ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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誤字報告も助かっています。本当にありがとうございます。

新章開幕! 九洲本土の大きな戦いも収まった今……。


第24章 ハピハピギャル、オリヴィア・テイラーソン!
第159話 平和な日常


 

 青い空、白い雲。

 有明の海から風薫る、上天久佐第2独立機動小隊基地。

 

 広々としたグラウンドと、それを囲むランニングコースには、今日も元気な声が響いていた。

 

 

「天2式特別教練基本コース履修者諸君! この調子でグラウンドとランニングコースの交差周回あと10セット! 諸君らの体力・気力をギリギリまで削り取らせてもらうぞ! 合言葉は筋肉だっ!」

「ひぇっ」

「鬼だ」

「角刈りマッチョの悪魔だ」

「し、死ぬぅ~~!」

「オラオラッ! このくらいじゃ先輩たちには遠く及ばないぜ! ってか、ガチで死にそうになったら助けてやるから、死ぬ気くらいは出しやがれっ!」

「「ひぇ~~!」」

 

 隊長技能3の木口(きぐち)君が先頭に立ち、他所の小隊からやってきた戦士を走らせている。

 彼の補佐役を務める鹿苑寺(ろくおんじ)君も気合十分、その後ろからバシバシ声を張って喝を入れまくって。

 

「……へへっ、オレもちょっと前までそれくらいだったからな。大丈夫、強くなれっぜ!」

「!? ……ヤンキーくんっ!」

「ヤンキーくんじゃねぇ!! オレのリーゼントは魂だ! あいつと一緒でな!」

 

 天2勤続も4ヶ月を越えた今の鹿苑寺君は、すでに体力気力共にSSクラス。

 原作HVVの彼とは比べ物にならないスペックでここにいる。

 

 

「この損傷に対する修理策は3つあり、一つはとにかくすぐに動けるようにするために関節部の接続を優先するものと、先に装甲固定を優先しギプスのように扱うものと、いっそここを切断してから――」

「ふむ、ふむふむ」

「なるほど、一つの傷に対して行える対処にここまでの選択肢が……」

「これらをあの激闘の中適切に判断してきたということか……」

 

 隅の方では故障した旧型の精霊殻(せいれいかく)を使って、佐々(さっさ)君が青空整備講習を行なっている。

 

佐々千代麿(さっさちよまろ)。教え方も上手いとは、やはり整備の天才か……」

「青髪の王子様……!」

 

 候補生やベテランに限らず大勢の整備士たちに囲まれながら、小柄ながらも堂々とした態度で指導を続ける彼には、尊敬だけじゃない様々な視線が集まっていた。

 

 

「みなさーん! 上天久佐婦人会からお昼の炊き出しで~す!」

「おおっ、待ってました!」

「ごはんだー!」

 

 ランニングコースの脇、旧体育館施設の前で、民間のボランティアさんが声を張る。

 ここ最近になってちょくちょくやってきては、基地運営のお手伝いをしてくれていて。

 

「はい、どうぞ。いつも息子がお世話になっております~」

「は、はい! こちらこそ!! ……び、美人すぎる……!」

「息子がいるって、経産婦……?! あんな美貌の人妻が、この世に存在するってのか?」

「ご存じ、ないのですか? 彼女こそ“ハーベストハーベスター”にして“緑の風”黒木終夜(くろきしゅうや)氏のお母上、希望の母にして美の女神。黒木さんだ」

「あの人が噂の……! なんてこった、噂で語られる以上の美しさだ……!」

 

 おかげで俺も、母さんの元気な姿を拝むことができている。

 俺が知らないあいだも母さんの魅力値磨きは続いていたらしく、最近2000の大台を超えたのを観測した。

 ようこそ母さん、OD(おーばーど)の世界へ。

 どこへ向かってるんだ母さん、姫様ですらEX(エクストラ)なんだぞ。

 

 

「ふー、やれやれ」

『貴方もたいがいなのではないですか、終夜?』

『んっ』

「いやいや、俺なんてまだまだだろ」

 

 頭の中に直接響く、契約精霊二人の言葉に応じる。

 

「体力・気力は達成してるし、もうちょっとで運動力は届くんだがな。知力と感応力がまだ足りん」

 

 我が最愛の推しである黒川(くろかわ)めばえちゃんに迫る万難を排するには、主要能力オールOW(オーバーワールド)を目指す必要があるのだから。

 

『『………』』

「日進月歩日々是精進って奴だなぁ」

 

 遠い道のりだが、それでも一歩ずつ進んでいくしかない。

 推しを推すにはどれだけだって、鍛えて、鍛えて、鍛えていい。

 

 

「ん、んん~~~~っ、はぁっ!」

 

 そんな気持ちを新たにしつつも、自然と体は伸びをして。

 緑とアスファルトの匂いを腹いっぱいに吸い込みながら、深呼吸。

 

「“隠れ身”起動、“精霊羽織(せいれいばお)り”起動。消費はすべて俺持ちで」

『……了解。私の舞踏は貴方と共に』

『ん。ユメはきゅうけいする』

「よっし! 行くぜっ!!」

 

 見学タイムは終了。

 体に負荷をかけながら、俺も今日の訓練メニューを再開する。

 

「さてさて、いっちょ『天久佐の壁』にでもタッチしてこようか……! 3,2,1……ゼロッ!」

 

 天狗みたいに道なき道を、飛んでは跳ねて、駆けていく。

 

 もはや自他ともに認める人外メニュー。

 無茶もいいところな内容でもどんと来いだ。

 

 何しろそれをやるだけの余裕が、今の俺たちには十分にあるのだから。

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

「トゥーッ! トゥーッ! ヘヤーッ!!」

 

 適当に掛け声を挙げながら宙を舞えば、人の営みが眼下に広がって。

 

 わいわい。

 がやがや。

 

(たくさんの声と音が、色んなところから響いてくる)

 

 半年前、上天久佐から避難していった人々が戻ってきている。

 これから向かう天久佐の壁に至るまで、続々と住人たちが帰還して、新たな日常を迎え始めている。

 

 

(……本当に)

 

 その賑やかな音が、人の流れが。

 

(この辺りから、全部のハーベストを追い出したんだなぁ)

 

 俺たちが成し遂げたことを、その結果を教えてくれる。

 

 

 ……時は7月、夏が来て。

 神子島地区開放から2ヵ月近く経った今。

 

「い~~やっほぅ~~~~~~~~っ!!」

 

 日ノ本は平和そのものだった。




子供「ボク見たもん! 本当に! 空を人が飛んでたんだもん!!」

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