ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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天2の、終夜の快進撃は止まらない!


第149話 FLOW

 

 5月17日。

 天2小隊大暴れの結果、驚異的な行軍速度で行われた“神子島奪還作戦”は。

 

「……全体、止まれ!」

 

 予定していた1ヶ月の作戦時間を圧縮に圧縮した……約1週間で。

 

「来たぞ……桜花島(おうかじま)!!」

 

 神子島県最大のシンボルといわれる海に囲まれた活火山“桜花島”を見やる最終拠点設営地まで、到達してしまっていた。

 

 

「私たちはいったい、何を見せられているの?」

「マジで到達しちまった……マジで1週間で来ちまった……!」

「俺たちが10年守り続けるだけで精一杯だった戦線が、たったそれだけの時間で……」

「しかも、しかもよ……あの子たちが参加してから今日まで、ケガ人は出たけど死者はいないの……!」

「こんな、こんなにも容易く……」

 

 長いあいだ神子島戦線を守り続けたベテランの兵士たちが、呆然と立ち尽くす。

 彼らからしてみれば、自分たちの長年の努力が否定された気持ちになっているのかもしれない。

 

「いいや、いいや! そんなことはない!」

「えぇ、まったくもって違いますわ!」

「「!?」」

 

 だが、その否定する心を否定する言葉が、俺たちにはある。

 

 

「偉大なる先達が守り続けたからこそ、ここまでの奇跡を呼び込めたんだ」

「皆様が耐え忍んできたからこそ、(わたくし)たちはその後ろで十全以上に牙を、爪を研ぐことができましたわ!」

「佐々様、天常様……!」

「私は知っているわ。貴方たちの戦いの意味を、その重さを。私はそれを、一緒に見てきたんだもの」

「皆様が護国の礎となるべく命を燃やし今日まで紡いだ鉄壁こそが、今この時を勝ち取ったのだと、大阿蘇様の巫女たるこの身において、保証いたします」

「巡の嬢ちゃん、姫様……!」

 

 全軍の士気を高め続けた立場ある者たちの言葉。

 何の因果か天2に集まった、この世界の未来になくてはならない若者たちの言葉は、彼らの今日までの行ないをもって人々の心に檄を打つ。

 

「どうか誇って欲しい。ボクたちをここまで連れてきてくれて」 

「どうか胸を張ってくださいまし。アナタ方はみな、一人残らず日ノ本の誉でしてよ!」

「まだ戦いは終わってないわ。苦しみも、その先の希望も、最後まで生き延びてともに分かち合いましょう」

「次の一戦こそが、日ノ本を侵す悪鬼を討ち果たす、真の侍の戦いです……!」

 

 語る言葉を尽くした4人の視線が、一人の男へ向けられる。

 

 

「………」

 

 両肩に金の飾りをつけた、本作戦の総司令――六牧百乃介準霊師。

 軍帽を整えながら前に出た彼は、静かに右手を上げ、それを力強く前へと振るい宣言する。

 

「これより、神子島奪還戦! 最終攻略作戦を開始する! 全軍、己が死力を尽くし、生きて戦いを乗り越えよ!!」

 

 桜花島の周囲に漂う赤い霧と、今日までの激闘で見た以上の侵略者たちの群れ。

 彼らはこちらの存在に気づきながらも攻め込んでは来ず、むしろかかって来いと手招いているようで。

 

 それはつまり、これまで物量で押してきた奴らに、攻め込む余裕がないことの証左。

 

 

「さぁ、俺たちが先駆けだ。派手にかますぞ! ヨシノ!」

『――私たちの舞踏を、阻むモノなどありません』

 

 ここまで来たら後には引けない、引く気もない。

 

「超過駆動、展開! 最大速度、呼朝……GO!」

 

 相棒と愛機との呼吸を合わせ、緑の燐光を吹き散らしながら一機で飛び出す。

 

 

「心に集中! 体に加速! 技に魂込めて行くぞ! うおおおらぁぁーーーーっっ!!!」

 

 まずは両手に突撃銃を構え持ち。

 派手に弾丸ぶちまけながら、俺は一切の油断を捨てて全力全開で立ち向かう!

