ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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今明かされる、めばえちゃんの原作設定。そして……。


第137話 決着! そして大切な物はそれぞれの手に

 

 我が推し、我が愛。

 黒川めばえちゃんには、作中屈指の特技が一つある。

 

「……呪い?」

「ん。……対象を指定して、その人に呪いをかけることが、できる、わ」

 

 めばえちゃんの説明に、ホールのみんなは感嘆のため息をつく。

 

「呪い……技能としましては超常能力に類し、隠密技能と幻視技能、そして高い同調技能を有することで可能となる御業になりますね」

「普通ならちょっと他人を不幸にしたりするくらいだけど、強いモノだと行動を制限したり、特定の技能を使えないよう封印することもできるって聞くわね」

「へぇ~。眉唾物だと思ってたけど、実際目の当たりにするとビックリするね。めばめば、超スゴイじゃん!」

「え、あっ、うぅ……」

 

 姫様とパイセンの補足を聞いた鏑木さんに、ほっぺをツンツンされるめばえちゃん。

 周りの評価は上々だが、それでも彼女の表情は暗い。

 

(まぁ、めばえちゃん的には隠したかった特技だろうしなぁ……)

 

 俺は……彼女がその表情を浮かべる理由を知っている。

 

 

(めばえちゃんが育った環境は、決していいモノじゃなかった。両親仲は悪く、クズな親父と母親は最後は刃傷沙汰になって家庭崩壊。その後の施設生活も、六色連中の悪しき導きのせいで佐々家系列から外れ、いじめが横行するような場所を転々とすることになる。そんな日々の中で目覚めた力がそれ……なんだもんな)

 

 めばえちゃんの過去の経歴を確かめたとき、やはりこの世界の彼女も似た経緯を辿っていた。

 天久佐の壁が壊された時期まで彼女は様々な施設を転々とし、その度にいろいろな苦労を背負ってきたと窺える情報が記されていた。

 

(それでも、この人類優勢に進んだ世界じゃ母方の親戚と再会できてるだけ、元よりはマシ……なんだろうが)

 

 むしろだからこそ、本人としては忌み嫌う度合いが強いのかもしれない。

 安らかな日常を手にできたからこそ、呪いの力は彼女の過酷な過去を表す証になってしまっているのだ。

 

 なんか俺が知ってるめばえちゃんより、呪いの威力バチクソ向上してたけど。

 感応力EXならさもありなん。

 

 

(ともあれ、だ)

 

 俺はまた、壁の花モードでめばえちゃんたちを見つめる。

 今回の一件は、間違いなく彼女の天2生活における転換点になると確信していた。

 

 なぜなら。

 

「お手柄だな、黒川!」

「黒川様のおかげで、私たち防衛側の勝利となりました」

「くぅ~~! ぐやじぃ~~~! でもめばめばがすごいってわかったからOK!」

「はい。黒川様の実力、贄のこの目で確かめさせていただきました」

「あう~、これが真の闇属性の力……ま、負けられない!」

「そこは張り合わなくていいッスよ」

 

 今、時の人となっためばえちゃんはみんなに囲まれている。

 なんだかんだ一般から外れた奴ばっかりで、ご時世も絡み実力主義な連中が揃った天2で。

 

 彼女は、認められた。

 

 

「大丈夫。あなたの忌避する力は、今。間違いなくみんなの役に立ったのよ」

「ぁ……」

「そうだぞ黒川。今更呪いだなんだと気にする奴はこの隊にはいない。現人神や神秘の建岩なんぞという意味不明な奴らに、さらに輪をかけた意味不明な奴だっているんだからな」

 

 俺は壁の花なので返事はしない。

 返事はしないが、気にしなくていいって首を縦に振るくらいはしておく。

 

 めばえちゃんが何か言いたげな目で俺を見たが、今の俺にかわいい以外の感想は浮かばなかった。

 

 

「にゃふふっ。気にするならわたしが詳しく調べてもいいよ。建岩ちゃんところのアクセス権いくらか貰ってるし、なんなら本人が手伝ってくれるよね? ね?」

「はい。贄でよければご協力させていただきます」

「そ、れは……大丈夫。必要……ない、わ」

 

 今、この場にいる誰一人として、彼女を下に見てる奴なんていない。そもそもみんな他人を下に見るような気質じゃないが、それでも彼女は守られる側、庇護すべき存在として見られていた節があった。

 だが、これまで何かと後ろ向きで孤立気味だった彼女が出した疑いようのない成果は、間違いなく天2メンバーから侮りを取り払ったんだ。

 

 黒木終夜に謎に推される女の子、から。

 彼女らしい強みを持った立派な仲間である、と。

 

 それこそが、めばえちゃん自身が行動で掴み取った結果である。

 その自覚がきっと、彼女にもあるんだろう。

 

「……でも、ありがとう」

 

 天2のみんなへと向けられる笑顔には、確かで自然な柔らかさがあった。

 

 

(この分なら、孤立しなくなるのも時間の問題だな……)

 

 大決戦を前に、思わぬ成果を得られた気がする。

 内在する不穏要素(ハンター)の洗い出しなんていう爆弾処理をしていたら、まさかの推しのデメリットイベントからの大逆転を目の当たりにできるとは。

 

(だったら俺は俺で、しっかりとこの状況を終わらせる)

 

