最強魔法師の壁内生活   作:雅鳳飛恋

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第41話

 ◇ ◇ ◇

 

 風紀委員会委員長であるカオルは、風紀委員室で全体の指揮を執っていた。

 

『――委員長、不審な人物を発見しました』

 

 委員の一人に指示を出していたカオルに念話(テレパシー)が飛んできた。男の声だ。。

 

 風紀委員への選出には、念話(テレパシー)』を行使できる者に限るという暗黙のルールがある。

 

 迅速な対応を行う為に念話(テレパシー)は必須だ。風紀委員に求められる技能であるのは道理であろう。

 

『数は?』

『四人です』

『少ないな……』

『おそらくリスク分散の為に散らばっているのかと……』

『ふむ』

 

 カオルは(もたら)された情報を頭の中で精査する。

 

 全員行動を共にしていては万が一のことがあった場合に全滅に直結する。なので、リスク分散の為に一ヶ所に固まらないのは妥当な判断だ。

 

『――引き続き尾行しろ。但し、決して深追いはするな。危険だと思ったらすぐさま退くんだ』

『了解です』

 

 ランチェスター学園を襲撃する人員がたった四人なわけがないので、尾行して情報を得なければならない。

 だが引き際は大事だ。学生である以上、まずは自身の身の安全を最優先にしなくてはならない。その点は風紀委員に選ばれる実力者であれば心配無用だろう。

 

 デスクに両肘をついていたカオルは、念話(テレパシー)を切ると椅子の背凭れに体重を預けた。そして一つ息を吐いて気持ちを切り替えると、室内に残っている委員に声を掛ける。

 

「――生徒の動きはどうだ?」

「現在各クラブ徐々に活動を終了している模様です」

「そうか。まだ活動中のクラブは解散を急がせろ」

「了解です」

 

 指示を受けた委員は風紀委員室を出て行った。

 

(ヴァルタンが本当に来るのか、と疑わしい部分があるのが本音だが、クラウディアと学園長が確実に来ると断言しているからには間違いないのだろう……。それに警戒した結果無駄足になるのであればそれに越したことはない)

 

 カオルは背凭れに体重を預けて身体は脱力しているが、頭はしっかりと働かせている。

 

 ヴァルタンが本当に襲撃を企てているのか疑問に思うのは当然のことだろう。

 しかし、カオルにとっては親友であるクラウディアと、尊敬しているレティが確信を持って言っている以上は疑う理由などなくなる。

 

 それに警戒した結果何も起こらず全て無駄足になるのならばむしろ良い結果だろう。備えあれば患いなしだ。

 警戒を怠った結果、本当に襲撃を受けて甚大な被害を被ったら目も当てられない。無駄足になるくらいがちょうどいい。

 

『――キサラギ』

 

 思考を巡らせていたカオルのもとへ再び念話(テレパシー)が飛んできた。

 

『ヴェスターゴーアか?』

『ああ』

 

 念話(テレパシー)を飛ばしてきたのは、統轄連総長のオスヴァルドであった。

 重低音の渋い声がカオルの脳内に響く。

 

『何かあったのか?』

 

 カオルが尋ねる。

 

『各クラブの活動が終了した』

『そうか』

 

 どうやら活動していたクラブは全て終了して解散したようだ。

 

『それと配置の最終確認をしたい』

『わかった』

『事前に決めた通り、寮を始め生徒の守護は我々統轄連が主体となって行うので問題ないな?』

『ああ。構わん』

 

 カオルとオスヴァルドは事前に話し合い、風紀委員と統轄連で協力体制を敷いていた。

 

『私たち風紀委員はヴァルタンの捜索と監視がメインで、防衛面は状況に応じて臨機応変に動かさせてもらう』

『わかっている』

 

 現在風紀委員はヴァルタンの捜索と監視をメインに行っている。

 無論、学園を守る為の人員も配置しているが、カオルの性格上守るより攻めろの精神で遊撃的な役割になっていた。

 オスヴァルドとしても守戦の方が得意なので異論はなかった。

 

『――ああ、そうだ』

『なんだ?』

 

 カオルが危うく伝え忘れそうになっていたことを思い出す。

 直前まで思考の海に深く潜っていたので、完全に切り替えができていなかったようだ。

 だが、念話(テレパシー)で話している間にしっかりと切り替えられていた。

 いずれれにしろ伝え忘れずに済んでなによりだ。

 

『街中で(くだん)の連中を発見した』

『何?』

『四人だけだがな』

『それで今はどうなっている?』

『現在も追跡中だ』

『そうか』

 

 (もたら)された情報にオスヴァルドは思考を巡らす。

 その後、数秒経ったところでオスヴァルドが言葉を伝える。

 

『――また何かわかったら報告してくれ』

『ああ。もちろんだ』

 

 協力関係を敷いている以上、断る理由などはない。――そもそも学園と生徒を守る為だし、二人の仲が険悪というわけでもないので、断る選択肢など始めから存在しないのだが。

 

『……なあ、ヴェスターゴーア』

『なんだ?』

 

 カオルは歯切れの悪い口調で言葉を絞り出す。

 

『本当にヴァルタンは来ると思うか?』

『……』

 

 カオルの質問にオスヴァルドは数秒沈黙する。

 

『正直なところわからん。だが、ジェニングスが来ると言っているからには間違いないのだろう。彼女は我々の(トップ)だ。俺たちの役目は彼女について行き支えてやることだ。違うか?』

 

 クラウディアは三年生世代のトップである。

 ただ生徒会長であるということを抜きにしても、クラウディアは中心にいる。彼女の想いや人柄に賛同してついて行っている者も多い。

 オスヴァルドとカオルはその代表格だ。クラウディアの最も近くで支えている両翼と言っても過言ではない。

 

『……そうだな。すまん。少し後ろ向きになっていたようだ』

『気にするな』

 

 オスヴァルドに諭されたカオルは、胸の(つか)えと折り合いがついたような表情になった。

 

『それに大方彼女のことだ。例の人物絡みなのだろう』

『ふっ。ヴェステンヴィルキスか』

 

 カオルは呆れを含んだ笑みに変わる。

 

『彼女があれほど心酔しているんだ。余程の人物なのだろう。二日前にクラブ見学に来ていたので軽く観察してみたが、彼女の言うことが納得できる身の熟しと雰囲気を醸し出していた』

『そうか。ヴェスターゴーアが言うのならば相当できるのだろうな』

 

 オスヴァルドは実戦経験豊富だ。壁外での活動も豊富である。

 その点に限ればクラウディアよりも豊富であり、ランチェスター学園の生徒の中では、ジルヴェスターを除けば最も実践経験を積んでいるだろう。実力を疑う余地などないほど申し分ない。

 

 そんな彼が言うと確かな説得力がある。

 彼の実力を知っており、信頼もしているカオルにとっては充分納得できる言葉だった。

 

『――まあ、今こんな話をしていても仕方がないだろう』

『そうだな。今はまずやるべきことがある』

 

 オスヴァルドの言葉にカオルは同意を示す。

 

『では、また何かあれば連絡する』

『ああ』

 

 そう締め括ったオスヴァルドは念話(テレパシー)を切った。

 

「ふぅ~」

 

 カオルは一度大きく息を吐いて気持ちを切り替えると、素早く席を立つ。

 そして風紀委員室を出て為すべきことに取り掛かるのであった。

 

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