしまうが、それもゲームへのワクワクだと理解しているトレーナーは嬉しそうに言葉を続ける。

 

「それじゃあ始めるよ。夢と冒険とポケットモンスターの世界にいってらっしゃーい!」

 

 

 

 

 

目眩しを受けたような感覚が落ち着いて視界が戻ってくると、そこは白く無機的な部屋の中だった。

 

「ポケットモンスターの世界へようこそ」

「ケ?トレーナーさん?」

 

そこには先程送り出してくれたエルコンドルパサーのトレーナーが立っていた。しかしその姿は普段見慣れているものよりもカッチリとしていて、何より見慣れぬ白衣を羽織っていた。

 

「僕の名前はユキナリ。みんなからはポケモン博士と呼ばれているよ」

 

たぶんそういう設定なのだろう。ゲームに自分を登場させるとは意外と入れ込みが強いらしい。そうなると沖野トレーナーもそのうち出てくるのかもしれない。

しかしポケモンというのはよく分からないが道すがら教えてくれた空も飛べる生き物の事だろうか?

 

「君の名前を教えてくれるかな?」

「エルコンドルパサー」

 

何だか初めて会った頃に戻ったみたいだと思いながら端的に答える。

 

「愛称があれば教えてくれると嬉しいな」

「エルデース!」

「うん、”エル”だね。いい名前だ」

 

今のが名称の登録だったのか、何となく話が進んだ感覚を覚える。するとその様子を見てか、トレーナー…もとい博士が何やらポケットから取り出して此方に見せるように手を向けてくる。

 

「エル、このボールを見て欲しい。これはモンスターボール。そして中には」

「わっ!」

『ぴか!』

「この子はピカチュウ。この他にも様々な生き物がいるが、僕たちは彼らのことをポケットモンスターと呼んでいる」

 

その手に置かれた紅白のボールが開いたと思ったらそこからサイズ的にまず無理だろう大きさの黄色い生き物が飛び出してきた。

ピカチュウと呼ばれたその生き物は目をぱちぱちと瞬かせた後、自身の持つ愛くるしさを全開にして此方に人懐こい笑顔を向けてきた。ふわふわな黄色の身体と赤いほっぺが実に愛くるしい。

 

「ポケットモンスター、縮めてポケモン。僕はそのポケモンについて研究している博士という訳だ」

 

はっ、と博士の言葉に我に返る、と同時にピカチュウはボールに戻されてしまった。

また会う機会はあるだろうが少しだけ名残惜しい。触ってみたかった…!

 

「空に海に大地に、そして僕たちの住む町に。時には宇宙や時空の狭間にもポケモン達は息づいている」

 

博士の言葉に連動するように白い部屋に映像が次々と写されていく。

大空を飛び回る鳥達。大地をかけるケモノ。海を悠然と泳ぐ魚。そしてそんな野生とは打って変わって、建設現場で資材を運ぶ生き物や綺麗な花を纏い踊る生き物たちの姿が順に映されていく。

 

「僕たちとポケモンは共存し共生し、家族やパートナーとして生活を送っている。」

 

圧巻の映像に目移りしていると、博士は一度言葉を区切って此方に話しかけてくる。

 

「しかし、ポケモンには未知の部分が多い。彼らは進化してその姿を変えるものも居れば、時には神のように僕たちには想像もつかない力を発揮する事もある。僕たち人間とウマ娘の身体能力に差がある以上にポケモンのちからは未知数だ。そこでエル、君にはポケモン達の研究の手伝いをお願いしたい。」

 

そう言うと博士はまたおもむろにボールを取り出すと今度は上空に向かって投げ始める。しかし今度はひとつではなく6つ。

 

「モンスターボールでポケモンを捕まえて仲間にすることでポケモンの生態を理解し、色んな人とポケモンバトルをしてポケモンの新たな魅力を見つけ出す。そういうお手伝いさ」

 

ゆらり、とエルの顔を炎の熱気が舐めた。目の前に現れたポケモンの一匹が炎を口から吐き出したのだ。

そのドラゴンの様なポケモンはただそこに悠然と佇んでいるだけだったが、エルは肌にひしひしとプレッシャーのようなものを感じていた。

ごくりと喉が鳴る。先程の映像が霞む程、博士の出したポケモン達は確かにそこに生きており、そして何より自分がこれから経験するだろう冒険がとんでもなく特別なものになるという確信を緩やかに噛み締めて、エルはひとつ身震いした。

 

「難しく考えなくてもいい。君は今から旅に出る。その最中に出会ったポケモンについて教えてくれればそれでいいのさ」

 

