えっ!?トリニティで血の教えを!?   作:ふぃーあ

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短め……のつもりだったんですけどね……次以降は短くなります。


私が格別目をかけた人、ことごとくおかしくなるんですよね

 走らんばかりのスピードで、だがしかし歩いている黒の改造制服の生徒がひとり。左肩につけられた『血炎教団』の紋章が光る。

 

 髪は白、短くまとめられたそれはよく黒に映え、身長はおよそ160cmほどであろうか。

 

「教祖様♪ 私を必要としてくれる貴方様♪」

 

 楽しげに歌う彼女は扉を開いて儀式場に入り込み……

 

「教祖様、ただいま戻りました」

 

 真剣極まりない声音で高らかに告げると、奥で祈りを捧げるように跪いていた教祖……朝君アミが祈りを辞め、こちらへ振り向く。

 

「戻りましたか、司祭レイ」

「はい。この度の布教の成果はあまり芳しくなく、申し訳もありません。如何なる罰とても……」

「いえ、罰は与えません。というか、与えたことありませんよね、私?」

 

 布教が芳しくないことを咎められるとでも少女……レイは思っていたのだろう、まずは謝罪から入るレイに気にするな、と手を振ってみせるアミ。

 

「それはすべて寛大な御心によるものと思っております。それが常に与えられる訳では無いことも」

 

 それに対してもなおイカれた忠誠心を発揮するレイに、アミは若干引き気味になりながらも、それをひた隠して本題を切り出した。

 

「いや……まあ、いいですか。さて、司祭レイ。あなたに頼みたいことがあるという名目で呼び出させてもらったわけですが」

「はい……承ります」

「補習授業部、というものが新設されます。様々な都合があってのものです。資料をあなたの部屋に送らせてありますので、熟読し、そして彼女らの様子を見てあげてください」

 

 レイは奇妙な顔をした。補習授業部、というものがいかなるかはさておき、アミが信徒以外にこだわりを見せるのは珍しいと感じたからである。

 

「お珍しい……非信徒にその清らかな御心を?」

「いえ、これもまた新たなる信徒のため。ゲヘナと手を組むことができれば、我らの布教の幅も大きく広がります。新たな未開の地に教えを広めることこそが、我らの急務。そのためにあなたをD.U.へ送っていましたが、それよりもなおこれは急務です。あなたにしか任せられません……頼めますね? レイ」

 

 膝をつきながらも首を傾げる少女の前に跪いて目線を合わせ、その手を取って目を見つめて懇願するようにアミは告げる。

 

 その懇願を浴びるために、信徒たちは如何なることだってしてしまうだろうという確信すら抱かせるその懇願は、しかし二人の間にのみ交わされたコミュニケーションのひとつでしかなく。

 

 レイと呼ばれた司祭は頷いて、一言。

 

「すべては御心のままに!」

「よろしい……では、今日は戻りなさい。お願いしますね」

「はい!」

 

 そうして、レイは部屋を出ると同時、腰から崩れ落ちた。

 

「あは……教祖様、教祖様ぁ……♪」

 

 トチ狂った瞳で扉に一瞥をくれてやってから、血炎教団の最初の司祭『深谷(ふかや)レイ』は、その身体に悦楽を感じ、達して動けなくなっていた。

 

 アミからの絶対的な信頼。対等な立場にあるように見せかけ、懇願するようにして命じる上位者の声を一身に受け、心から崇拝している愛する教祖を全身で感じとり、彼女はその喜びを性感という形で発露させていた。

 

「あは、あはは……っ♪ ……神に、栄光あれぇ……♪」

 

 しばらくして落ち着いたのか、レイは立ち上がる。軽く身体に付着したホコリを払うと、教祖とは対極に存在しないと言って良い胸元を寂しく払い、歩み出す。

 

「……補習授業部かぁ。教祖様に面倒を見て、って言われたし……資料読んで、明日から頑張らないと。……教祖様にご褒美おねだりしてみようかな、なーんて」

 

 そんなことがあった昨日から、一日進んだ今日。

 

「『深谷レイ』と申します。血炎教団より参りました、司祭の職位を頂いております」

「教団……噂には聞いていましたが、組織体系がちゃんとした思った以上の組織なのですね」

「委員長から噂は聞いてる……近寄るなって……!」

 

 一礼する彼女に、ハナコが頷き、コハルが距離をとる中、レイは授業用具を取り出して、一言。

 

「分からないことがあれば聞いてください。私も力になりましょう」

 

 その言葉に、一先ずは血炎教団から派遣された教師役としての扱いが定まり、先生が忙しい時に先生の代わりに物事を教導する代理としての活躍が主となる彼女の仕事が始まった。

 

