ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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楽しんでもらえてるんだなと実感が沸きます。
誤字報告も助かっています。本当にありがとうございます。

いよいよ……です!


第143話 暗夜

 

 おびただしい。

 そう言って差し支えないほどの敵の群れを切り拓き、前へ前へと進んだ結果。

 

「オオオオオォォーーーー!!」

「ヒヒィィーーンッ!」

 

 敵に精霊級が混じりだす、まさしく神子島戦線その最前線へと到達した。

 

 

「すまない、助かった! 重装備の“無頼(ぶらい)”でも、押し留めるのが限界なんだ!」

「今日は後ろが静かなので、これでも楽な方です」

「文字通り、うちの英雄殿が切り拓いてくれたからな!」

 

 ガッチガチの最新装備で身を包み、一番激しい戦場に立つベテランパイロットチームと合流した俺は、戦いながらも一息ついてる彼らから少しのあいだ話を聞いた。

 

「“暗夜(あんや)”……謎の黒い精霊殻は、ここからさらに先に行ったところに出る」

「出てくるタイミングは大体今かもう少し後くらい。1時間ほど戦って、おそらく休憩を挟んでもう1時間。そうして消えるんだよな」

「戦い方からして中に人が乗ってそうなんですが、連絡は一度も繋がりませんでした」

「なるほど、大体聞いてた通りだな」

 

 最前線で手に入れた情報は、ほぼほぼそのまま噂として伝播していたようで。

 

『終夜様。青井大阿蘇神社伝いで新姫様と連絡を取りましたが、件の精霊殻についての情報も、その後の真白一人の足取りの再調査の結果も芳しくなく。ですがむしろ、自分たちが把握していない精霊殻の存在こそが、自分たちと同列の存在による干渉を思わせるに足る事態であるとの話を伺いました』

『わたしたちの知らない精霊殻とか、ぜひとも直接触れてみて欲しいにゃあ。いっそ見つけたら全力抱き着きとかしてみない?』

 

 とまぁ、白の一族の情報網でも捉えきれてない存在ともなれば、やることは一つだ。

 

 

「よっし。そんじゃ“隠密”して待つか。ヨシノ、ヤタロウとチェンジ。タマちゃん、あとよろしく」

 

 ヴンッ。

 

 ----------

 

 気力を20消費。

 超常能力“隠れ身”を発動します。

 

 ----------

 

 フッ。

 

「「えっ」」

 

 超常の力で隠密状態へと移行した俺を見失った味方機の対応は、タマちゃんにお任せして。

 

(あ。ユニコーンは削っとくか。隠密バレるのも嫌だし敵の回復されるのも邪魔だからな)

 

 時が来るまでこそこそ敵のヒーラーを暗殺しながら、俺は目的の黒い精霊殻を待つことにした。

 

 

 ターーンッ! ターーンッ! ブルヒヒィィーン!!

 

「これが……天2のエースオブエースか。規格外だな」

「へっ、こんなのが天2にはゴロゴロいるってことか? やべぇなぁ」

 

 ピピッ。

 

『いやぁ、いないいない。終夜ちゃんはうちでも規格外オブ規格外だから』

「……ナチュラルに、最前線の短距離霊子通話を傍受して割り込んできた貴女が、それを言うのですね」

『あ、今の会話中にサーチした最新の周辺情報送っとくね。情報提供感謝~♪』

「っ!? なっ、なんですかこの情報量は……!?」

「……はぁ。こりゃ、人類の希望とか言われるワケだわ」

 

 馬撃ちしてる最中に聞こえた誉め言葉(ためいき)には、心の中で胸を張っておいた。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 目的の精霊殻は、そんなに時を待たずに現れた。

 

『クァッ! 終夜!』

「わかってる」

 

 うちの契約精霊トップの索敵能力を持つヤタロウのセンサーが反応したのと同時。

 最前線の先の先までもぐりこんでいた俺の目に、それは現れた。

 

 そして。

 

「……ほぁ?」

 

 それを間近で見た俺は、思わず素っ頓狂な声を上げたのだ。

 

 

「………」

 

 月夜の下で、黒く輝く精霊殻。

 そのボディは機動性を重視したシャープな造りで、脚部にはローラーが付いている。

 重装甲の“豪風(たけかぜ)”フェイスをムキムキマッチョと呼ぶのなら、こちらは爽やかイケメンと呼ぶべき風情のフェイス。

 

 っていうか、俺はこいつの見た目をとてもよく知っている。

 

『はーい、こっちも情報届いたよぉーって……えっ、これって!?』

『……“呼朝(こちょう)”……いえ、“明星(あけぼし)”ですか』

 

 そう。

 姫様の言う通り……この機体は。

 

(そりゃまぁ、主人公にはこの上なくふさわしい機体だよなぁ!?)