 良い物が見れた。

 なら、この青春のバカ騒ぎも、きっちりとみんながハッピーになるように終わらせるべきだろう。

 

 ……そう、そもそもこの騒ぎ自体が。

 思い返せばいつもの天2でしかなかったのだから。 

 

 

「……みんな、聞いてくれ!」

「「?」」

 

 ゆえに俺は、天2のみんなに提案する。

 

「……俺がこれまでに集めて実家に溜め込んでるクマモノくんグッズ。()()()()ぞ」

「「!?」」

 

 みんなが間違いなくハッピーになれる、必勝の一手を。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 その後。

 実家に溜め込んだクマモノくんグッズを開放した俺は、それらを隊員たちに配ることにした。

 

 こんなこともあろうかと、キング・クマモノくんも含めた大小様々なバリエーションを誇るクマモノくんグッズを、自らを鍛えるあいだにも集めて回っていたのだ。

 

「おあっ、これ天久佐地区限定のクマモノくん四郎バージョンじゃねぇか!? え、二つくれるんすか黒木先輩!? ……あ、はい。ウッス」

「見なさい細川。このキーホルダー、今だとプレミアですわよ」

「こちらのもちもちお腹マウスパットは、見た目にも愛らしく実用性もありそうです。お嬢様」

「……いやはや。よくもここまで溜め込んだものだな、黒木?」

「まぁ、ハマってた時期があったんでな」

「素晴らしいぞ黒木。それもまた青春だな!」

 

 せっかくだからとメインホールに並べて展示している今、天2メンバーは揚津見先生も含めてわいわいきゃいきゃいと盛り上がっている。

 

 

「終夜、その、いいの?」

「どうしたパイセン。それは俺の持ってた奴だから全然貰ってくれていいんだぞ?」

「そうなのだけど……」

 

 隣にやってきたパイセンが、俺のコレクションのキング・クマモノくんを抱いている。

 パイセンの幼気な見た目にそれを抱えていると、パイセンのロリロリしさが爆増しまくりだ。

 たぶんこの姿で配信したらとんでもないことになるだろう。

 

 まぁ、そうはならないだろうけど。

 

 

「そのグッズ、誰かに渡してくれて全然構わないからな」

「……そこまでお見通しなのね」

 

 今回、パイセンはハンター側だった。

 が、真の意味でのハンターではなかったと、俺は思っている。

 

(クマモノくんハンターが持つ独特の狂気めいた執着。あれがパイセンにはなかったからな)

 

 ぶっちゃけ。

 ガチでハンターだったのは原作からそうだった鹿苑寺君と、亜種とも呼ぶべき金の亡者だった鏑木さん。そして最後にこの状況へ誘導し、締めに自分の手でゲットしようとした乃木坂君くらいのもんじゃなかろうか。まぁその乃木坂君も、供述的に彼女さんへのプレゼントってことらしいが。

 

 真っ当に交渉してれば収まるところに収まってただろう今回の騒動は、じゃあどうしてここまで派手になったのか。

 それも結局、俺たちが俺たちだったからに他ならない。

 

 天2(おれたち)は、いつだって大騒ぎできるチャンスを逃さないのだ。

 だってそれこそが……。

 

 

「………」

「何考えてるの?」

「ナンデモアリマセン。ところで……」

 

 ついでだからと、聞いてみる。

 

「そのぬいぐるみ、誰に渡すんだ?」

「……えっと」

 

 問われたパイセンは、ギュッとぬいぐるみを抱きしめてから、ぽつりと口に出した。

 

 

「私たちの一番新しい妹が、今度、研究所(ラボ)から本土の特別研究施設に派遣されるの。戦いを補佐する備品としてじゃなく、九條シリーズがこれから人として生きられるようになる研究のために」

「!」

「これは、そんなあの子が望んだ……“特別なクマモノくん”になるって、思ったから」

「それは……」

 

 心当たりが、大ありだ。

 そしてその報告は、俺的にもとても、とても嬉しくて。

 

「それは……絶対喜んでもらえる。俺が保証する。マジで」

「そこまで? ……ふふ、なるほどね。なら安心ね」

 

 ()()がそれを喜ばないはずがない。

 それを俺は知っているし、きっとパイセンもわかってる。

 

 

「あの子が、戦いに駆り出されない未来を……作らないといけないわね」

「それは、俺たちの仕事だな」

 

 やるべきことが決まっているのは気分がいい。

 

「神子島戦線。パイセンにしてみると古巣だよな」

「えぇ、でも大丈夫。今の私には力もあるし……なによりも」

 

 パイセンが俺を見上げてくる。

 彼女の長い黒髪が風になびいて、それを払って向けられる、緑がかった茶色(ヘーゼルブラウン)の瞳が。

 

「ただ待つだけの、あの頃とはもう、違うから」

 

 強い強い意志を持って、俺を見つめていた。

 

 

「……獲るわよ、神子島を。そして、未来を」

「ああ、俺たちの望む未来のために!」

 

 二人、頷き合う。

 本当の決戦の日は、着々と迫ってきている。

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

「てか、こんだけ真っ当な理由があったんだし、パイセンが普通に頼めばよかったんじゃ」

「……答えのわかってる問いかけなんて、わざわざやらなくてよろしい」

「うごっ」

 

 デュクシされた。

 




次回は本章の黒幕さんのお話です。

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