ハーベストハーベスター~踏み台型ラスボス少女と呼ばれた推しを、今世では幸せにしたい!~ 作:夏目八尋
感想・評価いただくたびに、やったぜと喜んでいます。
楽しんでもらえてるんだなと実感が沸きます。
誤字報告も助かっています。本当にありがとうございます。
KENZENな後半、お楽しみください。
「ハッ、ハッ、ハッ!」
「お、おい。確かに俺はいつもお前に餌をやってたが、俺は餌じゃねぇんだ……!」
「ハッ、ハッ、ハッ!!」
「これ以上ペロペロされちまったら、俺は……!!」
「ハッ、ハッ、ハッ……アオーーー!!」
「ぎゃーーーー!!」
「そこまでだ!」
「「!?」」
壺を構えて、蓋を取る。
瞬間、周囲のピンクな
「……わふ?」
「しょ、正気に……もどった?」
いろいろな意味でクロさんに食われそうだった、西野君の救出に成功する。
「とりま、効果の確認終わりっと」
「黒木……た、助かったぁ」
へたり込む西野君を、正気に戻ったクロさんが慰めるようにペロペロしている。
これならもう大丈夫だな。
「……いや、舐めすぎじゃね?」
「ぺろぺろぺろ」
「まだ食う気残ってんじゃね?」
……多分、大丈夫!
「西野君。まだ何が起こるかわからん。靄に触れないように、整備ドックの休憩スペースに行っといてくれ。多分もう、佐々君が起きて動いてるだろうからな」
「わ、わかった。お前は……」
「当然。解決に動く!」
手早く指示を出し、俺はこの場を後にする。
(オリーが作ってくれたこの壺……“吸魔の壺”で、基地内に溢れるピンクの靄“
摂取してしまえばいろいろな意味で“ロマンスな雰囲気”を引き起こす異界成分。
すでに数多の被害を発生させているそれを、いち早く掻き集めて収束させなきゃいけない。
同じ異界技術で作られた、魔を吸い取る壺である吸魔の壺なら、それができる!
「パイセンも頑張ってくれてるんだ。俺も負けてられないな!」
精霊合神まじかるーぷの力で浄化してくれているパイセンと、二手に分かれての大仕事。
今頃パイセンはビカビカ光りながら羽衣を振り回し、プリティでキュアキュアに人助けしているに違いない。
「テレパスセンス! めばえちゃん……おひとり様OK!」
定時の位置確認よしっ!
こんなトンチキイベントなんかで、我が最推しエターナル大大大大大しゅきぴっぴのめばえちゃんの心に波風を立ててはならない。
「行くぞっ!」
俺は覚悟も新たに自分に割り当てられた区画へと、全速力で駆け出した。
※ ※ ※
かくして始まった“紫の思慕”回収をめぐる戦いは、思ったよりも過酷を極めることとなる。
「ふんっはぁ!!」
「あっはぁん♪」
……主に、ビジュアル面で。
「ふんっ! はぁぁぁ! 黒木! もっと、もっとだ! もっと筋肉を曝せぇ!」
「んおおおおお!! ダブルバイセップス!」
木口君と向き合えば筋肉を見せろと襲撃され。
「あっはぁん。キミも僕の美肌ボディに、溺れてみる?」
「……って、付き合ってられっかこの野郎ぉぉ!!」
逆に乃木坂君には上半身裸で迫られて。
「黒木ぃっ!」
「あっはぁ~ん!」
「うおあああーーーーー!!」
明らかにロマンスな雰囲気が暴走させている異常事態を、俺はちぎっては投げちぎっては投げを繰り返す。
(靄を摂取し心に隙ができたらその瞬間、相手と同じ土俵に立って付き合おうとしちまう! だが壺を使うには距離を詰める必要がある!)
気づけば半脱ぎになってた上着を着なおし、壺を構える。
「うおおおおおお!」
「あああああああ!」
木口君たちから靄を吸い込み回収したときには、男三人くんずほぐれつの状態だった。
「「「うおえええーーーー!!」」」
望まぬ絡みに俺たちは吐いた。
・
・
・
じゃあ相手が女の子ならどうだと問えば。
「へいへい兄ちゃん。いいカラダしてんねぇ?」
「クッ!」
どっちもどっちだった。
「へぇ、これがトップオブハベベのボディ……生意気じゃん?」
鏑木さんはSだった。
今、手足を拘束され動けなくなった俺にのしかかり、はだけて露出した俺の腹筋を、荒い息を吐きながらペタペタ触っている。
(まさか、死角から不意打ちで捕縛網弾ぶち込まれちまうとは……!)
