朝起きて制服に着替える。
今日から呪術師としての生活が始まる。
朝食のフレンチトーストを先生と一緒に食べると、ドドドッて何かがものすごい速さで近づいてくる。
何事かと思い食堂の入口に目をやると「めっちゃいい匂いがする!!」って言いながら五条君が現れた。
「おっおはよう五条君」
「おっす星羅!何食ってんの?」
「フレンチトーストだよ。よかったら五条君も食べる?」
「いいのか?」
目をキラキラしながらそう言ってくる五条君。
「うん。先生のおかわりを作るから大丈夫だよ」
そう言って五条君の分も作ってあげた。
五条君はそれを美味しそうに食べてくれたので作ったかいがあった。
朝食を済まして五条君と一緒に教室に入ると、夏油君ともう一人女の人がいた。
「おはよう夏油君」
「おはよう夏目、それにポンタも」
夏油君に挨拶をした後、女の人にも挨拶をする。
「はじめまして。夏目星羅です。これからよろしくお願いします」
「よろしくねぇ〜私は家入硝子っ!?」
家入さんは私を見て、まぁ正確には抱きかかえている先生を見て驚いていた。
きっとこんなに堂々と呪霊を連れているのだから驚いたのだろう。
「かっ」
「え?」
「かわいいぃぃぃぃぃ!!」
そう叫んだ家入さんは私から先生を奪い取って抱きしめる。
「なにこの猫!抱き心地最高なんだけど!!あああっ可愛くて最高!!」
うん。確かに先生は抱き心地は良いのはわかるけど、かわいいかと言われると微妙である。
「ぬぉ!離せ小娘!!タバコ臭いわ!!」
先生は短い手足をバタバタさせて逃げ出そうとするが逃げ出せないでいた。
「なぁ、あれかわいいか?」
「女性からしたら可愛いじゃないのかい?私にはわからないけど」
どうして良いかわからずオロオロしていたら夜蛾先生が入ってきた。
「おい、授業を始めるから座れ」
そう言われたので席についた。
先生は未だに家入さんに抱かれたままだった。
「お前たちの担任の夜蛾だ。お前たちはこれから呪術高専で呪術を学んでもらう」
そして始まった呪術の授業。
私は全くの素人だからついていけるか不安だったがわからないことは五条君が丁寧に教えてくれた。
座学はなんとかなったけど実技は全くもってダメだった。
ついこの間まで一般人だったのでしかないが、体力もないのですぐにバテてしまう。
「夏目は体力作りからだな」
夜蛾先生にそう言われて体力作りをしていく。
五条君と夏油君はすごかった。
最初は喧嘩していたけど今ではすっかり仲良しで色々教え合っている。
喧嘩の余波で校舎が半壊したけどね。
家入さんは、反転術式ってのが使えるらしい。
反転術式とはまぁ簡単に言えば治癒魔法みたいなもの。
この反転術式を他者にかけられるのは大変珍しいって五条君から教わった。
皆で家入さんにどうやっているのか聞いたら「ヒュッてやってヒョイって感じ」って言われたので皆で首を傾げてしまった。
そんなある日のこと。
校庭で体力作りをしていた時に家入さんが私に聞いてきた。
「ねぇ夏目」
「はい?」
「夏目の術式ってどんなの?」
「私のですか?」
「うん」
「それは私も気になるね。悟も気になるだろ?」
「俺はもう知ってるから」
夏油君までこっちに来た。
「見せてよ夏目」
「いっいいのかな先生」
「こやつらであれば問題ないだろう」
「そっか。でも誰を呼べばいいの?またヒノエ?」
「ッ!!?」
私がヒノエの名を出したら五条君がビクッとした。
「悟?」
「なっなんでもねぇ!」
あっ!そういえば五条君はヒノエに怒られたんだっけか。
「あいつは呼ぶと面倒だからな。今回はミスズあたりでいいだろう」
先生がそう言ったので私は呼び出すために集中する。
「我を守りし者よ我が呼びかけに応じ姿を見せよ。ミスズ」
ボンッと大きな煙が上がり中から出てきたのは、人の身体に馬の顔を持った大きな呪霊だった。
「これはこれはレイコ殿、なにか御用ですかな?」
