最強魔法師の壁内生活   作:雅鳳飛恋

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第39話

「――そういえば、アーデル様が『麗人』様ということは、私のお師匠様になられる『守護神(ガーディアン)』様は別の御方になりますよね……?」

 

 ふと思い出したように疑問が浮かんだフィローネは、アーデルとレイチェルへ交互に視線を向けた。

 

 フィローネは最初、自分たちを出迎えてくれたアーデルのことを『守護神(ガーディアン)』だと思った。

 しかし、アーデルが『麗人』である以上、『守護神(ガーディアン)』は別人ということになる。

 彼女はその事実に気がついたのだ。

 

「うん。そうだね」

 

 アーデルは頷くと――

 

「『守護神(ガーディアン)』は私の夫だよ」

 

 再び爆弾を投下した。

 

「――え」

 

 案の定、フィローネが瞠目してしまう。

 

「『守護神(ガーディアン)』様と『麗人』様がご夫婦でいらしたなんて……!!」

 

 フィローネは口に手を当てて驚いているが、はしたなくならないように気をつけられる程度の余裕はあった。

 

「まあ、一部の人しか知らないことだからね」

 

 アーデルの言うように、二人の関係は(おおやけ)にされていない。知っているのは限られた者だけだ。

 

「凄い組み合わせですよね」

「ですね。本当に」

「特級魔法師第一席と第三席の二人なので最強夫婦ですよ」

 

 レイチェルの言葉にフィローネは何度も頷いて同意する。

 

 特級魔法師第一席で『守護神(ガーディアン)』の異名を持つジルヴェスター・ヴェステンヴィルキス。

 

 特級魔法師第三席で『麗人』の異名を持つアーデルトラウト・ヴェステンヴィルキス。旧姓――アーデルトラウト・ギルクリスト。

 

 特級魔法師第一席のジルヴェスターと、第三席のアーデルは正しく最強の夫婦であった。

 この二人ほど強い夫婦は存在しないであろう。

 

 さすがにアーデルもその自覚はあったので否定できなかった。

 

「一先ず、ずっとここで話しているのもなんだし、リビングに移動しようか」

 

 いつまでも玄関で話しているわけにはいかないと思ったアーデルは、二人をリビングに誘導する。

 

 アーデルの案内のもと、廊下を進んでいく。

 随所に絵画やオブジェ、植木などが置かれており、空間を(いろど)っている。

 そして、廊下を抜けた先に一際広いスペースが姿を現した。

 

「好きな場所に座って」

 

 リビングに辿り着くと、そこには複数のソファと椅子、テーブルか置かれていた。

 植木などの緑色の物もあって目に優しく、快適に過ごせる空間になっている。

 

「失礼します」

 

 フィローネは恐る恐るコーナーソファの端に腰を下ろす。

 

「では、私は飲み物を用意しますね」

「助かるよ」

 

 レイチェルには勝手知ったる場なので、率先して雑用を買って出る。

 慣れた足取りでキッチンへと向かった。

 

「私は主人を呼んでくるから少し待っていて」

「わかりました」

 

 アーデルは研究室に籠っているジルヴェスターを呼びに行く。

 研究室は地下にある調整室の隣にある。研究室と調整室は室内にある扉で繋がっているので、室内からでも廊下からでも行き来が可能だ。

 

 念話(テレパシー)で呼べば手っ取り早いが、それは虚しいだろう。

 せっかく同じ屋根の下で暮らしている夫婦なのだから、面倒臭がらずに直接言葉を交わす方が素敵な関係だ。

 

 それに何か大事な研究をしていたら、突然の念話(テレパシー)に驚いて失敗してしまうかもしれない。事故に繋がったら目も当てられないので、安全性を考慮したら念話(テレパシー)は控えた方がいいだろう。

 

 フィローネはソファに座っているが落ち着けずにいる。

 如何(いか)にも高級そうなソファや調度品、広いリビングに緊張で一杯だった。

 

 実際は全ての物が高級品というわけではなく、一部の物だけが高級品なのだが、フィローネには判別する余裕も審美眼も持ち合わせていなかった。

 

 その後は数分緊張したまま大人しく待機していると、ティーセットを載せたトレイを持ったレイチェルが戻ってきた。

 

「お待たせしました」

 

 テーブルにトレイを置くと、空のカップを手に取ってフィローネの前に置く。

 そのまま流れるような動作でティーポットを手に取り、カップに紅茶を注ぐ。

 

 レイチェルの姿は流麗で、同性でも見惚れてしまうほどの手捌きであった。

 

「ありがとうございます」

 

 フィローネは自分の前に置かれたカップを手に取って一口啜る。

 

「美味しい」

「それは良かったです」

 

 ほっと息を吐くフィローネの姿に、レイチェルは微笑みを浮かべる。

 

「お待たせ」

 

 ちょうどいいタイミングでアーデルがジルヴェスターを伴って戻ってきた。

 彼の服装は黒のスラックスに長袖のティーシャツを着ており、ラフでありながらも、客人を迎えるのに失礼にならない身形をしている。

 

 ジルヴェスターはフィローネの対面にある一人掛けのソファに腰掛ける。

 そしてアーデルはコーナーソファの端に座った。フィローネとは反対側の端で、ジルヴェスターとは斜めで隣り合う形だ。

 

 二人が来たので、レイチェルはトレイに載せてあるカップにそれぞれ紅茶を注いでいく。もちろん自分の分も含めてだ。

 

 ジルヴェスターの登場にフィローネは一層緊張して表情が強張り、肩にも力が入った。

 

 レイチェルは紅茶の用意を全て終えると、フィローネとアーデルの間の空いているスペースに腰掛ける。大きいソファなのでまだまだスペースには余裕があり、全く窮屈ではない。

 そしてレイチェルが音頭を取って話を進める。

 

「こちらが特級魔法師第一席――『守護神(ガーディアン)』のジルヴェスター・ヴェステンヴィルキスです」

「初めまして。フィローネ・イングルスと申します」

 

 ジルヴェスターはフィローネに目を向ける。

 

 輝くように鮮やかで綺麗な金髪をワンレンロングにし、赤い瞳が神秘的な印象を与えている。

 凹凸のはっきりとした身体つきで、膝丈のワンピースが清楚さと色気を上手く融合させて彼女の魅力を引き立てていた。

 

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