「ずびばぜんでじだ」
夜蛾先生とヒノエにボコボコにされてギャグ漫画みたいに顔を腫らした五条君が土下座で謝ってきた。
「わっ私は来にしてないから!頭を上げて!あれは事故みたいなものだしね?」
うん、あれは事故だったから気にしてはいけない!!
「夏目がこう言ってるから今回はこんなもんで済ましてやるが、いいかい?坊主、夏目に手を出したらタダじゃ置かないからね!!」
元はと言えばヒノエが今回の原因なのではないだろうか?
「それでは俺は戻る。夏目、悟、学校でな」
「はい」
「ばい」
「それじゃあ私も戻るよ夏目。なにかあったらすぐに呼んでおくれ!」
「うっうん。ありがとうヒノエ」
夜蛾先生とヒノエがいなくなって一気に静かになった部屋。
私と五条君は向かい合って座っている。
先生は我感せずって感じでベットで寝ている。
「なあ」
「はっはい?」
「さっきの話だけどさ」
「うっうん」
さっきの話って五条君が私の後ろ盾になるってやつだよね?
「俺は何も気にしねぇからやらせてくれよ」
五条君は本当に優しい人だ。
今まで生きてきてこんなに優しくされたことなんてなかった私はどうしていいかわからなかった。
「ありがとう五条君。でもこれは私の問題だから」
これでいい。
きっとこれからいろんな目に合うだろう。
けれどそれは私自身の力で解決していかないといけないことがから、五条君を巻き込んではいけない。
「わかった」
よかった。
これで五条君を巻き込まなくてすむ。
「俺が勝手に夏目の後ろ盾になる!」
「へっ?」
「そんで夏目を最強にしてやる!!そうすれば上のジジイたちも何も言わなくなるで一石二鳥だ!」
小さな子供のような無邪気な笑顔を浮かべながらそう言ってくる五条君。
私のためにそう言ってくれるのは嬉しいけど、どうして今日会ったばかりの私に良くしてくれるのだろうか?
「どうしてそこまでしてくれるの?」
「あん?そんなのダチだからに決まってんだろ?」
「えっ?」
「なんだよ?嫌なのか?」
「えっいやっそうじゃなくて!私達友達だったの?」
「そうだろう?一緒に買い物行って一緒に飯食ったんだからもう俺と星羅は友達だろ?」
今まで友達なんか一人もいなかったからどうすれば友達になるかなんてわからなかった。
そっか。そんな簡単なことで友達ってできるんだ。
人と距離を置きすぎてそんな簡単なこともわからずに今まで生きてきた私に五条君が教えてくれた大切なこと。
きっと私はこの日を忘れることはないだろう。
「そうだね。私達は友達だね。これからよろしくね五条君」
「おう!よろしくないよな星羅!!」
人生初の友達ができた瞬間だった。
初めての友達が男の子って言うのも思うところがあるが私は気にしない。
「おい夏目、そろそろ夕食の時間だぞ。早く作れ!!」
今まで寝ていた先生が起きてそう言ってきた。
時間を見ると18時36分だった。
「そうだね。食堂に行って準備しないと」
「まずは酒とツマミをだせ!!」
「はいはい。五条君は何が食べたい?」
「俺は辛いもの以外だったら何でも良いぜ?」
なんでも良いが一番困るって世のお母さんたちは言っていたがホントに困るとは思ってもいなかった。
買ってきた食材とにらめっこしながら何を作るか考える。
まずは先生のおつまみに油揚げにハムとチーズを入れてトースターで焼く。
焼き上がったらお皿に盛り付けて鰹節を乗せて完成!。
「はい先生」
「おおう!こいつはなかなかうまそうだ!」
「熱いから気をつけてね」
先生はおつまみを食べながら猫殺しと書かれたお酒を飲んで上機嫌である。
猫殺しってマタタビでも入っとぃるのだろうか?
「うまそうだなぁ。ねこ、俺にもくれよ」
「これは私のだ!ほしければ夏目に頼め!!」
「ケチケチすんなよっと!」
五条君がそう言うとおつまみが独りでに動き五条君の手の中に入る。
きっと術式を使ったんだろうと思うけどそんな使い方していいの?
