ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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いつも応援ありがとうございます。

感想・評価いただくたびに、やったぜと喜んでいます。
楽しんでもらえてるんだなと実感が沸きます。
誤字報告も助かっています。本当にありがとうございます。

今回は兵器ちゃんこと瓶兆さん視点。


第110話 瓶兆一二三の見た今昔

 

 本当の特別って奴は、ああいうのを言うんだなって。

 

「おい、アレ見ろよ」

「うわっ、出た」

「………」

 

 その場に現れただけで、みんなが騒めいて。

 

「成績……オールS!?」

「本当に同年代なのか……あいつ」

「………」

 

 叩き出すその成果に、誰もが一喜一憂して。

 

「もう帰ってくのか」

「あ、こっち見……ひっ」

「………」

 

 ウチらのような有象無象なんて、一切眼中にないって態度の。

 

「……“雪姫(ゆきひめ)”」

「………」

 

 絶対的な、個。

 

 

「……化物ッスわ」

 

 そんな、とてつもない存在を見てしまったら。

 

「あんなの相手じゃウチの持ってる特別なんて、なんてことないッスね」

 

 自分の中にあるプライドなんて、あってなきようなモノだった。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 これでもちょっとは、天狗だった頃もあるんスよ?

 なんたって、ウチはレア技能持ちのスペシャルッスから。

 

 幸運技能。

 

 誰もが持ってるわけじゃない特別なチカラ。

 それをレベル3で持っているって、こう、すげぇー! ってならないスか?

 

 ウチはなったんスよ。

 ……そう、なってたんスよ。

 

 それを――。

 

「――幸運技能レベル4? バグかなんかじゃないッスかそれ?」

 

 彼女は、あっさりとぶち壊してくれたワケッス。

 

 

 425番。

 後から白の鳥籠にやってきた、スペックの化物。

 

 文武万能態度優秀。

 青白い髪に愛らしさに満ちた美貌なんかも、完璧、大人受けする子供って感じで。

 

 実際に大人たちからの覚えも良くって、彼女はそりゃもう可愛がられてたッス。

 彼女の方も大人たちを期待に溢れた目で見てて、っていうか、そっちしか見てなくて。

 

 だから。

 

「えっと、ウチも幸運技能持ってるんスよ。良ければお見知りおきを……」

 

 挨拶しにいったときに見た、あの。

 

「………」

「……ハ、ハハ」

 

 一切の興味を持ってない、氷のような濃い青の瞳。

 

(この子はウチとは、存在からして違う……!)

 

 あの瞳とただの一回、向き合っただけで。

 

「………」

「あ……」

 

 あとはもう、ただ立ち尽くして去ってく彼女を見送っただけ。

 そこでウチと彼女の格付けは、終わってしまってたんスよ。

 

 そっから先は、向こうから触れてくることもなければこっちから触れることもなかったッス。

 向こうはこっちに一切の興味を持たずに大人の方を向いていて。こっちは向こうが怖くて怖くてしょうがなくて、近づくことすらできなくなって。

 

「おい、聞いたか123番。雪姫の噂!」

「噂?」

「あいつ、大人たちに見限られて個室に封じ込め食らったんだってさ!!」

 

 目の前で興奮気味に話す数字も忘れた彼の言葉に。

 

「いや、どうでもいいッス。マジでマジで」

 

 そう返すくらいには、ウチの中の彼女は特別(トラウマ)になっていたんス。

 

 

(あんなのに関わったら、命がいくつあっても足りないッスよ)

 

 自分程度の特別じゃ、精々があの本当の特別にいい様に食い潰されておしまい。

 あんな物と関わるくらいなら、ほどほどの成績で、なんでも楽にこなしていく方がいいって。

 

 アレは、一切の理解ができないモノだ。って。

 そう思わないと、やってられなかったんス。

 

 それが……ッスよ?

 

 

「一二三ちゃん一二三ちゃん! 一緒にトレーニング、やろ! ね? ねっ!?」

 

 

 ……いやホント。

 ワケわかんねーって感じッス。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 ウチを白の鳥籠から救い出してくれた清白なずなさん。

 あの人から熱烈なスカウトを受けて、ウチは天2に所属することになったッス。

 

 雪姫は、彼女のもとで娘として保護された。

 聞いてた噂は本当で。

 

 しかも。

 

 

()()()()()! 私、清白帆乃花……白の鳥籠では425番って呼ばれてました」

「!?」

「瓶兆一二三……一二三ちゃんって呼んでもいい? あ、私のことは帆乃花でいいよ! えへへっ」

「!?!?」

「同じ白の鳥籠出身ってことは、あのテスト受けてたんだよね? だったら……訓練メニューはこの辺りからいけそう? あ、ダメだったら言ってね! プランはまだまだあるから!」