「あのっ私はレイコじゃありません」
「ん?何を言っておられるので?」
「レイコは私のお母さんです。私は娘の星羅です」
「ほう、娘とな。ではレイコ殿はもうこの世には」
「私を産んですぐに亡くなりました」
私がそう言うとミスズは少し寂しそうな顔をしていた。
「そうか。人の命とは相変わらず短い。ほんのついこの間名を書いたと思っていたのに。ああ、なんと短いことか」
ミスズが懐かしそうにしているのを私は見ているしか出来なかった。
「それで夏目殿は何用で私を呼んだので?」
「お母さんから受け継いだ友人帳が使えるか試してみたんです。用もないのに呼んでしまってごめんなさい」
「謝ることはありませんよ夏目殿。私どもは暇な呪霊です。レイコなど歩くのが面倒だからと私達を馬代わりにしておりましたよ」
クククッとミスズは懐かしそうに笑った。
「ねえミスズ」
「なんですか?」
「お母さんがどんな人だったか教えて?」
「私の知っていることでしたらお話しましょう」
そこから語られたミスズの知るお母さんの話し。
いきなり現れては勝負をけしかけ負かした呪霊に名を書かせ子分にしていき、また強そうな呪霊を見つけては勝負する。
暇だからと呪霊を呼び出しては呪霊たちをおもちゃにして遊ぶ。
移動が面倒だからと呪霊をタクシー代わりに使うなど結構やんちゃしていたらしい。
「レイコの周りは常に呪霊が集まっていた。しかし人の子は1人もいなかった。いや、レイコは人と関わろうとしなかったのです」
「どうして?」
「さぁ。私は呪霊なので人の考えなどわかりませぬ。しかしレイコは人を見ている時はとても寂しそうではありました」
きっとお母さんは人と関わりたかったのだろう。
しかし自分の強すぎる力で関わった人が不幸になるのを見たくなかった。
だから1人でいることを選んだのだろう。
望んで手に入れた力ではないにしてもお母さんはしっかりと力を持つ者の責務をまっとうしたのだろう。
夏油君が言っていた弱者生存、それをお母さんはしたんだと思う。
そんなことを思っていると夜蛾先生がこっちに走ってきた。
「お前たち!!何をしでかした!!!ってミスズ!!」
「ほう、これはこれはレイコに言い寄って派手にふられた小僧ではないか」
そういえばヒノエもそんなこと言ってたような気がした。
「えっ!夜蛾セン星羅の母ちゃんに告ってふられたの?ウケる!!」
「あんなヤクザみたいな顔で告白されても怖いだけじゃないかい?」
「ないわー。先生が父親とかないわー」
「えっと、そのぉざっ残念でしたね?」
「「「ブハッ!!」」」
私の言葉に三人が吹き出した。
「アハハハッ星羅最高!!」
「夏目、その言葉は先生の心をえぐっているよプハッ!」
「残念でしたねってアハハハッ!残念ってアハハハッ!!お腹痛い!!」
笑い転げている三人をオロオロしながら見ていたら夜蛾先生がぷるぷるしだした。
あれはヤバいのではないだろうか?
「ガッデーム!!!!」
思ったとおり夜蛾先生の怒りが爆発した。
笑い転げていた三人が夜蛾先生の拳骨をくらって漫画みたいなたんこぶを頭に作っていた。
「それで?夜蛾先生はどうしてここにきたんですか?」
夏油君が代表で聞いた。
「校庭でいきなり特級クラスの呪霊の反応があれば何かあったと思うだろが!!」
私がミスズを呼んだからこうなってしまったらしい。ごめんなさい!!
「まぁ何事もなくてよかった。夏目、これからは報告してから呼び出してくれ」
「はい。お騒がせして申し訳ありませんでした」
私が夜蛾先生に謝っていると三人はミスズに近寄ってなにか話していた。
「なあなあ。夜蛾センってどんな感じで告ったの?」
「告白の言葉とふられた時の言葉を教えてくれないかい?」
「レイコさんなんて言ったのぉ?」
三人はまったくこりてなかった。
この後三人はまた夜蛾先生の拳骨をくらって頭にサー◯ワンのダブルアイスみたいなたんこぶを作っていた。