 

(さぁ、どこからでもかかってこい! 白衣の男! RR!!)

 

 推しの未来を阻む奴らの魔の手は、もう目と鼻の先にあるのだから。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 戦い始めて数ターン。

 

「くっ、なに……この敵の攻撃は!?」

「コントロール! 想定よりも敵の攻撃が重い! これは一体……!?」

 

 俺は、すぐその違和感に気づいた。

 

(こいつら、戦い方が違う……!)

 

 向かい合うハーベストたちに見る、確かな戦術を感じる連携。

 無駄が省かれた行動には、ただの力押しだけではなく、戦いの駆け引きが存在していて。

 

「ってことは、()()な……!」

 

 こんな風に敵が動く状況には、覚えがある。

 敵軍全体が強化されている、つまりは司令官補正が入っているということは……だ!

 

 即座に端末を操作し、俺は六牧司令へその事実を伝える。

 

「アンチェインからコントロール・ガラカブへ! この戦場、亜神級がいるぞ!!」

「こちらコントロール・ガラカブ。本当か!?」 

「本当だ! それに――」

 

 俺の原作知識が、この先にいる敵の正体を看破する。

 

 

「――ここにいるのは二体一組の亜神級……“凶獣”トウテツとホウキョウだ!」

 

 

 普通あり得ない敵の配置に、考えられるのは一つだけ。

 

(空泳ぐクジラに、海渡るオオカミ、そして今度は凶獣か。どうやら赤の一族は、すっかり白衣の男に掌握されちまってるみたいだな)

 

 より大きな混乱を、より大きな戦いを。

 白衣の男の考えるコンセプト通りの展開に、自然と深く、ため息が出た。

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 “凶獣”トウテツ&ホウキョウ。

 人の頭に羊の胴体を持った二体一組の亜神級。

 設定資料集によれば、主にお隣の華国(かこく)で地獄を作ってた凶悪な敵だ。

 

(その特徴は二体で通じ合いながら発揮される、高い指揮能力……!)

 

 通常亜神級がいることでかかる強化は、人間の司令官がいることでかかる強化と同一の物だとされているが、こいつらは違う。

 二体揃うことでその司令官技能レベルが掛け合わされ、驚異のレベル4の領域を叩き出すのだ。

 

(司令官技能レベル4の状態で部隊にかかる命中・ダメージ補正は……実に1.5倍!)

 

 超有能司令官である六牧司令のレベル3で1.3倍。

 大して差はないんじゃね? って思うかもしれないが、これが全然違う。

 

 まずこの世界は基本的に火力過多。殺される前に殺せが鉄則なんだが、そうなる理由として俺らとあいつらで致命的に違うことがある。

 それは――。

 

(――敵は傷ついても気にしないが、俺たちは怪我したらスペックが大きく落ちるってことだ!)

 

 

 そもそも、ハーベストとは何か。

 あれは、赤の世界で生み出された兵器だ。道具だ。厳密に言えば生物ですらない。

 

 一部、別の世界から引っ張り込まれた生き物って例外もいるが、フェアリーからドラゴンまで妖精級と精霊級に分類される連中は、全部が全部造られた侵略兵器である。

 

(だからこの世界でも動きが割とシステマチックだったし、俺の攻略法が通じたワケで)

 

 てなもんで。

 連中は部位損壊やらで物理的に行動不能に陥らない限りは、スペックを維持して行動する。

 対して俺たち人類は、怪我すりゃ痛いし動きも鈍る。

 

 

(敵の一撃一撃が強くなるってのは、それだけ俺たちが弱らせられる危険があるってことだ!)

