『血炎の退路』と呼ばれるド派手な退却邂逅戦の行われた翌日、パテル分派は正式に『血炎教団を危険な団体と認定し、排除を開始する』旨の公布を聖園ミカの名義の元行った。
それに対し、フィリウス分派、及び正義実現委員会は即日時期尚早である旨の公布を桐藤ナギサ、剣先ツルギの連名で発布。
血炎教団教祖、朝君アミは自身らがトリニティに害をなすことはないことを誓約するとして、自らの血判を入れた誓約書をティーパーティーに送付したことを公表した。
パテル分派の生徒は血炎教団に対する差別意識をよりいっそう強めたが、正義実現委員会、及びそれとなく言われているフィリウス分派の生徒たちによる『別に何も言わないけどとりあえずちょっとだけ近くにいてイジめるような真似をすると目撃者が対立派閥にできるけどどうする?』的ムーブメントにより、通常よりむしろ実際の信徒たちの体への負担は軽減されていた。
「あはは……意味深なこと言っておきながら、なんとかなってしまいましたね」
「いえ、我らとしてもあなたがご無事でなによりです」
昼間の血炎教団の儀礼場。まだ光を取り込み十二分に明るいそこで、アミは上位の信徒たちと話していた。
トリニティを離れるだとかなんだとか思わせておいて、存外になんとかなってしまった……信徒たちが助けに来るのが想定外だったという部分は無論あるのだが、とにかくそういうわけで、話をしようということにしていた。
「桐藤ナギサの心境をこちらに傾けることに成功したのは奇跡もいいところです……代わりに聖園ミカとは致命的な破局を迎えましたが、しかしここは立ち回り次第と言えるでしょう」
「教祖様、お耳に入れたいことが」
「なんですか?」
信徒の囁く言葉に、アミは大きく目を見開いた。行かねばならない。治安がやけに悪いな、とか、連邦生徒会長が消えた、とか、そんなことはどうでも良かったので放置していたのだが。
「先生、というのは……男性なのですか!?」
「はい。以前、教祖様がおっしゃっていましたが、キヴォトスの男性に分類される存在は『閨』を共にするには内包するものが弱いと……であるならば、外より来られたかの先生ならばどうかと」
「褒美は後々。今はやらなくてはいけない事があります」
くく、と笑いが漏れる。アミの口角があがり、アミはパチンッと勢いよく指を鳴らす。手渡される『聖槍』を持ち、『司祭服』をその身にまといきって、アミはその場の全員に告げた。
「先生にお会いしなくてはなりません」
そしてアミは、その見た目に不似合いな新型のスマートフォンを取り出して何事か操作してから溜息をつき、隣にいた信徒に声をかける。
「……その、申し訳ないんですけど。あなた」
「はっ、なんでしょうか!?」
もちろん、教祖に声をかけられることなど希少だった彼女は打ち震え……
「その、シャーレの投書に関して操作を教えてください。私スマホあんまり使わないので分からないんですよ」
「アッハイすみやかにお教えします」
「助かります……」
内容に脱力しそうになりつつもどうにか話を受けたのである。
四苦八苦しながら、教祖にこの時ついでにいいですか、と問われるままにモモトークの操作を教えた彼女は、後に教団の中で英雄と祭り上げられた。
アミはスマホの機種が変わる度に操作を覚え直さなくてはならないほどのスマホ弱者であるにも関わらず、モモトークの操作だけは覚えていたのだ……が、この事実が表になるまではまだ時間がかかる。
かくして、どうにかこうにかシャーレへ『お会いしたい』という旨の連絡をしたアミの元に、『今度トリニティに行くのでその際に会いましょう。この日時は大丈夫かな?』という返信がつく。
そうして調整された日時から少し遅れて、先生たちご一行となった先生が訪れてきた。
「やあ。はじめまして……シャーレの先生です。君が朝君アミさんかな?」
後ろに控えている剣先ツルギに仲正イチカに羽川ハスミ、そして何故か小市民か小動物のごとく震えている伊落マリーをアミはガンスルーして、一言。
「はじめまして……さて、先生。あなたは神を見たことがありますか?」
「えっ」
「だから言いましたよね、先生……彼女はこういう人なんですよ」
「いっつもこれっすからね……委員長の手を焼かせるってのは、こういうことなんすよ」
