修羅と男の決着がつくかつかないか、そんな頃合い。
カタコンベの中に用意された広間、その空間の中央に君臨する黄色の火球を頭部の代わりに浮かべた、しなびた木乃伊……狂い火の王、ミドラーは、戦闘が始まって幾度目かの咆哮を放つ。
「面倒な……遠隔攻撃は卑怯とでも言いたげね」
「えぇ。万一の影響を考え、花束は使えません……アレに血が流れているとは思いませんが、それ以外のモノが私に流れ込んできたら普通にまずいです」
「その通りよ、レイ。……んー……ま、キョウがすごすぎてなんとかなりそうだけれど」
「近-中距離のレンジ持ち室内戦特化超高機動アタッカー。噛み合いが完璧すぎて怖いです」
言葉通り。時折ノラに向けて飛ばされる焔にステップで対処する以外に、ノラに攻撃は向いていなかった。
それは、黒い翼が空を舞うが故。翻る黒は下賜された価値の証明。地に堕ちることを知らぬ
地を蹴るのではなく、壁を蹴る。敵を蹴る。キョウは大空を飛ぶことが出来ない。立場故に、暗がりで一生を過ごす。
あなたは私の翼であれ。そう告げた誇るべき血の君主の与えた
羽撃かず、空気を掴まず……それら一切些事に過ぎず。
室内戦特化超高機動アタッカー。その所以を存分に発揮するキョウは、壁にアンカーを差し込み、糸を張り。それらを新たな足場として、より宙を自在に舞う。
大空の元で飛べぬ翼でも、天井も壁もある籠の中でなら。
山鴉キョウは、唯一無二の絶対の、その頂点にすら届き得る。
「はぁ……」
それを見て、分かっていたが、と言わんばかりにノラはため息をついた。
「アイツに全部やらせばいいじゃない。必要かしら、私たち?」
「……ちょっと怪しいですね」
「でしょ? そうねぇ……アイツに手柄総取りってのもちょっと癪。
レイはその言葉に無言で目を細めた。呆れているのだ。
「……負けず嫌いですね、ほんと」
「そりゃそうでしょ、むしろ負けず嫌いで損することは何かしら?」
「……はぁ。じゃ、お任せします。先程の練度の小隊くらいなら私一人でも行けるっぽいので、周辺の哨戒でもしておきますよ」
「じゃ、それで。任せるわ、レイ」
レイがひとつため息をつきながら、花束を取り出し、走り出すのを見送って、ノラは腰の後ろに横向きに携行していた、もう一丁の銃を手に取った。
「キョウッ! 私も混ぜなさいッ!!」
地を蹴り、キョウほどではないにしろ鍛え上げた脚力でミドラーに肉薄したノラは、右手だけで反動を完全に制御してスナイパーライフルの一射を解き放ち。
「……ォオオオオ」
返礼として振るわれるミドラーの左腕の剣。それに向けてノラは。
「キヴォトスで剣使うバカはアンタで2人目なのよ!」
左手のショットガンを解き放った。『銃パリィ』。ノラがそう呼ぶこの技術は、相手を一方的にぶちのめす展開を産むノラの最得意にして至高。
スナイパーライフル。それはノラにとっては後方火力支援の切り札ではない。なるほど遠くから撃っても威力が出る、それはすごい。では、ひとつ問うべきだ。
それは、近距離で撃ったらどれだけ強いのか? と。
答えは眼前に示されている。すなわち、2度目のスナイパーライフルの近距離射撃によって吹き飛んだミドラーの身体が、その証明。
「相手を殺しかねないからってご法度にしてたけど……ぶっ殺してもいい化け物なら話は別よ。教団の中じゃ私は比較的人を狩らない主義だけど……節操なしな獣くらいは狩るわ?」
喰獅ノラ。彼女はトリニティの生徒の中では珍しい層の生徒だ。実家は大森林を有する山の土地と豊かな資源を眠らせた海の利用権をまるごと保有する豪農の家。地元からは『喰獅の嬢ちゃん』と呼ばれ愛された彼女の愛するものは食事であり、最も『新しく鮮やか』……つまり、新鮮な野菜や魚、肉である。
新鮮なものは、新鮮であるが故に、如何にして喰らうとしても至高の美味であるのだから、料理とは即ち『新鮮さにおいて劣るモノを新鮮なものに抗わせる為のひと工夫』であると、ノラはそう信じている。
そう信じたが故に、魚市場で出くわしたゲヘナのお嬢様と意見衝突し、最終的に本気で殺し合う関係になったのだが。
とにかく、そんなわけで幼い頃から山林へ海へと走り回り、街へ戻れば蝶よ花よとメシを喰らう彼女は健やかに育ち、その生活を続けた結果、世界でも指折りの実践的な筋肉から得られる筋力と、自分が食べるための獣を狩る為の銃の使い方を獲得した彼女は、狩猟に特化したスタンスを徐々に極めて行った。
「最初はこれでも意外とショットガンに添える相方にナイフ握ってたりしたのよ?」
スナイパーライフルを横薙ぎに、発砲、発砲。次で弾切れ、なら今だとばかり腰の横刺しのラックにスナイパーライフルを差し込み、ロックをかけて、弾倉を片手で引き剥がす。ポーチから次の弾倉をセットして、ロックを外せばライフルのリロード完了だ。
「でもそう、火力が足りなかったの。クマとかいたのよね」
「ッ!!」
「人の思い出語り中よ? 無粋なのね」
笑いながらノラがショットガンで再び剣を弾くと、大きくミドラーが体勢を崩す。そこへヤクザキックを叩き込み仰向けに体を向けさせると、躊躇いなく胴へスナイパーライフルの弾丸を叩き込む。
「まあ、でも獣狩りに容赦も情けも必要なかったわね。どっちが上か決めたら、弱い方は死ぬのだから」
