ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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いつも応援ありがとうございます。

感想・評価いただくたびに、やったぜと喜んでいます。
楽しんでもらえてるんだなと実感が沸きます。
誤字報告も助かっています。本当にありがとうございます。

改めて、疑問に思っている方が多そうなので軽く説明を。
コソコソする技術を示す技能スキル“隠密”に対して、超常能力“隠れ身”は超常的な認識阻害を発動するアクティブスキルなんですね。まさに上位互換。なので天久佐奪還戦の時にゴーレムの脇をすり抜けられたりしたわけです。つまりチート。


第122話 予想外と想定外

 

 我が身“隠れ身”、この手にカメラ(時価53万)。

 めばえちゃんぼっち脱却のために職権乱用して編成した天2基地完成披露式典買い出し組C班は、着実にその成果を上げていた。

 

「たい焼きうっま~♪」

「Umm...Very very delicious! カスタードはセイギ、だねっ!」

「このお芋のたい焼きも、餡がとてもなめらかで甘みも強く、美味しいです」

「はむ、はむ」

(はわわっ! あずき餡入りたい焼きチマチマ食べてるめばえちゃんおかわわわわ……!!)

 

 タマちゃん、オリー、姫様、めばえちゃん。

 4人の距離は順調に縮まって、今じゃ一緒に買い食いを楽しんでいるくらいの仲良しだ。

 

 それを超常レベルに隠れて観察、撮影している俺も、放出され続ける尊さで拝みっぱなしである。

 

(今回で、みんなと仲良くなるためのきっかけが掴めたらいいんだがな)

 

 交流会では俺がやらかし、きっかけ作りに失敗してしまった。

 その帳尻合わせってわけじゃないけど、めばえちゃんにとって幸せな思い出が一つでも増えて、次に繋がっていってくれたらと思う。

 

 

(っていうか、めばえちゃん相手の俺って超絶に空回りしまくってるよな)

 

 めばえちゃん絡み、俺が直接関わると碌なことになってない気がする。

 もっとスマートにあれこれやれればいいんだが、どうしても力が入ってしまっていて。

 

(俺、もうちょっと自分を制御できる人間だと思ってた)

 

 現実にいるアイドルを推す人が、それでも自分を律して1ファンでいられるのってすごいことなんだなって思う。

 ワンチャン仲良くなれる一緒に思い出が作れるって思うと、沸き上がる衝動が暴れてしまう。

 

 冷静な判断力が、俺の中から消えてしまうんだ。

 

 

(こうやって一定の距離を取って、直接関わらないようにしてみたら一目瞭然だ)

 

 ギャルに挟まれ、腰まで伸びてて毛先だけ白いウェービーロングの黒髪が揺れている。

 次々話しかけられては右へ左へキョロキョロしながら、どうにかこうにか言葉を返しているマイフェイバリットラブエターナル黒川めばえちゃんは、表情に出していないが、楽しげだ。

 

 人と関わるのを拒絶しながらも、その実、触れて欲しいと願っている。

 

 そんな彼女にとって、押しに押してくるギャル’sとのコミュは存外悪くないのだろう。

 姫様が周囲に目を配り余計な負担を背負わせないのもあって、思った以上にリラックスできているのも見て取れた。

 

 

(これでいい、これでいいんだ……)

 

 俺が望んでいたのはめばえちゃんの幸せ。

 そこに俺が絡むかどうかは二の次で、絡まない方が上手くいくならそれでいいんだ。

 

 俺のこの手で幸せにしたいってのは、あくまで俺の中にある欲望。

 それは最上の推し活を目指す上で、邪魔だったってだけ。

 

 だからこれからはやっぱり、陰から彼女の幸せを支え――。

 

 

「――ところで、めばえちゃんってさーぁ」

「な、に……?」

「うちのエースオブエース、終夜ちゃんのこと。ぶっちゃけどう思ってるにゃ?」

 

 タマちゃん!?

 

「好き? 嫌い? どっち? 教えて~!」

 

 タマちゃんッッ!!?

