ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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いつも応援ありがとうございます。

感想・評価いただくたびに、やったぜと喜んでいます。ちゃんと病院行ってお薬貰ってきました。ご心配おかけしております。快調に向かっています。
誤字報告も助かっています。本当にありがとうございます。

ついに出会った、主人公と黒幕?! 回です。


第124話 邂逅、白衣の男!

 

「人類の希望にして最強の戦士、黒木終夜。いやはや、まさかまさかここまでとは!」

 

 そいつはパチパチと大げさな拍手をして俺を褒め称える。

 

「キミは幾度も私の想定を上回り、驚くべき結果を叩きだす……本当に素晴らしぃっ!」

「………」

 

 尻上がりに気持ち悪い高音を出すこの男。

 身長は俺よりちょっと高いくらい、黒髪黒目で中肉中背、パッと見ただの科学者って印象の――白衣の男だ。

 

 だが、そんなどこにでもいそうな男の目線に、俺は警戒心をビンビンに刺激されている。

 

(っていうか、これナチュラルに超常能力の“念話”じゃん。同調技能4レベル必須の!)

 

 通信機器ガン無視で直接脳内に声かけて来やがって。

 自分が上位存在であることを一切隠してねぇなコイツ!

 

 

(んでも、そうやって舐めててくれるおかげで確定だ)

 

 堂々と晒された男のご尊顔に、俺は決定的な答えを見る。

 

 黒い瞳の中にある、“赤い”六芒星。

 六色世界(ろくしきせかい)の赤に属する者の証が、爛々と輝いているのを無事確認成功だ。

 

 白衣の男の所属は赤の一族。

 俺の予想は的中していた!

 

 

「キミのおかげでこの世界はより大きく、派手に揺さぶられている。その震えはより大きな震えを呼び、もはやこの私にもどこまで広がっていくか予想もつかない領域に至ろうとしている! あぁ! なんって素晴らしいんだキミは! 黒木終夜!」

 

 恍惚とした表情で天を、精霊殻の中にいる俺を正確に仰ぎ見る白衣の男。

 気づけば俺とコイツ以外、二の丸公園から人の気配が消えていた。

 

 姫様が使っていた人払いの結界術の、その上位互換。

 たわけた動きをしながらも、目の前の男はその片手間に、常軌を逸した技術を行使する。

 

 油断するなよ俺。

 ここは間違いなく……死地だ!

 

 

「……目的は?」

「目的?」

 

 努めて冷静さを維持して投げた問いかけに、白衣の男は無駄に大仰なポーズをとって白衣をなびかせ、語る。

 

「私の目的は単純明快! より大きな混乱を! より大きな戦いを! より派手で! より白熱する物語を! この手でこの舞台に演出したい……ただただ、それだけだとも!」

「なるほどOK理解した」

 

 りょーかいりょーかい、完っ全に把握した。

 こいつは愉快犯(マッド)。大義もなければ手段こそが目的の、ただただ今を刹那的に消費しているクソ野郎だ!

 

 だったらこいつに言うべきは、ひとつだけでいい。

 

 

「てめぇの遊びに俺たちの世界を巻き込んでんじゃねぇよ。帰れ!」

「うぅん、辛辣!」

 

 ドゴォッ!!

 

 間髪入れずに叩き込んだ飛ぶ精霊拳――精霊空拳は、確かに白衣の男がいた場所を撃ち抜いた。

 ドラゴンだってぶちのめす必殺の一撃は、だが、俺に一切の手応えを伝えない。

 

 気づけば男は、呼朝の肩にもたれかかっていた。

 

 

「い~ぃ宣戦布告だ! だが、そういうのはこんな突発的な状況ではなく、もっとふさわしい舞台でやりたいとは思わないかい? そう、例えば――」

神子島(かごしま)

「……――」

 

 男の瞳の六芒星が、輝きを増した。

 それが感情の昂ぶりを示すのだと、俺は知っている。

 

「――あぁ、もう! 最高だよキミは! 黒木終夜!! 物語をよくわかっている!」

「うるせぇ消えろ、関わってくんな」

「確かに確かに! 私とキミとのぶつかり合いは今じゃあない関わるべきじゃないのはその通り! さすがは私の推しだね☆」

「………」

 

 は?

 誰が誰の、なんだって?

 

 

「黒木終夜。キミは私の……推・し・DA・YO☆」

「死ね!」

 

 振るった拳は、空を切った。

 

 

「ハッハッハ! サラバだ!」

「ヤタロウ、全力探査! アイツ炙り出してぶっ殺す!」

『クァーッ! だめダ終夜! モウ何処ニモイネェッ!』

「ハーッハッハッハ! 次なる舞台はキミのリクエストに応えて神子島だ! そこでの新たなる活躍を、ぜひとも見せてくれたまえよ! ハーッハッハッハ!」

 

 脳内にカビみたいにこびりつく不快な笑い声だけ残して、白衣の男がいなくなる。

 結界が解け、再び世界にたくさんの気配が生まれれば、もはや追跡不能だと思い知らされる。

 

 今の俺には、あいつに挑む何もかもが足りていなかった。

 

 

「く、そっ! あいつ……許せねぇ!!」

 

 怒りが沸く。

 取り逃がしたこともそうだが、それ以上に。

 

(『推し』って言葉を当てつけてきやがったのが許せねぇ!!)