 

 史実における真白一人君の愛機にして、最強の兵器。

 ――後期超機動型試作精霊殻“明星(あけぼし)”だった。

 

 

「……姫様」

『はい』

「クスノキ女史が裏でこっそりデータを流してこれを作らせた的な話は……」

『聞いておりません。あの方にそれをする理由がありません』

「……だよなぁ」

 

 周囲の状況を確かめているのか、静かに索敵動作を行なっている黒い明星から身を隠し、情報を擦り合わせていく。

 

『本土の工場からパーツが盗まれたなどの報告もございませんし、贄たちの把握する限りでその出所は未知。ありえない存在であると言えます』

「俺も、俺たち由来のモノが使われてるって線は薄いと思う」

 

 一目見て分かった。

 これは……少なくとも“呼朝”よりも長く稼働している機体だ、と。

 

(最低でも1年は、戦場で活躍してきた機体だ……!)

 

 黒く塗られた表面装甲に付いた数多の傷が。

 関節部にチラリと見えた、修理の跡が。

 

 佐々君から耳タコになるまで聞かされた、戦い続けたモノ特有の特徴が、そこにはあった。

 

 

(俺たちが新型を手に入れるより前に存在した新型……。つまりは、歴史的にあり得ない存在ってワケだから!)

 

 確定である。

 この機体は歴史干渉によってここへと運ばれた。

 

 それを十八番とする新姫たち白の一族が把握していないということは、つまり――。

 

「――やっぱり、白衣の男が噛んでたってことだな」

 

 目の前のコレは、推しの未来のためにも何とかしなきゃいけないモノだった、というワケである!!

 

 

「……アンチェインからコントロールへ。これから隠密を解いてパイロットに接触を試みる」

『こちらコントロール。了解。でもどうやって?』

「そりゃ、タマちゃんが言った通りのことをやるの……さっ!」

 

 隠れ身を解除。

 隠密状態を解いて相手のセンサーに俺の存在を認知させる。

 

 そして。

 

「ヨシノ! “精霊羽織り”!」

『はい』

 

 最初から全力全開!

 全身から緑の燐光を放ち、高機動用の出力を確保!

 

 

「!!」

 

 黒い精霊殻がこちらに気づき動きを見せるが、その前に!

 

「シューット!!」

 

 腰のパックを叩いて起動!

 ワイヤーフックを射出して、黒い精霊殻の左肩に引っ掛ける!

 

「!」

「逃がさん、お前だけはっ!」

 

 即座にワイヤーを巻き取って急接近。

 機体が身をよじり後ろ跳びするが、きっちり精霊羽織りで強化した武装は逃がさない!

 

 

「うおおおおっ!」

 

 飛びつき、密着!

 直後にかかる強烈なGは、黒い精霊殻が高速移動し始めたためで。

 

『しゅ……!』

『ぁ……!』

「うおっ!?」

 

 あまりの勢いにヘッドマイクが吹っ飛び通信が乱れ、断絶する。

 さすがに取りには、戻れない!

 

 

 ギィィィィッ!!

 

「ぐぅぉぉぉぉ!!」

 

 新装備+精霊羽織りでもキツめの圧力に耐えながら、それでも俺は腕の端末を黒い精霊殻の装甲に押しつけ、短距離霊子通信を試みる。

 

 無理矢理に肺に息を吸い、そして――叫ぶ!

 

 

「お前! ヒーローだろ!? 真白一人だろっ!?!? 会いたかったぜぇぇぇ!!!!」

 

 

 敵を蹴散らし、木々を折り、山を駆け上がり。

 俺を振り落とそうと暴れる黒い精霊殻に、全力で食らいつきながら。

 

「うおおおおおおおお!!! 応えろぉぉぉ!!!」

 

 俺は何度も何度も、中のパイロットに向かって呼びかけ続ける。

 

 

「ましろぉぉぉぉぉ!!! ひぃとぉりぃぃぃぃ~~~~~~~~~~~~~!!!」

 

 そうして気づけば最前線からやや外れ、敵の気配も人の気配もない場所で。

 

「……お?」

 

 とうとう、その精霊殻は動きを止めて。

 

 プシュゥゥゥ……。

 

「………」

「……おお!」

 

 開いたコックピットから、俺の見知った……姿とは幾分ワイルドに寄った見た目の。

 

「真白、一人……!」

 

 このHVV世界のヒーロー。

 真白一人君が姿を現したのだった。




今、邂逅の時……!

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