「!?!?!?」

 

 そこで再会した雪姫は。

 なんかもうキャラ変とかそういうチャチなもんじゃない、進化を超えた何かを果たしてたッス。

 

 

「この道を行った先にあるジョイマックスってお店のサバの味噌煮定食が――」

「でね、でね。命ちゃんがニッコリ笑うときってだいたい――」

「フッフッフ。我こそはこれから伸びしろマックスのパイロット! 清白帆乃花ぁっ! ……どう? いい感じかな?」

「………」

 

 ……誰ッス? このキラキラしてる娘。

 ウチの知ってる雪姫 is ドコ?

 

(……いやいやいや何スか何スかなんなんスかこの小動物! ちょこまか動くわぴょんぴょん跳ねるわコロコロ表情変えるわ……かわいいが渋滞してるッスよ!?)

 

 このやたらカッコつけようとしてる奴、鳥籠の男どもがいつだったか一斉にやり始めた奴と同じじゃないッスか!

 無駄にギミック凝った眼帯まで付けて! 何やってるんスかなずなさん!?!?

 

 

「一二三ちゃん一二三ちゃん!」

 

 しかもこれ、人懐っこい!!

 めちゃくちゃ距離が近い! なんかすごいベタベタしてくるッス!

 

 こんな距離感じゃなかったッスよねぇ!?

 

 一体何が……!

 

 

「あ、黒木くんだ」

「?」

「………」

「………」

 

 ……え? マジで?

 マジのマジでコレッスか?

 

 あの雪姫が?

 大人相手に必死に媚び売ってただけの、幼児レベルのメンタルしてた無垢の化物が?

 

「……えっ、好きなんスか? 黒木先輩のこと」

「えぁっ!? あ、それはっその、えっと、その!?」

「……はぇ~」

 

 あらあらまあまあ顔を真っ赤にして。

 

「……うん。好きなの」

「たはー!」

 

 しかも自覚までしてる!

 

 

「……こんなの」

「?」

「こんなの、どうしようもないッスわ」

 

 ホント、どうしようもない。

 

(もう……この子のこと、化物扱いはできねぇーッスわ)

 

 せめて人間らしさくらい、ウチが先を行ってるって思っていたかったのに。

 

 

「恋してるって、すげぇーッスねぇ」

「え、えへへ……そうかな?」

「すごいッスよ。ウチは恋のこの字もわからないんで、マジで二歩も三歩も先を行ってるッス」

 

 もう何一つ。

 本当にもう何一つとして。

 

 自分という存在が、彼女よりも特別なものを持っていないのだと、気づかされてしまった。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 そうして気づけば振り回されて。

 朝活に付き合って、急遽始まる交流会に参加。

 

「あー、そうッスねー。わかるッス。すごいッスよソレ。へぇー、なるほどー」

 

 適当に相槌打って、適当に合わせて。

 無駄なく無理なく受け流して、やり過ごして。

 

 そうこうしてたら周りがどんどん盛り上がって。

 

「……以上、黒木終夜と精霊ヨシノ、精霊殻呼朝による創作ダンス『愛の序曲(ラヴ・プレリュード)』でした!」

 

 なんかヤベーものも見て。

 ゴチャゴチャワチャワチャやってたら。

 

「ごめん、瓶兆さん。そこのアンポンタンが逃げないよう、見張ってて!」

「ういッス」

 

 世界最強の希望にして化物の、監視役になってたッス。

 

 

「……いや~。それにしても、盛大にやらかしたッスね~?」

 

 適当に話題を振りながら、考える。

 

(この人、今日まで触れ合った限り……言うほど、変な人じゃないと思うんスよね)

 

 そりゃあ、言動は変人そのものッスよ?

 推し活って言いながら、意中の女の子を追っかけまわしたりしてるッスけど。

 

 でも。

 

 

(本当の意味で全力って、出してないと思うんス)

 

 いつも何かを手加減してる。

 大事なモノを壊さないように、自分自身を我慢させてる。

 

 ずっと、何かを気遣っている。

 

(なんか……そういうのいいなぁって、感じで)

 

 暴れまわってるように見えて、すごく頭も回転させてる。

 知識量(ステータス)だけじゃなく、きっと、考えるって習慣が染みついてるタイプ。

 

(建岩先輩や佐々先輩とは違う、ウチとか天常先輩とかに近い……秀才って奴ッスね)

 

 今も会話がちゃんと噛み合ってるのを感じるし、こういうタイプはやりやすいッス。

 

 ただ――。

 

「――めちゃくちゃ周りに気を使ってるよな。波風立たないように、目立たないように」

「………」

 

 この人……ちょ~~~っと、規格外ッスね。

 

 

(まぁ、相手はウチと同じ秀才タイプ。所作や動きの傾向から人となりを読まれることくらいはあるッスよ。ハイ)

 

 でも。

 

「――それが、処世術だったんだもんな」

「……ッスね」

 

 ………。

 

(なんっっっスか! そのド核心ドストレート一発ドぶち抜きっ!! 何が見えてるんスか!?)