 

 どこまでも上から目線の言動。

 自分の思う通りにいくように、ああしろこうしろ関係ない立場から物言いつけてきた白衣の男のそれを、俺は推し活だとは認めない。

 

(この世界で生きる人たちの行く道は、この世界で生きる人たち自身のモノだ。同じ舞台に立ちもしねぇで好き勝手やる推し活なんて、認めてたまるかよ!)

 

 そんな奴からの推し認定なんて、ただの迷惑千万御免被る!

 

 

(そもそも、推しの幸せを願ってこその推し活だろうがっっ! 困難撒き散らしてんじゃねぇ!)

 

 推し活解釈違い許すまじ!!

 俺の中で白衣の男が、絶対的な敵認定された瞬間だった。

 

「あいつは、必ず俺がとっちめる! めばえちゃんの明るい未来に……あれは邪魔だ!」

 

 二の丸公園から見える夕暮れ空に向かって、俺は吠える。

 ついに姿を見せた黒幕に、俺は無限にも思える闘志を燃やし、改めて立ち向かう覚悟を決めるのだった。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 一連の騒動は、その後に来た市内の防衛隊様方と、六牧司令の尽力によって終息した。

 出撃許可を得ないまま精霊殻を用いて戦ったことは不問となり、呼び出した呼朝は天常さんが手配した大型トレーラーによって、天2基地へと運ばれていった。

 

 精霊殻丸ごと呼び出しなんていう超常現象に関しては。

 

「「“黒木終夜”だし」」

 

 と、もはやなんでもそれ言えばいいんじゃねってくらいのノリで流された。

 唯一タマちゃんだけが「あのゲート、普通のゲートじゃなかった気がする」とか言ってた。

 

 まぁ、その辺はおいおい確認して調べていけばいいことだ。

 

 俺にとって今大事なのは、そこではなく――。

 

 

「めばえちゃんは!?」

「無事ですよ、終夜様」

 

 まだ天2式訓練を完遂してない後続組である、めばえちゃんの安否。

 幸島公園でみんなと合流した俺に、姫様が答えてくれた。

 

「今はお電話中です。今日のご予定を伝えていた方へ、無事を連絡なさっておられます」

「そ、そうか……無事ならよかった」

 

 ホッと胸を撫で下ろす。

 タイミング的に見失ってたから気がかりだったんだ。

 

 

(白衣の男は、俺たちのことをほぼ完全に把握している)

 

 赤の一族である奴にとって、ラスボス候補のめばえちゃんは最重要人物の一人だ。

 彼女を絶望させ、ラスボス化へのトリガーを引く準備は着々と進めているに違いない。

 

 だが、そうはさせねぇ……!

 

(彼女の日常を幸せな思い出で埋め尽くし、世界に蔓延る不安を払って、絶望なんかとは無縁の未来へ連れて行ってみせる!)

 

 俺が目指すべき道は、譲らない……!

 すべては我が推し……黒川めばえちゃんの幸せのために!

 

 

「……ところで、終夜様」

「なんだ?」

 

 今ちょっといいところだから、姫様にはもうちょっと待っててもらいたかったんだが。

 

「本日は、ずっと贄たちを追いかけていらっしゃいましたね?」

「………」

「おそらくは“隠れ身”による追跡をしながらの“撮影”でしょうか? ところどころで霊子の乱れ、精霊たちのざわめきを知覚しておりましたので」

「……Oh」

 

 これだから、てんさいは、こわいんだ。

 

 

「ご安心を。タマちゃん様たちにはすでに、贄から頼んでいたモノとして伝えてあります」

「そう、なのか?」

「はい。思い出作りの一環として、記録を取っていたモノである、と」

「お、おう」

 

 確かに、それなら言い訳も立つ。

 さっすが天才姫様。

 

「後ほど、撮影したモノの中から適切な物を選びご提供いただけましたら幸いです」

「わかった」

 

 話はそれだけか、と。

 めばえちゃんを探しに行こうかとしたその矢先。

 

 

「終夜様」

「うおっ!?」

 

 音もなく、姫様が俺の眼前――目と鼻の先まで迫っていた。

 押し込まれ、赤いエアインテークの髪が垂れて、俺の頬に掛かる。

 

 浄眼たる青い瞳が、俺の奥の奥まで見透かそうとするかのように、真っ直ぐに見つめてくる。

 

