最強魔法師の壁内生活   作:雅鳳飛恋

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第21話

 ◇ ◇ ◇

 

 ネーフィス区のリンドレイクで周辺を調査していたアウグスティンソン隊の面々は、一度調査を切り上げてワナメイカー本社に続々と集合していた。

 

 ワナメイカー・テクノロジーはアウグスティンソン隊の任務に協力している立場だ。

 ワナメイカー・テクノロジーから依頼を受けてアウグスティンソン隊が任務を引き受けたわけではなく、連日新聞を騒がせている事件について調査をすることにしたアウグスティンソン隊に、あくまでワナメイカー・テクノロジーが協力している形だ。

 

 ワナメイカー・テクノロジーとしては警備員も雇っているが、魔法師が自ら調査に乗り出してくれるのならメリットしかないので願ったり叶ったりだった。場所を提供するくらいお安い御用である。魔法師がいてくれるだけで抑止力にもなるので断る理由などない。誰も魔法師がいるところに襲撃しようなどとは思うまい。非魔法師ならば尚更だ。

 

「隊長、アビーとビルがまだ戻ってきません」

 

 隊員の一人がマイルズに伝える。

 

 アウグスティンソン隊は隊長であるマイルズを除いて十五人の隊員がいる。

 この場には現在十三人の隊員が戻ってきているので、二人足りないことになる。

 

「何かあったのかもしれません」

 

 戻ってこないということは、何かトラブルに巻き込まれた可能性が高い。

 

「そうだな。だが、あの二人なら心配ないだろう」

 

 アビーとビルはアウグスティンソン隊の中でも精鋭に分類される優れた魔法師だ。

 二人の実力を把握しているマイルズは全幅の信頼を寄せている。

 

「何かあれば(テレ)――」

『隊長!!』

「――っ!?」

 

 『念話(テレパシー)』を行使すれば離れていても連絡することは可能だ。

 

 『念話(テレパシー)』は無属性魔法の第六位階魔法で、任意の相手に念話(テレパシー)を飛ばして会話をすることができる支援魔法だ。念話(テレパシー)を飛ばす相手と距離が離れているほど魔力を消費する。

 

 第六位階魔法は高度な魔法だが、無属性は魔法の資質がある者には等しく備わっている適正であるが故に、他の属性よりも比較的難易度が低くなっている。

 なので、同じ第六位階の魔法でも無属性魔法は他の属性の魔法より難易度が低い。――例外もあるが。

 

 アウグスティンソン隊の精鋭であるアビーとビルも当然『念話(テレパシー)』を行使できる。

 マイルズは二人のことなので何かあれば念話(テレパシー)を飛ばして来るだろうと踏んでいた。

 

 そしてマイルズの言葉を遮るように念話が飛んで来たのだ。

 

念話(テレパシー)だ」

 

 彼は周囲の隊員たちに念話(テレパシー)が飛んで来たことを伝えると、念話(テレパシー)に意識を傾ける。

 何かあったのだと判断した隊員たちの中に緊張が走った。

 

『アビーか?』

『はい! 私です!』

『何があった?』

 

 優秀な魔法師であるアビーとは思えない慌てぶりだった。

 

 マイルズはアビーを落ち着かせるように悠揚な口調で尋ねる。

 

『反魔法主義者と思われる者を追跡中に、市民が奴らに襲撃されそうになっているところに遭遇しました』

『何!?』

『即座に市民を保護しましたが、現在交戦中です!』

『そうか。良くやった』

 

 アビーは焦っているのか捲し立てるように早口で言葉を紡ぐ。――念話(テレパシー)なので実際には口から言葉を発しているわけではないが。

 

『隊長、奴らの中に魔法師がいます!』

『なんだと!?』

 

 どうやらこれが慌てている原因だと、マイルズは当たりをつけた。

 

 反魔法主義を謳っている連中の中に魔法師がいるとは普通思わないだろう。

 

 この場面での魔法師は魔法的資質を有する者を指す。

 反魔法主義の者なら魔法技能師ライセンスを取得していない者もいるだろう。むしろ取得していない方が理解できる。

 

『目視可能な範囲に四名の魔法師がいます! 奴ら予想以上に手練れで保護対象を抱えたままの現状では厳しいです。至急応援をお願いします!』

『了解した。至急応援を送る』

『ありがとうございます』

『対象の確保も重要だが、市民の保護が最優先だ。無理はするな』

『了解です。場所は――』

 

 情報を集める為には反魔法主義者の確保も重要だが、現状最も優先すべきは保護している市民の安全だ。

 いくら優秀な魔法師であるアビーとビルでも、市民を保護したままでは対象を確保するのは厳しい。

 

 アビーは中級三等魔法師で、ビルは中級五等魔法師だ。

 中級魔法師は前線で活躍できる一線級の魔法師だが、言い換えれば上級魔法師になれない者ということでもある。――もっとも、今後上級魔法師になれる可能性はあるが。アビーとビルは二十代と若いのでまだ将来性がある。

 

「グレッグ、四人付ける。至急応援に向かってくれ」

 

 マイルズは近くにいた壮年の男性に命令を出す。

 

「おうよ。任せろ」

 

 壮年の男性は自分の胸に右拳をドンと当てて了承する。

 

 グレッグはアウグスティンソン隊の発足メンバーであるベテラン魔法師だ。

 階級はマイルズと同じ中級一等魔法師であり、彼が最も信頼している隊員でもある。マイルズ不在時はグレッグが隊の指揮を執ることも多い。

 

 グレッグは三十五歳であるマイルズよりも一回り以上年上であり、良き相談相手で、良き理解者でもある兄弟のような関係だ。

 

 マイルズのことを隊発足以前から支えてきたアウグスティンソン隊の実質的なナンバーツーである。アウグスティンソン隊の中で最年長であり、豪放磊落な性格で隊員からも慕われている良き兄貴分だ。

 

「野郎ども。行くぞ! ついて来い!」

 

 グレッグは号令を掛けると、四人の隊員を伴って駆けて行った。――中には「わたし女なんですけどぉ~」と野郎呼びに対して抗議する者が一名いたが。

 

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