チャンピオンのハルウララが勝負をしかけてきた!!   作:菊池 徳野

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リハビリを兼ねて早めに投稿。
書き溜めとか無いです。

今回の登場ウマ娘は
エアグルーヴ


初見で行き遅れそうとか思ってごめん

 むに……パチ。むに……パチ。

 

「ピィカピィカチュー」

 

 もちもちスベスベ、もふぱち。

 

「・ω・」

「ばちゅ」

 

 このシミュレーターは生徒達のやる気向上、精神的なリラックス状態を得る一助として生み出された。勿論それは詭弁であり目的の一側面でしかないだろう。

 

「ぐ……、ぬ。今度はボール遊びにするか?」

「ピカ!」

 

 確かにフルダイブ故の疲れない身体は走って跳んでも自分の限界を維持してくれる。それは即ち自分の行き着く先を頭に教え込むと同時に現実での一部フィードバックを可能としている。

 手元に現れた不審者から貰ったまん丸の人参カラーのボールをてもちのポケモンたちの方へ転がす。どうやらピカチュウは玉乗りに夢中なようで、背中にバチュルを乗せたまま器用にボールを操っている。

 ……ユキハミはどうやら追いつけないなりにボールとの追いかけっこを楽しんでいるようである。

 

「ピィカピッ、ピカ!?」

 

 調子に乗りすぎたのか勢いに巻き込まれてボールごと転がっている所もまた愛くるしい。バチュルは危機察知に優れているのかユキハミの背に飛び移ったらしい。そういや特性『むしのしらせ』だったな。

 

 人参ボールに巻き込まれて少し混乱しているピカチュウのそばに行き抱きあげれば、ボールの事など忘れたように頬を擦り寄せて甘えてくる。ぱちぱちと静電気が爆ぜる音がするが、ゲームの調整もあってかほぼ痛みは無い。

 

「私が、立派に育ててみせるからな……!!!」

「ピカ?」

「ばちゅばちゅ!」

 

 見た目重視で捕まえてしまった部分はある。しかしそれで愛玩動物のようにしてしまうのは競技者としてのプライドが許せなかった。何よりバチュルは戦闘というものに喜びを見出す質らしく、バトルになると任せろと言わんばかりに飛び出していくくらいである。

 

 おそらくイバラの道だろう。ピカチュウとバチュルはでんきタイプで技範囲が被りがちであるし、ユキハミは戦力として心許ない。しかも内2匹は自分の苦手な虫らしい見た目に進化するだろう事は想像に難くないのである。

 

「だが、私はお前たちのトレーナーだからな」

 

 女帝エアグルーヴ。トレーナーや後輩達の誘いを断り続けたものの、シンボリルドルフの鶴の一声には抗えず遅れてポケモンを始め、その後その愛らしい姿に秒で陥落しガッツリハマる。

 可愛らしさと触れ合いの際に感じられる心地の良い手触りに魅了された彼女のてもちは野生でも触れ合える範疇の大人しいポケモンが多い。

 

 後輩や同級生達には未だプレイしていないと思われている為、情報共有含め攻略情報をあまり仕入れないようにプレイしているが、己の杖にボソッと

「ジムにも行かずに雪山登り始めたのはエアグルーヴただ一人」

 と言われた事は根に持っている。だがユキハミに出会えた事は間違いのはずが無いため彼女の歩む道に過ちは存在しない。

 

「`・ω・´」

 

 ようやくボールに追いついたユキハミとてもちを抱えたまま震える主人を見ながら、相棒のベイリーフはにこにこ笑っていたという。ユキハミの進化はそう遠くない未来であることを知るのは彼女のプレイスタイルを知るトレーナーTAWAKEくらいのものである。

 

 あぁ、精神的リラックス状態が獲得される事など周知の事実であり、なんなら理事長自らそう証言している為議論の余地は無い。無いったら無い。

 

 

 

 

 

「ポケモンの動画が外部に流れていると?」

「うむ!」

 

 職権濫用、もとい可愛らしいお願いによって作り出された机の上のピカチュウのぬいぐるみを転ばせる勢いで机を揺らす理事長の手元には『峻厳』と書かれた扇子が広げられている。

 置かれた端末から再生されているのは確かにポケモンと戯れるトレーナー視点の動画であり、スマホロトムの撮影ではなく元からある視覚の記録から抜いたデータであろうことは明白だった。

 

「まぁ、扱うのは学生ですから遅かれ早かれと思っていました。それに協力会社の方にもそのリスクや周知の一環として利用する可能性があることは呑ませています」

「承知! だが、全てを容認し看過する訳にもいくまい」

 

 一応保護者や関係者には説明されているものの、教育機関にこのような娯楽が配備されていることを不用意に世間に知られるのはあまりよろしくないだろうし、当然、理事長としてもそれを踏まえた上でどうするのかを問うているのだろう。

 実際世間の反応としては興味と疑問が入り交じっており、新作ゲームかな? くらいの反応が多く、あまり注目されるような出処ではなかったからか中央トレセン学園の名前は見られない。それも情報源を調べれば行き着く情報ではあるが。

 

「考えられる手は2つ」

「うむ」

「ひとつは連帯責任であるとして罰則を設けポケモン自体を生徒から取り上げてしまうこと」

「む、まぁ分からなくは無い」

 

