魔法使いたい。この世界に来て一番最初に思ったことだ。炎水雷風土その他諸々、、、とにかくカッコよければなんでも良かったんだ。魔法陣がブワーっと出てきて魔法弾をチュンチュン打って戦えれば良かったんだ。
しかも運の良いことに俺はギフトも持ってたからこうなったらもう勝ち確よ。勝ったなガハハとか思ってたんすよ。
「どう!?きたんじゃない?きてるでしょこれ!うおおお、唸れ俺の魔力ぅぅぅう!!」
(魔法の魔の广すらありませんね。もっとイメージしてください。)
魔法をどうしても使いたいとオペレーターにお願いをしたら意外とあっさりokが出されたと思えば、予想の3倍くらいのとんでも情報量をお出しされたときは頭に小宇宙ができちまったよ。
例えるなら物理学の勉強初日から専門用語まみれの授業を受けさせられた気分だ。なのでまずは魔力を練る簡単な作業から入ったのだがこれが中々難しい。
イメージをすると魔力の伝達率がどーのこーのして難易度が下がるらしいので勿論教えてもらったのだが、、、
(いいですかマスター。今のマスターの魔力を小麦粉として焼く前のパン生地を練り上がった魔力とします。そこから小麦粉を素手で原型がなくなるまで叩き続けた後、水なしでパン生地を作るイメージをするとやりやすいでしょう)
そんな意味不明のイメージをしてからもう2時間は経つ。とりあえず踏ん張ってはいるが効果があるかは分からない。
そもそもなんだよ小麦粉の原型を無くすって、元から原型ねぇだろ。アレか?原子レベルで原型を無くすってか?その前に拳の原型が無くなるイメージが先に思い浮かぶわ。
「だーちくしょう!異世界まで来たのになんで魔法の一つも使えないんだよ!教室の隅っこで想像してたことが出来ると思ってた俺の希望返しやがれ!」
(そもそも前世の常識を異世界に持ってきては駄目ですよマスター。ここはマスターがいた世界とは常識そのものが違うんですから)
常識ねぇ、こちとら30年近くはあっちで生きてたもんだから思考が凝り固まってんだわ。
「というかもっと良い表現ないのかよ。体の中心から魔力を伝達させる〜とか、それならまだイメージできるけど小麦粉はちょっと分かんないっす」
(この世界ではそのような表現をすると良い、と言われていますのでこれ以上の言い方は無いかと)
「どうなってんだよ異世界の表現技法は」
それからもオペレーター指導の元何度も挑戦と挫折を繰り返していく内に日が暮れてきてしまった。
「もうこんな時間か、、、飯の準備しねぇと」
体を起こそうとするも何時間も踏ん張り叫び続けたせいで野営や焚き火などの作業をしなければならない事に脳が動くことを拒否する。
というか料理自体が面倒になってきたわ、今は自分が作った物より人が作ったもん食いたい。
あ〜早く町に着いて飯屋行きてぇ〜。宿とかって飯提供してくれんのかな。あれ、そういえば俺金持ってたっけ?最初に行くのは宿じゃなくて質屋かもしれんな。何売ろう、塩とかってやっぱり高く売れるのか?
まあ町に着けば分かることだろう。町着けば、、、
「、、、なあ、あとどれくらいで町に着く?」
(おおよそで明日の昼くらいには着くかと)
「お、明日か。やっとだわ人里。えーと?確か聖剣護ってんだっけ?」
(あくまで伝説ですがね)
「聖剣護ってるとか言われてんならもっと近くに町作れよってここ二週間で何回思ったか」
聖剣伝説がある町、ソル・ターナ。
剣を抜く勇者が現れるまで聖剣を守る為に作られたという伝説があるが、真相は初代勇者が聖剣を封印したと聞きつけた近くの農民達が少しでも神の加護を受け取ろうと集まっただけで伝説なんてものは存在しない。
恩恵を受け取るにも先代勇者から場所など教えてもらっているわけがないのでその地域にとりあえず町を構えたわけだ。
だが元々は恩恵を授かる為だけにできた町、すぐさま問題が発覚する。作物が育たないのだ。地面の土は硬く冷たく水はけも悪い、風は基本的に強風で雨も降ることが少ない。所謂痩せた土地という奴だ
更には近くには強靭な肉体を持った魔物が蔓延っており助けを呼ぼうにも一番近い町でも馬に乗っても一ヶ月程かかるらしい。
そんなところに人が居座る訳がなく、1人また1人と住民は離れて言った。
そして時は経ち当時町を建設した世代の人間がいなくなり
「勇者様が聖剣を近くに封印した」という事実だけが残り真実とは無関係な話も付け加えられドンドンと歪な形になってしまい、出来上がったのが
「自分達は勇者様から聖剣を任された選ばれし民族の子孫説」だ。
そしてその説のおかげで今でも繁栄し続けているとか。オペレーターから真実を知った身としてはなんとも滑稽な話である。まあ俺も町民だったら騙されるだろうけど。
「その伝説の聖剣がもう既に抜かれているとか知ったらどうなるんだろうな町民。」
案外ノーダメージだったりするのかもしれない。あくまで伝説って事で若いやつは信じてる人も少なそうだしな。まあ町は一気に衰退の一途を辿るだろう。もはや伝説だけで繁栄してるようなもんらしいし、嘘とバレたらたまったもんではないのは目に見えている。
その伝説の聖剣に目を向け手に取る。いつも通りの普通の剣。どこにでもある剣、違うとすれば絶対に壊れないのと勇者じゃないと抜けない事くらいだ。
そんな剣を見ていると先代の勇者様はこれを握って魔王と戦っていたという事実をどうしても疑ってしまう。
「勇者ねぇ、、、一体どんなやつなんだか。」
やっぱり某ドラゴンなクエストみたいな感じなのだろうか。はたまた全身を鎧で包んだ屈強な男かもしれん。まあ十中八九綺麗なお顔をしておられるのでしょうねぇクソが。どうせ性格も完璧超人で僧侶とか魔法使いから恋心向けられてるんだろ分かってんだぞコッチは。
駄目だ涙出てきたリア充爆発しろ
「なあオペレーター。」
(なんでしょう)
「今なら爆発魔法放てる気がするんだけどどう?できそう?」
(、、、何を考えているは聞きませんが、そのような発言をしている時点でマスターは敗者ですよ)
うーん辛辣