fragment de brouillard グリモア〜私立グリモワール魔法学園〜   作:magenta0827

1 / 4



ただ普通に友達と過ごして、恋をしたかっただけなのにーー






転校生

 

 

 

 ーー2015年 9月27日 埼玉県風飛市中心街 第8次侵攻

 

 

 体が揺れる感覚で私は意識を取り戻した。

 次に襲ってきたのは口いっぱいに広がる鉄の味。

 

「あ……れ……」

 

 口の中のモノを吐き出す。

 赤色の液体が自分の口を伝って地面に落ちる音が聞こえる。

 

「(頭痛い…ボーってしてる…)」

 

 視界もボヤけてて耳もあんまり聴こえない……私、何してたんだっけ?

 しばらく何も考えずにしていると耳が徐々に戻ってきた。

 初めに聴こえてきたのは獰猛な獣みたいな叫び声、それに加えて重いものが地面に激突する轟音。

 地面に接している自分の体が激しく振動する。

 

「ぅ……!」

 

 視界も徐々に戻ってくる。

 でも映った風景は悲惨なものだった。

 見慣れた街並みはビルだった瓦礫に埋もれてしまって見る影もなくなってしまっていた。

 その風景を見て色々思い出して頭がハッキリしてきた。

第8次侵攻ーー魔物ーー子供ーー

 あぁ…私は《私立グリモワール魔法学園》の《魔法使い》で戦ってて…それで…?

 

「(そうだ…私、子供を助けようとして……)」

 

 親とはぐれたのか…それとも死んだのか、立ち尽くして泣いていた子供。

 その子供を頭から潰そうと飛びかかる数メートルはあるグロテスクな形をした魔物の口。

 気づいた時には体が動いていて……

 

「(…あ、体が…嘘…)」

 

 子供の代わりに潰れた自分の体を動かそうとして気づいた。

 どうして足の感覚がないのかなって思っていたけどその答えは凄く単純だった。

 

「(…もう、陸上、できないや…)」

 

 薄れていく意識の中で見覚えのある姿が二つこっちに走り寄ってきた。

 

「…もか、しっかりしろ!会長が…武田先輩が間に合ったぞ!」

 

「(怜ちゃん…)」

 

「私たちは助かるんだ!」

 

 必死な顔で私に呼びかけてくる怜ちゃんに対して私は、せっかくの綺麗な顔と巫女風の戦闘服が傷と汚れで台無しだなぁ…なんて事を呑気に思ってた。

 

「ゆかり、早く!智花が!」

 

「(夏海ちゃん…)」

 

 いつも笑顔で元気な夏海ちゃんが私のために医療部隊に助けを求めてくれている。

 

「(やっぱり夏海ちゃんに泣き顔は似合わないよ…)」

 

「子供も無事だ!お前が助けたんだ!」

 

 怜ちゃんのその言葉に私は安心した。

 あの子に襲いかかろうとしていた魔物に咄嗟に魔法を放ってからあの子がどうなったかわからなかったから。

 ブチって音がした。

 無個性な自分に少しでも特徴を、って思って幼い頃から髪に結んでたオレンジ色のリボンが千切れて自分の前に落ちた。

 明るいオレンジが赤黒く染まっていくのを見て改めて強く感じる。

 

 ……あぁ、私死ぬんだ…。

 

「(…ごめんね、足引っ張ってばっかりで)」

 

 友達に対して最期に思うのが謝罪だなんて……自分が情けなくて泣きそうになる。

 視界がボヤけて暗くなっていく。

 

「生き延びれば別の学園に編入できる…卒業するんだ、智花!」

 

 叫んでいる怜ちゃんの声が小さくなった気がする。

 

「(もっと訓練、ちゃんとしておけば…)」

 

「死ぬな!」

 

「(それとも、もっと…なにかしていれば?)」

 

 怜ちゃんと夏海ちゃんと初めて会った時、先輩と一緒に初めて魔物と戦った時、陸上部でみんなと一生懸命練習を頑張った時……。

 色んな思い出が頭の中を巡っていく。

 これが走馬灯なんだ……あ、そういえば…。

 

「(好きな人も、結局…いなかったなぁ…)」

 

 仲の良い両親を見て育ったからか私は恋に憧れてた……でも、できなかった。

 気がついた時には恋なんて言ってられないくらい戦いに身を置いていた。

 

「(もしやり直せたら、もし…かして……)」

 

 なんて都合のいい事を祈りながら私の意識は朦朧としていく。

 今際の際、怜ちゃんと夏海ちゃんの奥に白い髪の男の子が見えた気がした。

 

 ーー私、《南智花》の人生はそこで終わりました。

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 ーー2014年 8月14日 南智花の部屋

 

 

 目覚まし時計を止めて私は上半身を起こす。

 ……ちゃんと寝たはずなのに体が重い気がする。

 

「??????…な、なんだろう。今の夢…」

 

 イヤにリアルでまるで他人の記憶をそのまま見たような……あれ?どんな内容だったっけ…?そもそも今のは……

 

「………夢………?」

 

