「さて、この絵にある鬼はある種の伝染病をモチーフにして書かれていたとされている。つまり古代の人たちは伝染病を一種の妖怪の仕業だと捉えていたんだろう」
今日も教授は講壇に立ち熱弁を振るう。いつしかこれは当たり前の日常となってしまった。
そして俺も、当たり前のように黒板に書かれた言葉をノートに書き写す。そしてチャイムが鳴れば授業は終わる。これもいつも通りだ。
「斉藤、ちょっといいか?」
・・・・・・・・この展開はいつも通りではない。
「えっとなんでしょう?」
「いや、この前のレポートなんだがな。いい出来だったぞ満点花丸をやっても良いくらいだ」
「そうでしたか、ありがとうございます」
「それで、この本なんだが」
そう言うと教授はすっと一冊の本を取り出して俺に渡してきた。
「お前のレポートで言っていたことがさらに詳しく書かれている。重宝するはずだ」
「・・・・・・・・・ありがとうございます、少しの間お借りします」
「あぁ、お前の論文に役立ててくれ」
正直勘弁願いたいものだ。
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「なんだよー、うれしそうじゃないな。修司」
「あたりまえだ、教授からこんなもん渡されたということは、さらなるクオリティのレポートを求められているんだぞ。少しは同情もしたらどうなんだ」
「いいじゃんかー、それだけ期待されているってことだぜ」
「全くこっちの身にもなってくれ」
「だってー俺には関係ないしー」
「ほう、じゃあ今度のテストは自力でやるっていうんだな?」
「それだけは勘弁してくださいマジで」
今しがたダイナミック土下座を決めたのは俺の悪友の高橋幸一(たかはし こういち)通称「バカ橋」通称の名前からも分かる通りこいつはこの大学をラインスレスレで合格した人物だ。(補足しておくとこの大学の偏差値は結構高めである)そんな経緯で入ったものだから、この学校の授業にはあまりついていけてはいない。そのため俺がたまに勉強を見てやっているのだ。
「だったらあまり俺を怒らせないことだ。じゃないと単位がやばくなるぞ」
「だから謝ってるじゃん。もう許してよー」
そんな会話をしながらも帰路につく。なんてことも無い普通の日常。だがその日常が音も無く崩壊していくのをこのときの俺は想像していなかった。