 

 その“処世術”って言葉。

 間違いなく、ウチの過去(これまで)を読み切って言ってるッスよね!?

 

 まだ出会って二週間も経ってないんスけど!?

 

(……これが清白さんの、雪姫の好きな人)

 

 やることなすこといちいち派手で、無邪気で。

 それでいて気遣いはしてて、計算ずくで。

 

 

「身に染みた習慣――俺の推し活みたいなもんだな」

「それは違うと思うッス」

 

 あ、そこは一緒にされたくないッス。

 っていうかここは天然ッスね。

 

 この“抜け感”がまた、刺さる人にはザックリ刺さってそうッスよね。

 

 

「月刊リトルレディース?」

「少女漫画。買って読んでみるといい。ハマるぜ?」

「えー……漫画ッスか?」

 

 あーほらまた、突然こんなこと言い出しても。

 

「ハマったら、清白さんに話題振ってみるといい。気が合うと思うぞ」

 

 ほらね、その先がある。

 

 

(この人……きっといっつも、未来(さき)を見てるんだろうなぁ)

 

 一体その目は、何を見ているのか。

 どこまで、見えているのか。

 

 どうしてそこまで、できるのか。

 

(……あー、これ。知りたいって思った時点で……)

 

 術中にハマった。

 そんな確信をしたところで。

 

 

「兵器ちゃんの今は、兵器ちゃんの物なんだからな」

「!?」

 

 

 狙い澄ましたかのような、殺し文句(クリティカル)

 

 

(このドキドキは、心臓に悪いッスねぇ……)

 

 これ、踏み込んだら絶対に抜け出せない奴ッスよ。

 底なし沼なんて目じゃない、勢いよく引きずり込んでくるような、魔の穴ッス。

 

(この人が……この人こそが。やっぱり、天2(ここ)で一番ヤベェ奴……ッスね)

 

 雪姫を変えた人。

 日ノ本の希望を背負って立ってる人。

 

 なのに、天才じゃあない人(ウチらがわのひと)

 

 

「……それじゃ。そろそろ監視も終わりなんで、ウチはこれで」

 

 逃げるように、黒木先輩との会話を打ち切る。

 このまま、この人と話を続けてしまったら。

 

 本当の特別じゃない自分でも、特別に()()()()って思ってしまいそうだから。

 

(そういうのは、マジでガラじゃあないんスよ)

 

 そんな夢とか希望とかに邁進するのは、ウチの手には余るんス。

 マイペースなのがウチの、生きたいと思う今なんで。

 

(それでも……ま、今日この機会は得難いモノだったッスから)

 

 そのお礼にちょっとだけ、報いておくッスね。

 

 

「一二三ちゃん一二三ちゃん。黒木くんと何を話してたの?」

「なんてことない雑談ッス。それより、清白さん……」

「うん?」

 

 ウチらのやり取りが気になってしょうがないって様子で声をかけてきたお姫様に。

 一度、立場表明も兼ねて背中を押しておく。

 

「……ライバル。かなり多いと思うんで、頑張った方がいいッスよ?」

「え?」

「んじゃ、ファイトッス~」

「え? えぇっ?」

 

 アレに手を出すなんて無茶は、ウチには絶対できないんで。

 っていうかマジ無理なんで。

 

(化物には化物が、やっぱお似合いって思うッスから)

 

 同郷のよしみも込みで、ウチは我らが雪姫様に賭けるッス。

 難易度ODの大難問ッスけど、ぜひとも頑張ってくださいね?

 

 そんでもって、賭けたからには――。

 

(――明日からの訓練、手抜かりはできなくなったッスね)

 

 だって。

 

 

「見える見える。訓練頑張ってるもんな」

「あ……えへへ~」

「………」

 

 

 あのふにゃけた顔の方が、ウチはいいなって思うッスから。 




一二三「え、前に会ったことあるって教えないのかって? そんなの野暮じゃないッスか。今は今ッスよ。ね?」

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