 先程とは違う形で眉間にシワを寄せる理事長には悪いがこの案を採用するつもりは毛頭ない。禁止にしたら少なくともエアグルーヴの練習効率は大幅に下がり、下手をすると全ウマ娘がやる気を無くしてしまい学園全体の不利益に繋がりかねない。とはいえ体裁というものは大切なので。

 

「もうひとつはこの際大っぴらに喧伝してしまう方法ですね」

「む! そのような事で自体を沈静化できるとでも?」

「まぁ、沈静化は無理でしょうがその方向を変えることはできます」

 

 偶に忘れそうになるがここは中央トレセン学園。優秀な者たちが集まる学び舎である。それはトレーナー達も言うに及ばず。

 

「ゲームの進行が早い者や攻略などゲーム自体に詳しい者を中心としてポケモンの紹介ムービーを作らせましょう」

「露呈! それでは態々我が校が生徒に娯楽を強要しているようでは無いか!」

「生徒協力の制作物の提示。無人島開拓よりは余程教育の場として適切では?」

「……」

 

 別に自分も無人島開拓や温泉掘りが何の役にも立たなかったなどとは思っていない。思っていないが世間がそれを知っても

「まぁトレセンだし」

 と理解を示してくれる以上、理事長が思うような事にはならないと確信している。正直ラーメンはどういう事かと思うが。

 

 どうせ批判が飛ばないとわかっているのなら、宣伝に利用した方が余程良いというのが制作陣含めたトレーナー達の総意である。

 

「それと並行してSNSの使い方の上手い生徒や芸術方面に才能のある生徒にポケモンと触れ合う動画や作品を流してもらい、それに世界観や設定、そしてどのようにウマ娘の役に立つのかといった事を織り交ぜてもらいます」

「理解、営利では無く飽くまでもウマ娘達の為になるものであることを前面に推していくということか」

 

 思案顔の理事長の姿に、気づかれないようそっとほくそ笑む。この時点で既に理事長はこちら側として考えを巡らせており、議論はとうの昔にプレゼンに変わっているのである。

 

「いえ、嘘はつきません。我々はこのデータを会社に売り利益を得ますから。当然世間にもそれは伝えるべきでしょう」

「意外! 何か策があるのか?」

「学園祭で一般の方を相手にポケモンのシミュレーターを開放します」

 

 そう、もとよりファン感謝祭の側面もある学園祭は入場に制限こそ厳しいものの家族を含む一般の方に向けた学園からの奉仕の面が強い。更にファン感謝祭と違って入場者の身元は明らかで、かつ綺麗な者ばかり。

 

「近くの小学校などへも今年は門戸を開きましょう。例年通り個人情報保護の目的以外の撮影や情報の開示は制限せずSNS等への投稿も同じように」

「ほう、なるほど」

「学園祭までの時点で情報は小出しにされている状態です。世間はその動向や詳細な情報を欲している。そこに一般の方から一斉に情報が溢れ生徒の協力によってできたものであるという情報も流れます」

 

 実際オペラオーやウララなど、その姿をネームドキャラとしてゲームに登場するウマ娘は多い。何より少しの時間では詳しい所までは調べられない為ジムトレーナーもウマ娘を採用しているというお試し仕様に差し替えてしまえば生徒協力の言葉も嘘では無くなる。

 

「そこに会社の方から一般向けのものを鋭意制作中であると発表してもらえば……トレセン学園は渦中を脱することでしょう」

 

 学園の中で消費されるいつかは無くなる手の届かないものから一転していつか遊べる物へと変わる。勿論いい評価が貰えると確定している訳では無いが、勝ち戦と言って差し支えないだろう。あのエアグルーヴを骨抜きにしたのだ。さもありなんと言うやつである。

 

 結局沈静化はしませんけど。という言葉を飲み込んでプレゼンは終了した。

 

「驚愕! 既にそこまで手を回していたとは! では君達に任せておけばよいと捉えて構わないな?」

「えぇ。協力会社の方にも既に連絡済みです。学園祭について理事長に動いていただく事にはなりますが……」

「承知! そちらの部分は任せてくれていい。生徒への周知は任せるとしよう」

「勿論ですとも」

 

 騙すつもりも貶めるつもりも無かったが、こうも綺麗に口車に乗せられると理事長が少し可哀想に思えてしまう。担当のエアグルーヴにあまり冗談や嘘が通じないので普段は誠実に生きているというのもあって胸が痛い。

 

 視界に映る、でん! と部屋の一角を占領しているシミュレーターの点検という名目で『そらとぶピカチュウ』の早期実装くらいはしてあげても良いかもしれないなぁ。と思考を巡らせたのが悪かったのだろう。

 休日にエアグルーヴが部屋の掃除をしている姿を眺めている間、ポロッとそんな情報を零したせいで担当から実装をせっつかれることになった。

 

 あぁ、たわけ。仕事は出来るが私生活は並以下の男。女帝の杖と言われているが、その実支え合って生きている周囲から結婚秒読みと思われている男。

 そしてエアグルーヴがポケモンと触れ合っている動画を流した張本人である。




たわけ多分こんなキャラじゃないよなぁ。
エアグルーヴの虫嫌い設定無視しちゃったなぁ、虫だけに(某ルナ)。

なお最後にバラしてますが記録データからスッパ抜いた大人(たわけ)による流出事件でっちあげでした。
VRを子供にさせるの目に悪いって聞くけどフルダイブならええやろというのがウチの設定。実在しないからどうとでも言えるけど実際どうなんでしょ?
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