最強魔法師の壁内生活   作:雅鳳飛恋

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第4話

 ◇ ◇ ◇

 

 同時刻――生徒会室でも勉強会が開かれていた。

 

「会長とサラ先輩は試験勉強しなくてもよろしいのですか?」

 

 アンジェリーナが手元から顔を上げて質問する。

 みんなが勉強している中、クラウディアとサラだけは生徒会の業務を処理していたからだ。

 

「ええ、大丈夫よ。みんなは気にせず勉強していて」

「ですが……」

 

 クラウディアは微笑んでいるが、アンジェリーナとしては先輩に仕事を押しつけて自分たちだけ勉強していてもいいのだろうか、と気が引けていた。

 

「気にするな、気にするな」

 

 肘をデスクについて左手に顎を乗せているカオルが、右手を軽く振りながらそう言う。

 

 風紀委員長のカオルは良く生徒会室に入り浸っている。

 役職柄生徒会とやり取りすることが多いというのもあるが、単純に暇潰しに来ることも多い。

 なので、今日は彼女も一緒に試験勉強に励んでいた。

 

「二人に試験勉強は必要ない」

「そんなことないわよ」

 

 カオルの言い様にクラウディアが真面目な顔で否定する。

 

「いやいや、二人は筆記で一位と二位から落ちたことないだろ」

 

 クラウディアとサラは入学以来、筆記試験で一位と二位を独占していた。

 二人が一位と二位で入れ替わることはあるが、三位以下に落ちたことはない。

 

「さすがですね」

 

 素直に感嘆するアンジェリーナ。

 

「ちゃんと授業を聞いていればできることですよ」

「いやいやいやいや」

 

 サラにとっては、授業を真面目に受けていれば試験の度に焦る必要は微塵もないことだった。

 だが、納得がいかないカオルは顔を左右に二回ずつ振ると、呆れたように愚痴を零す。

 

「授業を真面目に聞いていたところで全て覚えられないだろ」

 

 確かに一から十まで覚えられたら誰も苦労はしない。もっともな指摘だ。

 

「覚えられなくても要点をまとめ、出題されるであろう箇所に焦点を絞って復習すれば済む話ですよ」

「出題される問題を予測できたら苦労しないんだよ……」

 

 カオルは深々と溜息を吐いて肩を竦める。

 サラにとっては簡単なことでも、カオルには真似できないことであった。

 

「私も完璧に予測しているわけではありませんよ」

 

 とはいえ、いくらサラでも出題される問題を完璧に予測することはできない。

 全てをピンポイントで予測するのは不可能だ。

 

「ある程度の範囲に絞っているだけです」

 

 (おおよ)その範囲に限定してしまえば復習する負担は減る。

 

「その予測が外れたらどうするんだよ……」

 

 確かに予測が外れたら目も当てられない。

 

「今のところ予測が外れたことはありませんね。それにもし外れたとしても、普段から授業を聞いているので大体は答えられます」

 

 書類整理する手を止めないで答えるサラの姿には余裕が感じられる。焦る必要などないと言っているかのようだ。

 

「クラウディアはどうだ?」

 

 カオルは堪らず親友にも尋ねてみる。

 すると、クラウディアは困ったように眉尻を下げた。

 

「私はサラとは違うわよ」

「と言うと?」

「私は普段から欠かさずに勉強しているだけだもの」

 

 つまりは努力の賜物(たまもの)というわけだ。

 

 努力だけではどうにもならないことはある。

 それでも一位と二位から落ちたことがないのだから、そもそも頭のできが違うのかもしれない、とカオルは思った。

 

「座学に関してはクラウディアが秀才型で、サラは天才型ってことだよ~」

 

 デスクに上半身をうつ伏せて脱力しているビアンカが述べる。

 

「なるほど。わかりやすい例えですね」

 

 得心したアンジェリーナが頷く。

 

「先輩はちゃんと勉強してくださいよ~」

 

 クラーラが涙目になりながらビアンカの身体を揺する。

 みんなが勉強する中、一人だけ焦る様子もなくのんびりと過ごしているビアンカが心配で、試験は大丈夫なのかと不安になっていた。

 

「まあ、大丈夫でしょ~」

 

 それでもビアンカはマイペースを保っている。

 表情にも態度にも焦り一つ見受けられない。ある意味肝が据わっていた。

 

「そんなお前が意外と筆記の成績いいから世の中理不尽だよな……」

 

 カオルが遠い目をして嘆く。

 

 余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)としているビアンカだが、これでも筆記の成績は悪くない。

 焦ることなくのんびりしているのは確たる自信故だった。

 

「先輩~」

 

 いくら成績がいいとはいえ、心配なのは変わらない。

 なので、クラーラは勉強させようと必死で身体を揺する。

 

「クラーラはかわいいな~」

「ふえ~」

 

 当のビアンカは、涙目のクラーラの頬を摘まんでふにふにと(もてあそ)ぶ始末だ。

 

 (もてあそ)ばれても文句一つ言わないクラーラは、愛らしくていい後輩であった。かわいがられるのも納得だ。

 

 クラーラのお陰で場が(なご)み、一同に笑みが零れた。

 

 その後も和気藹々(わきあいあい)と緊張感に欠けたまま勉強会が進んでいくが、果たして一同の試験結果はどうなるのであろうか。

 

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