ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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楽しんでもらえてるんだなと実感が沸きます。
誤字報告も助かっています。本当にありがとうございます。

新章開幕!
いよいよ戦いは、九州最難関の戦場へ……!


第22章 突入、神子島戦線!
第139話 いざ、最前線へ!


 

 ガランガラン!

 

 新隈本(しんくまもと)駅大本線。

 出発時間が来たことを示す発車ベルが、先頭車両で威勢よく鳴らされる。

 

「一番線から間もなく、14両編成、新隈本発・新一夜志(ひとよし)駅行が、発車いたします。お見送りの皆様は、どうか、白線の内側までお下がりください」

 

 続くアナウンスを届けるのは、愛らしくも誇らしげな、落ち着いた少女の声。

 

 これから、実に数年ぶりに走り出す大列車を操る……精霊の声だ。

 

「一進一退の八津代(やつしろ)平野の戦火を払い、そして、天久佐の壁崩壊の折に奪われた道を取り戻し、復旧し。こうして今再び活躍の機会を得られましたこと、感激の極みにございます。皆様の旅路のご安全は、この身命を賭して、必ずや果たさせていただきたく思います。それでは、SL(えすえる)一夜志(ひとよし)改め、(かい)8620(ハチロクニイマル)(がた)契約(コントラクテッド)機関車(ロコモティブ)58564号、発車いたします!」

 

 ポォーーーー!!

 

 晴れやかな宣言とともに鳴らされた汽笛には、隠しきれない喜びが満ち満ちていた。

 

 

(いよいよだな……)

 

 変わり始めた風景を、柔らかな椅子に腰かけ窓越しに見つめる。

 

(“赤の一族”白衣の男が待っているだろう……日ノ本最大の激戦区『神子島(かごしま)戦線』。より派手で、より激しい戦いってのが何なのかは知らないが、ぶちのめしてやる)

 

 待っているのは大決戦。

 日ノ本を狙う侵略者(ハーベスト)の大軍勢が手ぐすね引いて待つ舞台。

 

(めばえちゃんの幸せな未来のため、絶対に倒さなきゃいけない障害、それが赤の一族だ。この先、何人が束になっても絶対にこの手で乗り越えてみせる!)

 

 加速に伴い遠ざかっていく駅から視線を外し、振り返って列車の行く道を見やる。

 タイミングよく鳴らされた別れの汽笛が、俺の体を強く震わせ背筋を通り抜けていった。

 

 5月。

 緑の季節に俺たちは、天久佐奪還戦以来の大作戦を開始する。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「黒木! 駅弁が来たぞ、どれにする?」

「ハチロクに乗ってるんだからハチロク弁当で」

「そうか! ならボクは鮎屋四代にしよう」

 

 窓際を譲ってくれた佐々君伝いに、頼んだ駅弁を受け取る。

 霊子チャット越しに開示された駅弁ラインナップには、九洲各地の名だたる駅弁たちが、その名を連ねていた。

 

(各地で戦渦に巻き込まれた九洲の電車事情なんてマジで散々なモノだったから、この手のものって廃れてると思ってたんだがなぁ)

 

 有志が協力し、その名も、技も、どうにか残されていたらしい。

 蓋を開けたら目に入る、見事にハチロク機関車を模したオカズたちの姿にホッコリした。

 

 

「……彼らは信じているんだ。この戦いの終結を。それゆえに、その先の未来のためにするべきことをやっている」

 

 弁当の中にデカデカと乗る鮎の甘露煮を見つめつつ、佐々君が言う。

 

「そしてそれらの努力は今、こうして再び形となって、無駄ではなかったことを証明したのだ。はむ……むぐむぐ……んぐっ。誉れ高いことだな」

 

 語りながら、しっかりとそれをよく噛んで食べて、優しく微笑んだ。

 

「うん、美味い。とても美味い」

「ふむ……じゃあ、俺も」

 

 彼に倣って俺も一口、弁当を口にする。

 よく噛んで、味わって、そこに込められた想いごと嚥下する。

 

 冷たくてもそれは、胸に灯がともる味がした。

 

 

「ごめんあそばせ! こちらに一夜志名物くり弁当を1つ……いえ、2つくださいまし!」

「健啖家ねぇ……私は、どれにしようかしら」

「九條様、私としてはこちらのおてもやん弁当もお勧めです」

「……じゃあこの、天久佐大王地鶏めし弁当で」

「これは異なことを。それにはからし蓮根が入ってないですよ?」

「あなたのそのからし蓮根推しはなんなのよ、渚」

 

 先に最前線へ向かった六牧司令を除き一車両に集められた天2メンバーだったが、列車の旅でもいつも通りワイワイしている。

 

「一二三ちゃん一二三ちゃん! これ、これ美味しそう!」

「ッスねぇ。ならウチはそれにするッス。で、そっちはこれとかどうッスか?」

「さくら……肉? え、馬肉!?」

「何事もチャレンジッスよね~、帆乃花ちゃん?」

 

 二人席に並んでやり取りするペアもいれば。

 