博士の言葉は耳に届いていたが、碌な返事もできないままエルは目の前にある光景に今度こそ釘付けだった。

 

「旅に出る前に僕の研究所に寄ってくれ。君の旅の支度を手伝おう」

 

「では、また」

 

 

 

再び視界が真っ白にホワイトアウトするのを体感して、ここがゲームの世界だったと思い出す。そうしてひとつ呼吸を整えようとすると今度は突然世界に色と音が戻った。

急な変化に目を細めると、どうやらホワイトアウトしたと思っていたのはスタジアムのライトだったらしい。よくある表現だと思う反面、突然の場面転換に動揺は隠せない。盛り上がっている周囲の様子をみるにスポーツかなにかの試合だろうかと頭を働かせるエルに、殴りつけるような歓声が響いた。

 

『ポケモンバトルもいよいよ大詰め!リーグ戦最終日に相応しいバトルが繰り広げられている!!』

 

実況音声が状況を伝える。試合に熱中する人々の歓声がエルの身体の中を反響するように聞こえてくる。 

 

『電気ビリビリエボルブバースト!!次のチャンピオンは俺だ!現在2位、若き稲妻スバル!手持ちは残り一匹だがどう攻めるか!』

「手堅く守るなんて性にあわないス!攻めて攻めて攻めまくる!」

 

『その静かなる炎に今宵も酔いしれさせてくれ!万年1位、最強ジムリーダーカシキ!手持ちは残り二匹と数の有利はあるが、既にポケモンの体力はギリギリか!』

「まだまだ若いやつらに負けるつもりは無いよ。運も実力も兼ね備えてこそのトップジムリーダーさ」

 

周りの熱に浮かされる様にスタジアムコートに走る稲妻を見遣る。

 

「行くッス、デンチュラ!」

「先手はこちらだ!ドーミラー!」

 

デンチュラと呼ばれたポケモンが飛び跳ねるように宙を舞う。相手を飛び越えて回避しようとしている様に見えたそれは次のトレーナーの指示によって動きを変えた。

 

「デンチュラ!ふいうちだ!!」

 

ギラリとその目を光らせたと思ったら、重力を無視したような動きで相手に躍りかかり振り下ろした脚と全体重をもって地面に叩きつけた。あれは避けられない。

 

『おーーーっと!!スバル選手の相棒デンチュラによるふいうちが決まったァ!ドーミラー懸命に起き上がろうとしますがこれは耐えられない!堪らずダウーン!!』

 

「よくやったドーミラー、派手に行こうかシャンデラ!」

 

最後の一匹になったからかデンチュラの活躍か、あるいは両方か。会場の熱気は最高潮に達しようとしていた。

 

『お互い1匹しか残っていません!今宵リーグ最終戦、両者白熱したバトルを繰り広げております!!』

 

「デンチュラ!テラスタルッス!」

「シャンデラ!ダイマックスだ!」

 

世界が揺れる瞬間、エルコンドルパサーの調子は絶好調を振り切っていた。

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

「そこデス、ホゲータ!ひのこ!」

『ホゲッ!』

 

ぽふっという可愛らしい音と共に吐き出されたひのこが対峙していた虫ポケモン――キャタピーを焼き尽くす。

キャタピーはたおれた。エルは虫取り少年との勝負に勝った。

 

「この勝負私たちの勝ちデスね!」

「うーん、相性最悪だよー」

 

はい賞金。と言われて受け取ったお金をしまってエルは虫取り少年と別れた。

 

「ホゲータ強くなりマスよ!目指すはチャンピオンデス!」

『ホゲ?』

 

ついさっき博士から貰った相棒のホゲータを連れて歩きながらエルは遠くに見える学園を目指す。博士に言われてまずは基本を学びに行くのだ。全ては自分もあんなカッチョイイ試合をするために。

レースもポケモンもより速くより前に。誰もエルコンドルパサーを止めるものはない!

 

「あっ!ピカチュウ!」

 

…なお、寄り道しすぎて結局学園に着く前に2時間の時間制限が来てしまったのは言うまでもない。

 

「トレーナーさん!タイプ相性教えてください!」




本当は最初のジム戦書きたかったんですがポケモンって言えば導入だと思ったのでエルコンドルパサーはジムリーダーではなく博士(トレーナー)と縁があることになりました。

エルのトレーナーさんは本名を宇津木幸成(ウツギ ユキナリ)と言い、他トレーナーから名前を理由に満場一致で博士役を押し付けられました。
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