初手怪しい宗教ムーブをぶっぱなしたアミは、しかし後ろの正義実現委員会の呆れ顔の補足を受けた。
先生が若干驚いた顔をしながらも、そういえば、と呟く。そうして先生は悪戯に満ちた顔で言葉を返した。
「あるよ、砂漠で」
アミはへぇ! とばかり、その身を乗り出した。司祭服に身を包んでいるため気付かれにくいが、彼女は控えめに言って抜群のプロポーションを誇る。
胸部は特に大きく、アミをよく思わない生徒たちの中で、アミを揶揄する言葉として最もよく用いられるワードは『淫魔』である、ということからもそのプロポーションの良さがわかることと思う。
その豊満な身体を先生に擦り寄せながら、アミは問う。むちゃくちゃな距離感で。
「神を見たことがおありなら私の信じる神様も見れるかもしれません。どうか、私と一晩時間を共に……。いかがでしょうか?」
めちゃくちゃ年齢規制に引っかかりそうな『行為』のお誘いの文面という第二のぶっぱなしを行う。
「んなっ! あなた、突然なんの誘いをっ!?」
「きひひひ……れ、恋愛に強いな……」
「あーもう感心してる場合じゃないっすよ委員長、引き剥がすっすよ、ほら!」
さすがに生徒とはそういうことはできないな、と先生が言う。
引き剥がされたアミは正義実現委員会の者たちが初めて見るようなニヤニヤ笑いで先生を楽しげに見ていた。
「何を想像されておられるのですか、みなさん? 私はただ神秘の高まる夜という時間に我ら血炎の祈祷をご覧いただき、私の神の似姿を炎の中に見ていただけるか試すつもりだったんですよ」
「あー、なるほど。そういうことか……それなら、私としては否やは……」
「あ、でも先生がこの身体をお好きにされたい、というのであれば……ふふ、構いませんよ? 初物、というのは『血』が伴うので我らにとっては極めて良い事ですし……ふふふ」
豊満な胸を寄せ、むちむちとした尻をやや目立たせるように立ち、先生の前で腰を曲げて上目遣いまでするアミ。
男として反応しかかりながらもしかし、ここに来るまでに何故かスクール水着で徘徊する巨乳ピンク髪の
一応、アミとしても色仕掛けには自信があったのだが、残念とばかりに肩を落として見せた彼女は姿勢を正し。
「じゃ、邪教……! 教えを説き神に仕える仮にも司祭が言うことじゃないです……!」
その後ろで戦慄く伊落マリーは、相変わらずのアミにさらに要素が増えたことで、最大級の感情を更新していた。サクラコ様に伝えなきゃ、と決意を固めるのを尻目に、話は進む。
「そういえば……補習授業部を担当されるとか」
「そうだね。私が担当することになってるよ」
「時折、私も顔を出させて欲しいのですがよろしいですか?」
その補習授業部への顔出し、という提案に首を傾げるその場のアミ以外に、アミは説明をしていく。
ひとつ、単純に同じトリニティの生徒であるということはすなわち将来もしかすると己の信徒になるやもしれぬ者であるということだから、できるだけ協力してあげたい、というもの。
ふたつ、桐藤ナギサ自らの手塩にかけたプランニングであるからには、『罠』の二三はあるだろうと思える。そういうのに対して、対処を取れる頭脳のあてが先生にあるならともかく、ないなら多少はお役に立てる。
みっつ、単純に先生の様子を見たい。
以上三点の理由を説明するアミはやけに全身から『私先生と会える口実が欲しいんです』とばかりのオーラを放っていた。
「舌が2枚に見えるっす」
「私もですよ、イチカ」
「とまあ、そんなわけです! どうでしょう!!」
そんなに熱弁されては仕方ないと、先生は諦めたような顔でアミの定期的な訪問を認めた。これにより、補習授業部には定期的なアミの訪問が決まる。
そして同時に密かにアミによる精神汚染が行われていないか確かめるための人員がシスターフッドから送られることが決定した。
いくらかの雑多な話……アミが主宰する宗教の話や、先生が見たというビナーという砂漠の蛇神の話などを経て、交友を深めたアミと先生であったが、もうそろ時間っすよ、さっきもそれで遅れたんすからね! と急かすイチカの声でお開きということになった。
「それじゃ、私は行くけど……また会うのだものね。それじゃ、次は補習授業部のみんなとも会っていくといいよ」
