最強魔法師の壁内生活   作:雅鳳飛恋

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第21話

 ◇ ◇ ◇

 

 翌日の三月二十六日――ジルヴェスターとレイチェルは、アークフェネフォール区のメルクカートリアにある魔法協会支部にいた。

 

 二人は魔法協会支部の応接室にあるソファに対面する形で腰掛けている。

 ジルヴェスターが上座でレイチェルが下座だ。

 勤しむ

 時間を潰す為にジルヴェスターは読書に興じ、レイチェルは紅茶を楽しんでいる。

 室内を(いろど)るオブジェが置かれている室内は静寂が場を満たしているが、二人には全く苦ではなかった。

 

 そのまま数分の時を過ごすと扉がノックされる。

 

「――失礼するよ」

 

 扉を開いて室内に足を踏み入れたのはミハエルであった。

 

「待たせてすまないね」

「気にするな」

「来て早々だけど、外に馬車を待たせているんだ」

「そうか。なら待たせるのは悪いな」

 

 ジルヴェスターは書物を異空間収納(アイテム・ボックス)に収納して立ち上がる。それに合わせるようにレイチェルも席を立つ。

 

「早速行こう」

「そうしてくれると助かるよ」

 

 応接室を出ると、ミハエルが先導するように廊下を歩く。

 

 魔法協会支部には職員はもちろん、魔法師の姿もある。

 ミハエルは名と顔を知られているので視線が集まっていた。

 

 そうなると当然、共にいるジルヴェスターとレイチェルも注目を集めてしまう。

 二人のことを知らない者ならば、ミハエルと共にいる人物に好奇心を向けてしまうことだろう。――もっとも、ジルヴェスターの正体を知っている者はほとんどいないので、この場にも当然いなかったが。

 レイチェルは名――主に姓――を知られているが顔はあまり知られていない。なので、彼女も好奇心の対象にされている。

 

「二人ともあまり目立ちたくはないだろうに申し訳ないね」

 

 ミハエルが詫びる。

 

「仕方ないだろう」

「そうですよ。お気になさらないでください」

 

 ジルヴェスターは肩を竦め、レイチェルはミハエルを気遣うように言葉を掛ける。

 

「そもそもお前と街中で落ち合う方が面倒なことになるだろう」

「はは、面目ない」

 

 ジルヴェスターの指摘にミハエルは苦笑するしかなかった。

 

 魔法協会支部ですら好奇の視線に晒されているのだ。これが街中だった場合の結果は容易に想像できるだろう。

 

「支部長にも申し訳ないことをしたかな」

「……そうだな」

「ふふ。支部長は大層驚かれておいででしたよ」

 

 申し訳なさそうに言うミハエルの姿にジルヴェスターは再び肩を竦め、レイチェルは支部長とのやり取りを思い出していた。

 

「二人と合流するには魔法協会支部(ここ)が都合いいと思って支部長に取り計らってもらったんだけど、さすがに相手が第一席だと無用に緊張させてしまうよね。しかも想像していたであろう人物像よりジルはだいぶ若いし」

 

 ミハエルに落ち合う場所を事前に指定されていたジルヴェスターとレイチェルは、魔法協会支部に訪れた際に支部長の出迎えを受けている。

 

 支部長はミハエルに特級魔法師第一席と約束を取り付けているので、滞りなく合流できるように魔法協会支部の応接室を使わせてくれと頼まれていた。

 特級魔法師第六席の頼みなので支部長は最優先で取り計らった。

 

 支部長はミハエルとは交流があり人柄を知っていたが、ジルヴェスターとは全く接点がない。

 そもそも名前も顔も知らないのだ。故に人柄も当然知らない。

 

 万が一粗相があった場合はどのような対応をされるかわからないので、支部長は不手際がないように努めようと終始緊張しっぱなしであった。

 

「もちろん支部長には、ジルの正体は内密にするように頼んでおいたから安心していいよ」

「気が回るな」

 

 ジルヴェスターは自身の正体を積極的に(おおやけ)にする気はない。

 フェルディナンドの意向もあるが、可能な限り本性は隠しておきたった。平穏な学園生活の為に少なくともランチェスター学園を卒業するまでは。

 そのことを理解していたミハエルは抜かりなく釘を刺していた。

 

 廊下を歩いていた三人は魔法協会支部を出ると、馬車を停めてある停車場に向かう。

 

「さ、乗って」

 

 停車場に停めてある馬車に辿り着くと、ミハエルが乗車を促す。

 

 促されたジルヴェスターが先に乗って上座に腰掛け、後に続いて乗車したレイチェルはジルヴェスターの隣に腰掛ける。

 そして最後に乗り込んだミハエルが下座に腰掛けた。

 

 立場はジルヴェスターが最上位なので彼が当然上座だ。

 次に高い地位なのはミハエルだが、レイチェルはジルヴェスターの隣である上座側に腰掛けた。

 

 本来ならレイチェルが下座に座るべきなのだが、彼女は自分がミハエルの隣に座るわけにはいかないと判断し、ジルヴェスターの隣を選択した。

 そしてミハエルはレイチェルの配慮を理解していたので、当然のように下座に腰掛けた。

 

 そもそも地位は関係なく、今回はミハエルがジルヴェスターを頼った末の行動だ。なので、彼は端から下座を選択するつもりでいたので結果は変わらなかった。――もっとも、この場にいる三人の関係性上そのような堅苦しい気遣いなど必要ないのだが。

 

 三人を乗せた馬車は手綱を握る御者の操縦のもと走り出した。

 

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