ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~   作:夏目八尋

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楽しんでもらえてるんだなと実感が沸きます。
誤字報告も助かっています。本当にありがとうございます。

今日も世界はKENZENです。


第171話 勃発?! 天2ロマンス祭り!! 前編

 

「あっ、や、やめろ! そんなとこペロペロするなっ! あ、ああーーー!!」

「ワンッ!」

 

 明らかにおかしいレベルで大興奮のクロさんに押し倒されて顔中ベロベロされてる西野君を横目に、俺はえっほえっほと司令室へと向かう。

 

(被害は……基地内だけで収まってるのか?)

 

 異界成分“紫の思慕(パープル・ロマンシア)”を含んだピンク色の(もや)は基地のあらゆる場所に拡散してしまっていて、そこかしこでモワンモワンと揺れている。

 不思議なことに基地外にそれらが漏れ出た様子はなく、出ていこうとすると何かに弾かれ基地内へと戻されているようだった。

 

 

「こういう芸当ができるのは……まぁ、姫様だよな」

 

“テレパスセンス”で姫様の場所をチェックして、司令室へ向かう道すがら様子を見に行く。可能なら合流して、その天才的な閃きを大いに役立てて貰いたいところだ。

 

 司令室のある拡張された旧体育館の、その手前。

 寮と各外部施設との連絡路にもなっている渡り廊下に出て、建岩の姫様を探――。

 

 

「――はぁっ、はぁっ、はぁっ! んん!」

 

 ぽわわわ~~~ん。

 

「!?」

 

 渡り廊下を少し外れた日の下に、姫様はいた。

 

「はぁっ、はぁっ、くっ!」

 

 おそらく靄の拡散を防ぐべく、結界を張っているのだろう。

 錫杖代わりにDO-TANUKI・Mk-Ⅲを支えにして、膝をつきながらも力を放出し続けている。現状を維持するために精一杯の努力をしているって感じだ。

 

 だが……。

 

 

(……巫装束が、無駄に着崩れている!!)

 

 力の放出が激しいのか息は荒く、熱に浮かされてか青い瞳が潤んでいる。

 はだけた装束を正す余裕もないらしく、一心不乱に集中しては、“神懸かり”の燐光を振りまいて。

 

「くっ、ぅぅぅ……んんっ!」

 

 ちらっ、ちらっ。

 ひらっ、ひらっ。

 

 赤いエアインテークの長髪が風になびき艶を増す。

 力の放出に伴い吹きすさび続ける風が、襦袢の、袴の、姫様のあらゆるおはだけを強調して――。

 

 

 

「――ハッ!? ふんぬぁっ!!」

 

 ボゴッ!

 

 自分の顔を全力パンチ、ダメージ500!

 ちょっと口の中切ったけど無問題! 俺は正気を取り戻すっ! 

 

 知らず俺に触れていた薄いピンクの靄が、スッと役目を終えて消えていく。

 

(下手に近づいて声掛けたら、想像以上にヤバいことになりそうだな)

 

 靄がないからといって安心できない。

 間違いなく今、この基地内は……どこもかしこも戦場だ!

 

 

「……姫様!」

「っ! 終夜さ」

()()()()()()()()()()()()()()! 結界の維持、どれくらいできそうだ!?」

「!? ……長くても、んっ、2時間が限界、です!」

「わかった! 1時間で対策アイテムが出来上がる。そこからは楽になってくから、何とか持ちこたえてくれ!」

「っ! わ、わかりました……!」

 

 よし。姫様はひとまずこれでいいだろう。

 被害の拡大を彼女が抑えてくれるってんなら、それをそのまま任せた方がいい。

 

 ここはこのまま、司令室へ……。

 

「……あの、終夜様」

「なんだ姫様?」

 

 

「……先ほどのお強い命令口調……とても、んっ、とても耳心地の良いもの、でしたので、よろしければあともう一度、その、贄に、強くお命じいただけましたら、と……」

「……………」

 

 

 ………。

 …………やっべ。

 

 

「急ぐ! 何とか頑張ってくれ!」

 

 俺は姫様から目を背け、全力で司令室へと駆け出す。

 

(あの姫様で()()なるのか!? こいつは急いで解決しないと、マジでいろいろ取り返しのつかないことになっちまうかもしれねぇ!!)

