ブルーアーカイブ二次創作 要塞奔走!ザ・スクランブル・フォートレス!   作:よるめく

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浦蓮マミコ。ウォータイム温泉壊滅部の三年生にして部長。
趣味はハムスターのお世話。
最近転部した。




第3話 ウォータイム温泉壊滅部

 パッと見、倉庫の中に何かがありそうな気配はなかった。

 

 薄暗く、コンテナがいくつも積み上げられていて、少しひんやりとしている。先生は監視カメラを見上げたりしながら、先ほどの出来事について尋ねた。

 

「ミコ、さっきのことだけど」

 

 ミコは顔を背け、う~むとすら言わなくなった。元々口数の多い生徒でないことは明らかだが、エナに言われたことについてはよほど話したくないと見える。

 

 ホミカも愛想笑いを浮かべて口ごもる。

 

「あっはは……いやあ、そのぅ……まあ、色々あるといいますか……」

「大丈夫だよ。言いたくないなら、無理矢理聞き出したりはしないから。それじゃあ、盗難に遭ったコンテナを見てみようか」

「はいはーい! まず最初に盗まれたのが、こっちのコンテナにあったやつ!」

 

 先生を連れて、ホミカがバタバタと駆け出していく。

 

 ミコはうつむき気味に目を伏せ、低く唸る。ウリアは不安そうな顔をしつつ、その袖をつまんだ。

 

「……部長……」

「う、うぅ……む……」

 

 歯切れの悪い呻き声を上げるミコ。慌ただしいウリアの解説を聞きながら、先生は肩越しにその表情を見つめた。

 

「ちょっと先生! 聞いてますか!」

「もちろん。そこに入っていたのが最新式の動力エンジン。そっちには装甲用の特殊合金と弾薬。向こうがバーニングサイクロンバルカン武器腕」

「うっ、パーフェクト……!」

 

 側面を開き、空っぽの内部を晒したコンテナを眺めつつ、先生は考え込む。

 

 コンテナ自体にセキュリティの類はついていない。倉庫に入るまでに沢山の警備システムをパスしなくてはいけない上、倉庫の中には監視カメラまでついている。これ以上のセキュリティは不要だという考えなのかもしれないが、そこを突かれた形になるわけだ。

 

「盗難に気付いたのはいつ?」

「監視カメラがブラックアウトしてからだよ。五分間だけだし、戻った時には映像になんの変化もなかったけど、確認した方がいいってミコ部長が」

「で、確認したところなくなっていたと」

「そうなの! でも倉庫のセキュリティシステムにはその時間、誰が入った記録もないし、巡回警備の生徒も誰も見てないって言うし!」

 

 巡回警備については、ルートや時間を把握して対応できるだろう。

 だが、機械のロックをどう誤魔化したというのか? 倉庫に来るまで、どこかが壊れていたということはなかった。侵入経路をこじ開けたのなら、恐らく巡回警備の生徒が気づく。

 

 果たして、盗賊はどこから入ってどこへ出たのか。要塞部たちもそれがわからずに行き詰っているに違いない。

 

 縋るような、期待するような眼差しをしたホミカが、その場で足踏みをしながら先生の言葉を待っている。

 

 ニナの発言についてはさておき、先生は予想を口にしようとした。

 

「こういう時のお約束だけど……」

 

 直後、離れたところから響く爆音と地鳴りが会話を遮った。

 

 警報が鳴り響き、緊急アナウンスが聞こえてくる。

 

『緊急事態発生、緊急事態発生! 校庭に侵入者!』

「侵入者!? 要塞の外じゃなくて、校庭に!?」

 

 叫んだホミカの顔がみるみるうちに青ざめていく。

 先生が彼女の肩を叩くと、ミコたちが駆け寄ってきた。

 

「せ、先生! どうしよう!?」

「落ち着いてウリア、一度見に行ってみよう。多分……今回の件と関わりがあると思うから」

 

⁂   ⁂   ⁂

 

 ウォータイムの校庭は、警報から三分もしないうちに戦場と化していた。

 榴弾や銃弾が飛び交い、そこら中で爆発しては砂煙を立ち上げる。

 

 その戦場の中心にいるのは、赤いシャツを着たゲヘナの生徒だ。

 

「うわ~ん! カスミ部長、どうしよう! いっぱい来てるよ!」

 

 火炎放射器で突撃しようとしてくるウォータイム生徒を薙ぎ払いつつ、下倉メグが声を上げる。

 言葉とは裏腹に表情は楽しげで、困っている素振りもない。

 そしてそれは、彼女たちがついていく部長も同じこと。

 

「ハァーッハッハッハッハ! 気にするな! これだけ抵抗が激しいということはつまり、彼女たちもわかっているのだよ……ここに温泉があるということにな!」

「たわけたことをほざくなァーッ!!」

 

 カスミの高笑いに対し、怒号とロケットランチャーの砲撃が飛んだ。カスミは間一髪で頭を下げて弾頭を避けたが、他の部員に命中して爆発した。

 

 二本目のロケットランチャーを構えながら、包囲するウォータイム生徒のひとりが声を張る。

 

「この温泉狂のドブネズミどもめ! ウォータイム自治区内に温泉なんてないと何度言ったらわかるんだ! 脈無しなんだよ、脈無し! わかるか!? 先月死んだうちのハムスターぐらい脈無しなんだ! 畜生めがぁぁぁぁぁぁ!」

 

