私、
普通の人には見えない者たち。
そんな者たちが見える私は気味悪がられ友人すらできなかった。
生まれてすぐに母親を亡くし、親戚を盥回しにされている私は、毎日を死んだように生きていた。
父親はどこの誰かなんて知らない。
親戚の人が言うには、母親は何処かの男に孕まされて帰ってきたと聞いた。
まぁ両親の事なんて母親の写真しか見たことないからどうでもいい。
今はあの居心地の悪い家から早く出たい。
最近、叔父さんとその息子(高1)が私を性的な目で見てくるのである。
叔父はこの前なんて洗濯に出した私の下着を洗濯かごから取り出して匂いを嗅いでいたし、息子の方は私の部屋に隠しカメラを仕掛けていた。
模様替えと称してカメラの前に物を置いたが次の日どかされている。
そんな事があるから身の危険を感じていて少しでも家にいる時間を少なくするために毎日図書館などで勉強している。
今は中学3年生、受験シーズン真っ只中。
志望校には推薦で入学が決まってるくらいには成績が良いし、志望校は学生寮があるので尚良し!。
叔父さんは反対していたが叔母さんが了承したので問題はない。
叔母さんは、一刻も早く私を追い出したいらしいのでこの家を出ていきたい私とはWin-winな関係なのだ。
今日も時間ギリギリまで図書館で勉強して帰ってきた私は、荷物の整理をしている。
10日後にはこの家とおさらばなので今からコツコツやるのだ。
「あっまた下着が減ってる。」
叔父なのか息子の方なのかわからんが勘弁してほしいものだ。下着だってタダではないんだから。
元々物が少ないので整理は早く終わった。
「こんなもんでいいかな。ん?何の箱だろうこれ?」
見覚えのない箱を押入れから取り出すと遺品と書かれていた。
「遺品?お母さんのかな?」
私は箱を開けると中にはお母さんが使っていたであろう筆記用具やノート、おはじき、御札みたいなのが貼ってある木製バット、何か書いてある帳簿と招き猫が入っていた。
「なにこれ?遺品って言ってもガラクタばっかりじゃん。なにこの帳簿は?友人帳?」
帳簿の名前を読んだ瞬間、帳簿から禍々しいオーラが吹き出す。
「えっ!ええっ!?なにこれ!!?」
驚いて帳簿を投げたが帳簿は宙に浮き私に向かってくる。
「ほんとに何なのよこれ!!」
後ずさっていく私を追いかけて来て私の体の中に入っていった。
「えええっ!!?なんで体に入ったのよ!!」
驚いている私の頭の中に帳簿の使い方が流れ込んでくる。
「あの不思議な者たちは呪霊って言うんだぁ。その呪霊をぶっ飛ばして名を書かせたのが友人帳」
使い方の情報は映像のように流れていきその映像に写っている私に似た1人の少女。
あれはきっとお母さんだろう。楽しそうに木製バットを振り回して呪霊をボコボコにしていた。
「私もお母さんみたいにできるのかなぁ?」
「それはお前次第だ」
「えっ?」
誰もいないはずなのに声が聞こえた。
驚いて振り返るとそこにはなんとも頭のでかい猫がいた。
「だれ?」
「お前の母親と縛りを結んでお前を守るものだ。先生とでも呼んでおけ」
「縛りってなに?」
「簡単に言えば約束みたいなものだ。お前が持ってる友人帳はいろんな人や呪霊から狙われてるからな」
「そうなの?」
「友人帳は持っていればそこに名を書いた呪霊たちを支配できる。そもそも名のある呪霊は相当強い。そんな者たちを支配できるのだ。誰だってほしいに決まってる」
「先生もほしいの?」
「私はお前の死後友人帳をもらい受ける縛りを結んでいる」
「じゃあ先生が私を殺して友人帳を奪う?」
「それはできない。縛りで私はお前を殺せない」
「そうなんだぁ」
「まぁ人の寿命など私からすればあっという間だ。その間は守ってやるさ」
「ありがとう先生」
私は先生を撫でながらお礼を言う。
「そうだ、先生は他の人に見えるの?」
「この姿なら他の者達には猫にしか見えんが力を持つ者なら私が呪霊と気づくだろう」
「猫の姿でもこの家ではまずいかな。私は居候だから」
猫なんて拾ってきたとしれたら大変なことになってしまう。