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「WOW! ソレ、私も気になるなー? ちょっと前まで終夜から、熱烈アプローチされてたもんね?」

「贄も、あなたは終夜様にとって大切な人なのだと、重ねて仰せつかっております。とても想われていらっしゃるのは間違いないかと」

「今大人しいのはやっぱり交流会でやらかしたからだろうし、チャンスがあったらまたゴリゴリ押せ押せで来るかもだよ~? その時めばえちゃんはどんな反応するつもりなのかにゃ? にゃ~?」

 

 3人は足を止め、きゃいきゃいしながらめばえちゃんを囲む。

 間違いなく恋バナの体で放たれた質問に、俺も思わず全力で、最寄りの物陰に隠れて聞き耳を立てた。

 

 いやいやいや。

 っていうかこんなサラッと聞くのか!? いいの?

 なんか俺これ聞いちゃダメな気がする!

 

(でも……聞きたい!!)

 

 気になってしょうがない! 知りたい!

 めばえちゃんの中で、今の俺がどういう位置付けになっているのか……知りたくてしょうがない!

 

 

「黒木、終夜……か」

「!?」

 

 めばえちゃんが口を開いた!

 少し俯き気味に考えるような仕草で、普段から半目がちな紫の瞳をさらに細めて、悩ましげに唸る。

 

 それだけで、俺の全身に緊張が走る。

 

(彼女の口からどんな言葉が飛び出すのか、どんな評価が下るのか……)

 

 良い評価でも、悪い評価でもいい。

 俺にとって、めばえちゃんから評価をもらえるって事実がそれだけで衝撃的だ。

 

 あ、でもウザいとか消えろとかだったらちょっと辛いかも。

 塩対応なのがってよりガチ目に迷惑かけてたって事実に。

 

 

「そうそう。終夜ちゃんのこと、好き or 嫌い?」

「……そう、ね」

 

 好奇心の塊のようなキャットアイで煽るタマちゃんに促され、めばえちゃんの唇が動く。

 今、推しが俺のことをどう思っているのかの……答えが――。

 

 

「――好きでは、ない、わね」

「………」

 

 ………。

 

 ……。

 

 …。

 

 

(…………まぁ、そう、だよな)

 

 冷静に、自分が彼女にしてきたことを顧みればいい。

 これまでに聞いた、彼女の言葉を思い出せばいい。

 

『……私は、あなたなんか……認めない……っ!』

『……変態っ!!』

『……あなたの言う効率は、理解した……わ。でもあなたとは、無理』

 

 ご覧の通り。

 俺に好かれる要素なんて、なかったのだから。

 

 あっちょっと俺、横になりますね。

 

 

「じゃあ、嫌いなん?」

 

 ぐぇっ。

 盗み聞きの罰かこれ。

 

 俺がいるなんて思ってもないタマちゃんが、そのまま質問を続行した。

 ちょっと今、思った以上のダメージ食らってて追撃は――。

 

 

「――嫌いでも、ない、と思う」

「………」

 

 ………。

 

 ……。

 

 …。

 

 

 俺は静かに、立ち去ろうとしていた足を止めた。

 そして自分の全身全霊を込めて、聞き耳を立てた。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「めばえ、それってどういうこと? 興味ないってこと?」

「興味がない……わけじゃ、ない」

「では、どのような感情なのでしょうか?」

「ん、と……」

 

 言葉にし辛い何かがあるのか、めばえちゃんは腕を組み、少しだけ表情を硬くする。

 正しい言葉を届けたい、ちゃんと言葉にしたいって気持ちが、俺には見えた。

 

 それは3人も同じだったようで、めばえちゃんの言葉が出るまでしばらく、沈黙の時間が過ぎる。

 

 

「……黒木終夜、は。間違いなく、日ノ本の英雄……よ。その戦果や、たくさんの人にとっての希望になった……希望であり続けていることは、尊敬に値する、わ」

 

 めばえちゃんが、俺について語り始めた。

 