 

 しかも補正が1.5倍ともなれば、精霊殻でも即死する可能性が十分にある。

 つまり――。

 

「――そんなクソヤバ強化(バフ)をかけてる連中は、即潰す以外ねぇってことだ!」

「その通りだ。だが、その当の亜神級は一体どこに」

「そんなもんは決まってる。この戦場を見渡せる、いい感じに高い場所!」

「!? そうか……! 奴らがいるのは……!」

 

「「桜花島!」」

 

 六牧司令と俺の声が重なる。

 

「………」

 

 まだ見ぬ桜花島の山肌で、二対一組の怪異が妖しく微笑んだ気がした。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「……確認した! 桜花島の山肌に、二体の亜神級“凶獣”と思わしき影!」

 

 即座に望遠カメラでチェックした、六牧司令からの言葉。

 

「ってことで、アンチェイン、さらに先行させてもらうぜ!」

「っ……気をつけて!」

「了解!」

 

 一瞬の判断。

 GOサインをもらった俺は、ボロボロの神子島市街地を跳ぶ。

 

 相手に亜神級がいることで生じた敵の統率の取れた動きは、それ故着地の隙間を作り、意外にも移動の助けになっていた。

 

「っても、桜花島か……」

 

 眼前に広がる巨大な活火山。

 だが、そこに至るまでには大きな海が挟まっている。

 

(全力ブーストぶっ込んでも、この海は飛び越えられないよなぁ……?)

 

 どうしたものかと、考えていた。

 そんな時。

 

 

 ヴンッ!

 

『はぁい、キミぃ~。海を渡るのにお困りかねぇ?』

「お?」

 

 モニターのひとつが勝手に展開し、そこに。

 白衣に丸眼鏡で野暮ったい雰囲気のお姉さん――白の一族で本土の開発室副長、クスノキ女史の姿が表示され。

 

『そんなお困りのキミに、本土開発室からとびっきりの新兵器をプレゼントしちゃうよぉ~。いぇーいどんどんぱふぱふ~』

 

 胡散臭い言葉と一緒にモニターに表示される、謎のPUSHマーク。

 

『そのボタンを押したら』

「ポチっとな」

 

 即押し。

 

『ほぁっ!?』

 

 次の瞬間。

 

 ヴォンッ!

 

 と、大質量が一気に出現した重い音とともに。

 

「こいつは……!」

 

 呼朝の前方、ちょうどジャンプして届く中空に、ソレが出現した。

 

 その形を見た瞬間。

 俺は迷うことなく駆け出した。

 

 

『ちょちょちょ、待って、説明を……!』

「大丈夫。俺はこれを――()()()()()!!」

『えぇ~~!?』

 

 それは、HVVには存在しない兵器。

 けれど、俺の知識には存在している兵器。

 

 どういう機構か知らないが、どういう使い方かはすぐに分かった。

 

「すごいぜクスノキ女史! こんなもの作ってくれて、ありがとうな!!」

 

 俺は躊躇なくソレへと飛び乗って、指定された位置に呼朝の脚部を置き、固定する。

 

 

『終夜、こちらは』

「わかってる。要は……()()()()()()だ!」

 

 PUSHマークを押したことでインストールされた新機能を即座に立ち上げ、ヨシノに姿勢制御の補助を任せる。

 

「さぁ、行くぜ!」

 

 次の瞬間。

 

 ゴッ!!

 

 呼朝が飛び乗った新兵器――二等辺三角形の巨大な板を起動すれば、勢いよく後部ジェットを噴き出して、俺たちは空へと舞い上がる。

 気力を超常の力へ捧げ、それを飛ぶ力へ変換しての、いわば超過駆動飛行。

 

 

『ぬぁぁっ! 本当に乗りこなしてるしぃ!? せ、せめてその子の名前くらいは覚えておいて! その子の名前は――』

 

 クスノキ女史の叫びとともに、俺たちは海の上へと飛び出して。

 

『――“飛燕(ひえん)”!! その子はキミを空へと誘う、渡り鳥だよ!』

「おっしゃぁぁぁ!! 行くぞ、飛燕!!」

 

 その名の通り、燕のように。

 鋭く、早く、俺たちは海を越え、桜花島へと向かうのだった。




呼朝の移動力が増えました。空戦に適応しました。

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