 

 焦る俺の頭の中で、二人の精霊の声が響く。

 

『終夜、鼻の下が伸びています』

『でれでれ?』

「バッカお前、魅力EXの美少女に声かけられてドキッとしない方がバグだろがっ!」

 

 それはそれ、これはこれ。

 あくまで最推しはマイフェイバリットラブリーチャーミングな普通の子こと黒川めばえちゃんで揺らがないが、人外級美少女の艶姿をスンッと無視できるもんじゃない。

 

 

『……好きです。黒木君』

 

 

 それは、真っ直ぐな告白に対しても、だ。

 

 

「……とにかく! まずはこの状況をみんなに知ってもらわないとだ!」

『いざというときは“精霊羽織り”を使ってください。多少は耐性ができるはずです』

『まかせて』

「わかった。いざってときは頼む!」

 

 契約精霊たちの頼もしい言葉を受けて、足取りは強く。

 俺は問題解決のため、司令部施設へ駆け込んだ。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

「――ってなワケだから、そのピンクの靄にはノータッチ! 可能な限り一人で過ごすように! 間違っても狭い空間に二人きりとかなるなよ! 以上! ……ふぃー」

 

 伝えるべきを伝え終え、俺はマイクをOFFにして、椅子に腰かけた。

 

「なるほど……今回もやらかしてくれたねぇ」

 

 司令室には六牧司令が一人で居たが、俺が入っても例のBGMは脳内で流れなかった。

 

「まぁ、僕からしてみたらキミたちはみんな、等しく化け物だからねぇ?」

「なるほど」

 

 もともと警戒心が強く慎重な六牧司令は、部屋の中まで侵入してきた靄に触れていない。

 空気中にうっすら漂うソレを吸いこそしているだろうが、いつも通りの片メカクレ昼行燈の顔だった。

 

 

「こういう時にいつも冷静だから助かるぜ」

「お世辞はやめてくれるかい? せめて冷静であり続けないとキミたちのやらかしを見落としちゃうでしょう?」

 

 素直な賞賛の言葉にも、嫌そうな顔して皮肉を返してくる六牧司令。

 なんだかんだとこの人には世話になりっぱなしだな、なんて、改めて思う。

 

「いやいや本気だって。何かと政治的背景持った連中が揃ってる天2を、曲がりなりにも日ノ本の軍としてまとめられてるのは、ほかでもない六牧司令のおかげだろ?」

「本当かい? 僕は体よくあれやこれやと押し付けられて、酷い目にあわされてるだけなんだけど?」

「本当、本当」

 

 今や日ノ本に知らぬ者なしな名司令官と呼ばれているにもかかわらず、どこまでも謙虚な態度を崩さない。

 彼は自分に乗ってる肩書きを分不相応だと思ってるみたいだが、その実績が相応だってのは、俺たち天2隊員の総意である。

 

 だというのにこの司令ときたら。

 

 

「冗談じゃなく、司令はすごいんだぜ? だから、一つくらいは付けようや“魔術師の杖勲章(マーリンズブルーム)”」

「はぁ……僕には荷が重すぎるよ、コレは」

 

 執務机の上に置かれた勲章は4つ。

 神子島解放戦を含むこれまでの成果を以て、これまで受け取り拒否していた分も、無理矢理に授与されたのだ。

 

「あくまで僕は防衛大臣配下の一軍人であって、こんな成果を賜るほどの活躍はしてないんだから」

「準霊師にまでなった奴が言う言葉かよ」

「それはそう、なんだけど……」

 

 自信なさげな顔を浮かべる六牧司令を見ると、妙に構いたくなってくる。

 

 

「ほら、付けてやるから胸を張ってくれ」

「ん……」

 

 だから俺は勲章の一つを手に取って。

 ムーディーなBGMに後押しされるがまま、六牧司令に――。

 

 

「――ふんぬらばっ!!」

 

 ボゴッ!

 

「うわっ!? どうしたっ?!」

 

 再び自分の顔を全力パンチ、ダメージ800!

 ちょっと血を吐いたけど無問題! 俺は正気を取り戻すっ! 