「先程、ドラゴン討伐の後にしばらく気配にブレがございました。何か、ございましたね?」

「………」

 

 確信。

 彼女の中にある絶対の自信をもって出ただろう問いかけに。

 

(ここはごまかせない、な)

 

 一応周囲を見回してから、俺は頷いてみせる。

 姫様なら、話してもいいだろう。

 

 

「接触した。おそらくは今の状況を作り上げている……黒幕と」

「! それは……」

「あぁ、前に話した上位存在。赤の一族に属する白衣の男だった」

「白衣の、男……」

「心当たりがあるのか?」

 

 姫様がふと、考え込むような仕草をしたので聞いてみる。

 すると彼女は静かに頷き、険しい表情で答えた。

 

「以前、建岩の者と接触した謎の人物と特徴が一致します。その人物は当時、白の一族だと自称していたのですが、実際は……」

「白の一族じゃなかったんだな?」

「はい」

 

 頷く姫様に、俺も確信する。

 間違いなくそれは、今日会った白衣の男の行なった工作のひとつに相違なく。

 

「んで、それが言えるってことは……確認したんだな?」

「はい。贄はすでに……大阿蘇様の庇護する“白の一族”との接触に成功しております」

「会えるか?」

「会えます。お望みでしたら明日にでも」

「よしっ!」

 

 続けて飛び出た嬉しいニュースに、俺は思わずガッツポーズを決めた。

 

 

(このタイミングで会いに行けるってんなら、僥倖だ!)

 

 正直。

 そろそろ上位存在のどっかとは繋がっておかないと、対策しようがない段階まで来ていた。

 最悪本土まで足を運ぶことさえ覚悟していたから、姫様からの大成果報告には感謝感激雨あられだ。

 

「超助かる! ありがとう姫様! あそこ、俺だけじゃいけないだろ?」

「……やはり、ご存じだったのですね。ですがそういうことでしたら、いつでもわたしを使ってくださって構いませんでしたのに」

「いや、そういうワケには……ん?」

 

 今。

 ちょっと、聞き捨てならない言葉が聞こえた、ような?

 

「贄はいつでも終夜様のためにお役に立ちたく思っております。どうぞ、擦り切れるまでお使いください」

「え、あ、うん」

 

 気のせい、だよな?

 

 

「いや、ヒーローのために姫様はいるんだから、俺に使われて擦り切れないでくれ」

「贄にとってのヒーローは、未だ終夜様から変わっておりませんよ」

「うぐぐ……」

 

 ステータスEXスマイルで言われると、無駄にドキッとするからやめて欲しい。

 そういう笑顔は姫様じゃなくめばえちゃんにこそ向けてもらいたいっていうかなんというか――。

 

 って!

 

 

「そうだよめばえちゃん! めばえちゃんは……!」

 

 きょろきょろすれば、すでにめばえちゃんはグループに合流していた。

 オリーたちとこれからの行動を相談しているようで、こっちに気づくと――。

 

「え?」

 

 ジッと、俺のことを見つめ、そして――。

 

「………」

 

 ――両手をそれぞれ胸の前で握り、ギュッて、した。

 

 ギュッ、て……した。

 

 

「……終夜様? しゅうや、さま?」

 

 俺はゆっくりと膝から崩れ落ち。

 そのまま真っ白に燃え尽きて、砂になる。

 

「終夜様ー!?」

 

 初めて推しから贈られたサービスムーブに、俺の肉体は耐えきれなかったのである。

 

(待って待って今の何なんでギュッてしたの可愛すぎエールなの感謝なのムリムリ耐えられない待って幸福で脳が震えて爆発するんだけど……???)

 

 こうして、俺たちの波乱に満ちた買い出しは幕を閉じたのだった。

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 4月7日、大安吉日。

 天2基地拡張完成披露式典は予定よりも派手に、そして楽しい催しとなった。

 

 ある程度一般開放された基地内で多くの人々が行き交い、縁日のように居並ぶ屋台を巡る。

 精霊合神まじかるーぷの特別ステージが公開され、廃棄予定の旧型精霊殻への接触可能展示なども行われた。

 

 イベントは大いに盛り上がったが、それ以上に話題をさらう報告が同会場にて行われる。

 

 本格稼働となる上天久佐第2独立機動小隊が、次なる戦場に選んだ場所。

 “魔術師の杖勲章(マーリンズブルーム)”六牧百乃介司令の口から告げられたそこは。

 

 

「来る5月。しかるべき準備を整えたのち、我々は、神子島を奪還する!」

 

 

 九洲における最大最難の激戦区。

 神子島戦線の攻略であった。




めばえちゃんがギュッとした理由については、待て次回(エピローグ)!

応援、高評価してもらえると更新にますます力が入ります!
ぜひぜひよろしくお願いします!!
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