ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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第17話 システムを理解した完璧な好感値稼ぎ

 

 推しとの未来のため、決して敵対してはいけない隈本御三家が一つ“繁栄”の天常家。

 そこのお嬢様である天常(てんじょう)輝等羅(きらら)さんとその従者さんに、心当たり大ありの罪で絶賛不審の目でにらまれている俺。

 

 ゲーム版にしかなかったはずの好感値変動プログラム――FES(フェス)がどういうわけだか作用して、俺に対する佐々君の好感値が爆上がりしてしまったがために起こった窮状。

 

 このド級のピンチを打破すべく、俺が取った行動。

 

 それは――。

 

「みんな、聞いてくれ!」

「!? んなっ、いきなりなんですの!?」

「……っ!」

 

「……今後について、相談がしたい」

 

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 呼ぶ対象:みんな

 提案内容:相談する(今後について)

 

 感情:無心

 表情:真剣

 

 以上の内容で“提案”を行います。

 

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 ※画像はイメージです。

 

 ――提案による好感値稼ぎ。

 つまりはFESの仕様をフル活用した、ゲーム的攻略である!!

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 図らずも、佐々君を洗脳したかのように変えてしまったFESの仕様。

 どうしてこれが発動してしまったのか、俺は仮説を立てた。

 

(おそらくだが、FESはゲーム版HVV(ハベベ)と同じ規格である小隊単位、つまりは天2軍学校内の人間関係に対して適用されたんだ。であれば、佐々君だけじゃなく天常さんやその従者さんにも効果は及ぶと推察できる)

 

 母さん周りでは起きず佐々君には起きたという点を考えれば、悪くない仮説だと思う。

 この仮説を出発点にして、アクションを起こしていこう。

 

 

(現状、天常さんが俺に向けてる感情は“不審”あるいは“敵対”。つまり、好感値はマイナス域だ。だが俺は、この状態から好感値を稼いでいくのに最適な話題を知っている!)

 

 嫌な相手のものだろうが耳を傾けなければならず、かつ、その価値が認められる可能性がある話題。

 

「――俺は、このままいけば十中八九、日ノ本は九洲からの撤退を余儀なくされると思っている」

「なっ!?」

 

 そう。

 自分たちの未来について、だ。

 

 

「あ、貴方は! 私たちが、日ノ本が……敗北すると思っていますの!?」

 

 怒りに染まった天常さんが、再び扇子を突き出し問い質す。

 

「答えなさい! 黒木修弥!」

 

 ……よし、大丈夫。

 この質問になら、答えられる。

 

「八津代平野の戦いでの大敗を、忘れたとは言わせないぜ?」

「っ!」

 

 息を呑んだ彼女に、俺は訳知り顔のニヒルな笑みを浮かべて、断言する。

 

「時間にして2年。ここから1年で永崎(ながさき)・天久佐から、そしてもう1年で九洲から……日ノ本は全面撤退する!」

 

「な、な……なんですってーーーー!?!?」

 

 あまりの衝撃に、天常さんが白目をむいて驚いていた。

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

「そんな……そんな、そんな事が起こるなんて。ありえませんわ……」

「いいや、それがありえるんだ。その予兆に関しては、そうだな、大体は裏が取れるんじゃないか?」

「っ!?」

 

 それから俺は、天常さん達にこれからの2年で起こりうる、いくつかの歴史的な出来事について話をした。

 彼女たちにはそのどれもが信じ難く、驚きに満ちたものだったようで。

 

「お待ちになって。では、天久佐の壁は?」

「あれを構成する精霊銀が内側から砕かれるのは、無策のままなら早ければ半年後の9月。遅くとも11月になるだろう。そこからの天久佐は、地獄になる」

「そんな……!」

 

 こんな風に時々質問なんかもされたりして、実に真剣に話を聞いてくれた。

 

 FESの提案画面も好感値も俺の霊子ネットリンカーじゃ表示できないが、目に見えて好感値がぎゅんぎゅんに上昇していく手応えってやつが確かにあった。

 

 

「――失礼。内々に話をしますので少々お待ちを。細川」

「ハッ」

 

 何度目かの相談タイムを始めた天常さんから目を離し、俺は深く息を吐く。

 こうやって時々ブレイクが入る度に、おそらくだが好感値の処理が行われているんだろう。

 

(今ので何回目の提案成功だ? 目の前の二人を見る限り好感値はそこそこ稼げたはず……)

 

 少なくとももう、天常さんたちから敵意は感じない。

 下手すると俺個人のことなどアウトオブ眼中かもしれない。

 

「今すぐ呉の工場に確認を……」

「であればお嬢様、本土の大臣にもお話を……」

 

 なおも真剣な顔で相談し続ける二人。

 俺はそれらを温かく見守りながら、さもありなんと頷いていた。

 

 

(なにせ、俺が語って聞かせた話は、ゲーム版や小説版で実際にこの世界が迎えた未来の話だからな)

 

