最強魔法師の壁内生活   作:雅鳳飛恋

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第2話

「そういえば、前回の試験結果はどうだったんだ?」

 

 試験毎に結果が発表される。

 総合順位、実技順位、筆記順位をそれぞれ発表して生徒間で競わせ、競争心と向上心を養うのが目的だ。

 

 ジルヴェスターは自分の順位に興味がなかったので、発表された順位に軽く目を通しただけで詳しくは確認していない。なので、他の人の順位は把握していなかった。

 

「私は実技九位、筆記十二位で総合は八位」

 

 ステラは首を傾げながら記憶を辿って順位を思い出す。

 

「それなら次の試験も大丈夫そうだな」

「ん」

 

 前回の成績を(かんが)みれば次の試験も余程のことがない限りは大丈夫だろう。――日頃から訓練と勉強を怠っていなければの話だが。

 

「お前は?」

「わたし?」

 

 ジルヴェスターに話しを振られたオリヴィアは首を傾げると、右手を頬に添えて記憶を辿る。

 

「わたしは実技十五位で筆記は二位、そして総合は十二位だったわ」

 

 筆記よりも実技の結果を重視する傾向にあるので、筆記の結果が良くても順位は上がりにくい。オリヴィアがわかりやすい例だ。

 

 二人とも学年上位の成績を残しており、順当に行けば対抗戦の代表選手に選抜されるだろう。――もちろん絶対ではないので断言はできないが。

 

「ジルくんは全て一位だったものね」

「ああ」

 

 オリヴィアの言う通り、ジルヴェスターは実技と筆記ともに一位だった。なので、当然総合でも一位だ。

 ジルヴェスターが大したことではないと言うかのように平然と頷くので、オリヴィアは肩を竦めながら苦笑する。

 

「ジルだから」

「そうね。ジルくんだものね」

 

 驚くことなくお決まりの台詞を呟くステラと、慣れた調子で相槌を打つオリヴィア。

 

「おい……」

 

 小さく溜息を吐いたジルヴェスターは二人に抗議の視線を送る。

 

 二人にとってジルヴェスターは、なんでも高水準でこなす完璧な人として認識されている。

 文武両道(ぶんぶりょうどう)眉目秀麗(びもくしゅうれい)冷静沈着(れいせいちんちゃく)博識多才(はくしきたさい)八面六臂(はちめんろっぴ)蓋世之材(がいせいのざい)を地で行くと思っているからこその反応だ。

 

「俺も普通の人間なんだが……」

 

 ジルヴェスターがそう愚痴を零すと――

 

「ふふ、そうね。ジルくんにも至らないところはあるものね」

 

 とオリヴィアが意味深な表情と声色でフォローする。

 

「……」

 

 だが、ジルヴェスターは黙り込んでしまう。

 実のところジルヴェスターはオリヴィアに対して後ろめたいことがある。

 それに関してオリヴィア自身は容認しているのだが、どうしても割り切れないのだ。

 

 沈黙が場を支配しようとした時、背後から声が掛かった。

 

「よっ。おはようさん」

 

 後方の入口からアレックスがやって来た。

 彼はジルヴェスターの隣に腰を下ろす。彼が座る席も既に指定席同然になっている。

 

 三人が挨拶を返すと、アレックスが口を開く。

 

「何を話していたんだ?」

「対抗戦について」「試験について」

 

 対抗戦を楽しみにしているステラと、試験に集中しているオリヴィアは同時に異なった返答をする。

 

「どっちだよ……」

 

 アレックスは呆れて溜息を吐くが、思い出したようにジルヴェスターに視線を向ける。

 

「そうだ。ジル、試験勉強見てくれないか? 主に筆記の方を」

 

 オリヴィアが言った試験という単語で思い出したのだろう。

 アレックスはジルヴェスターに頼み込むが、相変わらず態度と口調は軽い。

 

「意外だな」

 

 ジルヴェスターは意外感をあらわにする。

 アレックスがあまり真面目なタイプに見えないからだ。

 実技はともかく、筆記は二の次という印象がある。

 

「まあ、好き好んで勉強はしないが、俺も一応フィッツジェラルドの名を名乗っているからな。最低限の成績は残しておかないと家名に傷がついちまう」

 

 アレックスは名門――フィッツジェラルド家の直系だ。

 不甲斐ない成績を残すと家名を貶めることになりかねない。

 

「俺はどう思われても構わないが、家名に恥じない成績を残した兄たちと姉たちに申し訳ないし、何より下の兄弟たちに汚名を着させてしまうのはプライドが許さん」

 

 今まで上の兄弟が優秀な成績を残して家名を高めて来たのに、万が一自分の所為で貶めることになっては面目が立たなかった。

 最悪、下の兄弟に「自分たちが頑張らないと」と余計なプレッシャーを与えてしまうかもしれないし、兄の不甲斐なさを嘲笑(あざわら)われたり、揶揄(からか)われてしまったりする恐れもある。

 それだけはなんとしても避けたかった。

 

「お前も大変なんだな」

「まあな」

「そういうことなら協力しよう」

「助かるわ。恩に着る」

 

 友人の助けになるなら断る理由はないので、ジルヴェスターは協力することにした。

 

「せっかくだし、私たちもご一緒させてもらえないかしら?」

 

 オリヴィアも勉強会に参加を申し出る。

 いずれにしろ勉強はしないといけないし、ステラの勉強を見なくてはならないので渡りに船だった。

 

「構わんぞ」

「ありがとう」

 

 ジルヴェスターが了承するとオリヴィアは微笑んだが、ステラは無表情を貫いていた。

 おそらく対抗戦のことで頭の中が埋め尽くされているのだろう。

 

 そして見計らったかのように会話が一段落したタイミングで予鈴(よれい)が鳴り、前方の扉から担任のメルツェーデスが姿を現した。

 

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