「人柄は……どう、判断したらいいのか……私にはわからない、わ。アレは、本心からそうしているのか、それとも、何か裏があるのか。私にはまだ、理解が及ばない、から」

「あ、それはわたしも同じだにゃー。終夜ちゃんって多分、わたしたちが知らない何かを知ってるっぽいし」

「そうなの? あ、でもそうかも? チヨマロ様たちと同じようにすごいけど、チヨマロ様たちとはちょっと違うよね」

「……そうですね。あの方は未だ、贄たちの及ばない多くのことを知り、多くのことを隠し、語らずにいらっしゃいますので」

「そう、なのね」

 

 仲間たちから共感されたからか、また少しだけ沈黙してから、今度はグッと力の入った言葉でめばえちゃんが口を開く。

 

「きっと、悪い人ではないのだと……思う。私に絡んでくるのも、私を気遣おうとしている気配を、感じている……から。私を推しって言ってるのは、本当に理解ができない……どうしてそうなったのか、見当がつかない。一目惚れ……なんて、その、経験……ないし」

 

 困惑8割照れ2割。

 

「でも、青春したいって言葉も……私を推そうとしている、のも……嘘じゃないのは、もう、わかる。私に対して嘘をついてない……そこは、感じてるわ。だからまた迫ってきたら、きっと拒否はする……けど。その行為で彼を嫌うことは……ない……と、思う」

「………」

 

 これで話はおしまいだとでもいうように、パクッと、たい焼きの残りを口にする。

 それは、たどたどしくも語られた、彼女の嘘偽りない本音だった。

 

 

(……う、わ)

 

 どうしよう。

 めちゃくちゃ……めちゃくちゃ嬉しい!

 

(めばえちゃんが俺のことを考えてくれていた、見ていてくれていた、少なからず理解を示してくれていた。なんかそれが分かっただけでもすごく心が跳ねてやがる……!)

 

 今絶対に“隠れ身”解除できないな。

 間違いなく、全身真っ赤な茹でダコになってる確信がある。

 

(あんだけやらかしても嫌わないでいてくれていた。何より、誠実な目で俺を見定めようとしてくれていた!)

 

 俺の振る舞いが肯定されたわけでも否定されたわけでもない。

 ただ、認知されていた。

 

 それだけですべてが報われたような、何もかもが満たされたような気持ちになる。

 幸せすぎて、何も見えない聞こえない!

 

 

「それって脈あるってこと?」

「……それは、ないわ」

「What’s!? どうして?」

「私が……黒木終夜を認めることは……ないのよ」

「めばえ様。それはいったい、どのような意味で――」

「――ちょっと、お手洗いに行ってくる、わ……」

「あ、めばえちゃん! ……行っちゃったにゃ」

「Umm...好きでもないし嫌いでもない、意識はしてるけど認めない?」

「何か、深い事情があるのかもしれません」

 

 

 ……ん、あれ?

 めばえちゃんいなくなってる?

 

 なんか残ってる3人も考え込んでるし、なんだこれ?

 

 とりあえずどこにいるか“テレパスセンス”でチェックを――。

 

 

「キャアアアアーーーーーーーーーーーーー!!!!」

「「!?」」

 

 

 突如として響く、絹を裂いたような女性の悲鳴。

 

「そんな!?」

「どうして!?!?」

「イヤァァーーーーーーーーーー!!!」

 

 間を置かず次々と叫びが上がり、とたんにアーケード街は大混乱へと陥って。

 

 

「なに、どうしたのっ!?」

「天常さんがやらかしたのかな!?」

「違います! タマちゃん様! テイラーソン様! あちらを!!」

「「あっ!」」

 

 姫様が指差し示す、その先は。

 

 

「……うっそだろ、おい!」

 

 

 天下に名高き銀杏城こと……隈本城。

 

 そこに――!

 

 

「グルオォォォォーーーーンッ!!!」

「ドラゴン……だとぉ!?」

 

 精霊級ハーベスト――ドラゴンが。

 天守閣へと張り付いて、翼を広げ咆哮を上げていた。




ドラゴン「グルオォォン!(精霊級ハーベスト最強の名に恥じない活躍を!)」

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