「はい。では、近代宗教についてですね。トリニティで主に信仰されているのは……」

「はい。数学のこの問題はこちらの方程式が前提として用いられていることを理解して……」

「はい。……あぁ、はい。えっちですよね、この文。てかそもそも女のフリしてるおじさんが書いてる古文、ってだけでたいがい面白いです」

 

 先生がその仕事ぶりを見る限りでは、アミもそうだったように高い教養を有しているようであり、ハナコと上辺とはいえ対等に……内容はさておき、話をしている様子が見られるなど、『血炎教団』が単なる宗教以上に極めて学術的な要素を取り入れている側面があることを示していた。

 

「その……どうして深谷さんはそんなに色々と知ってるの……ですか?」

「あんまり敬語を使う必要も無いですよコハルさん……まあ強いていうなれば教祖様が学徒ですからね。我々も伴って深く学ぶというものです」

「朝君アミさん……彼女が『異端の宗教の創始者』という立場でありながら学園全体が排除に動かないのは少なからず本人の優秀さと学園への貢献があるから、などと噂されていますが?」

 

 その言葉に、レイは頷いた。事実として、教祖朝君アミがトリニティに齎したものは異端の教えだけでは無い。

 

 朝君家より持ち込まれ、学園に寄贈された書物や文献はトリニティ総合学園の歴史を紐解くにあたり十二分なものであったし、医療関連は救護騎士団の団長下一同が舌を巻くほどであったという。

 

 その他、莫大な金銭が寄進されているという話も聞いたことがあるが、話半分に聞いているのがハナコであった。

 

 金なら幾らでも湧いて出るのがトリニティのお嬢様の中の上層部というものであり、金を学園の資金に捻出しただけで学園に残れるとはハナコには考えにくかったのだ。

 

(やはり、知識供与……あるいは、まだ『隠している』のでしょうか。トリニティ総合学園が喉から手が出るほど欲しい知識が、恐らく朝君アミをこの学園に留める理由)

 

 ハナコは考えを巡らせるが、イマイチまとまり切らない。手が与えられた模擬問題をスラスラと解いていく中の考察は結局まとまることなく、模擬問題の最後の論述に至ってなお少しも全貌を見せなかったのである。

 

 模擬問題の答え合わせをしよう、とレイが告げ、それぞれに注意すべき点を述べながら回答を読み上げるレイの声を半ばに聞いていたハナコは、それにふと気がついた。

 

「……?」

 

 それは人の歩く音だった。先生もこの部屋にいるし、となると誰か……と疑い、腰の銃に手をかけて、ガラリと空いたドアから黒の制服が現れる。

 

「レイ、上手くやってますか?」

「問4はXわ……きょ、教祖様!!?」

 

 レイがXY染色体、のYを言う前に現れたアミは、レイをひっくり返らせた上で跪かせる。アミが呆れた顔で身体を起こすように告げ、楽にしろと述べるとレイは直立不動の姿勢に入った。

 

「軍隊じゃないんですから……はぁ……えぇと、皆さんこんにちは?」

 

 アミの疲れたような顔が、ハナコと先生にはやけに印象に残った。

 

 アミが現れる、その何時間か前。アミはナギサと会合に望んでいた。補習授業部について、という名目の議題に取りかかる二人の顔は、比較的疲労が少なく見えた。

 

「補習授業部はどうされるおつもりですか? ナギサ様」

「はっきり言えば、私としては退学に持っていきたいところではありましたが……アミさんの情報網自体は確実なものです。セイアさんの予言……『トリニティの裏切り者』の存在が真であり、そしてアミさんが仰る通りミカさんが……ふぅ。そう、ミカさんが裏切り者なら……あの中に裏切り者が存在することは無いはずなので」

 

 声を震わせながらも、ナギサは幼なじみが己の最大の敵になる可能性を認めて、その最悪に対処をし始めていた。アミはそれを聞いてにこりと微笑み、補習授業部を活用する方面に話を進める。

 

「本当に、あくまで都合のいい檻として活用する気になりました?」

「そうしても、良いかと思います……問題はミカさんが身元を担保している『白洲アズサ』さんですが……」

「んー……まあ、私が直接出向いて見てみましょう。ナギサと私が繋がっている、とはトリニティの生徒であればあるほど分からないものですから」

 

 そう、あくまでこの2人は表向き『トリニティの支配者』と『異端の宗教者』の組み合わせであり、 本来交わることがイレギュラーと呼んでさしつかえない、そんな関係であることを諸氏には思い出していただきたい。

 

 あくまでもエデン条約という緊急の事柄があったからこそ、ナギサとアミは手を取り合えているのだ。

 

