最強魔法師の壁内生活   作:雅鳳飛恋

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第37話

 ◇ ◇ ◇

 

「――代表! また拠点を一つ潰されました!」

 

 限られた者しか知らない本拠で企てている計画の準備を行っていたヴォイチェフのもとに、男性の団員が報告に駆け込んだ。

 

「何!? どこだ?」

 

 眉間に皺を寄せて険しい顔つきになったヴォイチェフは、語気を強めて団員に尋ねる。

 

「ここです」

 

 団員は壁に立て掛けてある地図の一点を指し示す。

 

「……そうか。そこなら……まあいい。今のところ重要な拠点は一つも落とされてないからな」

 

 安堵したヴォイチェフは溜息を吐く。

 

 本拠をはじめ、特に重要な拠点は信用している一部の者にしか教えていない。故に、いくら拠点を落とされても、重要な拠点でなければそこまで痛くはなかった。

 

「その程度なら計画にも然して支障はない」

 

 ヴォイチェフの右腕である細身の男が口を開いた。

 

「そうだな」

「計画通り俺はここで待機するが、お前には現場で指揮を執ってもうぞ」

「わかっている」

 

 細身の男こと――エックスが計画の概要を説明していく。

 

 エックスは本拠で待機し、ヴォイチェフが現場の指揮にあたる計画であった。

 

「我々の計画は外部に漏れていないな?」

 

 エックスが報告に訪れた団員に尋ねる。

 

「おそらく漏れていないと思います。絶対とは言い切れませんが……」

「そうか」

 

 返答を聞いたエックスは顎に手を当てて考え込む。

 そして数秒後には考えを纏め終わり、顎から手を離して指示を出す。

 

「――一応外部に漏れていないか調べろ。人員は好きに使って構わない」

「了解です」

 

 指示を受けた団員はすかさず駆け出した。

 

「確認が終わり次第仕掛けるぞ」

「こっちは今か今かと待ち草臥(くたび)れているくらいだ」

 

 ヴォイチェフは両拳を組み合わせて指の関節の音を鳴らす。

 その様子から、気合に満ちているのが周囲にも感じ取ることができた。

 

「細かな調整は俺がやっておく。お前は団員のケツを叩いておけ」

「おう。俺にはそっちの方が性に合っている。面倒なことはお前に任せるさ」

 

 ヴォイチェフは見た目からもわかる通り、文官より武官気質の人間だ。デスク作業より、現場で身体を動かすことの方が本領を発揮できる。

 

 対してエックスは現場でも無難に役目をこなせるが、文官としての職務の方がより適正が高い。

 その点、ヴォイチェフとエックスは良い組み合わせなのだろう。

 

 会話を終えるとヴォイチェフは部屋を出て行き、エックスは計画の調整作業に取り掛かった。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 一月二十四日――ジルヴェスター、ステラ、オリヴィア、アレックスの四人は、放課後になると昨日に引き続きクラブ見学に赴いていた。

 

 四人が最初に訪れたクラブは魔法研究クラブだ。

 今日は文化系のクラブを中心に回る予定である。

 

 一同はクラブ棟にある魔法研究クラブの部室に到着すると、扉をノックしようとする。

 しかし、その前に横合いから声を掛けられた。

 

「――ヴェステンヴィルキス君、見学ですか?」

 

 ジルヴェスターは自身の名を呼ぶ声の方へ顔を向ける。

 すると、そこには一人の女生徒が資料を手に持ちながら立っていた。

 

「セフォローシャ副会長」

 

 女生徒の名をジルヴェスターが呟く。

 

 女生徒は病的なほど白い肌をしている。

 紺色のストレートロングヘアを垂らし、前髪の下にある紺色の瞳でジルヴェスターを見つめていた。

 着痩せするタイプなのか本来の体型の主張は抑えられているが、凹凸の激しい身体を隠しきれていない。

 

「ええ。見学です」

「そうですか。では、私が案内しますね」

「副会長が?」

「ええ。私が魔法研究クラブの部長なのでちょうど良かったです」

「そうでしたか。では、よろしくお願いします」

 

 ジルヴェスターとのやり取りを終えたセフォローシャは、ステラたち三人に視線を向ける。

 

「そちらのお三方は初めましてですね。私は生徒会副会長及び魔法研究クラブの部長を務めている三年のサラ・セフォローシャです」

 

 セフォローシャ改め――サラが三人に自己紹介をすると、ステラたちも順に自己紹介を行った。

 

 ちなみにジルヴェスターは入学式の答辞の打合せ時にサラとは何度か顔を合わせており、自己紹介は最初に対面した際に済ませている。

 

「では、入りましょうか」

 

 自己紹介を済ませた一同は、サラを先頭に魔法研究クラブの部室に足を踏み入れた。

 

「ここは前室です。ここに荷物を置いたり、休憩したりしています」

 

 一同が足を踏み入れた先の部屋には、生徒の鞄と思われる物が棚に収納されていた。中には無造作にテーブルやソファに置かれている鞄もある。

 

 そしてそのテーブルやソファを中心に、部員たちが団欒できるスペースが確保されていた。

 

「こちらの部屋が研究室です。そして反対側の部屋が倉庫になっています」

 

 サラが部室を歩いて行き、左側の扉の前に立って説明する。

 入口の扉から見て左側が研究室の扉で、右側が倉庫へ繋がる扉になっているようだ。

 

「次は研究室に入りますが、備品には手を触れないようにお願いしますね」

 

 サラは一同に注意を促すと、取っ手に手を掛ける。

 

 研究者は資料に触れられるのを嫌う傾向にある。

 一見乱雑に置かれているように見えても、本人はしっかりと場所を把握している。なので、置き場所を少しでも変えられてしまうのは余計な手間になってしまうのだ。

 

 それとは別に、研究資料や機材には貴重な物がある。素人が軽々しく触っていい代物ではない。

 サラが注意を促すのは当然のことだ。

 

 扉を潜った先に広がる光景は、正に研究室といった様相を呈していた。

 議論を交わす者や、資料や書物と睨めっこしている者、術式を(えが)いている者など、様々な姿を確認できる。

 集中していてジルヴェスターたちの存在に気づいていない。

 

「魔法研究クラブの活動内容は広義に解釈しており、魔法に関わること全般を研究対象にしています。工学クラブもありますが、我が部では魔法工学の分野も取り扱っています」

 

 ランチェスター学園には工学クラブがある。

 工学クラブは魔法工学や魔法には関係ない一般的な工学について、研究や製作をしているクラブだ。

 

「工学クラブとは良好な関係にあり、交流も盛んに行われております」

 

 魔法工学の分野にまで手を出している現状、工学クラブの領分を侵食している形になるが、あくまでも工学クラブは工学に特化しているクラブであり、魔法研究クラブは魔法全般を対象にしている。

 時に魔法研究クラブと工学クラブで共同研究や製作に取り組むことがあり、上手く住み分けや共存ができているので両クラブ間に軋轢(あつれき)はない。

 

 その後、一同はサラに先導されながら研究室内を一通り見て回る。

 

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