「ええ……あっそうだ忘れてました、えいっ!」
「ん……わ、なにするつもっ!?」
「「「あーっ!!」」」
先生を抱きとめ、そのスーツをややはだけさせて、露出させた左肩にアミは噛み付いた。
「
「ぷぁ……すみません失礼をしましたね」
「な、なな、何を突然しているのですかあなたは!!!?」
「れ、恋愛に強い……妹……」
「だからそういうレベルじゃねぇんすよツルギ委員長、正気に戻って! ……妹?」
大混乱の場を収めたのは、先生であった。
「で、なにか意味があったの?」
その一言は、アミによる最後の説明に繋がる。
「これは『マーキング』と言います。私……朝君アミが、あなたの元に即座に駆けつける神の御業、奇跡がありまして……マーキングひとつにつき一度だけ、という制限がありますが」
「なるほど……つまり、誰も頼りになる人がいない時の最後の砦として、あなたがつくと?」
「そういうことです。マーキングはできるだけ人に見えない位置が好ましいかなと思ったので肩口に失礼しました。そのコートとスーツなら多分問題ないかな、と」
その言葉で全員が何とか納得こそするものの、アミ以外の思いはひとつになっていた。
すなわち、事前に説明をしろ、であった。
アミと先生が出会ったことにより、補習授業部の面々はさらに『濃い』人間と話すことになるのだが、これはまた追々。
そうして、別れてから2、3時間。
夜の儀式場に集まった信徒の前でアミは身体を震わせながら笑っていた。
「間違いありません。あのお方こそは、我らの神の降臨に必要な、『閨』に入られるべきお方……神を感じ取る感受性も恐らく備えておられる、私のマーキングの時に『熱い』と言いましたよあのお方」
「なんと……『血炎の祈祷』は、神秘に干渉するために神秘を持たないオートマタや街中を歩まれる常の男性にはただの血濡れに過ぎぬはずですが」
「ですがあのお方は私の血炎に『熱』を感じた! あぁ、あぁ……今思えば帰すべきでもありませんでした、失敗です、ダメダメです! んふ、ふふふふふ……尊いあの方、私の先生……いつか共に『閨』に……」
しかし、彼女の理性の方の部分は、なんとなくそれが起こりえないことを自覚していた。そして、それは彼女が頼みにしている参謀的なポジションにいる信徒たちもそうで、意見交換が行われる。
「やはり先生を『ものにする』のは難しいですよねぇ」
結論はそうであった。んー、と考えてから、アミはしょーがないにゃあ、と珍しくゆるく信徒の前で言って笑った。
「どうしようもないことはどうしようもないですし、恩をいっぱい押し売りしていつか返してもらいましょう。そうしましょう」
「「すべては御心のままに」」
アミはふと、『血の閨』ではなく、先生と普通に『閨』に入ることをその瞬間考える。神孕みの儀式でもなんでもなく、単純にそういうコトをすると改めて考える、そこでアミは確信した。
「うーん、これあれですね。アレ、私ですか!」
先生とは人たらしであり、カリスマである。そう認識し、それを言語化する言語野を活用することなく、自分と同じような才能、と認識したままの言葉を口から漏らす。
天性の、生まれついての人たらし。カリスマ。後天的にそれを備えたアミとは別種のそれではあるが、とアミはそこまで考えて、ひとつ思いついたように頷いた。
「司祭レイはいますか?」
「レイ様は今宣教活動に赴いておられます! 今はD.U.におられるかと」
「呼び戻してください。頼みがあると伝えればすぐ戻ってくるでしょう」
「はっ!」
アミは思いつきを実践に移すため、いくつかの企みごとを進めていく。その顔は酷く楽しそうだった。
・朝君アミの肉体
めちゃくちゃプロポーションがいい。魔性の女らしいな!
曰く、『ミネとお話してる時がカラーリングも相まって1番見栄えがいい』『膝枕されて耳かきしてくれるなら入信することもやぶさかでは無い』というものらしいがさて。
皆さんのおかげで赤ゲージで早くも評価が満タンになりまして、日間ランキングで確認できた範囲では4位に入りました。またUAも執筆時1万5000を超えており、皆様のご愛顧に感謝を述べさせてください。
そして願わくはこのような駄文に今後ともお付き合いをよろしくお願いします。