 一度取った手を離せなくできるかどうかはアミの手腕によるところがあるだろうが、とにかく現状ナギサの精神面はアミが居なかった世界線より余程良い。

 

 アミ自身は『宗教が絡まなければ』トリニティでも屈指の良識と教養を併せ持ち、また家柄も良い、ティーパーティーが友人に持っていたとしても納得されるような生徒であることが大きい。

 

(とてもではないですが、ナギサさんと関わるのに教えは使いにくいです……あくまで血の教祖としてではなく、ひとりの『朝君アミ』として接することでナギサさんの心に触れられていることを忘れないようにしなくては……)

 

 などと、アミ自身は考えるなどしているものの、それでもひとりの対等な友人として接する、という方針自体が変わらないので関係が変動することがなかった。

 

「ですが……簡単に補習授業部を抜けられてしまっても困るので、少し手は打ちましょうか」

「1回は私がやります。やるなら共犯で行きましょう、ナギサさん」

「3度目は合格させるように動かしつつ、2回はなんとか阻止しましょうか」

 

 そんなところが落とし所か、とお互いの言葉に頷いたナギサとアミは、補習授業部からの解放を遅延することを決定しつつ、解散したのである。

 

 かくして、そんな思惑を笑顔の裏に隠したアミは、補習授業部に足を運んできたわけだった。

 

 白洲アズサという少女を見極めんとした彼女は、ふふ、と笑いを漏らした。

 

「……まあ、何も言うまい……」

 

 全員が首を傾げる中で、アズサの改造制服につけられた何らかの『校章』らしきそれを無言で見なかったことにしたいができないアミはそっと眉間に手をやった。

 

 アリウスの校章……それがそうとは今のアミは知らないにせよ、明らかにトリニティの紋章でないそれを見分けるのは血炎教団の紋章を確認する癖がついたアミには容易いことであった。

 

「と、そうだ先生! 私を抱いてくれるって話どうなりました?」

 

 話を変えたくなったアミは、躊躇いなくそんな話はないのに先生にアプローチを仕掛けに行くが、先生は……

 

「そんな話は無いね!」

 

 またこれを拒否。周りの人々のえっ、という目を跳ね除けようと先生は弁明のために言葉を紡ごうとして……

 

「教祖様のお誘いを断られる、と……? なんで? なんで? なぜですか? 分からない、分からないです、理解不能です!? え? あの身体を好き放題にできるならなんだってするから連れてこい、って裏世界に名が通るレベルの方なんですよ教祖様って、え? 意味わからないです。モノついてます?確かめていいです?」

「ステイ、レイ」

「はいっすいませんでした申し訳ありませんでした教祖様ッ!!」

 

 凄まじいスピードで喋るレイに全員がヒいた。死んだ目で喋るものだから、あまりの恐ろしさに全員が後ずさる。アミですら例に漏れず、と言えば恐ろしさが伝わるか。

 

「というか私そういう目で見られてましたかやっぱり?」

「えぇ、5億積むから教祖様を裏切って拘束して連れてこないか、みたいなお誘いがいっぱい来ましたよ? 全員端からぶちのめしましたが」

「……あとで誘ってきた企業とかあったらリストくださいね」

「はっ!」

 

 アミは極めて曖昧な笑みを浮かべながら、先生に改めて向き直って一言。

 

「私が処女のうちにどうか抱いてください」

「だからダメだって!」

「エッチなのはダメ! 死刑!!」

 

 騒がしくなった教室に、様々な感情を孕んだ笑顔の数々が湧いていた。




・朝君アミと裏社会

「えっろいのでペットにしたい」というイカれた金持ちが多い。
朝君家を敵に回してでも手に入れる価値のある女、という評価がされていて、裏社会では不可能だがやれたなら人生一発逆転できること、という物に対して『血の教祖を「R-18表現規制」にする』という表現がされることがある。

そんな女を好き勝手にできるのに興味を抱かない先生に関してレイは「こいつち〇こついてるんですかね?」などと思っている。

・深谷レイ

血の教団最初の司祭。
ヴァレー→バレー→渓谷→深い谷→深谷……いや、なんでもないんですよ?

教祖アミに褒められたり撫でられたりすると身体がビクンビクンする系狂信者女子。アミ曰く、『育て方を間違えた最初の例』でもあるらしい。

ちなみに、深谷レイはアミに与えられた名前であり、本名は『東風ツバサ』というが、アミに名前をご褒美としておねだりして以降は自身の戸籍の名前からすべて名前を『深谷レイ』に変更している。



みなさんいつもありがとうございます。投稿してないのにランキングの上の方にいたりすごいUA増えてたりして嬉しいです。というかUA3万ですって。すごいですよね。どういう事ですかね。ありがとうございます!!!
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