 

 BGMは気づけばどっか行っていた。

 

 

「っぶねぇ!? っぶねぇぇぇ!!?」

「……あっ! 今のがそういう雰囲気って奴ぅ!? うわ、ぎぇぇ!? こ、これ本気の緊急事態じゃないか!?」

 

 遅れて気づいた六牧司令にも、事ここにきてようやく事態のヤバさが伝わったようで。

 

「し、司令室は僕以外立ち入り禁止とする! 連絡は端末を通して間接的に!」

「了解!」

 

 男同士でもこの有り様だ。

 原作ゲーム版でもこの仕様だったし、どうやらマジで強制力がありそうだ。

 

 

(ロマンスな雰囲気……想像通り、いや、想像以上にヤバいぞこれは!)

 

 

 オリーに頼んだアイテムができるまで、まだ30分以上ある。

 注意喚起の放送こそできたが、俺と六牧司令でこれなんだから、もはや各所で問題が起こっていても意外じゃない!

 

 

(めばえちゃんは変わらず保健室に一人。よし!)

 

 最推しの定期チェックを行なって、手に持っていた勲章を六牧司令に投げつける。

 

「うおっと!」

「マジで一つは付けといた方が、いざって時に言い訳できると思うぜ! それじゃ行ってきます!」

 

 慌てて受け取る司令についでとばかりにアドバイスして。

 

 

「もう手遅れかもしれないが、一通り様子を見て回るぞ!」

 

 俺は改めて、基地内にいる天2隊員の安否確認へと向かうのだった。

 

 

      ※      ※      ※

 

 

 通信室。

 

「状況確認だ! タマちゃん、大丈夫か!?」

「ふにゃぁ? あ~、終夜ちゃんだぁ~」

 

 ぽわわわわ~~~ん。

 

 ほぼほぼタマちゃんに私物化されている天2基地内通信室。

 ふわふわもこもこなクッションに、彼女は仰向けになって寝転んでいた。

 

 なんというか、これは割といつも通りの光景である。

 

 

「んにゅっふっふ。ここはいつも一人だから問題ないよ~」

「みたいだな。それでも一応気を付けといてくれ」

「にゃっはっは! このタマちゃんが……あー、ロマンスな雰囲気? そーんな安っぽいえちちイベントなんかに引っかかるわけがないってぇ~」

 

 たゆんっ。

 

「!?」

 

 揺れている。

 何がとは言わないが、彼女が身じろぎするたびに、柔らかいものが揺れている。

 

「ん? どうしたの終夜ちゃん?」

「いや、なんか……違和感が……?」

 

 いつもはそこまで気にならないのに、なぜだか今日は、妙に視線誘導される。

 

 

「……あ゛っ、ブラ付けるの忘れ」

「うおいしゃほーいっ!!」

 

 

 バタンッ!

 

「ぎに゛ゃあ゛あ゛あ゛!!! タダ見とかないでしょぉ!? 詫び料寄越せに゛ゃあ゛ーーーー!!」

 

 俺は通信室のドアを閉じ、厳重に封印した。

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 整備ドック。

 

「くっ! 落ち着きたまえ、ご婦人がた! こんなことをして許されると思っているのか!?」

「ごめんね。ごめんね。私たち、もう我慢できないのっ!」

「こんなにも、こんなにもあなたが可愛いから悪いのよっ!」

 

 佐々君が、手伝いに来てた婦人会のおばさま、お姉さまたちに囲まれていた。

 

「はぁぁんっ! 若い男の子のお肌! 佐々君いつも油まみれなのにずっと綺麗!」

「青髪の王子様、今、お体に触ります」

「やめっ、ちょ、やめろぉおおおっ!!」

 

 ガチめにピンチだったので助け出した。

 

 

「くっ、なんという恥を……いっそ殺せ!」

 

 助け出した佐々君は、着ている服がボロボロになっていた。

 乱れた青い短髪も、晒されている白い肌も、屈辱に赤く染まる頬と溢れ出そうな涙と、すべてが高水準のなんかこう、高水準のなんかだ。

 っていうか無駄にしなってるそのポーズはなんだ。せくしーアピするんじゃない。

 

「こんな惨めなボクを、どうかキミの手で介錯してくれないか……? 黒木?」

「うるうる瞳で言うことじゃないし、さっさと服着て気絶させたご婦人がたを運ぶの手伝ってくれ佐々君」

 

 微妙に本人もバグってたのでご婦人方と並べて休ませ、すやぁってなったのを見届けてから、俺は次の場所へと向かった。

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 精霊殻“響輝”専用ドック裏。

 