ガチのマジのクリティカル。
これが本気の暗殺弾だったら、俺のタマが取られていたかもしれないくらいの必殺弾だった。
「いい、いいよぉ……いい男のボディってのは、触れば触るほど健康にイイッ!」
「鏑木さんキャラ違うくない!?」
「今欲望を吐き出さずにいつ吐き出すっていうの!? このボディは今しか楽しめないんだよ!? お得なの!」
「あ、はい」
すげぇ剣幕で言い切られて、思わず動きを止める。
そうしたら鏑木さんはまた「はぁ」とか「ほぅ」とか言いながら体をペタペタ触り始めた。
「はぁー、お得~。ご利益ありそう~」
そっと“精霊纏い”で壺を取り出して。
「これあれかな? 噛みついてもいい奴? いいのかな? いいよね? うん、いい奴!」
蓋を取る。
「それじゃいただきおあああああああーーーーーー!!!」
“紫の思慕”が吸引され、辺りの空気がさらっとさわやかになれば。
「「………」」
俺と鏑木さんのあいだに落ちる沈黙。
「………」
無言のまま、ゆっくりと鏑木さんは俺から距離を取り、地面に膝をついて正座して。
「……ッスゥー。どうか、これで勘弁してください」
そっ、と。
諭吉さんを10人重ねて差し出しながらの、それはそれは見事な土下座が決まった。
「「………」」
俺は少しだけ、鏑木さんのことが好きになった。
お金はありがたく頂戴した。
・
・
・
天2基地裏庭。
かつてはここで一人飯も食べたことがあるその場所には、今や立派な花壇ができていて。
「確かこの辺りに瓶兆さんがいたはず」
「あー。終夜先輩こっち、こっちッス~~」
その花壇の世話をしているはずの兵器ちゃん――瓶兆さんは。
「た、助けてくださいッス……」
「よっしゃお任せとぅえええええええーーーーーーーーーい!!!!」
瞬間。
俺は目を逸らす。
「ひー……抜け出せないッスー」
瓶兆さんは……瓶兆さんは。
ぽわわわわ~~~~ん。
全身ホースで緊縛されて、さらには水を盛大にひっ被ってるせいで、ぬっれぬれのギッチギチだった!!!!
「……まぁ、大方の予想はつくんだが……どうしてこうなった?」
「どうしたもこうしたもないッスよ。ウチはいつも通りに水やりしてたのに……」
瓶兆さん曰く、いつも通りに花壇の世話をしていたら、ピンクの靄に囲まれて、気づけば全身をホースで縛られた今の状態になっていたらしい。
「これが放送で言ってた“紫の思慕”って奴の影響ッスか? ただただ災難なだけじゃないッスか……」
そう言って八の字眉を作る瓶兆さん。
身じろぎするとホースがよりきつく締めてくるのか、んっ、と喉を鳴らして。
「しかもよりにもよって終夜先輩に見つかるとか……ほんと趣味悪いッス……」
「何か言ったか?」
「なーんにも! 早く助けてくださいッス!」
今の姿が恥ずかしいのか、頬を染めた瓶兆さんが暴れ始めたので、まずは周囲の靄を“吸魔の壺”で回収する。
やはり強制力が働いていたのか、彼女を締め上げるホースの力が、幾分か弱まったように見えた。
「お、よっ、ほ、解けそうで解けないッスね……」
絡まったホースを自力で解こうと奮闘する瓶兆さんを、しばし眺める。
長身スレンダー美人な彼女が縛られている姿というのは、いざこうして見てみると、かなりのマニアックな魅力に溢れている気がして。
「ふぅむ……」
「………」
これ、兵器ちゃんファンからするとマジでお宝映像だな。
やはり瓶兆さんは可哀想カワイイがよく似合う。
「……あのー」
「ん?」
「見てないで解くの手伝ってくれないッスか?」
「ふむ……このまま眺めてるのもいいか」
「きちくぅー」
兵器ちゃんファン垂涎のスチルは、俺の心のアルバムにしっかりと記録しておいた。
助けたあと、瓶兆さんから「ばーか」って言われた。原作で聞けたセリフそのまま過ぎてテンション上がったらドン引きされた。
自分の後頭部に靄が付いてたのに気づいたのは、その直後だった。
「そういう“いちゃいちゃ”がしたいなら、とっとと彼女作りゃいいんスよ」
「サーセン!」
平謝りだった。
※ ※ ※
「た、助かりました。どういうわけか勝手に服がはだけてしまって、いえ、終夜様にお見せする分にはまったくもって否やはございませんが……」
「ええ!? 諭吉10人もくれるの!? 許す許す許すぅー!」
「ふぅー。
「はい。私もまったく記憶にございません。大変すばら……恐ろしいものですね。異界技術とは……」
そんな感じで、一つひとつ。
俺は天2で巻き起こるさまざまなハプニングに対応し、“紫の思慕”を集めて回った。
ピンクに染まってた空も、元の青さをだいぶん取り戻してきて。
だいたいの指定区画を回り終えたかってところで、それは起こった。
「……あん?」
靄が、うごうごと動き出していた。
まるで自我でも持ったかのように、靄たちは各々うごめき、移動していく。
目を凝らして観察すると、どうやら大きな流れが二つあるようだった。
ひとつは、俺たちが生活している隊員寮。
そして、もうひとつは――。
「――っ!」
全身が総毛立つ。
目が一瞬でカッ開かれる。
「終夜!!」
俺を呼ぶ声が空から聞こえた。
「パイセン! 気づいてるか!?」
「わかってる! 残り少なになって靄たちが力を残そうと集まろうとしてるみたい!」
「場所は二か所だ!」
「それもわかってる! 手分けするわよ!」
さすがのパイセン、話が早い。
「だったら俺はりょ」
「寮の方は私に任せて! 寮には……帆乃花がいるから!」
「!?」
ギクリ、と。
その名前を聞いて体が固まる。
「ほらその顔! どうせまだ返事する準備できてないんでしょ!? だったらもう一つの方へ行きなさい!」
「でも……!」
「
「!?」
瞬間。
迷うように浮いていた足が、ハッキリと大地を踏んだ。
「……そっちは任せた!」
「任せなさい!」
パイセンに見送られ、俺は全力でダッシュする。
時間にして数秒。目的の建物へと到着。
ドア横のプレートに書かれた文字は――“保健衛生管理室”。
そこへピンクの靄が異常なほどに集まり、隙間という隙間から侵入していた。
諭吉10人のルート 軍からの給金→翼→終夜→珠喜→MAD制作バレの罰金で軍が徴収
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