聖園ミカを虐めている生徒の日記   作:メヌエットゆりー

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零記目

 

 月 日

 

 どうやら中学生になっても私の生活は変わらないらしい。机の上に置かれたトリカブト。弁当に混ぜられたガラス片。踏み潰されたボールペン。

 小学校の時から何も変わらない。どうして虐めを庇ってしまったのだろう。そんな言葉が口から出てしまう。でも後悔はしていない。私が自分の意思で『選択』した結果なのだから。

 

 それにしてもビンタ1発でここまで発展するとは予想外だったな。

 

 

 月 日

 

 美術の課題に使っていたキャンパスノートが燃やされた。題材に選んだ電球も砕かれ、書くための筆も壊されたせいで何も描けず、美術の提出ができなかった。

 

 

 月 日

 

 喉に銃弾を食らったせいで声が出ない。虐めがエスカレートしたように感じる。慣れてきて無反応な私がつまらなくなったのだろう。虐めとはこういうものだ。よく知っている。

 

 

 月 日

 

 虫を口に入れられた。種類はわからないが長かったと思う。ムカデの可能性もある。

 不味くて気持ち悪くて吐いたら蹴られる。これを遊びだと思っているから金持ちというのは怖い。倫理観が無いようだ。

 

 

 月 日

 

 私の愛銃『オルレアン』が壊された。爆弾でシンプルに燃やされて破壊された。銃も壊されるなら安物を買っておいた方がいいな。

 銃に愛着を持ってもいずれ破壊される。量産されている銃がいいだろう。それに木製ライフルをやめて、鉄製のハンドガンにしよう。安いし燃やされない。

 

 

 月 日

 

 休日に料理を作って、1人で食べている時が1番幸せかもしれない。誰にも邪魔されず、他のことを考えなくていいこの時間だけが解放されるというもの。

 

 

 月 日

 

 最近眠れなくなってきたので医者に睡眠薬の処方箋を書いてもらって薬剤師から貰ってきた。医者が言うには精神的問題と言っていたけど私が精神病なはずがない。

 

 

 月 日

 

 美術の成績が1になってしまった。どうやら美術にテストは無く、授業内で提出した課題で成績を決めるらしい。全て出せなかった私は1になって当然だ。

 

 

 月 日

 

 流石にスナイパーライフルを至近距離で撃たれたのは痛かった。銃弾のダメージもそうだけど、威力が強くて後ろにぶっ飛ばされる経験なんて初めてだ。

 

 血を流しながら帰っているとピンク髪の女の子に絆創膏を貰った。きっと彼女は私の足を見て擦り傷だと思ったのだろう。

 胸に撃ち込まれた痛みが消えるわけがないのに、胸の痛みがましになった気がした。

 

 

 月 日

 

 資格を取ってみた。すると何も無かった私にも自分を語れることが出来た気がして嬉しくなった。これからも色々な資格を取ってみよう。

 

 

 月 日

 

 小学生の頃に虐めを庇った子が虐めのグループに入っていた。とても賢い選択だ。虐められることが嫌なら虐める側になればいい。誰もが考える当然の発想。

 でも悲しいな。綺麗な花を描いていた女の子がああなるなんて。でもよかった。彼女は虐められることは無くなっただろう。

 名前も知らない誰かを庇って虐められるなんて、面倒な性格をしているな。自分は。

 

 

 月 日

 

 私を守ろうとしてくれた職員さんが高等部へ移転することが決まった。やはり金持ちに逆らうとこうなるのだろう。

 

 よく大人は信用できないと嘆く人がいる。しかし私からすれば子供は信用できない以前の問題だ。子供に容赦や躊躇はない。まともに育っていない倫理観で人を傷つけるのを娯楽とする狂人ばかりだ。

 

 

 

 月 日

 

 青色だった翼や髪がすっかり白くなっていた。ストレスによるものだろうか?

 

 

 月 日

 

 やっと中学校生活が終わった。明日からは虐められなくていいんだ。

 

 

 

 月 日

 

 同年代と話すのが苦手になっていた。話そうとすると意識が朦朧としてくる。自然と呼吸や心臓の音が速く、大きくなっていく。

 会話しようとするとあの頃を思い出してしまうらしい。友達がいなくても卒業はできる。大人だって大勢いる。何も問題はない。

 

 

 

 月 日

 

 目の前で虐めが起きていたのに止める勇気がなかった。あの時に後悔はしていないと書いたはずなのに、過去の思い出がフラッシュバックして足を前に出せなかった。あの時の絆創膏をくれた彼女だと気づいたのに。

 怖い怖い怖い   怖い  怖い    怖い   怖い  怖い     怖い  怖い  怖い    怖い  怖い   怖い  怖い   怖い  怖い    怖い   怖い    怖い

 

 

 

 月 日

 

 私は彼女を庇うのではない。魔女を迫害する生徒の1人だ。何も怖いことはない。虐めをやめさせることなんてしない。少し向きを変えるだけなんだ。何も怖くない。

 

 この日記に書かれることは真実なんだ嘘なんて何一つ無いんだ。私は誰かを傷つける悪魔だ。日記の中の私は人を傷つけて、薬を盛るクズだ。

 

 私はどこまでも残酷で酷い人間だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◯月×日

 

 エデン条約が締結され、トリニティ全体に落ち着きが戻ってきた。それを示すように朝の集会でナギサ様の演説はいつもの眠ってしまいそうなほどつまらない内容に戻っていた。

 私個人としては張り詰めた表情で少し辛辣な言動をしていた頃のスピーチの方が好みだった。しかし戻ってしまったせいで刺激がなくなってしまった。

 なので今日からティーパーティーの聖園ミカを虐めてやることにした。アイツはティーパーティーの桐藤ナギサ様や百合園セイア様を裏切ったくせに堂々とトリニティに居座っている魔女だ。そんなやつは虐められて当然だからな。

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