「おーっほっほっほ! よいではありませんのよいではありませんの!」

「お止めくださいお嬢様っ! お戯れは、お戯れはお止めを!」

「………」

 

 天常さんが、細川さんにセクハラしていた。

 

(わたくし)、知っていましてよ? 細川。貴女、ここが弱いのでしょう?」

「ひゃうんっ! お、お戯れは……おやめくださ……ああっ!」

 

 天常さんにガッツリ背後から抱きしめられて、細川さんが弄ばれている。

 襲ってる天常さんの目は明らかにグルグルしていて異常だし、状況としてはめっちゃアウトっぽい絵面なのだが……。

 

「あぁ、お嬢様! お嬢様お止めください! お止めくださいお嬢様ぁ!」

 

 されている側の細川さんが、割と楽しそうにしてるのが俺の動きを鈍らせる。

 

 

(っていうか、細川さん完全に正気だよな?)

 

 靄に包まれダメになってる天常さんと同じように、彼女の周りも靄が舞っているのだが、その中にあっても細川さんは、いつも通りの体幹を発揮して暴れるお嬢様を受け止めている。

 

(……まぁー、アレか。やっぱ効き辛いんだろうな、細川さんには)

 

 あえてこれまで言及してこなかったが、細川さん、人間と精霊のハーフだし。

 ヨシノやユメみたく“紫の思慕”を弾いているのだろう。

 

 精神攻撃耐性って奴だ。

 

 

「おーっほっほっほ! 最近あまり構っておりませんでしたものね、可愛がって差し上げますわー!」

「お嬢様お戯れを! お戯れを~~~!!」

「………」

 

 ……楽しそうだから、いいか。

 じゃれてるだけだし。

 

「おーっほっほっほ! おーっほっほっほ!」

「お嬢様! お嬢様~~~!」

 

 俺は静かにその場を後にした。

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 基地内の草陰。

 

「だぁりんっ! だぁりんっ! だぁりんっ! もっと! もっと! もっと!!」

「あっ、あっ、あっ……!」

 

 俺は静かにその場を後にした。

 

「もっと! もっと! まぁやを! 愛してぇ~~~!!」

「ああああああああああ!!!」

 

 アレは我々には、救えぬ者じゃ……。

 

   ・

 

   ・

 

   ・

 

 俺には救えない者たちから遠ざかり、そろそろ一度オリーのところへ戻ろうかといった、そのときだった。

 

「終夜!」

「パイセン!」

 

 ふよふよと、現人神モードになってるパイセンが空から降りてきた。

 

「貴方は無事……そう、ね?」

「大丈夫! ちょっとせくしーに見えるかもしれないが俺は正気だ!」

 

 気づけばはだけてる服を直し直しやって来てるが、たぶん大丈夫!

 

 

「それよりもパイセン。パイセンはマジで無事っぽそうだ」

「えぇ、私にはこれがあるから」

 

 そう言ってパイセンが羽衣を操ると、近くの靄が触れられた瞬間、ポムッと浄化された。

 

「おお、神の力ってすげぇ」

「敷地の端の方を見て回ってきたけど、被害はほとんどなかったわ。命が頑張ってくれてるようね」

 

 俺の身一つじゃカバーできないところを、パイセンがフォローしてくれていた。

 感謝の合掌をしてみせたら、ふざけるんじゃないのって、いつものノリでデュクシされる。

 

「ここからは私も合流するわ。……ひとまず、貴方の体にこびりついてる分も浄化しておくわね」

「助かる! そろそろオリーが対策アイテム完成させてる頃だから、一緒に行こうぜ」

「わかったわ」

 

 羽衣でぐるぐる巻きにされたりしつつ、心強い味方と合流し、俺はオリーのいる食堂兼調理場へと帰還する。

 

 

「……待ってたよ! 終夜、巡!」

 

 そこには、一仕事終えて自信満面に胸を張るオリーがいた。

 

「出来たか!?」

「出来たよ! 魔の影響を取り除く……アイテムが!」

 

 そう言って彼女が見せてくれたアイテムは、手の平サイズの小壺。

 

「でかした! オリー!」

 

 それこそが、今回の混乱を解決する錬金技能レベル4で作れる異界技術のアイテム――“吸魔の壺”だった。




ちなみに、クロさんは雄犬です。

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