「HEY! オカズの交換しよう!」

「えっ」

「さんせ~い。はぁい、めばえちゃんにはタマちゃんチョイスのミートボールあげるねぇ」

「えっ」

「私からは唐揚げあげちゃう! FOR YOU!」

「えっ」

「こちら卵焼きです。ご賞味ください」

「えっえっ。じゃ、じゃあ……これっ!」

「「弁当箱ごと、だと……!?」」

「流石でございます、黒川様」

 

 四人席で向かい合い、キャッキャとはしゃぐグループもいる。

 

 他にも三羽烏と西野君がトランプしてたり、いつものバカップルがバカップルしてたりと、誰も彼もがいつも通りに積み上げてきた物の上で楽しんで……いやちょっと待て。

 

(めばえちゃんとオカズ交換!? なんだぁそのパラダイスは?! 俺もそこ加わりたい! 俺もめばえちゃんに弁当のオカズ貢ぎたい! あわよくば交換してお互いの味の感想とか言ったりしてほんのり仲いい空気をべろんちょ味わいたい!!)

 

 ガタッ!

 

「こら黒木! 急に席を立つな!」

「あ、はい」

 

 スン……。

 

 ピシャリと叱られて、静かに座りなおす。

 

「まったく、行儀が悪いぞ黒木。そもそも、だ。そもそも食事中に周囲に配慮なく席を立つなど……」

「はい、はい」

 

 窓際の席から脱するには、二人席はちょっっっと狭かった。

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

「……そういえば。これから向かう神子島戦線だが、妙な噂が出ている」

「噂?」

 

 駅弁を食べ終わったあたりで、佐々君が細腕につけた端末を開いて見せてくる。

 頬が触れ合いそうなほどの距離になりながら、見せられたのは画像データ。

 

 写されていたのは夜の戦場で。

 

「ん? これは……え?」

「やはり、黒木はすぐにこれが何なのかわかったか」

「これ、精霊殻、だよな?」

「ボクもそう思う」

 

 望遠で撮られたそれは、夜の敵陣ど真ん中で暴れる一機の精霊殻。

 暗がりに合わせた迷彩柄なのか真っ黒に塗られたボディが、おそらく超過駆動で淡く燐光を放ち力を振るう姿が収められていた。

 

 

「霊子通信も出来ない、気づけばどこぞへ消えている、非正規の精霊殻。前線ではこの謎の精霊殻のことを『暗夜』と呼んでいるらしい。これについてお前はどう思う?」

「そう、だな……」

 

 可能性はいろいろと思い浮かぶ。が、その中でも一番有り得そうなのは……。

 

(これに乗ってるの……真白一人(ましろひとり)君じゃね?)

 

 現在見事に行方不明中の、我らがヒーローの暗躍だった。

 

 

(なんか前に見たときは闇落ち感あったし、陰でなにやら動いてそうだったからなぁ。精霊殻に乗ってるってことは間違いなくバックはいるワケで……洗脳されてるか誘導されてるか、いずれにしても操られてる線は強そうだ)

 

 この無双っぷり、およそ人間業じゃあない。最低でも清白さんか姫様クラスの所業。

 可能なら確認に行きたい。行きたい、が……。

 

「……確かめようにも、これの暴れてる場所はかなり危険だな」

「黒木の言う通りだ。この機体が戦っているのは最前線のさらに先、会いに行くにも至難だろう」

「だな」

 

 もしやこれが、白衣の男が言ってたより派手な戦いにするための布石……なんだろうか?

 そうすると、下手に突っつくのは藪蛇になる可能性がある、か?

 

 

「うーん、気になる」

「意識に留め置く必要はあるだろう。間違いなく戦場を左右する不確定要素だ」

「そうだな。データもらえるか?」

「もちろんだ! ふふんっ!」

 

 ひとまずは保留。

 けれど、俺の中にある不確かな直感は、それでもと声を上げていた。

 

(いざとなったら、行ってみるか)

 

 真実を知るために動くべきだ、と。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 俺たちを乗せたハチロクは、八津代平野を越えて山道へと入る。

 日本三大急流とかつて呼ばれたクマ川沿いをしばらく進み、離れて寄ってを繰り返す。

 

 トンネルもいくつか潜り抜け、8時発の10時着してとうとうこの目に迫るのが――。

 

「本日も日ノ本鉄道、九州大本線をご利用いただきまして誠にありがとうございます。この列車は間もなく、終点、一夜志新駅へと到着いたします。お出口は左側です。到着後は慌てず、お荷物などをお忘れなきよう、お気をつけてご降車ください。……皆様の武運長久を、お祈りしております」

 

 ――神子島戦線における最前線の大規模基地であり、守りの要となっている場所……一夜志(ひとよし)

 かつてその夜景が人生を変えるとまで言われたほどに、風光明媚な山の都だったそこは、今。

 

「うおっ、すっげぇ」

 

 町全体が丸ごとひとつの基地となるような。

 ガッチガチの……城塞都市となっていた。




大列車の精霊さんの推定CVは種﨑〇美さんです。

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