ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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楽しんでもらえてるんだなと実感が沸きます。
誤字報告も助かっています。本当にありがとうございます。

本章はラブコメ増し増しで行きたいと思います。よろしくお願いします。


第26章 勃発?! 天2ロマンス祭り!!
第169話 本気の気持ちと本気の推し活、そしてやらかす二人……。


 

 世に“大胆な告白は女の子の特権”という言葉があるが。

 

『……私、清白帆乃花は、黒木終夜君のことが、恋してるって意味で、好きです』

 

 まさかそれを、自分に向かって使う子がいるなんて、思ってもいなかった。

 

 

『恋してるって意味で、好きです』

 

 恋。

 彼女は、清白さんは俺に、釘刺すようにハッキリとそう口にした。

 

“清白帆乃花は、黒木終夜に恋をしている”

 

 清々しいほどの断言だった。

 想いの矢が、必殺必中の一矢となって、寸分違わず俺の心の臓を撃ち貫いた。

 

 

「…………いやぁ、まいったな」

 

 前世を含め初めて、俺は女の子から告白された。

 言葉で、所作で、表情で……本気も本気だって伝わってくる、真っ直ぐな告白だった。

 

 夏の、暑すぎて人が寄りつかない寮の屋上で一人、落下防止の金網越しに空を見上げる。

 衝撃の出来事から一夜明け、昼の青空は遠くにモクモクとした入道雲を浮かべて、近く雷雨が来ることを告げる。

 

 だからだろうか、胸がざわざわと落ち着かない。

 

 

「……思ったより、ぶっ刺さってるん……だよなぁ」

 

 俺の口からは自然と、歯切れの悪い言葉が漏れ出でて。

 金網を指に食い込むくらいに握りしめ、ゆっくりと体重をかけて寄りかかる。

 

「…………ガチ告白、高火力すぎだろ」

 

 さらに漏れ出た呟きは、アトリエ設営の工事音に吸われて消えた。

 

 

 ……俺は今。

 改めて、自分の気持ちと向き合うべきタイミングが来たんだと確信する。

 

(めばえちゃん……)

 

 俺のすべてを含んだ在り方を……“推し活”を、見直すべき時期なのだという意味で。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「――それで? 私のところに来たの?」

「………」

 

 食堂兼調理場。

 そこで高級錬金鍋の中身を神秘の混ぜ棒で混ぜ混ぜしてるハピハピハッピーギャルにして未来の大魔女――オリヴィア・テイラーソン氏から、俺はツッコミを貰った。

 

「無敵のミスターターミネーターも、LoveとLikeについてはシロウトだったんだねー」

「こちとら推し活一本で生き延びてきたからなぁ……」

 

 鍋を見ながら冗談を投げてくれるオリーの隣で、俺はテーブルに突っ伏し弱音を吐く。

 それをオリーはやれやれなんてため息で受け止めて、けれども決して邪険にはしない。

 

 天2で1,2を争う良心の持ち主は、今日も変わらず優しい。

 

 

「推し活かー……それであれだけ活躍できるなら大したものだねー」

「割と頑張りましたー」

「アハハ! 終夜が潰れたメタルスライムみたいになってる!」

 

 先日発覚したオリーの天才的な錬金技能を活かすべく現在絶賛設営中のアトリエだが、できるまではこの食堂兼調理場が、彼女のアトリエ代わりとして宛がわれることとなった。

 彼女もさっそく自分の力を試してみたいということで、今日は一日ここにいるのだという。

 

 錬金術の始まりは台所から、だっけ?

 なんともそれっぽい割り当てだな。なんて、逸れたことを考えれば少しずつ、肩の力が抜けていく。

 

「悩んでるねー。それも、珍しい悩み方だねー」

「おー」

 

 今の俺の状態から、オリーにはいろいろと察するものがあるらしい。

 練習用の素材を鍋に突っ込みつつも、彼女は俺との会話に興じてくれるらしかった。

 

 ほどよい距離感。

 今はそれが何よりもありがたかった。

 

 

「天2のみんな、今すごいもんねぇ。どこもかしこも話題になってるよー」

「うっ。そうだよな……」

 

 なんたって昨日の今日、そして、あんな形での告白イベントだ。

 話を聞いた佐々君が、自分がそこにいなかったことに膝から崩れ落ちるレベルの大イベントである。

 

 当事者以外にとっては、格好の話のタネだろう。

 

「だってのに、俺に直接突っかかってくる奴が、誰一人としていないんだもんなぁ」

 

 意外だったのは、俺の元に誰も尋ねに来なかったこと。

 何かしらちょっかいは出されることを覚悟してたんだが、こうして今も無事に過ごせている。

 

「もしかして、清白さんの方に集中してしまってるのか?」

「No.みんな聞きたがってはいたけど、そっとしてくれてるよ。今はみんな、自分のお仕事の時間。お仕事しながら雑談してるね」

「そっかー」

 

 全面的に気を遣われているのを感じる。

 ちなみに俺の仕事である呼朝の調整は朝練のついでに完了している。

 

 もっと整備に時間をかけろとヨシノたちには言われるが、正直、呼朝のスペックも頭打ちになってきているのを俺は感じていた。

 

 それに今日に限って言えば、そこまで気合を入れて仕事をする気分じゃなかったってのがデカい。

 

 っていうか。

 

(こうしてふんわり手を抜けるくらいには今、日ノ本は平和になったんだよな……)

 

