聖剣配達員です。判子お願いします   作:酒ナマズ

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配達員とオペレーター

 誰かが、というより神が言った。

 「わざわざ勇者が探すより聖剣を運んで行った方が楽じゃね?」

 

 こうして俺は異世界転生を"させられた"。

 

───────────────

 「えーとっ、勇者様が出発する村があっちだから、、、その間に先回りする様に中盤ら辺の街に行けば会えるかな?」

 地図とコンパスを何度も確認しながら勇者の出発地点と自分の出発地点を見比べ、置いていた登山用リュックに地図とコンパスを詰め込み担ぐ。

 「さて出発、、、っと配達物置いてくとこだった。」

岩に立てかけておいてた目当ての物を手に取る。

 

 「にしてもホント、見た目はそこら辺にある剣だよなぁ」

 鞘に納刀されたそれは刀身こそ見えないものの鍔や持ち手、柄頭から重さと長さに至るまでどこにでもある。至極普通の剣だった。

渡されたときは想像していた物とは全く違うモノだった為酷く驚いたのと同時に落胆したのを良く覚えている。

 「本当に聖剣なんだよな?」

剣を傾けたり振ってみたりする。もちろん何かが起こるわけではないが聖剣と言うにはやはり信憑性に欠けるためどうしても疑ってしまう。

 (yes.その剣は悪しき魔王を打ち倒す退魔の刃、勇者の聖剣です)

 「今のは質問じゃねーよ」

反応した声に対してわざとぶっきらぼうに返答する。

この声は神様とやらが俺が間違った方向へ進まないようにする為の監査役兼先生的な役割を持っているらしい。確かにコイツのおかげで今のところ餓死する様な状態にはならずに済んでいるが正直そこまで有能と感じたことはない。あくまで声だけのサポートだし戦闘で相手の知識しか教えてくれない、それに聞いた事の斜め上の返答するんだよなコイツ。

 初期のSiriみたいな感じだと分かりやすいだろう。

 

 山を下り勇者との合流地点へと向かう。もちろん勇者の現在地は分からないがとにかく勇者の出発時間が俺と同じである事を祈る。

不意に前世の記憶を思い出し、記憶の自分と今の自分を比べると

 「、、、なんで俺こんな事してんだろ」

という疑問が出て来てしまう。

ある日いきなり転生させられたと思ったら聖剣を勇者に届けろと言われたと思ったら、こんな大荷物を背負わされて知りもしない世界を彷徨わされ、挙げ句の果てには脳内で喋る変な声もオマケ付き。

 

 「ああ、、、冷房の効いた部屋でゴロゴロしていたあの頃に戻りたい、、、」

 (訂正。確かに貴方の身体はエルフの成人男性ですがこの世界での活動期間は3日にも及びません。よって"あの頃"という遠い過去を意味する言葉は不適切です)

 「そろそろ俺の脳内血管はち切れそうだからちょっと黙ろっか」

聞いてもいないことを教えてくるし、変なところで指摘してくるし。マジでなんなんだコイツ。ストレスで10円玉どころか1000円札ハゲになりそう。

 考える事に疲れ顔を上げる。見上げれば青色の天井と白い泡が視界を埋め尽くした。目を凝らせば蝙蝠の翼を持った蜥蜴が羽ばたき、その遠くからでも見える巨体を上下にくねらせどこまでも飛んでゆく。

 景色も相まってとても美しく見え、本当に自分は異世界にいるんだという興奮と共に自分の知らない世界という恐怖が背筋に汗を滲ませた。

 被っていたキャップ帽をより深く被り小走りで山を駆け下りた。

 

・・・

 太陽が真上に登った頃。腹が鳴り、食べ物を探して早30分。

 「あったあった。」

地面から剥き出した根に生えたキノコを全て素手でもぎ取りその周りにあった果実なども採取し、荷物を置いていた河川へと戻る。

あらかじめ沸騰させておいた水で果実に付着していた汚れや不純物を洗い流しそのまま齧り付く。キノコに関してはナイフで半分に切った物を炙り塩がない為味付けはせずに食した。

 その後は地図を見て現在地を確認しながら休憩をしていると川上の方で熊が魚の狩りをし始めた。夢中になっているのか俺には見向きもせずに何度も川に首を突っ込んでは獲物にかぶりつき美味そうに魚を食べていた。

 

 「、、、美味そうだなぁ魚」

熊の食いっぷりに思わず声にしてしまいハッとし口に手を当てるが時既に遅し。

 (タンパク質は先日補給している為充分です。それよりエルフにとっての主栄養であるビタミンやミネラル、食物繊維が不十分である為更なる補給を推奨します。又ミネラルの多い野菜・果実は、、)

始まったよ、極右ビタミン論。これ一回始まると中々終わらないんだよなぁ。

 前に無理矢理肉食おうとしたら(推奨されません)を無限に言い続けて来やがったからなアイツ。流石に断念したわ。もはや恐怖すら感じたもん。

 

ダメだ、肉食ってる奴の隣にいたら余計腹が減る。ここは退散しよう。

 荷物をまとめ小走りでその場を立ち去る。熊が追いかけることを危惧していつでも戦闘体制になれるようにしていたがこちらに興味がないのか見向きもしなかった。

 

 

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