起き上がったミドラーが繰り出すはまたも剣、ノラはしゃがみこんで回避。スキだらけの胴へ蹴りを送り込み、ショットガンからショットガンを繋ぎ、おまけ程度にスナイパーライフルを添えておく。
「にしてもキョウ、いいの? 私が狩るわよ?」
『やる気出したノラでしょ? 手伝いに回った方がいいかなーって。それとも、ラストヒットの取り合いでもする?』
「悪くないわね。じゃ、アイツをぶっ殺した一撃をぶち込んだ方が勝ちよ」
おーけー、と言葉には出さずに頷くキョウが、再び空へと飛び上がり、地に狩人、天に黒鴉が揃う。
そして、ここにもうひとり。
「ボクを忘れてもらっちゃあ困るんだよねッ!!」
「あら、生きてたの? というか珍しいわね、その姿」
「敵さん強くってさ! 最高だった、最高だったよ!」
刀を引き抜き駆けつけた女……イナバが刀を構える。
「ボクもその勝負に混ぜてくれよ!」
「あら、刀バカに負ける気は無いわよ?」
『上等』
きっと、この場を誰か、誰でもいい。先生でも良かった。キヴォトスではなく、外の世界から来た、サブカルチャーに理解の深い者が見たとしたら。
これは夢のような現実であると、そう言うのだろう。
刀を抜き放つ修羅、銃を握り締めた狩人、天より睥睨する
夢のようなドリームトリオがここに完成し、教団の誇る最高戦力が一堂に会したこの瞬間。
ミドラーに勝機は残されていなかった。そして、それを判断する正気すらも、残されていなかった。
仮想の、仮初の王が、与えられた王の座を再び失うためにそこから要した時間は5分足らず。王は、ただの首なしのミイラになって、黄色の炎に飲まれて灰になり。
(……アイツら、やったな。なかなか早い……私もいい加減いいとこ見せた方がいいらしい)
ラミナは、友兼仲間の成功を内心祝いながら、幾度となく切り刻み、未だ倒れぬスクワッドたちへその鎌を向け直す。
そばに居るナタもまた、銃剣付きの銃を構えてそこにいる。
「……そろそろ終わりにしたいところだが」
「そうはいかない……!」
「あちらとこちらで挑戦者の立場が変わる……面白い戦場もあったものだな」
『リーダー』が銃を持ち上げて、幾度と繰り返されラミナが跳ね除けた攻勢が再び始まろうとしていた。
飛び交う銃弾、切り開く鎌、肉体の交錯、援護するように空を駆けるロケットランチャーとスナイパーライフルの弾丸と狂い火の祈祷。そして、繰り返される中で変わっていくのはひとつだけ。
「……っ、ここですね」
「それ、落としちゃうんですかぁ!?」
徐々に適応と成長を遂げる怪物……ナタの成長の才能はこの戦場の中で、戦闘のプロと幾度となく交錯することで刺激され、目覚め、才能の持ち主に全てを与えるべくこれでもかとばかり躍動する。
「やらせ、ないっ!」
「邪魔……!」
「邪魔してるんですっ!」
支援役にピッタリと張り付く高機動戦闘。ミサキとヒヨリの放った支援をことごとく撃ち落とすところまで至ったナタは、まだまだ成長する。
「本当に強い。ううん、強くなってる……私たちを教材にしてるの?」
「参考程度、ですよ!」
アツコは祈祷を用いて受けたダメージをケアしつつ、ふたりが致命傷を避けられるようにナタに的確に妨害を差し込む技を見せながらも、ナタをふたりから引き剥がせなくなっていることに驚きを見せていた。
黒曜のラーミナを振るうラミナが踊るステージに、無粋な邪魔立ては無用とばかりに立ち回るナタ。
「まだまだ、ここからですっ!」
「……まだ上がるの? 正直勘弁して欲しいんだけど」
「ミサキさんがぼやいてるのなんかレアですぅ……同意はしますけど」
ボルテージは、まだ上がるばかり。
・血の指/三馬鹿
すごくカッコつけた事を書いたがフロムのミームを受け継いだ変な人たちではある。
・ナタの才能
おはようございます。今からあなた方をボコります。ボコれないのでボコれるまで強くなります。ボコったらその経験で強くなります。ボコられない程度に地力があります。
そういうもの。俺たちのナタンが適当な負けとかするわきゃねーだろナタンさんなんだから!(結構ムーアとかレダに負けてる)(キャラの性質上遠距離とか大盾マンはそりゃキツイか)(ダンとフレイヤに負けてるところはあんま見たことないんだけどなあ)
イカれた女たち、どの子好き?
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深谷レイ
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明日葉ラミナ
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喰獅ノラ
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熾名イナバ
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朱貴ナタ
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割とみんな好き
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アミ様