えっ!?トリニティで血の教えを!?   作:ふぃーあ

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TPOって決戦にも使うものなんですね

 ラミナの足元から急に現れたアミとメリナにみんな驚く一事が終わって少し。

 

「それでは、仮称『狂い火の王』との決戦にてアビドスの皆さんにお願いしたいことをお伝えします」

 

 作戦会議……というよりは、これは半ば決定事項の通達の面を有していた。それは、アビドスの参陣が主体的な王との戦闘への『協力』であることに由来し、また今回の決戦の戦力の主体を有するのがトリニティ総合学園であることに起因する。

 

「聞こっか。おじさん……んーいや、いっか。私たちアビドスは何をすればいい?」

「露払いを」

 

 アミはそう端的に口にした。

 

 露払い。すなわち雑魚共を打ち倒す者……違う、そうではない。

 

「私たちトリニティ総合学園の特級戦力すべてとメリナさんでもって、狂い火の王に当たりたい我々としてはそこまでの消耗は望むところではありません。小鳥遊ホシノさん……『暁のホルス』の力は決戦においては喉から手が出るほどに欲していますが、しかし外に安心出来る強者を置いておかねば危篤の事態に対処ができません」

「うへ……言葉より、責任重大じゃない?」

「えぇ。キヴォトス最強である可能性のある小鳥遊さんと、その力を120パーセントに発揮出来るアビドスの皆さんにしか頼めないことです」

 

 それで? とホシノは机に肘をついた。アミがキョトンとした顔をしたのに対して、ホシノはまるでいつかそうだったように、思い出せなかった過去を思い出すようにその目を細める。

 

「分かってるんでしょ、最大どのくらいの奴が出てくるかくらいは」

「現状、最大の向こうの戦力は『アリウススクワッド』と呼ばれる特務小隊です。得意とするのは市街地のゲリラ戦。現在はロケットランチャー兵、狙撃兵、遊撃兵、前衛の4名で構成されている、というところまでは調べがついています」

「強い?」

「4人なら貴女に比するかもしれません。……やらない可能性とやる可能性が半々ですが、狂い火に侵されているようだと……少し、貴女でも危ういかも」

 

 ホシノはそれを聞いて、会議室に座っていたアビドスの面々を見回した。

 

「だってさ、おじさんひとりじゃ危ないって〜」

「大丈夫よ! ホシノ先輩には私たちがいるわ!」

「ん、その通り」

「向こうがチームの力ならこっちだってそうですからね〜」

「オペレータの私まで含めれば数上でも有利ですよ、先輩」

 

 ホシノはその言葉を聞いて安心したように頷いて、柔らかい笑みと瞳で一言、アミに言葉を返した。

 

「問題ないってさ。任せてよ、アミちゃん」

「ふふ……頼もしいですね、万事任せます」

 

 アミは発案者であるが為、それ故に一人の者が否を唱える。それは信仰の彼方から来る少しばかりの嫉妬心だったろうか? 

 

 いや、それは良識派と言われようが教団の最古参、『黒曜の騎士』の(名付けたのをアミは後悔している)名を預かる者のちっぽけな、されど最大の矜恃(プライド)

 

「アミ様、私の愚考愚察から申し上げることをお許しください」

 

 ラミナがそう声を上げたのを、ホシノが不思議そうな顔をして見ていた。アミが認めます、と言う代わりにひとつ目配せした。

 

「その役割は教団の者らにお任せを頂きたい。特級の戦力の温存という面に際しては小鳥遊殿はじめアビドス御一行様のお力は著しく、であるならば私共幹部一同、貴女のために戦うのであれば皆その身を捧ぎ、喜び勇んで挑みましょう、守りましょう」

 

 ラミナの言葉は止まらない。熱意が溢れ、そのまま勇む言葉となり、アミへと真っ直ぐに向けられていく。

 

「アビドス御一行様のお力が温存できるのならそのままアミ様と共に戦っていただくのが最もよろしいこと。……幹部にして実働部隊筆頭、この明日葉ラミナとて、血の気の少ない者ではございません。どうか、主の未来のために血の指に握り締めた刃を振るう許可を」

 

 アミはひとつ、息を吐いた。それは感嘆と呆れの混ざった思いの結晶。

 

「本気で言ってます? 勝てますか? ……私は、小鳥遊ホシノが率いる最強の五人組でなければ勝てないと、そう言っているつもりですが」

「アミ様もご存知のはずでしょう。市街地のゲリラ戦となれば我ら教団とて遅れはとりません。我らは影に潜み影に生きる。運命の流転によって光を浴びているに過ぎず、それ故に影に詳しいのですから」

「……は」

 

 アミは酷く楽しげに笑い出した。座の全員が彼女の顔を見つめる中で、アミは笑みとは本来攻撃的な表情であるとかなんとか、そういった言葉を思い出させる凄絶な笑みを浮かべていた。