 ボーッとしていると枕元にあるデバイスの画面が間に入る。

 登校時間にはかなり余裕がある時間。

 このまま少し二度寝しちゃおうかなって思ってもう一度枕に頭を預けた所でデバイスの通知音が鳴った。

 

「…夏海ちゃん?」

 

 大切な友達からのメッセージがデバイスのロック画面に表示される。

 それを見て私は飛び起きる。

 

「今日…!新しい《転校生》の…!!?」

 

 今日入学してくる《転校生》の案内を頼まれてた事、そしてその準備でいつもより早く登校しないといけない事を思い出してパジャマから制服に慌てて着替える。

 

「もう…っ!なんで忘れてたんだろう…私のバカっ!」

 

 自分に悪態を吐きながら私は朝の身支度を急いで始めた。

 部屋を出る頃には奇妙な夢?らしきものの事なんてすっかり忘れてしまっていた。

 

「(男の子の転校生……少し緊張しちゃうなぁ)」

 

 なんて事を考えながら私は陸上で鍛えた脚を使って学園に向かっていった。

 

 

 

 

 

 ーー同日 とある電車の中

 

「……?」

 

 ガタンガタン、と心地よく揺れる感覚で少年は目を覚ました。

 寝起きの頭で少年は周りを見回す。

 スーツを着て座り、ウトウトと船を漕いでいる20代後半ぐらいの男性、スマホをいじりながら立っている女子高生etc、etc……。

 少年は同じ車両に乗っている人達を見て自分が電車で移動していた事を思い出した。

 

「(変な夢だった気がする)」

 

 少年は頭を抱え、さっきまで見ていた奇妙な夢を思い出そうとしたが…。

 電車のアナウンスを知らせる電子音でハッとなる。

 車掌の鼻腔音による独特な高い声で次の駅が知らされる。

 

「次は〜風飛〜風飛です、右側の扉が開きます、ご注意下さい」

 

「(着いた…)」

 

 電車が止まり、ドアが開く。

 朝の7時を回ったばかりだというのに多くの人が外で待っていた。

 

「人多っ……」

 

 人の多さに少年はゲンナリしながらも風飛駅を歩いていく。

 朝だから余計に足音や人の会話がうるさくて仕方がない。

 

「(早く行こう…)」

 

 早歩きで駅の出口に向かい風飛の地に少年は足を踏み入れた。

 魔法学園があるという事もあり、少年が現在いる風飛の中心街は首都である東京と比べても遜色ないほど発展している。

 

「(あっつ……)」

 

 8月の半ば、ジリジリとした日差しが降り注いできてとても暑い。

 駅から降りて数分だというのに少年の額には汗が浮かんでいた。

 少年は目的のバス停を見つける。

 バス停には《私立グリモワール魔法学園》行きと書かれている。

 

「(そういえば…夢の内容忘れちゃったな…)」

 

「(まぁ、どうでもいいか…)」

 

 少年は溜息をつくとバスが来るまでベンチでボーッとしているのだった。

 

 

 

 

 

 ーー人間の天敵である《霧の魔物》が現れてから300年。

 人間を滅ぼさんとする魔物と人間の戦いは今もなお続いている。

 そんな戦いが続いている世界である日《魔法使い》として《覚醒》した1人の少年。

 しかし、彼は《魔法使い》ではあるものの戦う力はほとんどありません。

 これはそんな少年が魔物と残酷な現実に向き合い、世界を救うまでのお話です。

 

 

 

 

 

 







以下転校生君の設定です。
原作で描写された数少ない転校生君の特徴や雰囲気はなるべく取り入れているつもりです。


・名前
・あらすじの部分でも書いていますが名前は出さずにキャラ達からは《転校生》と呼ばれます。

・年齢
・メインヒロインさん(智花)と同じ高2

・クラス
・リリィ

・身長
・165センチ(身長が抑えめなのは転校生君はどうやらイケメンというより可愛い系の男の子っていう描写が原作で所々あるからです)

・外見
・サラサラしてて柔らかい茶髪に茶色の目をした中性的な細身の美形男子(動物で例えると小犬みたいな感じ)
・パッと見で弱そうだと判断されるぐらいひ弱に見える。

・趣味
・昼寝(学園のどこかでグースカ寝てるところを度々目撃されている)
・風飛市をブラブラする(学園内でブラブラしてる事は有名になってる)

・性格
・常にボーッとしてるか眠そうと思われる無気力系。口数は少ない。(言葉よりも行動で意思を示すタイプ)
・口数に反して表情はかなり豊かで表情から何を言いたいか察せられる。
・嘘をついたり隠し事をするのが苦手(顔に出るので全部バレる)
・人の頼みは断らないお人好し(やりたくない事でもよほどのことじゃない限り「まぁいいか」で渋々了解する)
・なんだかんだなんでもできる器用貧乏。
・細身でひ弱そうに見える外見の割によく食べる。
・恋愛には超鈍感(ソシャゲ主人公のお約束)
・年上のお姉さんムーヴと年下に甘えられるのに弱い。


大体こんな感じでやっていきま〜〜す(多分転校生君はこんな感じだと思う)


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。