 現状この世界は、おおよそ正史通りに歴史を紡いでいる。

 一部、俺が暴れたことで白星取った場所があるとかいう細かな違いこそあれ、不知火の壁の崩壊や八津代平野での大敗など、おおよその歴史は俺の知ってる知識通りに進んでいた。

 

 それら歴史の流れを作っている大きな要素について、HVVやり込み勢たる俺に抜けはない。

 公式ホームページで他のプレイヤー達と熱く語り合った日々は、今もまだ、記憶に深く刻み込まれている。

 

 彼女たちに話したのは、それらを基にして考えた“人類が何もしなかったルート”の話。

 実利重視(公式設定)の天常家としては、裏取りしたら金山見つけたような騒ぎになること請け合いだ。

 

 知識チートここに極まれり、である。

 

 

「――まとまりましたわ。黒木さん、とても興味深いお話をありがとうございました」

「参考程度に思っててくれ。あくまで推察、予測の範囲だ」

「えぇ、えぇ、そうでしょう。なにせ貴方が語ったのは未来のことですものね」

 

 これまでとは違った意味で、天常さんは鋭い視線を俺に向けている。

 開いた扇子で口元を隠し、流し見る目は俺の奥深くにある何かを探っているようだ。

 

「まさか在野に、ここまでの知見をお持ちの方がいらっしゃるなんて予想外でしたわ。ですが、だからこそわからないことがございますの」

 

 風が吹く。

 金髪縦ロールが揺れる。

 

「あなたは一体? いえ……違いますわね」

 

 ほんのわずか。

 天常さんの視線が逸れて、表情が曇った気がした。

 

「黒木さん」 

 

 再び向けられた視線は、意を決した者の真っ直ぐさで貫いて。

 

「あなたはこの場所に……何を望んでいますの?」

 

 搾り出すように零れた問いかけからは、純粋な疑問と、何か、間違っていて欲しい答えがあるようなニュアンスを感じた。

 

 そんな、真摯な問いかけに。

 

 

「……会いたい人が、いるんだ」

 

「会いたい人?」

 

「そうだ。俺はその人のために今、ここにいる」

 

 

 考えるまでもなく、俺は答えを口にした。

 

(エストウ・アパイショナード・ポル・ヴォセ黒川めばえちゃんと確実に出会うには、彼女が歴史の表舞台に立つゲームの小隊が編成されるまで、人類が生き延びなきゃいけない)

 

 俺がどうしてここにいるのかなんて、そのためだけだ。

 

「俺は戦って、戦って、戦い抜いて。その果てでその人に、胸を張って会いに行きたいんだ」

 

 武力・権力・財力……彼女を踏み台の未来から守るためには力がいる。

 だから俺は戦い、出世してコネを作り、財を集め、なんとしてでも生き延びる。

 生きて、推しとの未来を掴み取る!!

 

 それこそが、俺の望みだ!

 

 

「……そう、そうだったんですのね」

 

 深い納得と理解を得た顔で、天常さんが頷いた。

 

 そして。

 

「決めましたわ」

 

 彼女はゆっくりと、優雅な動きで扇子を構え、宣言する。

 

「私、天常輝等羅の名において! 黒木修弥、貴方を全力で生かすべく、あらゆるサポートをいたしますわ!!」

「!!」

 

 おお!

 

「それで、いいのか?」

「二言はありませんわっ!」

 

 おおーーーー!!

 

 やった!

 “繁栄”の天常家からの支援! ゲットだぜ!!

 

 

「おーっほっほっほ! お覚悟なさいませ。私も、千代麿も、貴方を逃がしませんわ!」

「ははっ。そりゃ、頼もしい限りだ……!」

 

 正直、HVVを愛する者としてめちゃくちゃ興奮する展開である。

 

(佐々家と天常家。まさか隈本御三家のうち二つの人間と悪くない関係が結べるなんて!)

 

 この二つの家からバックアップが受けられるなら、怖い物なんてなにもない!

 ぎゅんぎゅんとうなぎ登りする生存確率に、俺は心の底から歓喜した。

 

 あ、でも佐々君に掛かってるバグみたいな好感値は、とっとと修正しておこう。

 “呼ぶ”からの提案“なんでもない”ループで削ればいいか。

 

 

(御三家は後一つ……本編にめちゃくちゃ絡む建岩家は、ぶっちゃけあんま関わりたくない。つまりは現状、望める最大の支援をゲットしたと思っていい)

 

 振り返ってみれば、見事な逆転勝利である。

 ピンチをチャンスに変えてみせ、俺はまた一つ、望む未来へと近づいた!

 

(FESの仕様は厄介だが、俺から相手への感情値はどうやら制御できてるっぽいからな)

 

 提案を繰り返したが、別に天常さんたちにドキがムネムネしてる様子もない。

 

「……人の心、か」

 

 推し相手にはこの仕様、発揮されないで欲しいなぁ、なんて思いつつ。

 

 キーンコーンカーンコーン……。

 

 昼休みの終わりを告げる鐘が鳴る中、ひとまず俺は。

 難局を乗り切った安心感に、ふぅとため息を零すのだった。




次回、天常さん視点のお話になります。

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