叔父は飼ってもいいと言うだろうが代わりに何を要求してくるかわからない。
それに学生寮でも飼えないだろうから周りの人に見えないのがベストなのだがどうしたものか。
「なら家にいる時は人形のマネでもしといてやる」
「ありがとう先生。この部屋にはカメラが仕掛けられてるから気をつけてね?」
「はあ?」
私は先生を抱いて布団に入り眠ることにした。
次の日の夜。
私は先生と夜の散歩に出ていた。
風が冷たいが星空がキレイなので良しとする。
しばらく歩いているといきなりくわい膜が降りてきた。
「えっ!なのこれ!!」
「帳だな。呪術師が使う結界みたいなものだ」
「呪術師って?」
「呪霊を祓って商売してる人間のことだ」
「ええっ!!それじゃあ先生を祓いに来たの?」
「いいや、別のやつだろう。あちらから気配がする」
先生がそういった直後眼の前に何か落ちてきた。
「今度は何ぃ!!」
「気をつけろ夏目!なんかやばいのが来る!!」
先生が私の前に立ち警戒する。
私は護身用に持ってきたお母さんが使っていた木製バットをかまえる。
煙がはれて見えたのは前髪が特徴的なイケメン少年が黒い玉を持っている姿だった。
少年はこちらに気づくと笑顔で「こんばんわ」と言ってきた。
「こっこんばんわ?」
先生がいまだに警戒してるので私もバットをかまえる。
「怖がらせてしまい申し訳ありません。少しお聞きしたことがあるのですが」
「なっなんでしょうか?」
「貴女から呪力を感じますし、貴女が連れているその猫みたいなのは呪霊ですよね?」
見ただけで先生が呪霊だなんてわかる人は危ない人だって先生が言っていた。
どうしよう。逃げる?いや無理だろう。
だからといって正直に答えるのもなんかヤバい気がするし、ホントどうしよう。
「できれば早く答えてもらいたい。私も暇ではないのでね」
「わっ私は一般人です!!」
嘘ではない!
だって呪霊とか知ったの昨日だし、呪力とか言われてもわかんない!
「私がそんな見え透いた嘘に騙されると思うか?本当の事を言わないのなら君をこの場で呪詛師として処理させてもらう」
前髪さんがそう言うと前髪さんの後ろから呪霊が出てきた。
どうしよ!こちらの話を全く信じてくれない!!
呪詛師ってなに!!呪術師と何が違うの!!
「まったく、面倒な小僧だ。おい夏目、こいつ食っていいか?」
「ダメ!!絶対ダメ!!もっと穏便にいこうよ先生!」
「穏便も何もあの小僧がお前の言う事を信じないなら殺るしかあるまい?」
「それホントダメだから!」
「夏目?もしかして夏目星羅さん?」
私が先生と言合っていると前髪さんに名前を呼ばれた。
えっ?何で私の名前知ってるの?
私の知り合いにあんなイケメンいないんだけど!!
ん?いやまって、今思えばあの特徴的な前髪はどこかで見たことがある。
どこだっけ?
図書館?いや違う。
となれば学校?………はっ!?
「もしかして夏油君?」
夏油君。
それは確か隣の席の男子の名前だった気がする。
転校ばかりしてたからクラスメイトを覚えようとしない癖がついてしまっていたので今のクラスメイトも覚えていなかったが、彼は前髪が特徴的だったので頭の隅で覚えていた。
「そうだよ。まさか夏目さんが呪術師だったなんて」
「ん?私呪術師じゃないよ?」
「えっ?」
「呪霊って言う不思議な物は小さい頃から見えていたけど、それが呪霊って言うのは昨日知ったし、呪術師や呪詛師?呪力?なんてもねは今日始めて聞いたよ?」
私がそう答えると、夏油君はぽかーんとしていた。
「ほっ本当に?」
「うん」
「かなり大きい呪力を持っているのに?」
「呪力ってなに?」
「そんな強力な呪霊を従えてるのに?」
「先生は私のボディガードだよ?」
「意味がわからない」
夏油君が頭を抱えてしまった。いったいどうしたのだろうか?
「はぁ、今日はもう遅いし、色々と疲れてしまったから明日の放課後開けといてくれないかい?」
「うっうん、わかった」
「それじゃぁまた明日」
「さよなら。おやすみなさい夏油君」
夏油君に挨拶して先生を抱きかかえて私は家に帰っていった。