「あむ。んん!!これうめぇー!」
「貴様!!私のだといただろうが!!!」
「ケチくさい猫だなぁ。1個ぐらいいいじゃん!!」
そう言ってもう1個食べる五条君。
「もう許さんぞ!!」
先生が五条君に飛びかかる。
「うわっ!!そんな怒んなよ!!」
はたから見ればイケメンと猫が戯れているように見えるが、実際は特級呪霊と呪術師のくだらない理由で始まった取っ組み合いである。
まったく、食堂で暴れたらホコリが立つじゃない!!
私は料理を中断してバットを取り出し一人と一匹に近づいていく。
私が近づいて来たことに気付いた先生と五条君は顔を青くして抱き合って私を見る。
「おっおおおおちつけ夏目!!」
「悪かった!俺達が悪かったからああああ!!!」
「聞く耳持ちません♪」
「「ギャアアアアアアアアアアアァァァァァ!!!!」」
先生たちにお仕置きして私は料理を再開する。
メニューはエビフライだ。
タルタルソースは作るのが面倒なので市販されている物を使う。
「できましたよ〜」
そう言って先生たちの前に出すと目を輝かせながらエビフライを食べ始めた。
「やっぱ星羅の飯はうまいなぁ!」
「お口にあって良かった」
人に料理を食べさせるなんて初めてのことだった。
しかも五条君みたいにお金もちの人なんかが初めてとか物凄く緊張したよ。
エビフライはあっという間にあと一本になり五条君の箸と先生のフォークがぶつかる。
てか先生どうやってフォーク持ってんの!?
「おい小僧!このエビフライはわたしのものだ!!」
「は?これは俺が食うんだよ!」
また喧嘩をしそうになってる!
ここは私が取り上げて食べるべきなのだろうが生憎お腹がいっぱいなのでそれはできない。
「喧嘩するならまた殴るよ?」
「「ッ!?」」
バットを取り出しながらそう言うと先生と五条君は体をビクつかせる。
「けっ喧嘩なんかするわけないだろ?なぁ猫」
「もっもちろんだ!だからそれをしまえ夏目!!」
「それならいいけど」
私はそう言ってバットをそまうと先生たちはヒソヒソ話し合っていた。
「おい猫、これをくれたらお前にとって良いことをしてやる」ヒソヒソ
「ほぉ、言ってみろ小僧」ヒソヒソ
「このエビフライをくれたら定期的に俺の家が贔屓にしている酒蔵から酒を持ってきてもらってお前に渡してやる」ヒソヒソ
「むむ!いい提案だが量はどれくらいだ?」ヒソヒソ
「週5本でどうだ?」ヒソヒソ
「いいだろう!今回は譲ってやる。だが明日には5本用意しろ!!」ヒソヒソ
「良いぜ!そんじゃこれは俺が食う!!」
どうやら話し合いで終わったみたいでよかった。
夕食を食べ終わった後、五条君が何処かに電話をしていた。
「もしもし?俺だけど、明日家が贔屓にしてる酒蔵から上等な酒5本高専にもってこい。あぁ?何に使うかって?んなもん関係ねぇだろうが!!いいからもってこい!持ってこなかったら家ふっとばすからな!!そんじゃよろしく」
ガラ悪!!
白髪にサングラス、スウェットじゃなくてスーツだったら完璧にそっち系の人にしか見えないよ!!
「五条君、お酒って何に使うの?」
「ん?猫にやるやつだけど?」
「へ?」
「だって星羅じゃ酒買えないだろ?他の人に頼むのも嫌そうだったから家に余ってるやつやるよ」
「えええ!?そんなのもらえないよ!!」
「いいっていいって!蔵の中に腐るほどあるし毎月送られてくるから何の問題もないし処理してくれる方がありがたい!」
「そこまで言うならわたしが全部飲み干してやるそぉ〜」
お酒を飲んで上機嫌である先生がふらふらしながらそう言ってくる。
てか一升瓶全部飲んだの!?
「おう!飲め飲め!!」
「夏目〜酒だー!さけもってこぉい!!」
「今日はもうダメ!!もう寝るよ!」
「ほら行くよ先生」
そう言っ先生を抱きかかえる。うぇ!お酒臭い。
「五条君おやすみなさい」
「おう、また明日な!」
「うん、また明日」
また明日なんて今まで言われたことなんてなかったし言ったこともなかった。
きっとこれからは毎日言えるし言ってもらえるのだろう。
だって私はもう一人ではないのだから。