 

「良い子に育ったと思いましたが、中々どうして狂っている……よろしい。ラミナ、命じます」

「はっ! ……アミ様?」

 

 アミは立ち上がり、歩み、ラミナの頬を撫でた。顎を持ち上げ、目線を合わせる。

 

「絶対なる勝利を。完全なる排除を。戦場の一から十までを貴女が支配し、貴女が描いた筋書き通りに我が道を阻む愚物を、大敵を排除しなさい。1人たりとて、欠けることを許しはしない。もし、それが出来たのなら……」

 

 ラミナの耳元に言葉を送り込む。意識して、アミはそうした。

 

「ふぅ……貴女の望む、全てを与えましょう」

「ふぇ……ぁ……っ♡」

「あーあー、女の子の顔しちゃってさぁ」

 

 ホシノが何か言っているが無視。ラミナの手を引き、その前に膝をついて手の甲に口付けを。

 

「んなっ!!?」

「血炎教団、現教祖代理明日葉ラミナ。あなたに、血の祝福があらんことを」

「な、なぁ……! なん、なんて……はっ! し、承知致しました。この身の預かる命の全ては貴女の為に捧ぐもの! 傷付けなど致しません! あとは万事お任せをいただきます!!」

「えぇ。望み、考えておいてくださいね」

 

 ラミナがぷしゅっ、とばかりに席に沈んだのを確認してからアミはホシノへと向き直る。

 

「そんなわけで……お願い変更です。メリナさんとチームを組んでもらってメリナさんとアビドスで合わせて現場5名、オペレータ1名のチームとします。メリナさんは最大の切り札でもある……現場で守り抜いてください」

「私たちがそれをやるメリットは?」

トリニティ(こっち)の盾役兼切り札その4がフリーになります。あと組みなれた連携もあるでしょう?」

「助かるや……じゃ、それで行こうか。決戦の日は?」

 

 アミはその言葉を待っていたように、手元の資料を配り出す。

 

「決戦の日は、一週間後。なにか事があれば早まることはありますが遅れはありません。必ずこの日に決行します。先生もそちらの資料ご覧になっていますよね」

「もちろん。……今までの流れはもうなんか何が何だかよく分からない目まぐるしさで口も挟めなかったけど、ここからは私も多少関わった部分だからね」

 

 先生は呆れと疲れの入り交じった表情を一瞬できりりとした格好の良い表情へと切り替えると、以前の会議でアミから話された内容を元に考えを口にした。

 

「恐らく向こうは『エデン条約』を狙っている。向こうから攻め手を出される前に、可能な限り質の高い戦力を少数精鋭でぶつけようって算段じゃないと厳しいはずだ。攻め手を揃えるには時間が十分すぎるけど、向こうがこちらが勘づいたことに気付いていない現状が最大のチャンスという他ない」

「手を出される前にやってしまうのが最適解なわけです。まあ狂い火の王が『手を出す』段階になれば世界は滅んでいる訳ですけれど……」

 

 重い沈黙が会議室を満たすが、しかしまあ、とアミは手を打つ。

 

「まあ、やることが分かりやすくてなによりです。ブリッツクリーク……超電撃戦で頭の首とって帰るだけ!」

「戦力はどのくらい集まる予定なのかな?」

「私、ツルギ姉さん、救護バカ(蒼森団長)聖園ミカさん(祈祷祝福ゴリラ)、ゲヘナの空崎ヒナさんでワンチーム。アビドスのみなさんとメリナさんでワンチームの合計2班に、露払いのウチの戦力ということになるでしょうか。多くとも20は超えないでしょう」

馬鹿みたいな戦力量だねほんっと……!

 

 戦力の強大さに軽く頬を引き攣らせたホシノを、メリナが何を勘違いしたか軽くポンポンと撫で、メリナの腕を掴みとったホシノが「いや怖い訳じゃないからやめて……」と小さく口にしつつ離す。

 

 その一連の動作を見終わって、アミは立ち上がった。

 

「微細な部分はモモトーク経由で『テラファイル便』使って送ります。パスワードは《FATALITY(致命的事故)》です」

「シャレになってないなぁ……わかったよー。大文字?」

「全部ローマ字の大文字ですね。よろしくお願いします」

「先生もよろしければそこの使い物にならなくなったポンコツ回収して帰りましょうか」

 

 席に沈んだラミナはぷしゅ、ぷしゅと湯気を上げながら痙攣しながら「帰ったら私死ぬ? 殺される? うぅん……」とうわ言を呟くようになっていたのだが、それ故に自我どころか反抗する程度の意識すらも一時的に喪失しており、アミに姫抱きにされて回収されたのである。

 

 こうして、アミはアビドスとメリナとの協力関係を築くことに成功した。

 

 

 

 




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