 愛するペットを失ったことを思い出してか、その生徒は滝のような涙を流しながらロケットランチャーをぶっ放した。

 

 大急ぎで築かれた土嚢の山が一撃で吹き飛ぶ。何重にも作られた土袋の壁の後ろに隠れて難を逃れたカスミは、手にしたスイッチを押した。

 

 包囲された温泉開発部の中央に設置された装置が起動し、垂直に白い煙を噴き上げる。

 一定の高さにまで登った煙は四方八方に分かれ、ウォータイムの生徒たち降り注いで連続で爆発した。

 

 地を叩く爆音をかき消さんばかりに、カスミの声が轟く。

 

「何を言っている! 君のハムスターが今も君の心にあるように……温泉もまた、我々の心の中に息づくものだ! つまり、我々があるといったら温泉はある! ゆえに開発! それが我ら温泉開発部! さあ開発だ諸君! 手始めにここら一帯を爆破しようではないか! ちょうどここに爆破仲間もいることだしな!」

「「「うおおおおおおおおおおお!」」」

「たわけ! 撃てェッ!」

 

 温泉開発部の部員たちが鬨の声を上げ、グレネードランチャーや手榴弾をそこら中にまき散らし、ウォータイムの生徒が反撃をする。

 

 それを遠巻きに眺めながら、先生は苦笑いをした。

 

「お、温泉開発部……こんなところまで来るんだ……」

「……う~む」

「知ってるの、先生?」

 

 ウリアに問われて、先生は頷く。ゲヘナと多少なりとも関われば、知らぬ者はいないのではないか。

 

 温泉があると部長が言えば、そこがどこであろうと現れ、強引に温泉を掘って施設を立てて去っていく。それ以外のことは一切合切眼中にない。それがゲヘナの温泉開発部というものであり、ゲヘナ風紀委員の悩みの種だ。

 

 それがまさか、要塞都市であるウォータイム自治区の内側にまで来ているなんて。

 

 ウリアは小さく溜め息を吐く。

 

「あいつら、いつだったかな……結構前にうちの要塞の前に来てさ、爆破しようとしてたの」

「当然、要塞部経由で巡回警備部も繰り出して注意したんだけど、戦闘になってね。そのあともしつこくアタックしてくるから、生徒会長の一存で対温泉開発部用の新しい部活が立ちあげられたの」

「それが今戦ってる子たち?」

「そう。ゲヘナの温泉開発部に対するカウンター部活……ウォータイム温泉壊滅部」

「そのネーミングは……どうなの……?」

 

 先生がやや呆れていると、キュラキュラと甲高い音を立てて重戦車がやってくる。乗っているのは温泉壊滅部の生徒。

 

 温泉開発部に対抗するために、そこまでやるか。

 やるらしい。

 

「撃ち方ァ! 始めェッ!」

 

 温泉壊滅部の部長らしき、ハムスターを亡くした生徒が指示を出す。

 

 戦車は温泉開発部を狙い、無慈悲な砲撃を開始した。

 ドウン、ドウン、と砲塔を蠕動させて温泉開発部が築いた防衛ラインを次々と吹き飛ばす。逸って突出した部員は砲弾の洗礼を浴びて宙を舞う。

 

 分が悪いと見るや、カスミは即座に身を翻した。

 

「……よし、戦車まで出てきてはまずい! 撤退だ!」

「みんな、逃げるよ~!」

「「「うおおおおおおおおおおお!」」」

 

 鶴の一声で、撤退戦が始まった。

 

 温泉開発部は最後っ屁の爆弾を設置しながら陣形の中央に集まり、開いた大穴の中へ飛び降りていく。それを黙って見過ごす温泉壊滅部の面々ではない。

 

「逃がすか! これより追跡を開始する! 地の果てまで追い詰めて、五右衛門風呂に沈めてやるぞ! ついてこい!」

「「「イエス、マム!」」」

 

 凄まじい勢いで後を追う温泉壊滅部。一連の有様を複雑そうな表情で眺めていたミコに、近くの温泉壊滅部員が声をかけてきた。

 

「あれ、そこにいるのは……ミコ部長? どうしてここに?」

「う……むっ!?」

 

 戦車からひょっこり顔を出した生徒を見て、ミコは後ずさる。

 

 ウリアとホミカも挙動不審に陥っている。何か様子が変だと察した先生は、話に割り込んだ。

 

「温泉開発部を追わなくていいの?」

「あ、ヤバ! って、えーと、あなたは……?」

「私はシャーレの先生だよ。ついていきたいんだけど、いいかな?」

「えっ!? え~~~……」

 

 突然の申し出に、戦車乗りの生徒は目を泳がせた。

 

 そうしているうちに、温泉壊滅部は温泉開発部が逃げた穴の中へとダイブしていく。迷っている時間はなかった。

 

「え~と、私は責任持たないのでお好きにどうぞ!」

「ありがとう! さあ、行くよ。……ミコ?」

「う、うう、む……」

「あっ、部長!?」

 

 ミコはその場で固まると、踵を返して逃げ出してしまう。ウリアが慌てて後を追いかけ、先生もそれに続こうとしたが、ホミカによって止められた。

 

「お、温泉! 温泉開発部追うんでしょ! 追いつけなくなっちゃう!」

「……わかった。あっちは一度ウリアに任せよう。ホミカ、一緒に来てくれる?」

「うん!」

 

 ホミカは頷くと、ミコと逆方向に走り出した。

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