ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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第20章 建岩の秘奥、新姫様!
第126話 目指すは秘奥、建岩の地!


 4月8日。

 天2基地拡張完成披露式典の翌日、未だ祭りの興奮冷めやらぬ春の早朝。

 

 日課の朝練をするべく、隊寮を出てグラウンドに集まった天2メンバーであったが。

 

「……あら? 千代麿、今日は終夜と一緒じゃないの?」

「おはよう九條。いや、それがな? 今朝も部屋まで迎えに行ったんだが……あいつ、既に出ていたみたいなんだ。ボクはてっきり早めにこちらへ来ていたのかと思ったのだが……」

「黒木くんならまだ来てないよ? ね、一二三ちゃん?」

「そッスね。見てないッスよ」

 

 いつものメンツに、この場の発起人であるはずの、黒木終夜の姿がない。

 そして、姿がないのは……もう一人。

 

 

「そういや、建岩の姫様もいねぇな……って、こら摩耶! のしかかってくんな!?」

「い~や~でぇ~す☆ まぁやの見てる前でぇ、違う女の子のこと探すとかギルティ~☆」

「うおおおお!? やめっ、近っ。なんかいい香りが……!」

「お嬢様。この場のラブなコメ指数が上昇しております」

「よくってよ細川。重要なのはこの場のラブなコメ指数ではなく、黒木さんと命さんのお二人がこの場にいない理由を、(わたくし)たちが説明することの方ですもの!」

 

 黒木終夜と建岩命が不在の理由。

 その真相は、金髪縦ロールのお嬢様が知っていた。

 

 

「知っているのか天常」

「えぇまぁ、お出かけですってよ。命さんのご実家に()()()で」

 

 ………。

 

 数秒の沈黙。そして。

 

「…………は?」

 

 紺碧ショートの美少年(さっさクン)が腹から出した、愛らしくも低い声を皮切りに。

 

 

「「「ええ~~~~~~~~~~~~~~~~!?!?!?!?」」」

 

 

 早朝のグラウンドに、驚く声が幾重にも重なり響き渡った。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 はい、どうも。

 黒塗りのリムジンの中からおはようございます。

 

 緑の風、人類の希望。

 そして何よりめばえちゃん最推し委員会会長、黒木終夜こと俺です。

 

 ただいま俺は建岩家と協力関係にあるという“白の一族”と会談すべく、建岩家秘奥の地へと移動中です。

 それがどうして黒塗りのリムジンなのかっていうと、これにはそれ相応のワケがある。

 

(目的地である“あの場所”は建岩家の特別な結界で守られており、建岩家の用意した専用の移動手段でしか入れてもらえないのである)

 

 ついでに秘奥と言うだけあって道中も秘密、おかげで窓もしっかり黒塗りってワケ。

 情報秘匿に建岩家がこれだけ一生懸命になるくらいには、これから向かう場所は大事な場所ということだ。

 

 そんなワケで俺は日も出ない内から天2基地を出て、もうかれこれ3時間近く、このふかふかの座席に座りっぱなしになっちょります。

 トイレ休憩もなかったが、行く前にちゃんと行っておいた俺えらい。

 

 

「……あふっ」

 

 正直言うと、かーなーり眠い。

 昨晩もユメと久遠の闇でバリバリ修行したし。

 

(ただ移動すればいいだけってんなら、それこそ寝て過ごしてたんだがな……)

 

 何度もあくびを噛み殺しながら、それでも俺が寝ない理由は。

 

「じー」

 

 俺の隣で、今か今かと出番を待ってる赤髪ロングエアインテーク。

 原作HVVの超絶美少女巫女姫メインヒロインこと、建岩命がいるせいだ。

 

 

「終夜様。お眠いのでしたらいつでも贄に寄りかかりください。肩でも膝でもこの胸でもいくらでも捧げますので」

「宗教上の理由でその施しは受けられない」

「はい」

 

 今みたく、姫様は隙あらば俺の役に立とうと画策してくる。

 彼女に世界の真実の一端を話してしばらく経つが、相変わらず俺をヒーローであるかのように盛り立てようとしてくるのだ。

 

「あのな、姫様。何度も言うが、俺はヒーローなんかじゃない。そうやって尽くさなくてもいいんだぞ?」

「はい。終夜様がそう仰るのなら、終夜様はヒーローではないのかもしれません。ですが終夜様のために尽くすことは世界を救うことに必ず通じていると、贄は確信しております」

「確信、かぁ」

 

 天才技能を持つ姫様は、原作でもたびたびこの「確信している」という言葉を使う。

 いかなる脳内演算かは知らないが、彼女の口からこの確信って言葉が出たときは、大体が正しい。

 

「確信しちゃってるのかぁ」

「はい。確信しております」

 

 だから俺は、原作知識を持ってる俺は、こう言われると何も言い返せなくなる。

 凡人には、天才の思考なんて読み切れやしないのだから。

 

 

「ですので終夜様。贄の力が必要とあらば、一切の遠慮は無用です。たとえこの身が塵芥のごとく野へと打ち捨てられる結末を迎えようとも、それが終夜様の道に必要なことであったというのでしたら、贄にとっては最上の道であったと誇りを胸に逝きましょう」

「………」

 

 作中屈指の人気キャラから向けられる、澄んだ青色の視線。

 真実を見抜く浄眼だとも言われる彼女の瞳は、今いったい何を見つめているのか。

 

 覚醒した姫様なら一人称“私”になっているはずとはいえ、さすがにもう、なんかしらのバグは起きてそうだと俺は疑っていた。

 

 魅力値とか気づけば人外領域のEXまで到達してるしな!

 明らかに原作と違う変な挙動をしている。

 

 

「……それが、建岩の姫の使命だからか?」

「はい。贄は世界のためにこの身を尽くす所存です」

 

 ジッと目を見て確かめるように問いかければ、姫様特有の穏やかな笑顔が返ってくる。

 それは原作初期の彼女が見せる、自己を持たない心に起因する表情で。

 

「「………」」

 

 つまりはまだ、建岩の姫は建岩の姫のまま、ってことだよな?

 ほな覚醒姫と違うかぁ。

 

 

「……だったら、姫様は自分の命を大事にで頼む。姫様のヒロインとしての力は、本物のヒーローのためにあるんだからな」

「はい。肝に銘じておきます」

 

 メインヒロインたる彼女の役割は、最終決戦におけるヒーローの支援だ。

 いつかヒーローと出会ったときにしっかりヒロインとして稼働してもらうためにも、ここからさらにバグるみたいなことには……ならないようにしないとな。

 

「ふふっ」

 

 隣の姫様の吐く息がかすかに高く弾んだように聞こえたが、目を向けた彼女(てんさい)表情(かお)は、変わらず読み取ることができなかった。

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

「到着しました。終夜様」

「ああ」

 

 そうこうしている内に、俺はついに辿り着く。

 大阿蘇様のお膝元、大阿蘇市は大阿蘇神社――から離れてしばらくの山中。

 

 公的資料には存在しない、とある神を祭神として祀る秘密の神社。

 

 

「……ここが、新姫(にいひめ)神社か」

「はい」

 

 ここに、目的の“白の一族”がいる。

 

「よしっ」

 

 気合一発、グッとお腹に力を込めて。

 俺は石造りの灰色鳥居を潜り、神社の境内へと足を踏み入れるのだった。




姫様はてんさい。

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