 精霊殻の調整も、そもそも傷を負わなければ手間が減る。

 そして天2の場合、天久佐奪還戦や神子島蹂躙戦のときのような激戦に次ぐ激戦でもなきゃ、9から10割無傷で終わるのだ。

 

 最近じゃ天2に救助要請が来るレベルの戦いは皆無。

 だからこうして、隊員同士の恋愛沙汰に想いを馳せることもできるってワケ。

 

 兵士は平和で暇がいい。

 

 

「……うー」

「茹だってるねぇ。髪がイカスミパスタだねぇ」

 

 時間はある。だから考えさせられる。

 再び机に突っ伏した俺を、オリーは楽しげに見降ろして。

 

 彼女の顔に悪戯っぽい笑顔が浮かび、告げられる。

 

「お鍋に入れとく?」

「ノーセンキュー」

「ざんねーん」

 

 ぼこぼこと、泡の弾ける音がした。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「……要はね。終夜がどう思ったかなんだと思うよ」

「俺がどう思ったか、か」

 

 作業しながら話を続けるオリーからの、優しい言葉。

 鍋からの熱で頬に汗をかきながら、神秘の混ぜ棒でまだまだぐるぐる回してる彼女は微笑んでいる。

 

「Correct! 嬉しかった? 嫌だった? 心はポカポカした? 冷たくなった?」

「んー……嬉しかったし熱くなったな」

「Wow,好感触だね! ……でも、終夜は()()つもりなんでしょ?」

「ああ」

 

 さらりと差し込まれた指摘に、俺は素直に首を縦に振る。

 

 

「……でもな」

「うん」

 

 オリーの指摘通り、俺は清白さんからの告白を断る気でいる。

 けれど。

 

「今のまま断るのは、不誠実な気がするんだわ」

「……うん」

 

 清白さんのアレは、本気の本気の告白だったから。

 

「どうして俺は断ろうとしてるのか。どんな理屈で、どんな感情でそう結論付けたのか。それをちゃんと考えて、答えを出してからじゃなきゃ、清白さんに応えちゃダメな気がするんだ」

 

 推しがいるから。

 他に好きな人がいるから。

 

 そう言って断ること自体はきっと簡単で。

 そしてその決断を間違っているとは俺も思っちゃいなくて。

 

 でも。

 

「清白さんが届けてくれた“好き”が、俺が今抱えている“好き”と、本当に一括りにしていいものなのか、それを俺自身が見極めなきゃいけない」

 

 ……それじゃあまだ、足りないと思った。

 

 

(もっと、ちゃんと、俺の中にある心を……ハッキリとした形に……)

 

 黒木終夜は、推し活に命を懸けている。

 推しのためなら世界を変えるし、運命だって乗り越える。

 

 そこに注いだ想いは、間違いなく本気だって断言できる。

 できなきゃ、今ここに俺は存在しない。

 

 それはどうして?

 どうして俺は推し活をしているんだ?

 

 推しと……めばえちゃんと、どうなりたくて、そうしてるんだ?

 めばえちゃんを、どうしたくって、俺は彼女に関わってるんだ?

 

 俺はいったい、何を……どこを目指してる?

 

 

(俺は、めばえちゃんを幸せにしたい)

 

 でもそれは、どんな形で?

 

 彼女と恋人になって添い遂げたい?

 彼女に永遠の希望を刻みたい?

 彼女を最期の最期まで見届けたい?

 

 夢みたいな現在(いま)の先。

 俺の本気の推し活は、どんな未来(ベストエンド)を望んでる?

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

「……あー。頭がこんがらがってきた。俺の好きってなんなんだ?」

「Aha! そこまでわかっているのなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()、私から言うことはないかなー?」

「マジかー」

「マジダヨー。今の終夜はね、何をするべきなのかはわかってるけど、どうしてそうしようとしてるのかは、まだわかってないんだよ」

「う~ん?」

 

 考えて、考えて。

 まとまりもなくふわっふわな俺の呟きに返ってきたのは、オリーからのなんとも頼りになりそうでならなそうな答え。

 でもそれが、俺よりいろいろ見えてるだろう彼女からのエールだと、なんとはなしに理解して。

 

「ありがとう。参考にさせてもらうぜ」

「大丈夫! 終夜は鈍いワケじゃないから、きっと答えが見つかるよ!」

 

 話も区切りがついたろうと、互いに見合った……その瞬間。

 

 

 ガンッ――ボゴッ!!

 

 

 聞こえたのは強めの衝突音と、鍋から響く異音。

 鍋の中身を掻き混ぜていた混ぜ棒が、オリーの手を離れ、見事に鍋の中心で直立していた。

 

 

「あっ!」

「やべっ!」

 

 オリーと俺がそれに目を向けたときには、もう……すべてが手遅れだった。

 

 

 ボゴッボゴゴッ! ボゥンッ!!

 

 

 高級錬金鍋から溢れる、ピンク色の煙。

 火山の噴煙もかくやという速度で広がるソレは、俺もオリーも……どころか部屋一室でも足りないと、ドアも窓も吹っ飛ばし、爆発的に拡散する。

 

「なんだっ!?」

「なんですのっ!?」

「これは……!」

「えぇっ!?」

「霊気をまとった煙……いけないっ!」

「……な、に?」

 

「…………えっ?」

 

 

 ボフゥンッ!!!

 

「「~~~~~~~~~~~~~~っ!!!」」

 

 時間にして数分足らず。

 ソレは、たったそれだけの時間で基地中を満たし、すべてをピンクに塗り潰したのだった。




さぁ、トンチキパーティーの始まりだぜぇ!

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