異世界外交官の憂慮   作:酒ナマズ

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サンヴィアツィーア

 三日にしてホームシックとなった俺だったが残りの一週間と五日を耐え抜きサンヴィアツィーアへと到着した。砂漠とは聞いていたが前世のサハラ砂漠の様な全部砂って訳ではなく、どちらかと言うと荒野と呼ぶのが正しい感じの土地だった。

 よくもまあこんな場所で建国できたものである。大方侵略者から逃げ続けたらここに流れ着いたみたいな感じだろうが、当時の王には天晴れという他ない。

 

 そんな荒野王国の城門で少しの手続きをし、入国した。

 ちなみに御者とはそこで別れ出国まで別行動ということになり、馬も馬車小屋に連れられていった。

 街に入ると王国というだけあって荒野にそぐわない活気がある。道は一直線でその道に沿うように横に様々な店が建てられており奥にはお目当ての宮殿が待ち構えていた。ここがメインロードというヤツなのだろう。

 

 街を見回りたいという気持ちもあったが流石にブラムから殺されそうなので控えた。

 街を抜け城の入り口に辿り着くとアラブ系の服を着たおじさんが立っていた。

 「ようこそケイオス様。お待ちしておりました。大使館所属のカテム・マンテットと申します。貴方様が来るのを大変お待ちしておりました。」

厳しそうな顔をしており額は常に縦に皺が入っている。良い人なんだろうけど絶対この人の子供にはなりたくねぇ〜!って感じの人だ。

 

 「長い旅でお疲れでしょう。さ、中へ」

そのあとはトントン拍子に滞在する間寝泊まりする部屋に案内され、明日のスケジュールを確認してその日のお仕事は終了した。

 疲れていたのもあってすぐに部屋に戻り風呂に入りに行く。

 「いや〜しっかしまさか大浴場とかじゃなくて部屋に個別で風呂があるとは。荒野とはいえ腐っても王国の客人部屋、最高だわ」

まあ流石に暖かいお湯では無かったが、やはり誰かと共有の浴場より個人で入れる風呂の方が良いわ。あくまで俺の意見だが。

 さっぱりした所でタオルで体を拭き、白いバスローブを身に纏い習慣である日記を書くために机に向かう。壁の隅でライナが立っていたので

 「あ、ライナお疲れ様〜」

 「はい、お疲れ様です」

という簡素な挨拶をして机に向かう。

さーて今日あったことを書くか。と言ってもなにを書こうかな?とりあえずサンヴィアツィーアの事と、、、

 

 「いやなんでいるの?」

 「はい?」

いや怖っこの子。あまりにも自然に壁に立ってたからそこにいるのが普通みたいに勘違いしてもうたわ。しかも「はい?」だって?なに「何言ってんのコイツ」みたいな反応してんだコッチのセリフじゃい。

 「ライナさんの部屋あったでしょ確か。なんで俺の部屋にいんの?」

 「今回の任務内容は護衛でしょう?ならばケイオス様の部屋にいるのが一番です」

 

 おうおうそれっぽい理屈だけどそれ頭の良いプライバシー侵害だからね?その心意気は良いけど護衛対象も1人の時間が欲しいですはい。

 「気持ちは嬉しいけど俺の為にそこまで身を削るのはちょっとやめて欲しいなぁ」

 「そのお気持ちも嬉しいですが私の為にそこまで気を使うのもやめてください。私は護衛なんですから主人に尽くすのが仕事です。」

 ゔゔんっ。手強いぞこの人。これじゃあ日記書くにも集中力が裂けるチーズより割けるわ。

 

 「、、、はあ。じゃあせめてシャワーだけでも浴びてくれば?暑かったし汗もかいたでしょ?」

 「確かに汗はかいていますが、シャワーを浴びている間に襲撃でもあったら、」

 「全くもう、じゃあはっきり言うよ。臭うのよ。色々と」

 「!」

先程までの冷静な顔とは一変し羞恥から来た熱を感じたのだろう、俯いている。

 「ライナさんも女の子なんだから。入ってくれば?せっかくの綺麗な髪が痛んじゃうよ」

 「、、、」

 

 暫しの沈黙。それに耐えきれなかったのかはたまた怒ったのかライナは黙ったまま部屋を出て行こうと扉に手をかけた。そして小さな声で

 「お風呂に行きます」

と言い残し部屋を出ていった。

 「、、、少し言いすぎたかな」

いや、これで良いのだ。こうでもしないと恐らくライナは出ていかなかっただろうし風呂にも入らなかっただろう。悔いはない。

 

 、、、強いて言うなら更に嫌われた事ぐらいだろう。アレだけ言ったのだ、前世ならセクハラで訴えられて今頃お巡りさんのお世話になっている所だ。

異世界で良かったぜ本当に

 そんなこんなでやっと日記を書けると思い体を机に向け閉じていたノートを再度開く。

 さてどんな事を書こうかな、、、

 

 気がつけば日が落ち完全に夜となった。

 「ん?ああ、もうこんな時間か」

ペンを片付けノートを閉じ座ったまま背を伸ばす。空を見ようと窓を開けると涼しい夜風が流れ込んで気持ちいい。

 「、、、星が綺麗なのは何処も同じなんだな」

 前世の記憶を振り返るとやはり自分は夢を見ていて本当は会社にいるんじゃないかと思ってしまう。

別に恋焦がれているわけではない。あっちは仕事だとか嫌いな上司だとかでキツかったし金もあったわけではない。大切な人なんて尚更だ。

 「止めだ止め。こんな事考えてたら頭おかしくなるわ。散歩にでも行こう」

と言っても街に行くわけではない。こんな時間なら店なんかはとっくに閉まっているだろうし。

 

 扉を開け城内散策へと行こうとすると背後から

 「何処に行くんですか」

と声がかかった。振り返るとライナがこちらを見ている。

 「あ、ライナさん。寝たんじゃないんだ。」

 「何度も言わせないで下さい。私は護衛です、寝てる暇なんてありません」

まあそうでしょうね。ライナは必殺仕事人もびっくりな完璧主義だし納得の返しだ。驚きはそこまで無い。

 「ちょっとトイレに行くだけだよ。この時間なら巡回兵がいるだろうしライナさんはここで待ってて良いよ」

 「、、、」

 「すぐ戻ってきてくださいね」

あれ?意外とすんなり行けたな。トイレに行くだけって言ったからかな?

 「分かったよ、すぐに戻る」

そう告げライナを残し散策へと出かけた。

 

 城内は想像してたものより普通の城って感じだった。もっとエジプト風かと思ってたけど硝子窓は当たり前にあるし肖像画だって所々に飾られている。 エジプトと言うよりアラブに近い。

 庭に出ると豪華な噴水が迎えてくれた。そこら中に水路が張られており多くの種類の植物が植えられ、月が輝いているのも相まって神秘的な雰囲気を漂わせている。

 「、、、さてそろそろ戻ろうかな。」

部屋に戻ろうと歩き出す。と同時に視線を感じた。

咄嗟に振り向くと庭の奥の方に少女がこちらを見つめていた。目に光はなく肌は驚くほど白い。黒い衣服を見に纏った姿は人形と見間違えてしまいそうだ。

 「君は、、、」

俺が声をかけると興味をなくしたのかそのまま闇に消えるように何処かに行ってしまった。

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